アビドス砂漠で狩りに生きる。   作:春山乃都

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第66話

 薄暗い洞窟を進む事数十分。生徒達はそれぞれ壁際に立つ岩の影に隠れながら覗き込むのは目的地である所々に水溜まりの見られる広場。

 

「…なにも居ませんわね」

「だな」

 

 どういう原理か分からないが淡く光を放っているキノコや苔のお陰でライトがなくても辺りが見辛い程度で済んでいるその広場にアケミを先頭に足を踏み入れて改めて見渡す。

 

 やはり警戒していたテツカブラの存在は無く、見られる生物は精々鉱石らしき物を背中に張り付けている蜥蜴の様な生物くらいだ。

 

「まぁ何処に居るのかは気になるが、居ないならその方が良いか。ここに来る前にさっさと掘るぞ」

 

 別に選別はその場でする必要もないしと、広場の端を指差す。恐らく採掘地点なのだろうそこを見てアケミは頷いた。

 

「えぇ、分かりましたわ。警戒は怠りませんが、出来る限り手早くお願いしますわね」

「言われるまでもないな。あたしらの日々鍛えてきた採掘技術の本気見せてやるよ」

「まぁ音が響くから十中八九気付かれるから近づいてきてるの察知したら教えてね。取り敢えず掘ったの放棄して逃げるから」

「分かった。それじゃあ私は見つけやすいように高いところ…は無いから壁を登って監視しておきますね姉様!」

「普通に危ないからお止めなさいな」

「分かりました!」

「あ、そうだ。さっきは嗚呼言ったけど今度は運ぶの手伝って」

「あいよ、まぁ臨機応変にって奴だ気にするな」

「ありがと。それじゃあ」

 

 ヘルメット団はドローンから取り出したピッケルを肩に担ぎながら向かう、いざ採掘開始。

 

 

 

「待った」

 

 

 

 と、いった瞬間にヘルメット団の内の一人がそう呟き止める。

 

「どうした?」

「音が聞こえる」

 

 意味があるのか分からないがヘルメット越しに耳元に手を当てならそう言う。その言葉にその場に居る全員が耳を澄ます…が、聞こえない。

 

「…本当に聞こえるのか?」

「うん、はっきりと。それこそ炊いてる途中に響くお米の合唱より遥かに騒がしいよこれ」

「そうか」

 

 お米の合唱ってなんだよ、と言う疑問を飲み込んで生徒達は視線を交わし周囲を警戒する。気のせいと切って捨てた結果酷い事になったら目も当てられないからこそ、確りと確認するのだ。

 

 だから、気がつく。

 

「…確かに聞こえる」

 

 微かにだが耳に届くゴリゴリとなにかが削られる音。同時に感じる僅かな振動。それらが、徐々に自分達の居る広場へと近づいて来ている。

 

 例のテツカブラが向かってきている可能性が高いと、スケバン達が視線を広場に繋がる道に向ける。

 

「取り敢えず、一回隠れよう。やり過ごせるかもしれないし」

 

 その言葉に頷いて、広場から出て再び壁際にある岩の影に隠れる。

 

 それから暫くして姿を表したのは巨大な牙と朱色の甲殻が特徴的な大型生物テツカブラ。その厳めしい顔面は動かし周囲を見回しながら体を揺らし乗っている岩の欠片を落としている。

 

「…こうしてみるとでかいなあいつ」

「ですわね」

 

 気付かれない様に小声で会話しながらテツカブラを見る。軽く、地面を嗅ぐような仕草をしている。臭いでバレたかと何時でも飛び出せるように身構える、とその時だ。

 

 凄まじい勢いで穴を掘り始めた。

 

「…あれは、何をしてますの?」

「いや分からん。餌でも探してるとか?」

 

 突然の行動に困惑する。発見されて間もない事もあってその行動の意味が分からない。言う通り、餌を探しているようにも見えるが、と自分達の元に響いてくる振動を感じならがら思っているといきなりヘルメット団の一人があっと声を溢し上を見た。

 

「あ、ちょ、これやばい!」

「なにってそう言うことか!? やべぇ逃げろ!」

「何を言って―――」

 

 いるのかと問いかけるより前にアケミたちの目の前に答えが落ちてきた。

 

 

 それは、岩だった。

 

 

 反射的に見上げれば、テツカブラが引き起こしている振動に揺られ壁から天井にかけて落ち罅が走っておりパラパラと破片が溢れ落ちてきている、今にも崩れてきそう…というか、今まさに崩れてきている。

 

「こ、れは!?」

「う、おぉおああああ!? 姐様やばいですってこれ!?」

「だから逃げろって言ってるんだよ壁際から離れろ!」

 

 言われるがままに飛び出した直後に壁の一部が崩れ岩が落ちてくる。それを避け、或いは直撃しかねない物を片腕で振り払いなんとか無傷で凌ぐ。そして暫くすると不意に振動が止まり、更に間を置いて崩落が止まる。

 

「…止まった? 皆さん、怪我は?」

「取り敢えず大丈夫!」

「同じく」

 

 と、無事を確認してから急ぎ視線をテツカブラへと向ける。これだけ派手に叫びながら動いたのだからバレていることだろうと思っていたら、テツカブラはこちらを見ておらずただ僅かに口を開けながら先程まで勢い良く掘っていた穴を埋めている崩れてきた岩を見つめている。音を付けるならポカーンっと言った感じで、何が起こったのか理解出来ていない様子。

 

 かと思えば、別の場所に移動すると先程まで以上の勢いで再び穴を掘り始めた。

 

「まだ掘るのかよ!? いや本当にこれはやばいって! 下手するとここら辺の天井が全部崩れ落ちてくるぞおい!」

「洒落になりませんわね、それは!」

「あぁ、と言うわけで頼む!」

「えぇお任せを…!」

 

 スケバンたちは視線を交わし拳を握り鳴らしながら広場に踏みいる。

 

「別に恨みはありませんが、狩らせていただきますわ」

 

 言いながら、アケミが背から取り出し構えるのは遥か昔から存在する狩猟具。

 

 

 

 

 それ即ち巨大な…『弓』である。

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