コールブランド召喚   作:比叡たん♡

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因みに作者は前話から分かる通り原作未プレイです。一応wiki熟読+二次小説40作以上読破はしましたので大丈夫だとは思います。


3 蠢動

 

 「う〜ん」

 

 垣根は唸っていた。

 時間は午後2時、すでに彼はコールブランドと会った後本館に戻り、昼食を済ませている。

 唸っているのはもちろん、彼女の処遇であった。

 もちろんこの場合の彼女とは、現在罰として分解したコールブランドの艤装を工廠妖精の手すら借りずに一人で元の通りに組み立て直させられている明石ではなく、艤装を分解されたコールブランドの方だ。

 ちなみに明石はコールブランドの艤装を組み立て終わった後はさらに罰として二週間の間宮羊羹摂食禁止と移動居酒屋鳳翔の次回訪問時の利用禁止が言い渡されている。

 

 「これ、そのまま報告しても誰も信じないよな」

 

 それはそうだろう。いくら10年前には空想の域を出なかったような〝人類の脅威〟が7つの海をのさばっているとはいえ、いきなり異世界から艦娘が来ましたとだけ言われて信じる輩はほぼいないに等しい。

 何せ垣根と幼馴染で彼の言うことなら大体信じる提督補佐官の與望ですら実際に会うまで冗談に違いないと思ったのだ、上層部なら尚更であろう。

 

 「ったく異世界ってなんだよ、ミシリアルゥ?バカルス?帝国?ああもうGuamだったらどれだけマシだったことか」

 

 垣根は引き出しを開けると電子タバコの箱を掴み取り、胸ポケットから出した加熱装置に取り出した一本をさして、吸い始めた。

 薄く、匂いが執務室に溜まっていく。

 

 「Guamならただ向こうに送り届けるだけですんだのになぁ」

 

 まあでも、その場合は艦娘を戦闘に参加させずお客人として扱わなくてはいけないため、その必要がなく戦力が増えると言うのはいいことだ、多分。

 そうは思ったものの、果たして彼女がこの泊地にそのまま配属されるのだろうかと言う疑問は残る。

 明石が服の素材すら調べたがったように、彼女は一体何が出てくるかわからないガチャのようなものだ。それも突如現れた全く知らないテーマの。

 確実に一回は本土に回されると垣根は推測する。

 東南アジアにある基地は、ポートモレスビーを除く8つ全てに日本艦娘が駐屯している。マニラ、バンコク、ブルネイ(バンダルスリブガワン)、タウィタウィ、シンガポール(バタム)、バンジャルマシン、テルナテ、ショートランドだ。このうちテルナテ分屯基地はタウィタウィ泊地の管轄下にあるため、この地方にいる提督は7人、ポートモレスビーのベンジャミン提督を入れて8人となる。内日本人提督は4人、提督補佐官は5人。

 地図を見れば分かると思うが、これら9つの基地のうち、ポートモレスビーとショートランドが異様に突出している。

 これはトラック諸島奪還のための助攻であるソロモン諸島攻勢が成功したのに、肝心のトラック奪還が失敗したせいだ。

 当時、ソロモン方面の深海棲艦がトラックに移動して手薄になったところを突いた形になったため、主敵は陸上型であり、比較的容易に占領できた。そしてそのまま泊地の設置まで突っ走ってしまったのだが、トラック方面では大集結した深海棲艦により大敗を喫し、艦隊はテルナテすら放棄してタウィタウィへ逃げ込んだ。

 幸い工作艦娘達の奮闘で沈むものは出ず、ソロモン残留組が奇跡の勝利を得たおかげ*1で現在の版図に落ち着くのだが、このような最前線においては十分な機材もなく、いつ戦闘で沈没するかわからないため、データ取りにはあまりにも都合が悪い。ショートランドには泊地職員及びその家族しか住民がいないので機密保持はやりやすいだろうが、明らかに天秤は釣り合っていなかった。

 一方本土、例えば横須賀ならば研究環境は格段に良く、また前線からもそこそこの距離があるため危険は少ない。

 また調査終了後、今の人類には戦艦一隻でも余らせておく余裕などない*2ため、必然的に彼女はどこかの基地に配属されるだろう。それがショートランドである必要はないのだ。もちろんショートランドも本来は激戦地だが、東アジアと東南アジアの海路を守護する馬公泊地や、中部太平洋への扉である父島鎮守府、戦艦のいない単冠湾かもしれないし、あるいはソロモン攻勢中に轟沈した霧島の代わりとしてタウィタウィに送られるかもしれない。

 

 「ずっとここで預かれるならいいんだろうがな。戦力的にも、あの子らの心情的にも」

 

 そう言って、垣根はタバコを加熱装置から無造作に引き抜くと、ゴミ箱に放った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 街角の椅子とテーブルのある(ソフィスティケイテッド)フィッシュアンドチップス店で、男が道ゆく人を眺めながらつまらなそうにフィッシュ&チップスを食べていた。ポテトには主にタルタルソースをつけており、潰した緑色の豆(マッシーピー)は全く減っていない。因みに臭み取りはされているので一般に想像されているよりかは美味しい。

 そこへ、別の男が店の入り口からまっすぐ男の元へ来た。随分と上背が高いその男は、店員にフラットホワイトコーヒーを注文すると先客に話しかけた。

 

 「迷子の行方が分かりました」

 

 「やっとか。あっという間に流されたとはいえ目印は付けられただろう、どうしてこんなに手間取った?」

 

 「川向こうのヤマダ氏の庭に入り込んでしまっていたので、確認に」

 

 「それは厄介だな。ヤマダ氏は気づいたのか?」

 

 背の高い男は、静かに首を振った。

 

 「そこまでは。ですがどうやら園丁に見つかって保護されたようですので、知られるのも時間の問題でしょう」

 

 そこまで聞くと先客の男は残っていたフライを一口で飲み込んだ。ちょうどそこで背の高い男が頼んだコーヒーが来たので、男はそれで喉を潤す。

 

 「一応親御さんは連れ戻したいそうですが、恐らく正面からではヤマダ氏は納得しないでしょう」

 

 「証明も難しいしな。庭に押し入るのはどうなんだ」

 

 「あの家にそれほどの余裕があるわけがないですよ。2回目の大喧嘩の時家出したサムの助けがなければ勝てなかったくらいなんですから。ティル・ナ・ノーグにしたってあの規模の小ささでは何もできません」

 

 「誰があんなダヌの子供達気取りに頼るか。そんなに冬の国(ヒベルニア)の神話が好きならトレードマークをトリスケリオンに変えて仕舞え。ああ、あいつらのことを思い出してきたら途端に飯が不味くなってきた。どうせ伝えることもないんだろう?私は帰る」

 

 そう言うなり、先客の男は財布から取り出した紙幣を乱暴にテーブルに置くと、立ち上がって店から出ていった。

 後には、置かれた紙幣を見て固まっている男が一人残されていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 人気のない廊下を、扶桑は歩いていた。

 鎮守府別館の地下、廃棄前の鉄屑が一時的に保管される場所の手前で扶桑は立ち止まり、左耳のイヤリングを摘み虚空へ向けて話し始めた。

 

 「はい、こちら……えぇ、ちょっと…………のことなのだけれど……計画………全く聞き覚えがないわ。そっちも?そう……で、と……処は…………わかったわ。そちらも気をつけて。じゃあ」

 

 イヤリングから指を離すと、扶桑は長く息を吐いた。

*1
某国から撤退するなと圧力がかかったと言う噂もある

*2
ここ最近のソロモン諸島の平穏さは異常事態




展開が思いつかなかったので伏線ガン積み回にした。後悔はしてないし早速プロットにない伏線が混じってる。でも今話の投稿で完結はさせると決めた。何年かかるかわからないが(オイ
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