アビドス砂漠で狩りに生きる。   作:春山乃都

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第92話

「あるものは片っ端から使いなさい! 彼女達が少しでも有利に動けるように援護を絶やしてはいけません!」

「はいっ!」

 

 防壁代わりに利用されている砂上船の内の一つ。ドタバタと、生徒達が忙しなく動き回っているその船内で不知火カヤの声が響く。それを聴きながら動く生徒達の内の一人は特別製バリスタの矢弾の詰まった箱を持ち上げて甲板へ向かって走り。

 

 突然の強烈な揺れに足を取られる。

 

「う、おぉ!? なになになにっ!?」

 

 倒れそうになるもなんとか堪える。箱とその中身が無事である事を素早く確認すると何が起こったのかと甲板へ出ると同時に視線を戦場へと向けると。

 

 

 

 光が瞬き音を響かせて紫色のビームが走り空に浮かぶ雲を引き裂いていた。

 

 

 

「堅いわね」

 

 そう素直な感想を呟く空崎ヒナ。

 

 下から上へと薙ぐように放った閃光はディアブロスに直撃しその甲殻を赤熱させ大きく傷付けた。が、その程度で収まっている事にヒナは内心驚く、戦車程度であれば消し飛ばせる位の威力は出ていたのにと。

 

「ルゥォオアアアアア!」

「っ!」

 

 お返しとばかりに薙ぐように振るわれた尾。ヒナはそれを飛び上がり回避、風圧に髪を揺らしながら翼を大きく広げ空中で体勢を整える。

 

 堅い上に速いのね、と情報通りではあったが想像以上だったと内心でディアブロスの脅威度を一段上へと上げつつ、飛来した援護射撃だろうバリスタや砲撃を器用に避けながら銃口を向け…引き金を引く。

 

 銃弾の雨が降り注ぐ。一発一発が鉄板を容易に貫く火力を有している。だが一撃の威力は当然だが先程のビームに劣り、故にかその圧力に一切臆することなくディアブロスははっきりと上空のヒナを睨み付ける。

 

 だが、一人にだけ意識を向けると言うのは他の少女達に隙を晒すのと同義。

 

 真っ先に動いたのは美甘ネル。頭上から降り注ぐバリスタに砲撃、そしてヒナの弾幕の雨に一切怯むことなく狩猟用武装に取り付けたチェーンを靡かせながら文字通り瞬く間にディアブロスの懐へと駆け。

 

 瞬間、強烈な殺意と共にディアブロスの視線がネルへと突き刺さる。

 

 偶然かそれとも罠だったのか。どちらであるかは分からないがディアブロスは確りとネルの事を視界に納め、凶悪なその角で貫かんと頭部を振り下ろす。

 

 ある種の奇襲に近しいその一撃は…彼女にとって想定の範囲内の行動でしかない

 

 攻撃範囲内へと踏み込む直前に彼女は武器を振りチェーンを走らせる。向かう先はディアブロスに命中せず地面に突き刺さっていたバリスタの弾。砂上とは言え深くしっかりと突き刺さったそれに絡み付いていたチェーンはガキンッと音を立てて張り、彼女の体は僅かに宙に浮かびながら急停止する。

 

 空振り地面を叩くディアブロスの頭突き。生じた風圧を受けて僅かと言えど浮いていたネルは吹き飛ばされる、が大したことでは無いと言わんばかりに吹き飛ばされながらも体を捻り体勢を整え、突き刺さっているバリスタの弾の上に着地する。そこに追撃をとディアブロスは突き立てた角で地面を抉りながら一歩踏み出し。

 

 小鳥遊ホシノの放った熱線がディアブロスの脚部に直撃する。

 

「オァア!?」

 

 突然の一撃に反射的に視線がぶれたたらを踏むディアブロス。それは隙と言うには一瞬の事だが、彼女には十二分。ズドンッ! と、バリスタの弾を吹き飛ばし一気に前へ。眼前に出現したネルに視線が再び向けられる。

 

「はっ! おせぇんだよ!!」

 

 だが向けられた視線の先には既に彼女の姿はなく。丁度良い場所にあるとディアブロスの顔面を足場に一気に駆け上がり。

 

「おらおらおらおらぁーっ!」

 

 疾走。ネルはディアブロスの背を弾丸をこれでもかと叩き込みながら駆け抜ける。ある一撃は弾かれ、またある一撃はひび割れに直撃し甲殻を吹き飛ばす。一発一発が、確実にダメージとして蓄積されていく。

 

「オォオアアアアアアァッ!」

「おっと」

 

 苦痛か、それとも苛立ちによるものか。咆哮を上げながら乱暴に動き回るディアブロスに、流石に危険だとネルは飛び降り、そのままバックステップし距離を取ってホシノの横に着地する。

 

「おう、援護助かった」

「どういたしまして」

 

 入れ替わるように踏み込んだツルギを横目で確認してからディアブロスから視線を外さずリロードを済ませ。

 

「…こんな時に聞くのもなんですが」

「あん?」

 

 視線がホシノへと向けられる。彼女もまた視線を確りとディアブロスへと向けながらリロードを行いつつ問いかける。

 

「ここに来る途中、3人のメイドが自然公園で何かしていたんですが…大丈夫なんですか?」

 

 仲間ですよね? と、その言葉に断言する。

 

「あぁ問題ねぇよ」

「そうですか」

 

 状況故に短いやり取りだったが必要なことは聞けた。ならば良いと、彼女は武器を構え直す。

 

 

 そして、明後日の方向から爆発音が轟く。

 

 

 一瞬だが、反射的に視線が音のした方へ向けられる。音がした方向にあるのは…アビドス自然公園。良く見れば黒煙が上がっている。さらに言えば先程の爆発音はネルには酷く聞き慣れたもので。

 

「…あぁー、まぁ大丈夫だろ」

「…本当に大丈夫なんですか?」

「……おう」

 

 同じ言葉だったが込められた意味が変わっている事は考えるまでもなくネルには分かったのだった。

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