アビドス砂漠で狩りに生きる。   作:春山乃都

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第82話

 突然の乱入者たる巨大な鋼の蛇。それが『ビナー』と呼ばれる存在であることを知らぬ少女たちは、しかしそれが味方ではないと言う事だけは理解した。

 

 なにせ、それが発射した無数のミサイルが辺りを吹き飛ばしているから。

 

「ちょ、ばあぁああああ!?」

 

 真っ先に悲鳴を上げ走り始めるカヤ。それから一瞬遅れてツルギが駆け出し、あっというまにカヤに追い付き彼女を抱え一気に距離を取り、見る。

 

 降り注ぐミサイルを受けながらも猛進するディアブロスの姿を。

 

「ルォォアアアアアアアア!」

 

 咆哮を轟かせビナーへと突進を繰り出す。

 

 速く、そして鋭いその一撃を巨体ゆえに避けきる事が出来ず直撃し、角がビナーの鋼の躯へとめり込み、建物を巻き込みながら倒れる。そこに追撃と強引に角を引き抜き頭突きを叩き込まんとするディアブロスに顔を持ち上げディアブロスへと向けると口を開き。

 

 光が瞬き迸る。

 

「オォァアアアア!?」

 

 光の奔流がディアブロスに突き刺さり苦痛の声を上げさせる。しかし、それでもなお止まること無く長大な体を足場に一気に前へと駆け、光を迸らせている顔面へと頭突きを叩き込み、かち上げる。

 

 光は宙を薙ぎギシギシと鋼が軋み、ブチブチと何かが千切れる音が響く。だが、ビナーもお返しだと体をうねらせ思いきりディアブロスへと叩きつける。圧倒的質量を持つその一撃がディアブロスを吹き飛ばす。

 

 転げながらも起き上がろうとするディアブロスへとビナーは起き上がりながらミサイルを打ち続け、再び口内に光を迸らせながら近づく。

 

「ゴォアアアアアアアア!」

 

 そこに、降り注ぐミサイルを全て無視して飛び出してきたディアブロスの振り下ろした尾が頭部へと直撃し、地面へと叩きつけられ迸る光が口内で炸裂し鋼の一部が融解し弾け飛ぶ。

 

 起き上がろうとするビナーへと、追撃が叩き込まれる。悶えるように体をうねらせ、ミサイルをこれまで以上に打ち出しディアブロスへと叩き込む、だがそれでも止まらずさらに角を叩きつけビナーから軋み、弾け、歪む音が響き。

 

 

 そこに、スコンッと一発の弾丸が音を立ててディアブロスへ突き刺さり…直後に炸裂した。

 

「ちゃんと落ち着いて撃てば当たるんですよぉ!」

 

 そう叫ぶのは土埃で汚れきった不知火カヤ。彼女の撃った徹甲弾の一撃はビナーのミサイルや光の一撃で消耗した甲殻を弾けさせ血を滴らせる。ビナーとて明確なキヴォトスの脅威であると理解しながらも彼女は寧ろ協力するようにディアブロスへと攻撃を加えた。理由は単純で、ディアブロスの方が危険だと判断したから。ビナーからは感じ取れない、強い殺意をディアブロスが抱いている故に。

 

 敵意を込められた視線と共に顔をカヤへと向けられる。武器を構える彼女を確りと視界に納めた…その直後に、全力で駆けたツルギの蹴りが叩き込まれ。

 

「土産だ」

 

 僅かに滞空しながら体勢を整えたツルギはそう言いながら軽く眼前に放るのは閃光弾。ビナーの放った光とは違う瞬きが視界を焼きディアブロスの動きを縛り、発射口が歪んでしまったのかミサイルを撃てなくなったビナーは起き上がるとそのまま頭突きを叩き込み吹き飛ばす。

 

「撃てぇええええええ!」

 

 号令と共に体勢を崩したディアブロスへと一斉射撃を叩き込むのは駆けつけた生徒たち。あのバカデカイ機械はなんなのかとか、そう言った疑問は全て脇に追いやりただただ全身全霊を込めて引き金を引き爆弾を投げ込み続ける。

 

 だが、しかし動きを止めるには至らず。ディアブロスが起き上がる。血を流しながらこれまで以上の、敵意と殺意を漲らせ地を揺らし力を込めて一歩前に。

 

 

「今だ」

「了解、リーダー」

 

 

 炸裂音が響く。それがなんであるのか理解するよりも前に、ディアブロスの足元の地面が吹き飛び陥没する。

 

「ルゥオオオオ!?」

 

 崩れていく地面はディアブロスを巻き込み、簡易的な落とし穴と化した。

 

 突然の事に、混乱したように声を上げる。だがそれだけ、ちゃんとした落とし穴と違って拘束力の無いただの穴故に、ディアブロスはすぐに抜け出す。

 

「ニコォオオ!」

 

 ユキノの絶叫。それに答えるように走り込んでくる一台のトラック。とっておきの一撃として温存していたそれは一瞬ふらつきながらも真っ直ぐ全速力でディアブロスへと突っ込み、衝突。

 

「アァアアアアアアアア!?」

 

 そして、大爆発。風倉モエが所持していた火薬をこれでもかと詰め込んだトラックの炸裂は抜け出そうとしていたディアブロスを再び穴の奥へと押し込み。

 

 直後にディアブロスの頭上に影が差す。そこには限界まで口を開いたビナーが突撃して来ていて、強引にディアブロスの肉体へと噛み付いた。

 

 甲殻が軋み砕ける音が、しかしディアブロスの咆哮と大地の揺れ砕ける音に掻き消される。ディアブロスは暴れ、ビナーの口を軋ませる、だがガッチリと閉じた口を離すこと無く、体をうねらせ地面を削り…下へと向かう。

 

 咆哮が轟き、遠退く。

 

 衝撃が響き、遠退く。

 

 ビナーの長大な体がどんどんと穴へとうねりながら突き進み…やがて全てが底へと消えていった。

 

 

 

 一瞬の間を置いて、静寂。嵐のごとき暴虐は去り、残ったのは巨大な穴と消耗し切った生徒達。

 

 

 そして、瓦礫の山だった。

 

 未だ、アビドスの空は…曇天なり。




・砂漠での出来事


1、とある場所を縄張りとしていたディアブロスが何者かに襲われ負傷。凶暴化し襲撃者を撃滅。

2、凶暴化し暴れるディアブロスを『証明破綻』を招きかねない存在として排除の為にビナーが襲撃、これを撃退。

3、ビナー襲撃による負傷から更に凶暴化し暴れながら砂漠奥地へと移動、そこに生息していた複数生物と衝突。これを撃退し生息地から追い出す。

4、幾度と無く襲撃してくるビナーと争っていると、瀕死のダレン・モーランが奥地へと侵入し、息絶えて環境が激変し生息不可能になり移動。ビナーもまたそれを追い移動開始。

5、暴れながら移動を続け…現在に至る。
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