アビドス砂漠で狩りに生きる。   作:春山乃都

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・何時かの出来事、ブラックマーケットにて。

「こ、これは間違いありません! 幻のシルバーペロロさまトロフィー! 実在していたなんて!」

「値段、お金は…足りる! けど」

「会員登録が必要だなんて。流石に、それは――…っ」

 数分後。

「えー…確認致しますが、本当に?」
「はい間違いありません!」

「ブラックマーケット在住のファウストは私です!」

「なのでペロロ様をください!」
「えぇ、いやでも、えぇ?」


第7話

 悪い大人に不良生徒、望んで来たのか望まず来たのかに関わらず、日陰に住む者達の集う場所こそ悪名高き『ブラックマーケット』。多くの自治区が介入することすら控えている暗黒街、故に正確な情報が入手し難い。今の状況を考えればもっとも多くの不良達が活動しているだろうそこの情報をアビドスの生徒達はなんとしても手に入れたかった。

 

 最初は、アビドスで活動してるヘルメット団やスケバンに駄目元で訪ねては見た。のだが思いの外素直に答えてくれた彼女達から得られた情報は知らないと言うものだった。なんでもアビドスを拠点としてからはブラックマーケットでの活動をしておらず、少し前の事ならば兎も角直近の情報は全く無いと言われてしまったのだ。不良がアビドスと言う特殊な環境に適応してしまったゆえの弊害であった。

 

 故に白羽の矢が立てられたのが彼女である。ブラックマーケットに突如として現れた今もっとも暗黒街の頂点に近いと噂の生粋のアウトローたる『ファウスト』に!

 

「違いますからね!?」

 

 と、悲鳴のように言うのは件のファウストこと、ヒフミであった。

 

 流石に頂点云々は冗談であるが彼女がブラックマーケットについて詳しいことは間違いない。そうでなければなんの迷いもなく先生とホシノを連れて堂々とブラックマーケットを練り歩くなんて事はしないだろう。

 

「でも本当にごめんね急に。今日の予定もあっただろうに」

「あ、いえそれは大丈夫です。元々今日はここに来る予定だったので」

「お、おぉそっか…そっかぁ」

 

 因みに、ヒフミに関する情報を提供してくれたのはゲヘナの風紀委員だったりする。最近ブラックマーケットに入り浸っているファウストと名乗っている生徒だとの事だから、一応注意するようにと言われていたらしい。

 

 そう言えばと先生、どんな用事があったのかと問いかければヒフミは満面の笑みを浮かべた。

 

「あ、はいそれはですね。貴重なペロロ様グッズが見つかったと聞いたのでそれを手に入れたいなって!」

 

 これですと元気良く見せられたスマホに写し出されているのは今のキヴォトスで大人気な『モモフレンズ』のキャラクターの一つである『ペロロ』と言う、多分、恐らく鳥をモチーフにしているのだろうそれの口にチョコミントアイスが突っ込まれているぬいぐるみだった。手に入ると良いねと先生、必ず手に入れますと力強い返しをするヒフミ。

 

 と、言ったところであっと声を溢し立ち止まったヒフミはここですと建物を指差した。

 

「ここなら色々と分かると思いますよ!」

 

 そう言って店の中へ、入る前になぜか鞄から取り出した穴の空いた紙袋を被ってから入店するヒフミ。突然の行動にもしかして顔を隠さなければ行けないのかと一瞬思った二人だが、すぐにヒフミに呼ばれ続くように店の中へ。

 

 するとすぐにスーツ姿のロボット市民が笑顔で出迎える。

 

「いらっしゃいませ。本日はっと、ファウスト様でしたか。と言うことは目当ての商品はいつものモモフレンズ関連商品でございますね」

「はい! それとこの二人の為に商品リストを見せてほしいのですが」

「ほぉ、ファウストさまの…ふむ」

 

 言われて先生とホシノに視線を向け、少し観察するように眺めてからにこりと微笑んだ。

 

「かしこまりました。それではモモフレンズ関連商品をご用意いたしますので少々お待ちください。それと商品リストはこちらになります。なにかご質問等がございましたら何時でもお呼びください」

 

 そう言ってタブレットを手渡し、それではと奥へと向かうロボット市民を見送ってからタブレットを見る。

 

「うへぇ、色々売ってる…すごい高いけど」

 

 ホシノの言葉の通り、様々な商品がしかし高額で売られていた。パッと見て医療用品が特に充実しており、日用品から娯楽品まで揃っている。値段さえ気にしなければ大抵のものは揃いそうだと先生は思っていると唐突にホシノの視線が鋭くなる。

 

「なんでこれが」

 

 ホシノが反応しただろう商品を見る。名前は、『ディアブロスの角』と言うものらしい。ディアブロスってなんだろうかと疑問に思っているとホシノが答えた。

 

「ディアブロスはアビドス砂漠の新生態系の中でも最上位に位置する生物の名前です。はっきり言って出現数も少ないですし、素材も貴重なのでしっかり管理されているんです。ですからブラックマーケットで売りになんて出されてる筈無いんですが」

「あ、聞いたことあります。たしか何ヵ月か前に持ち込まれた物らしくて、貴重ではあるからと買い取ったは良いけど売れなくて困ってるとか」

「まぁ、だろうね…何ヵ月前、か。アビドス校舎が吹っ飛んだ時の混乱に乗じての密漁かな。調べる事が増えちゃったな」

 

 困ったとため息を溢しながらとりあえず今は後だと改めて商品リストに目を通す。そして、目当ての商品の名前は無いことが確認できた。

 

「おかしいですね」

 

 そうヒフミが溢す。

 

「いえ、薬草がブラックマーケットで広がってたとするならここも関わっていると思っていたのですが」

「我々はアビドス産の薬草の件とは関わりはありませんよ」

 

 と、声がする。視線を向ければ奥から戻ってきたロボット市民が、人と同じくらいの大きさのペロロのぬいぐるみを台車に乗せて押しながら近づいてくる。

 

 ヒフミが霞んで見える程の速度でペロロのぬいぐるみに突撃し抱きつくのを見ながら続ける。

 

「リストをご覧になられたならばお分かりになられるかと思いますが、我々の主力商品は確かな安全性の担保されている医療用品でして。高額ではあるが質は確かと言うのを売りにしているのです。ですので、えぇはい。今回の件は非常に不快なんですよ。分かっている範囲でもブラックマーケット内の不良に無差別に薬草がばらまかれているようでして。品の無い言い方をしますと我々は今、喧嘩を売られていると言う状態なのですよ。小鳥遊ホシノ様、そしてシャーレの先生」

「…まぁ、流石に分かるよね」

「えぇ、お二人とも有名ですからね」

 

 まぁそう言うわけですからと名刺を取り出し二人に差し出しながら圧を感じる笑みを浮かべるロボット市民。

 

「ぜひ此度の件の情報、あるいは直接的な黒幕が判明したならばご連絡ください。喜んでご協力致しますので」

 

 押し付けるように名刺を渡してきたロボット市民はそれではと立ち去っていく。と入れ替わるように巨大ペロロのぬいぐるみを抱えた状態のヒフミが近づいてくる。

 

「えっと、すみませんでした。もっと色々な事が分かると思っていたんですが」

「あぁいいよ謝らなくても。知りたい事で分かったことは少なかったのは確かだけど知るべき事は寧ろ多く知れたから」

「そう、ですか」

 

 言いながらもやはり何処か申し訳なさそうなヒフミに、気にしなくて良いのにとホシノが思っていると、スマホが鳴り響く。ホシノのスマホだ。ちょっとごめんねと断りを入れてから電話に出る。

 

「はい、もしもし。なにかあ」

【ホシノ先輩今すぐ戻ってきてください!】

 

 荒く、焦りに満ちた声がスマホから溢れるほどの大きさで響く。尋常ではない様子に、何があったのかと問いかける前に答えが届く。

 

 

 

【アビドス市街地に『アルセルタス』の群れと『ゲネル・セルタス』が向かってきているんです!】

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