アビドス砂漠で狩りに生きる。   作:春山乃都

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明けましておめでとうございます。


第81話

 『FOX小隊』

 

 連邦生徒会長の名の元に優れた生徒が集うSRT特殊学園の中でも特に優秀と名高い四人。

 

 多くの悪を打ち砕き、破壊を振り撒き猛威を振るっていた『厄災の狐』さえも捕らえて見せた力量は間違いなく一級のそれ。

 

 アビドスでの活動を主にしている訳ではないので大型生物の討伐数こそ少ないが、過去にヤオザミの大量発生の原因とされた2頭のダイミョウザザミの連続狩猟を被害と消耗を最低限に抑えた上で成し遂げていたりと狩人としての腕も折り紙尽き。その実力は特異な環境であるアビドス砂漠での狩りでも遺憾無く発揮していると言えるだろう。

 

 そんなチームとしての実力ならばキヴォトスでも上から数えた方が早いと言える彼女たちは今。

 

 

 

 死地に居た。

 

 

 

「ギィイイイイアアアアアアアアアアッ!!」

 

 FOX小隊が隊長、『七度ユキノ』の視線の先で暴虐の化身が嵐となって荒れ狂っている。火を吐いている訳ではない、毒を撒き散らしている訳でもない。ただ純粋な暴力が全てを薙ぎ払っている。

 

 巨体ゆえに狙わずとも当たると銃弾をばら蒔いていると、振り回される尾が産み出す突風をもろに受け体勢が崩されて。

 

「おぉごぼへぁ!?」

 

 聞こえた叫び声にディアブロスの意識が向けられた隙に素早く立て直しながら合図を送り、ディアブロスの視界から外れる様に動く。と、入れ替わるように仲間である『クルミ』が前に出て注意を引きながら走る。それを見届けるとふっと息を整える。

 

 彼女たちの目的はディアブロスをアビドス自治区郊外への誘導する事。言葉にすればそれだけだが、今までこなしてきたどんな任務よりも厳しいものだった。なにせ相手が自分達よりも速く、銃弾が通らない程に頑強。

 

 

 そして、何よりも今まで相手にしてきた犯罪者たちと違って自分達を本気で殺しに来ている。

 

 

 注意を引かなければ被害が広がり、だが注意を引き過ぎれば…死ぬ。

 

「んぎゃああー!?」

 

 今まで幾度と経験してきた筈の一瞬一度の過ちも許されぬ状況に、だが精神が悲鳴を上げる。こんな事になるならもっと不知火カヤが言っていたように積極に狩りに赴くべきだったかと思いながらも、緊張を途切れない程度に気を抜き視線を走らせて、視界の端で自動車が宙を舞っているのが見えた。

 

「く、車がぁああああああ!?」

 

 それはチームメンバーの『ニコ』とRABBIT小隊の風倉モエが遠隔操作している自動車だ。ディアブロスが異様に車両に対して敵意を向ける事を利用して誘導用に活用しているのだが…想定より消耗が激しく、近場に利用できる車両が無くなってしまった。

 

 それでも、確実にディアブロスを郊外へと向かわせる事が出来ている。

 

 それを成し得ているのは自分達の実力の高さ故、とは言えなかった。相手の脅威度を考えれば自分達だけであったのなら既に半数は脱落していただろう。それほどまでに、あのディアブロスは危険なのだ。それでも現状、自分達が誰も脱落すること無く上手く言っているのはキヴォトスでも最上位に位置する程の実力者である剣先ツルギが居て。

 

 

「ああああああああああああああああああ待って待って待って死ぬゥうううううう!?」

 

 

 キヴォトスでもトップクラスの囮適正を持つ不知火カヤが前線に居るからである。

 

「ユキノ先輩!」

「あぁ、ありがとう」

 

 目的のポイントで補給物資を用意して待機していた月雪ミヤコから弾薬や回復薬を受け取りながら見る。

 

 そこには暴れるディアブロスの目の前で叫び声を上げながら転げ回るカヤの姿がそこにあった。響く叫び声を鬱陶しく思われているのか幾度と無くディアブロスに狙われ攻撃されている。

 

「おぎゃああああ!?」

 

 振り回された尾を全力で転がり範囲外へと逃れ、振り下ろされた頭突きを風圧に吹き飛ばされながらも転げて避け、繰り出された突進を形振り構わない本気のダイブで回避する。

 

 どれもこれもギリギリで、だがそれでも回避して見せている。普通、出来る事ではない。

 

 流石はかつて、ぶちギレたアビドス高校最高戦力の小鳥遊ホシノから3時間も逃げ回り、彼女から逃走能力と回避能力、あと鬱陶しさはキヴォトスでもトップクラスとうんざりとした表情を浮かべながら言われていただけの事はある。

 

 実際、駆け回り銃弾を撃ち込んでいるツルギよりも狙われる頻度が上なので相当鬱陶しいのだろう。叫び声とか。

 

「あばばばば!?」

 

 とはいえ、それが何時までも続けられる訳では無く何時かは限界が来る。その前に、どこかで一度下がって貰うために隙を作らなければと意識を向けていると、クルミから交代の合図。息を乱しながら転がり込んで来たクルミと入れ替わる様に、再びディアブロスの前へと飛び出す。

 

 だが、動きが止まる。

 

 あれだけ荒れ狂っていたディアブロスの動きが止まった。正確には、頭を振り視線を巡らせている。まるでなにかを探しているように。なんだと、カヤもツルギも動きが止まる。

 

「隙ありぃー!」

 

 訂正、不知火カヤだけは迷い無く銃弾を撃ち込んだ。が、明後日の方向に銃弾が飛んでいきディアブロスは全く気にした様子がない。割りとがっつり落ち込むカヤを置き去りにし、変化が起こる。

 

 

 

 地面が、揺れる。

 

 

 

「こ、れは!?」

 

 反射的に姿勢を低くし耐える。隙を晒す行動、しかしディアブロスは低く唸る、なにかに威嚇する様に。

 

 通信機からノイズが走り、アビドス中に警報が響き渡る。何故、今さら警報がと思うがそれはアビドス高校が関係するものではなく。ある少女が、ミレニアムが全知の称号を持つ生徒が『とある存在』が観測された際に危機を知らせる為にアビドスに報告、連絡、相談をせずに勝手に設置した物。

 

 揺れが強まり、地面を突き破りなにかが姿を表す。

 

 

 

 それは古の機械。

 

 それは超常存在。

 

 それは『デカグラマトンの予言者』

 

 

 違いを痛感する静観の理解者。即ち、『ビナー』…顕現。




『不知火カヤ伝説』

・ぶちギレたホシノから三時間逃げ続けた、そして調子に乗って煽っていたら空き缶を踏んで転んだ。直後に確保され吊るされる。

・鬼ごっこでは小さな頃から負け無し、と語っているが最終的に調子に乗って失敗するので勝ったことは一度もない。

・空崎ヒナに相手にすると面倒くさいと言われ、どや顔を浮かべる。そういう所だぞ。

・訓練としてFOX小隊相手に模擬戦を行った際には四人相手に逃げきっている。が、防衛室長としてこれくらい余裕と威張りながら走っていたら電柱に衝突し気絶。彼女たちになんとも言えない表情を浮かばさせた。


・ディアブロスの連撃を避けきる、なお攻撃は外れた(New)
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