アビドス砂漠で狩りに生きる。   作:春山乃都

65 / 111
第65話

 巨大な龍の骸を囲うように広がる樹海、その下には幾つもの洞窟が木々に隠される様に存在している。

 

 それらは時の流れによって自然に形成された物と、巨大な何かが掘り進めたかの様に思える物が絡み合いどこまでも深く複雑に広がっていて、ある場所は水に満ちた地底湖とそこに繋がる川に、またある場所は焼け付く様な熱風が吹き上がる地の底へと続く縦穴になっている。

 

 そんな、地下空間の一角。小部屋と表現すべき空間で少女達は自慢のヘルメットに装着したライトを頼りに掘り起こした鉱石の選別を行っていた。

 

「あーっと、これは鉄鉱石、鉄鉱石、石ころ、お守り、鉄鉱石、石ころ、鉄鉱石…がくっついてるマカライトだこれ。変なの」

「やっぱり鉄鉱石多いわねぇー…普段なら嬉しいんだけど今は別のが欲しいのよねー」

「だね。あれ、これなんだっけ? マカライトじゃないけど」

「ちょい見して…あー、これあれだね。先日見つかったばっかりの新鉱石。なんだっけな…確か『ドラグライト』って名付けられてた筈」

「成程、新しいのならこれは持ち帰った方が良いのかな?」

「優先度は高い方なんじゃないか? まぁ、行けるなら程度だろうけど」

「ほいさぁー」

 

 これあれそれと手慣れた様子でポイポイと仕分けていくヘルメット団の四人。を、少し離れた所から眺めているスケバン達三人。そのうちの一人のアケミは周囲の警戒をしながら驚きの声をこぼす。

 

「なんと言うか、凄いですわね。あぁも手早く、どうやって見分けているのか。さっぱりですわ」

「本当に、まじでどこ見て判断してるんでしょうねあれ?」

「と言う訳でどうやってるのか教えてくれ」

「どういう訳で?」

 

 と、若干困惑しながら雑に石ころを纏めて山にしながらふむと考えて。

 

「慣れ、だな」

「…慣れ」

「うん、慣れ。な?」

「だね」

「そうとしか言えないわね」

「そう言うもんなのか」

「そう言うものだよ。そう、まるで米を炊く際にお茶漬けにぴったりな固さの米が炊けるタイミングが分かる様な」

「何を言ってますの彼女は?」

「すまん、それはあたしも分からん」

 

 むしろこっちが聞きたい位だと最近小規模とは言えまじで米作りを始めた友人を横目で見ながら思う。と、そんな会話をしている間にも仕分けが終わる。

 

「意外とドラグライトとか言う鉱石は数取れたね」

「だな。まぁ肝心の龍石炭は取れなかったけどな」

「どういたします? もう少しここで採掘しますの?」

「んー、いや流石に結構掘ったけど出なかったこれ以上はここで掘っても意味無さそうだし別の場所に移動しようかと思ってる。と言うかこれ以上掘ると崩れそうだし環境に悪い」

「成程、では移動いたしましょうか」

「じゃあ私はちょっと先に行って問題ないか見てきますね姉様!」

「えぇ分かりましたわ。無理はしない様に」

 

 分かりましたと言って駆けていくスケバンを見送ってからヘルメット団の四人は各々無理の無い範囲で鉱石を専用の鞄に詰め込んで背負う。

 

「うっし、マカライトはこんなもんで良いだろ」

「前も思いましたがドローンで運びませんのね」

「楽だけどおっそいだろドローン輸送は。自然公園以上に何があるか未知数なここでは使いたくないんだよ」

「ふむ、道理ですわね」

「守る対象が増えるのもよろしくないよねぇっと、ドラグライトどうする? 私は龍石炭掘れたら運ばなきゃだから頼みたいんだけど」

「あ、ドラグライトはこっちが持つわね」

「うーい。それじゃあ鉄鉱石はー…まぁ、もとより全部は無理そうな数だから端にでも寄せとこ。場所マーキングしとけば誰かしら取りに来るでしょ。残ってればだけど」

「私も持とうか?」

「良いよ別に。私たちは採掘と運搬をして貴女達は荒事をこなす。そう言う話だったでしょう? 変に荷物増やして動き鈍くなったらダメでしょ」

「でもぶっちゃけ暇なんだよ」

「荒事担当が暇なのは良いことじゃない」

「そうですわよ。それに、すべき事をしっかりこなしてから暇と言いなさいな」

「う、うっす分かりました姉様」

 

 全員が鞄を背負い、それぞれで位置の調整や動きを阻害されていないか確認していると先ほど様子を確かめに行ったスケバンが同じように駆けながら近寄ってきた。

 

「たぶん問題無しです姐様」

「たぶんて」

「いえ、断言はもとより不可能でしょうから仕方がありませんわ。ご苦労様でしたわね」

「はい! ありがとうございます!」

「それじゃあ」

「あたしらも大丈夫だぞ」

「分かりましたわ。移動を開始しましょう。前は私が」

「じゃあ後ろは任せてください。すぐ知らせるんで」

「お願いしますわね」

 

 小部屋から出て、水滴が落ちる音と鉱石擦れるが響く洞窟をゆっくりと進む少女達。生物の襲撃や崩落、そして単純に足元に気を付けながらそう言えばとアケミは問いかける。

 

「そう言えば以前の龍石炭はどこで採掘されたので?」

「もうちょい奥。ちょっとあれだから出来れば浅い位置で掘れたらと思ってたんだけど」

「あれ、とは?」

 

 軽くライトのレンズを拭きながら答える。

 

「この前、龍石炭が掘れた場所の周辺を縄張りにしてる大型生物が見つかったんだよ」

「それは確かに出来れば避けたいですわね」

「作業してりゃ嫌でも気付かれるだろうからな。洞窟だし」

「と言うことは私たちの出番ですわね。なにか情報はありませんの?」

「そこまで詳しくは、今の所分かってるのは精々見た目位だな」

 

 これとスマホを弄り写し出された写真を見せる。と、アケミと一緒に覗き込みに来たスケバンが一言。

 

「これは、たぶんオオキバツキカエルモドキって名前ですよ姉様!」

「見た目はそんな感じですがたぶん違うと思いますわよ」

「あぁ『テツカブラ』って名付けられたから違うな」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。