アビドス砂漠で狩りに生きる。   作:春山乃都

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第60話

 あ、恐竜だ。

 

 なんて言葉が見た瞬間に思わず溢れる様な見た目をした大型生物の名は『アンジャナフ』。そいつはなにかを探すように鼻を忙しなく動かし辺りを見渡す。やがて目当ての物が見つからなかったのか、ふんと鼻を鳴らすと足音を響かせながら歩き去っていった。

 

 その後ろ姿を岩影から見ていたミヤコ達は、暫くして戻ってくる様子がない事に安堵しながらもどうしたものかと考えを巡らせるのだった。

 

「どうしましょうか?」

「そもそもアンジャナフはもう少し自然公園の奥に居るんじゃなかったのか? なんでこんな所に」

「それは、なにかあってここまで出て来たと考えるのが妥当だとは思うが」

「…例のセルレギオスとか言う大型生物に追い出されたと?」

「かもしれないが、それにしては争った後というか怪我が少なかった様に思える」

「単純に餌を狩りに来たと言うだけの可能性もあるのか。まぁどんな理由にせよ、アンジャナフという明確な脅威が近くに存在する事は変わらないぞ、どうする?」

「そう、ですね。RABBIT4、現在のアンジャナフの位置は?」

【えっと、ちょっと待ってて】

 

 言って少ししてスマホに送られてくる情報。写し出された地図に浮かぶ赤点は近くは無いが離れているという程ではない。アンジャナフの移動速度を考えれば瞬く間に無くなってしまう程度の距離。というか現在地からベースキャンプへの道中全部そんな感じだ。

 

 それを理解した上で考えるサキの言ったどうするという問い。即ち依頼を続行するか否かだ。

 

 出来るだけ、冷静に考える。安全面的に考えれば、止めるべきだ。幾らドローンで運ぶと言ってもぶら下げているからか安定性に欠け、またそのせいで速度も出せない。アンジャナフという脅威からドローンを確実に守りきれるかと聞かれれば、自分達では無理だろう。まして、アンジャナフがこんな場所に居る異常事態が…と、そこまで考えた所で気がつく。

 

 別に、異常ではない可能性がある事に。

 

「…RABBIT3、ここ最近で自然公園内でアンジャナフの活動が確認されていたか調べてもらえますか?」

【分かった、ちょっと待って…んーっと、少なくはあるけど何回かは確認されてるね】

「という事はここら辺に居るのは珍しいがおかしい事ではない訳ですね」

【そうなるかな】

 

 成程と、呟きながら続けてありがとうと礼を口にすると少し考えて。

 

「…依頼を続行しましょう」

「分かった、が大丈夫なのか? 危険過ぎる気も」

「危険という意味ではアンジャナフの有無はあまり関係ないので」

「それは…そうだな」

 

 とても危険がとても凄く危険に変わっただけ、大きな変化ではあるが結局危険である事は変わり無いし。やる事なんてもっと変わり無い。障害を出来る限り排除したり、身を隠すなりしてやり過ごす。それだけだ。

 

「それでアンジャナフに関してなんですが、ドローンでの運搬ではどうあっても逃げ切れないので抱えて運ぶ事で柔軟に対応出来る様にしようと思います」

 

 ドローンで運ぶと追い付かれるのならドローンで運ばなければ良い。と、これまた単純な対応。

 

 流石に卵を抱えた状態で十全の動きは出来ないが、それでもドローンよりかは速度は出せるし、しっかり抱える分安定性もある。デメリットとして両手が塞がるので完全に卵を運ぶ以外の事が出来なくなりお荷物と化してしまうが、自分達の様にチームで動いていれば然程気になる事ではない。

 

 どうでしょうかと問いかけながら軽く見渡して、否定意見が無い事を確認すると軽く頷いた。

 

「それでは、卵の運搬は」

「私がしよう」

 

 自分がと、そうミヤコが口にするより前にサオリが軽く手を挙げながら言う。思わずえっと溢しながら彼女を見る。視線を向けられた本人は、どうかしたのかと首を傾げていた。

 

「ん? 何か可笑しな事でもあったか?」

「いえ、その…本当に良いのですか? 一番危険な役目なのですが」

「それが最善だろう? 私ではお前達二人のどちらの代わりにはなれない。なら、私が卵を運びお前達が護衛として普段通り行動する方がより確実だ。それに依頼主である私が卵を手放せばその時点で依頼を放棄するのだと分かりやすいだろう?」

 

 なにか駄目なのかと首を傾げるサオリにいえとミヤコは返す。確かにその通りだ、その通りなのだが。チラリと横目でサオリを見る。既に、卵を運ぶ為に身に付けている装備の位置調整をしている。迷いの無い動きからは自分達への信頼にも似たなにかを感じた…そこまでの事をした覚えは無いのに。自分達に、いや自分にそこまでの価値があるのか、それに応えられるだろうかと僅かに手が震える。

 

 自らの手を強く握り、深呼吸。そして、分かりましたと頷いてからしっかりと前を見る。

 

「RABBIT2、私が前に出ますので、援護を。但し護衛対象の安全を第一に」

「了解、無茶はするなよ」

「RABBIT3、現在地から目的地までの最短ルートと安全性の高いルートの二種をピックアップをお願いします」

【りょうかーい】

「RABBIT4、貴女はアンジャナフの監視をお願いします。なにかあったら随時報告を、私たちへの援護は最低限で大丈夫です」

【ら、RABBIT4、了解しました】

「サオリさん、アンジャナフがこちらに向かってくる動きが確認されない限りは貴女の準備が出来次第行動を開始します。よろしいですか?」

「あぁ、構わない」

 

 それではと手を挙げて、ふと何故か脳裏に浮かぶ胡散臭い笑みを浮かべたピンク髪の少女。どんな時でも自信に満ち溢れている彼女だったらこう言う時どんな発言をするだろうかと考えてしまい…微妙に、変な事言いそうだなと思ってしまい手から力が抜けた。

 

「ど、どうした急に?」

「いえ、なんと言いますか…まぁ問題はありませんので大丈夫です」

 

 それではと気を取り直して。

 

 

「欠片も楽しくないランニングと洒落込みましょうか」

 

 言ってから、らしくなかったかなと…思わず笑ってしまった。

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