走り屋はキヴォトスを最速で生きる 作:速さが足りないッ!
学園都市キヴォトスは今日も平和だ。
すこし外を出歩けば戦車が道路を平然と横切り、ヘイローを持った少女達が銃火器を持って銃撃戦を行う。
……いつもの日常だ、何もおかしな所は無い。
ここはキヴォトスを纏める連邦生徒会のD.U,その外郭地区、そこでは今日も今日とて少女達の銃撃戦が行われていた。
そこに一人、キヴォトスの生徒なら誰もが持っている筈のヘイローを持たない
その大人――中性的だが、性別は女性らしい――は的確な指示で攻めてくる不良達を各個撃破していく……流石は連邦生徒会長直々に
そう、彼女は現在失踪状態にある連邦生徒会長が名指しでキヴォトスへ呼び寄せた各学園の異変を可決するためのフィクサー、その様に聞かされている。
彼女ら一行――偶然(クレームを言いに)居合わせたユウカ、ハスミ、チナツ、スズミ、そして指揮を執る先生――は、今新たに設立される連邦調査部シャーレの部室に向かおうとしていたのだ。
そこには、連邦生徒会長が残した何かがあるとされ、そこに行けば現在機能停止中のサンクトゥムタワーの機能も回復し、各学園の異変を多少収める事ができるとされている。
外郭地区での不良の暴動騒ぎを起こしたとされる狐坂ワカモも退けて、先生一行は道を進んでいく……このまま行けばシャーレのオフィスは目の前だ。
しかし、そんな瞬間にほころびが生じた。
突然、腹に響くような走行音が辺りに響き渡る……現れたのは――一台の巡航戦車だった。
その戦車に見覚えのあるハスミはとっさに言葉を紡ぐ。
「あれは……クルセイダー1型?
「''なんでそんな物がここに?''」
先生の問に、ユウカが答える。、
「不法に流通されたものに違いありません!PMCに流れたのを不良達が買い入れたのかも!……つまり、ガラクタだから、壊しても構いません!」
「''なる程……''」
先生はキヴォトスでの常識と自分がいた外の世界とのギャップを感じながらも、そう言ってうなずく。
そして、クルセイダーとの戦闘が始まった。
先生の指揮のもと、取り巻きの不良を撃退しながらクルセイダーを攻め立てる生徒……このままなら無事に破壊は可能だと思われていた。
すると、クルセイダーの砲身が蠢き狙いを定める……その先にいるのが、周りに不良が居ないからと攻めの陣形を意識した、指揮官の先生に向けられていると気づくのに、そのばにいた生徒たちは時間が少しかかってしまった。
「先生」
「あぶない!」
クルセイダーの運転手は、指揮官を潰せば動きが乱れると言うのは分かるのにヘイローの無い外軽きた大人に砲弾を撃ち込んだらどうなるのかは想像できかったようだ。
次の瞬間、クルセイダーからは砲弾が放たれて先生へと一直線へ向かう。
「''っ!?''」
砲弾が着弾すると、爆破が起きて辺りに砕け散ったコンクリートと土煙が舞う。もしあの着弾地点に先生が居るのならどうなっているのか…………考えたくもないが、考えないわけには行かない。
「先生がっ!?」
「そんなっ!?」
目の前で起きたショッキングな出来事を想像し、少し嗚咽しそうになる……しかし、煙が晴れて、砲弾が撃ち込まれた付近には、先生や先生だったであろう肉片は見えない。
「い、一体何が……?
そのばに居た生徒達は辺りを見回して……ふとした瞬間、冷静に辺りを見渡していたスズミが見つけた。
「あ、あそこに!」
「!!」
すると、そこには先生を抱える一人の少年が居た……ぐるぐると目を回している先生を地面へおいて、少年は言葉をつぶやく。
「
そう言って立ち上がり、脚をカンカンと地面へぶつける少年。その脚は実に特徴的な形をしており……踵にはホイールのような物がついていた。
そのサイバネチックな脚は、何かを装着して居るというのは容易に想像がついた。いや、何かを装着していると言うよりかは、義足の類だろうか?
その姿を見て、最初に反応するのはユウカだ。
「は……
「ユウカか、後俺には
その少年は少々早口で捲し立てる様に言葉を紡ぐ。話が早いとかそういうレベルではなく、その言葉を誰かが肯定するよりも早く、ソウは動き出した。
ソウは義足のホイールを回転させる……だが、ホイールそのものは地面へついていない。
只管に回転を続けて居る……そして、数秒経つと突然ガコンと言う音と共にホイールが下がりソウは加速した。
誰かがソウが動いたと言う認識をするよりも早く、クルセイダーはその砲身を何かに蹴り上げられ大きく変形する羽目となった。
そこには、空中でその脚を使い蹴り上げているソウの姿をがあった。
「……4.2秒。悪くないタイムだ……だがまだだ!もっと俺は速くなれる!」
ソウが地面へ降り立った次の瞬間、またソウは再度加速して目の前のクルセイダーを、こんだその車体そのものをもう一度蹴り上げる。
「もっと……もっとだ!加速が足りねぇ!」
そう言うと、ソウは今度はクルセイダーを蹴りつけてその勢いで距離を取る……
もう一度地面へ降り立つと、ホイールを回転させ地面を打ち付けてまた加速した。そして、クルセイダーが見せた車体の下部に、思いっきりの飛び蹴りを食らわせる。
「良いの入ったァァァッッーーーー!!」
ソウの叫びと共に、蹴りを食らったクルセイダーは破片を撒き散らしながら、スクラップとなりアスファルトの上を転がった。中の人間は……まぁ平気たろう。キヴォトス人は頑丈なのだ。
ソウは脚を変わらずにカンカンと地面へ打ち付ける。
「……んじゃ俺帰るわ。」
「待って待って待って!!??」
すぐさまその場を去ろうとするソウを、ユウカが急いで止める。
すると、先生が目を回していた状態から目を覚まして立ち上がる……先生は直ぐ様状況を理解し、義足らしき少年――刹那ソウへと御礼を述べる。
「あぁ……き、君が助けてくれたの?ありがとう。」
「応。目ぇ回してるな。まぁ、俺のスピードで振り回したらそうなるか。」
何処か得意げにそう呟くソウ。どうやらソウは砲撃を食らうあの一瞬で先生に近づき、先生を連れてその場から退避したそうだ……それも、誰も認知できないほどのスピードで。誰も認知できていなかった距離から。
……ハスミは思わず口を開く。
「……末恐ろしいですね。」
どうしてあんな生徒を今まで認識していなかったのか……いや、速すぎて認識する間もなかっただけかも知れない。すると、チナツがユウカに問いかける。
「そう言えばユウカさん。走り屋と言うのは?」
「あぁ……彼の渾名みたいな物かしら?」
ユウカはそう言うと一つ溜息をついて言葉を紡ぐ。
「彼は、ミレニアムサイエンススクールの生徒で……良くミレニアムの道路をあの義足で爆走してるの……だから走り屋。ここ暫く妙に見ないと思ってたけど……」
「あぁ、キヴォトス一周してた。」
ソウはサラリとそう告げる……キヴォトス一周はそう涼しい顔をしてできるものではないのだが……ハスミは驚いて唖然としている。
「……すごい、ですね。その様子だとその身一つで?」
「まぁ、この義足サマサマな所はあるよなぁ。これなかったら俺這いつくばることしかできない羽の取れた蝶みたいな物だし。」
「そんな時速200kmを超えるスピードをコントロールできるのは貴方くらいですよ。」
「''時速200km!?''」
つまり……新幹線とかと同じスピードで走っていることになる。明らかに人間の力を超えている……
「まぁ苦労したよ。ガキの頃は体のほうが耐えきれずに脚千切れたからな。だからこうして義足使ってるわけで……」
「''……キヴォトスってこれくらい普通なの?''」
「まったくそんな事ありません!!彼が異常なだけです!!」
ユウカは先生に植え付けられた間違ったキヴォトスのイメージを払拭するように声を荒げる。
すると、ソウは頭を掻きながら先生達へ問いかける。
「それよりも。お前ら何処か行く所があるんじゃないのか?」
「そ、そうです!先生速くシャーレの中へ!」
「''う、うん!あぁ、ソウ……だっけ?ありがとう!いつか御礼するよ!''」
「それでは、失礼します。」
「……!」
先生達はそれぞれの反応を見せながらシャーレの方へ向かう……ソウは、そんな、彼女たちを見送るとまた脚を地面へ打ち付けながら呟く。
「こりゃまた、キヴォトスも賑やかになりそうだな……」
そう言ってソウはまた加速を始めて、外郭地区の道路を駆け抜けていき、サンクトゥムタワーへとソウは走る……サンクトゥムタワーへ向かう理由?
……デカくてメジャーで目立って、キヴォトス一周の目印やゴールにぴったりだからだ。
刹那ソウ……キヴォトスを最速で生きる男は、今日もキヴォトスを駆け回るのだった。
続く……かも知れない!