アビドス砂漠で狩りに生きる。   作:春山乃都

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第74話

 アビドス砂漠竜墓調査拠点。ほぼ毎日傍らに聳える砂嵐の壁が遠く、久しぶりの遮る物の無い青空の下でトリニティの少女はふっと一息吐いた。

 

「その後もまぁ…なんやかんやあって今に至るわけです」

「な、なんやかんや…」

「えぇ、なんやかんやです。落下した衝撃で船底が割れたかと思ったら脱皮するようにただの漁船が出てきたり何時の間にか迷い込んでいた地下水脈で良く分からない『足と翼の生えた魚』に追い回されたり壊れたエンジンを改造しようと暴走するのを止めたり…まぁなんやかんやですわ」

「なんやかんやの中身が濃い」

 

 暴走はまぁ何時もの事にしても船の脱皮とか怪生物とか気になる所が多すぎる。が、取り合えず置いといて。ふむとホシノたちは少し考える。

 

「異質なディアブロスも気になりますけど…最後に見たって言う機械の蛇も気になりますね」

「そう、ですわね。あれ結局なんだったのでしょう?」

「んー、もしかして例のやつ?」

「はい? 例の?」

「ヒマリ先輩の言っていた古代兵器だと思いますよ」

「うわビックリしたぁ?!」

 

 ボソリと呟かれたホシノの言葉に、メガネを拭きながらニュッと横から顔を出すミレニアム生。突然の登場に気がついていたホシノ以外の二人は驚いていたが気にすること無くメガネをかけスマホを取り出しながら言う。

 

「全く姿が見られないとは思っていましたがまさかアビドス自治区近辺まで移動していたんですね…それにしてはヒマリ先輩からの連絡がないのが気になる所ではありますけど」

「近くに居るだけで活動していないから観測されてないとかですかね?」

「流石に自然公園近辺まで移動すれば観測出来る筈なんですがね…あぁいやでもどうだろ。アビドス砂漠で確認されてる謎エネルギーが阻害してっていう可能性もあり得るか」

「成程…え、あ、な、謎エネルギー? なんですかそれ?」

「良く分かってないから謎エネルギーって呼ばれてるんですよ」

 

 なんて会話をしているとトリニティの少女がなにかを考えるように首を傾げ、直後にサッと顔を青くしながらスマホを取り出した。

 

「そうだ連絡! 連絡し忘れてましたわ! ちゃんと無事だと伝えないと…あぁ待って良く考えたら無断欠席した事になるわけで、それにテストに間に合うかって充電がないぃ!? ど、どどど、どうすれば!?」

「いや充電すれば」

「それですわ! ど、何処で充電出来ますの!?」

 

 かなり焦った様子の少女にあっちと椅子やらテーブルが並べられている共同休憩スペースを指差せばありがとうございます! と言って駆けていく。バタバタと走っていく後ろ姿にボソリと呟く。

 

「そもそも行方不明扱いされてる可能性の方が高いからそれ所じゃないと思うけど…あ、そう言えば自治区の方にあの人たちがここに居るって事はもう伝えた?」

「えぇはい。拠点到着した時点でメッセージを送っておきましたよ。ほらこ…あれ?」

「ん? どうかしたの?」

「いやなんか…既読が着いて無いんですよね」

 

 あれー? と首を傾げるのを見て、ちょっと貸してと言いながらスマホを受け取りメッセージアプリを見るホシノ。言っていた通り、大体三時間前に書き込まれたそれに対しての反応が一切無い。珍しい…と言うよりかはなにかが可笑しい。

 

「…取り合えず、電話してみます」

「じゃあ私も報告がてらヒマリ先輩に電話してみますかね」

「あ、お願いします…一応、私も」

 

 言いながらホシノはスマホを取り出し、梔子ユメへと電話をかける。

 

 

 電話が、繋がらない。

 

 

「ホ、ホシノ先輩これ」

「…やっぱりなにか可笑しい」

 

「んー、あ、私は繋がりましたね。あ、どうも先輩、こんにちは、え? えぇ、まぁ相変わらず元気ですけど…はい、はい…は? え、待ってくださいよ流石にその冗談は笑えませんよ」

 

 そう会話をしながらどんどんと顔を青くしていく少女にどうかしたのかと問いかけようとした瞬間、なにかが倒れる音。驚き視線を向けると倒れた椅子と充電中のスマホを片手にへたり込んでいるトリニティの少女の姿があった。

 

「ちょ、大丈夫ですか!?」

 

 心配しながら駆け寄る。怪我はないかと覗き込めば、ただただ信じられないと目を剥き嘘だと呟いていた。どうしたのかと失礼承知でスマホを取り上げ映し出されていたメッセージアプリを覗き込む。

 

「…は?」

 

 そこに、書かれていたのは…

 

 

 

 

 

 それは、雲一つに青空が広がり痛い程強い日差しが降り注ぐ昼下がりの出来事。

 

 連邦調査部シャーレの執務室では何気なくつけられているテレビから流れるニュースの読み上げられる声を聞きながら、今日も今日とて聳え立つ尋常ではない量の書類の山との真剣勝負に行われていた。

 

 のだが、ガタンと急に先生が立ち上がった衝撃で書類の山は大きく揺らぎ崩れ少なくない枚数が宙を舞った。

 

「うわぁ!? ちょ、先生何をしているんですか!?」

 

 手伝いに来てくれていた生徒が一人、書類の雪崩に巻き込まれかけて驚きながら飛び退き思わず強めに先生に詰め寄る。積もりだったが、止まる。見えた横顔、何時も優しい微笑みを生徒たちに向けている先生の表情が酷く険しく、そしてタブレットを見ながら青ざめていた。

 

 どうかしたのかと問いかけようとした次の瞬間。一言ごめんとだけ溢して先生はタブレット片手にコートを掴み取り慌てた様子で執務室を出ていってしまった。

 

「ちょ、ちょっと先生何処に行くんですか!?」

 

 そう声をかけるが反応はなく、ポツンと乗り残された生徒は書類を片付けるべきかそれとも追い掛けて護衛として着いて行くべきか一瞬迷って、すぐに愛銃を手に取り先生の事を追い掛ける。

 

 

 誰も居なくなったシャーレの執務室。そこでは二人共、気にする余裕が無かった故につけっぱなしのテレビからは只ニュースを読み上げる声が響き…それが唐突に怒号によってかき消され、そこからは混沌が映し出されていた。

 

 

 

【れ本当なの!? は、はい。アビドス自治区に砂漠から侵入した大型の野生動物が暴れて、し、死傷者も多数確認されていると。 嘘でしょ!? なんでこんな…待って今日アビドスに取材に行ってる筈じゃ!? 確認を、早く! なんで無視するのよ既読位着けてよ反応してよお願いだから!! 落ち着】

 

 やがてカメラが倒れ、レンズの割れる音と共にブツリッと映像が途切れ…雑音だけが流れ続ける。

 

 

 

 

 

 音が、響く。

 

 青春の物語が…崩れていく音が。

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