ウマ娘 バーニングフェスッ!! -アルストロメリア・チャレンジ- 作:稚拙
しがない『二次書き』、稚拙です。
前作『スペシャルウィーク、卒業します!』が未完に終わりひと月弱……
活動報告で予告しておりました通り、ウマ娘小説第2弾、今日から投稿させていただきます!
今作は2024年8月30日発売の『ウマ娘 プリティーダービー 熱血ハチャメチャ大感謝祭!』を題材に、未実装ウマ娘たちを主人公とした半オリジナルストーリーとなります。
でも、『ウマ娘』とは違う別の作品の影もちらほら……
果たしてこのハチャメチャな感謝祭の行く末は―――!?
そして肝心の原作ソフトの発売1ヶ月前に連載開始という無謀極まりない挑戦をしてしまった稚拙、今作は無事に完結できるのか!?(マテ
今回はハッキリ言って見切り出走です!!
その日の天気は悪かった。
年明け早々、冬だというのに時節外れの前線停滞で数日間にわたって大雨が降っていた。
先週末から今年のトゥインクル・シリーズとドリームトロフィー・シリーズが開幕し、各地の金杯とフェアリーステークス、シンザン記念を含めた3日間開催のレースは、雨の中恙無く催された。
私もその内の一レースに出走し、どうにか先頭でゴール版の前を駆け抜けられた。トゥインクル・シリーズ引退間際に負傷していた左脚の調子も、幾分と良くなったように感じる。
ただ……自分自身の体調の良さと裏腹に、この暗雲は何だ。
校舎の窓を叩く雨粒の音が、私の心を否応無しに揺さぶる。
レース開催の週末から数日、生徒会の執務に勤しんでいた昼休憩のさなか、生徒会室を訪ねてきた理事長秘書の駿川たづなさんから、放課後に理事長室へ来てほしいと呼ばれたその時から、妙な予感は続いて、今この時も拭い去れずにいる。
その心のまま、雨音だけが響く廊下を歩きついた先に、理事長室の木目の扉が現れた。
私はその扉を、二度軽く敲いた。
「……シンボリルドルフです。入室します」
「どうぞ」
たづなさんの声を確認し、ドアノブを回して引いた。
「感謝ッ!多忙の中よく来てくれた」
理事長室に入って最初に見た、秋川やよい理事長の表情は―――悪戯を思いついた幼い子供のような顔だった。
元々、我々学生と殆ど変わらぬ年格好に見えるほど若々しい理事長だが、今日は益々子供めいて見える。
「少し込み入った話になる。かけたまえ」
そう促され、私は理事長室の椅子に腰を下ろした。テーブルを挟んだ向かい側に理事長が座り、「さて……」と前置くと、私の目を真っ直ぐと見てきた。
「もうすぐ、春の感謝祭の準備が始まるな」
「そうですね。生徒たちはもちろん、ファンの方々も交流を楽しみにしているかと。秋の時も、思いの外盛り上がりましたからね。私もらしくなく、羽目を外してしまっていました」
「爆笑ッ……すまないが、実は私も笑ってしまった」
「り、理事長……っ」
昨年秋の感謝祭の時は、生徒同士でバンドを組んで演奏することとなり、私もテイオーにせがまれて参加した。ギターに触れる機会は初めてだったが、2ヶ月の練習でどうにか並の演奏はできるようになっていた。
しかし演奏途中で、興が乗った私は研鑽のために見たとあるアーティストの映像を再現しようと、少々無茶なギタープレイを試み、見事に―――失敗した。
夸父逐日とはまさにこのこと……少し噛んだところで素人に毛が生えた程度の私は見事に失態を晒した。顔から火が出そうな気分だったが、生徒たちや観客たちには大受けしていたのが、不幸中の幸いか。
「失敬……いやぁ、君の意外な一面が見られて嬉しかったからね。今回の『企画』にも、少なからぬヒントがもらえたよ」
「企画……ですか?」
「うむ。これを読んでくれたまえ」
理事長がそう言うと、たづなさんが
(……『感謝祭特別イベント』……『ハチャメチャ
タイトルに凝ったロゴまで配されている。軽く苦笑いが出てしまったが、その下の本文を読み進めていくにつれ、その苦笑が徐々に引き攣ってくるのが自分でもわかる。
「『ファン感謝祭大障害』……『バスケット奪取ステークス』……『ウマドッジチャンピオンシップ』……『大食いダービー』……」
―――なんだ、この荒唐無稽な内容は!?
体育祭ならこれまで何回か感謝祭で催したが、この企画書に記されているのは今までのそれとは比較にならない大規模、あまりにも非現実的だ。どう考えても春の感謝祭の開催日までに間に合わないだろう。
予算?工期?そんなものは知るか。
そう言わんばかりに書き並べ立てられたこれらの無理難題はどう解決するつもりなのかと、私は疑問を顔に浮かべつつ理事長を見た。
「あの、これは……」
「ふっふっふっ、さしもの君も驚愕のあまり声も出ないか」
「そうではなくっ……!いや、そうでもありますが、一体何処の誰がこのような無茶極まりない企画をっ―――」
「無論ッ!この私だッ!」
「はぁ!?」
得意気に胸を反る理事長に、私は思わず瞠目していた。
「……私は予てから、ウマ娘諸君とファンの方々に向けた、新たな切り口でのアピールを考えていた……だが由緒正しきトゥインクル・シリーズやドリームトロフィー・シリーズに直接メスを入れるわけには行かず、さてどうしたものかと考えていた矢先に―――君のステージを見た」
「わ、私、の……?」
「我が校の生徒会長であり、絶対的なウマ娘たる君が、我々の前で見せてくれた意外な一面……それは私に大きなヒントをくれたのだ!」
よもや私のあの失態が、理事長にインスピレーションを与えてしまったというのか。さらに理事長は続ける。
「ウマ娘諸君が見せる、レースやライブとは異なる新たな一面……それらを引き出すには、全く新機軸のエンターテインメントが必要と私は考えた……U.A.F.もあったが、それとはまた違う、参加者と観客、それぞれが楽しめるアトラクション的なものが必要と!……ちょうどその頃だったか、『藤堂グループ』から我が学園に援助の申し出があった」
「!藤堂グループといえば……あの……!?」
「そう……URAの大口株主の、な」
「そして……“あの事件”の中心となった高校―――『冷峰学園』の運営にも関わっている企業……ですよね」
―――この、トレセン学園のある府中市の近傍に、『東地区』という学区がある。数十もの高校が林立する、都内屈指のダウンタウンだ。
そこでは、素行のあまりよろしくない高校生―――所謂“不良”同士が、地区の覇を争い、いつ終わることのない『抗争』を繰り広げているとも聞いた。『番長』『ツッパリ』『リーゼント』……前時代の遺物と称されて久しい概念が、今もそこでは根深く息づいている。
幸い、我がトレセン学園の生徒たちが喧嘩に巻き込まれたことはなかったが、“あの事件”の時はさしもの私も肝を冷やした。
それまでは抗争とは無縁で、勤勉さばかりが目立ち、“超進学校”と呼ばれていたエリート養成学校―――『冷峰学園』の生徒たちが、周辺の高校の不良たちを次々に襲い、支配下に置くという事件が起きた。東地区の所々で学生同士の喧嘩が勃発し、トレセン学園の近傍校にまでその支配の手が伸びてきて、不安を口にする生徒も多くなってきた。だがその事件は、唐突に終わった。
『正義の不良』と呼ばれる超高校級の不良生徒によって、事件の首謀者たる冷峰学園の生徒会長が討たれ、事件はあまりに突然とした終息を迎えたのだった。
「……“あの事件”に関しては、グループ総帥の藤堂晃之介氏も大層心を痛めていた……若い情熱が誤った方向に発露してしまったことは慚愧に堪えなかった、とな」
「その後、事件のお詫び代わりに冷峰学園が開催したのが『全国高等学校選抜大運動会』でしたね」
高校生らしく、スポーツを通じて交流を深めようと催された『運動会』―――全国の有力な高校に招待状が配られたらしく、トレセン学園にもそれは来た。
だが我々生徒会は即座に参加辞退の判断を下した。種目の一つに『勝ち抜き格闘戦』―――即ち格闘技の試合―――武器類の使用も許可された無差別極まりないもの―――も含まれていたからだ。いくらルールを定めてあるとはいえ、暴力行為は我々ウマ娘にとってタブー中のタブーだ。それに他の種目でも、ウマ娘と普通の高校生では実力差が歴然としたものになるだろう。高校生の運動会に、プロアスリートたる我々トレセン学園のウマ娘が参加するわけにいかず、丁重な参加辞退の文書を
「……それにしても……理事長の企画している内の、『ファン感謝祭大障害』なんですが……例の『運動会』の『町内一周クロスカントリー』に酷似しているように思えるのですが……」
「慧眼ッ……君の目は誤魔化せんか。その通りッ!コース構成は『運動会』で行われたクロスカントリーを参考に、設備を担当した『藤堂組』の監修の下で私自らが行った!その他の種目の設備も、会場設営も僅か1週間で可能との見積を貰っている!」
「あ、安全面はどうするおつもりですか!?このような危険な種目で負傷して、肝心のトゥインクル・シリーズに影響を及ぼしては……」
「無論ッ!感謝祭後に行われる各レースには全く影響が出ないよう、ウマ娘諸君の体調管理に関しては最大限の配慮を行う!全てにおいてウマ娘諸君の安全を第一に開催する!万一ッ!何か起こった場合の責任はこの私がすべて取るッ!故に君達ウマ娘諸君は何の心配もせずともよいッ!!」
「………………」
唖然として開いた口が塞がらぬ私の目に映る―――この理事長の燃えるような蒼い瞳はなんだ。
もっとも、理事長が我々ウマ娘に対して有り余る情熱を傾けてくださっていることは、日頃から重々承知している。
学園食堂で料理として供されるニンジンをはじめとした野菜の殆どは、理事長が激務の合間を縫い、学園敷地内の畑で自ら育てた完全無農薬有機栽培のもの。またかつて理事長が提案して催された『大豊食祭』にて、レースに臨むウマ娘たちの栄養管理の大切さや、食事と食材、それを提供する生産者の方々への感謝の心を説き、学園内に一大食育ブームを巻き起こしたことは記憶に新しい。
そんな理事長だからこそ、『全てのウマ娘の幸福』を我是としている私も、理事長の思想や方針には大いに賛同した。理事長もまた、私の理念に共感してくださり、生徒会運営をはじめ、様々な面で便宜を図ってくださった。報恩謝徳の思いを抱かずにはいられぬ、とても足を向けて寝られない御仁だ。
そんな……我々ウマ娘への愛を惜しみなく注ぎ続けてくださっている理事長が―――
「フフフ……破壊ッ!常識の破壊ッ!!破壊の常識ッ!!そこからすべてが始まるッ!創造ッ!それは破壊からしか生まれぬッ!!破壊は創造ッ!創造は破壊ッ!ククク、これぞウマ娘もヒトも万人が訴求する究極ッ!のエンターテインメントッ!!全く笑いが止まらんなぁ!!笑止ッ!笑止ッッ!!フハハハハハハハ!!!!」
「…………わかりました」
「ハハハハッ!ハハハハハハハハッッ!!……ん?」
「理事長の企画、生徒会で稟議にかけさせていただきます。承認されるよう、私からも根回しをしましょう」
「おお、感嘆ッ!ようやく私の熱意を理解してくれたか!!」
「但し―――」
―――最早問答無用であるなら、せめて最後の抵抗だ。
この私自身を以て、切り札とさせてもらうぞ。
―――
「―――この私も、イベントに選手のひとりとして参加させていただきます。他のウマ娘たちが危険な目に遭うなら、私だけただ座して見ているわけには行きません。先程理事長が仰った通り、私に何かあった時には、理事長自ら責任を取ってもらいます。……それでもよろしければ、取り計らい致しましょう」
私とて、自身を安くは見積もっていない。
責任ある立場のウマ娘として、私にはこの学園で、そしてレース界でやらねばならぬことがまだ残っている。後事を託せる者もまだ、この学園には育っていない。
自分で言うのも
―――私という人材は高いぞ。
―――私に何かあったら貴女の責任だ。
さぁ、どうだ。
これは
これで止められるならば本望だ。
……それにしても理事長は、あんな事をたった一人で、本気で企画したのか?
あんな荒唐無稽極まりない、テレビゲームめいた内容のものを―――
「ふ、ふふ…………」
「……?」
私の言葉を沈黙を以て聞いていた理事長の口角が、僅かに上がった。
「流石ッ!己を擲ってまでウマ娘のために尽くそうとするその姿、まさしく皇帝ッ!やはり君は、学園生徒諸君の代表、生徒会長に相応しいウマ娘だッ!」
「理事長……」
「だが……勘違いしないでくれたまえ。私はヒーローものの悪役ではないよ」
「……?」
「私の企画が破棄されてしまう危険が僅少でも残っている場合、自信たっぷりに愉悦に入ってプレゼンをすると思うかね?」
「……どういうこと、ですか」
「その企画書の内容だが」
「………………………………………………」
一際大きな雷鳴が閃光を放って轟く中……私は頭を抱えた。
今回、理事長の情熱は凄絶無比なまでに……
暴走している。
―――最早止められぬ。
万策尽きた諦念の中、私は理事長の傍らに立つ緑服の女性を縋るように見上げた。
だがその女性―――たづなさんもまた、申し訳無さそうに私に微笑を向けるだけ。
それを見た瞬間―――
私の中でぽっかりと虚無の穴が開き―――
何かが頭の中でハジける音が聞こえた。
――― ―――
も、もう―――
もう無理だし。
ジタバタしてもどうにもならないし。
心の中のしっぽも濡れたし……
あとは……みんなに……任せるし……
ションボリ…………
…………………………
………………
…………
……
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「疑問ッ!君も競技に参加するのだろう?何故ここで力尽きたように語っているのかね?」
「理事長……地の文にツッコまないでほしいし……」
はい、カイチョーがこうなっちゃった通り、今作はたぬき要素も混入しちゃっておりまする。
前作と比べてほんのりコメディ寄りで行こうかと思います。
また、例によってすんごい遅筆ですので、続きはあまり期待せずに待っててください。