ウマ娘 バーニングフェスッ!! -アルストロメリア・チャレンジ-   作:稚拙

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9枠 マッヅ!!

 ―――早坂良麻。

 

 ……聞いた事がありやすな。

 冷峰学園生徒会の重鎮にして、『冷峰学園事件』でも他校侵略の片棒を担いだ“四天王”の一角・望月駿(もちづきしゅん)率いるグループ―――そのナンバー2と目される男……。

 文武両道の冷峰にあって学業も優秀、不良行為とはほぼ無縁の男と聞き及んでおりやしたが……。

 

「『あんたが何故ここにいる?』って、聞きたそうな顔してるな」

 

 早坂はあっしらの心中を見透かしたようにそう言うと、スポドリマンの背から飛び降りやした。

 

「諸々の事情は“コイツ”を片付けてから話す」

「味方……ということでいいのかね?」

「まぁな。それと言っとくが、好きで女子校に忍び込んだわけじゃないからな!」

 

 スポドリマンの顔に赤い単眼が再び灯り、むくりと立ち上がりやした……!

 

《侵入者確認。熱中症予防。熱中症予防。》

 

 侵入者の熱中症を対策してどうする。

 ツッコミどころ満載の熱中症予防啓発警備ロボットは、腕のみならず両手両足全身からあらゆる方向へとスポーツドリンクを噴射してきやした……!

 

「おやおや……さっきの早坂君の攻撃でブログラムがバグったようだねぇ」

「余計なコトをしたようだ。すまない」

「いや、そうでも無いようですぜ……。」

 

 無理なコトをすれば負担がかかるのは、ウマ娘も人間も機械も同じ。

 さっきよりも目に見えて動きが鈍っておりやすぜ!

 

「しゃァッ!!」

 

 あっしはスポドリマンの膝関節目掛けて風車を投げ放ち、突き刺さって火花を散らしたのを見るや、思い切り蹴り飛ばしてやると、ダルマ落としのようにスポドリマンの脚がスッ飛び、がくりと擱座しやした。

 

「チャンスだねぇ」

「基盤を潰して終わりにする!……コレ、借りるぞ!」

「どうぞ存分に。……ん?ドライバーでどうやって……?」

 

 タキオンの旦那の白衣のポケットから顔を出していた得物を早坂は引っ攫いやしたが、よりにもよってそれはマイナスドライバー。

 こんなモノでどうやってロボットの基盤を潰せると?螺子を外しまくるとでも?

 疑問が胸を占めていく中、早坂は基盤のあるスポドリマンの背中へと()じ登ると―――。

 

 

 

 

 

 

 

 

「うぉぉぉぉぉぉぉおおぉぉぉおおおぉぉぉぉ!!!!!!!!!!!」

 

 ただひたすらに基盤ボックスをドライバーで叩き始めた!?

 しかしそのサイクルは異様の一言、ウマ娘の動体視力は人間の数倍高いと云われやすが、そのウマ娘のあっしにすら、手の先が見えず、かすれた残像にしか見えないのはどうなっているんでやすか!?

 さっきのスポドリマンを転倒させた一撃といいこれといい―――

 

 この御仁、本当に人間なのでござんすか!?

 

 まるで削岩機でも起動しているかのような、機関銃の如き爆音が鳴り響く様を、あっしは唖然として見ておりやしたが、タキオンの旦那は―――

 

 ……あはは、読者(お前さん)の想像通りの顔をしておりやすなぁ。

 陳腐な言い方になりやすが、まるで新しい玩具を前にした子供のようでさぁ……。

 

 スポドリマンの背部から部品や構造物の破片が飛び散り、やがて火を噴くのを見るや、早坂は飛び退き、あっしとタキオンの旦那の隣に降り立ちやした。次の瞬間、スポドリマンの頭部の灯が消え、動きを止めるとともに、周囲の警報が鳴り止み、赤色灯も消灯して大人しくなりやした。

 

「どうやらスポドリマンと警報装置が連動していたようだねぇ。欠陥設計もいいところだ」

「まさかコイツをどうにかできるとは想定外だったんでしょうよ……もっとも」

 

 あっしは早坂を見やりやした。

 

「ウマ娘ならともかく、まさか普通の人間に壊されるたぁ、()()()想定外だったでしょうけど」

「俺としてはこんな役回りをさせられるのは御免なんだがな。……すまないな、ドライバーを壊してしまって。必ず弁償する」

 

 早坂は申し訳なさげに、先端がひしゃげたマイナスドライバーを差し出しやしたが、タキオンの旦那は―――。

 

「そんなことはどうでもいい!それよりさっきのはなんだったんだい!?君の腕はどうなってるんだい!?アレだけのサイクルで腕を動かせるとは全く以て普通じゃない!特殊なトレーニング?それとも薬品かい!?是非とも教えて欲しい!あの動きを脚部動作に応用できればウマ娘の新たなる可能性を必ず開拓できる!!さぁ!さぁ!!さぁ!!!私に人間が持つ無限の可能性を見せておくれよ〜〜!!!!」

 

 さしもの冷峰学園生もドン引きですぜ、旦那……。

 しかし早坂は視線を逸らしながらも。

 

「ほ、星の丘東商店街の本屋で売られていた指南(ハウツー)本を読んだだけだ……6000円するがな」

「本!?ただの本であれだけのワザが身に付くというのかい!?素晴らしい!まさに叡智の極みだねぇ!!星の丘東商店街の本屋だね!?早速明日にでも行かなくては!!」

 

 一冊6000円する本って、百科事典か何かですかい、ソレ……??

 それに、ただ本を読むだけであんな人外絶技が会得できるとは……東地区の本屋ではそんな物騒な本が売られてるんでやすか……!?

 こりゃ……東地区の高校生は相当な使い手揃いと見て間違いないでござんすなぁ……。流石、伝説の『正義の不良』を生んだ土地といいやすか……。

 

「……旦那」

「……あぁそうだったねぇ、もう一度解錠作業にかからなければ」

「今度こそ頼みやすぜ」

「任せてくれたまえ」

 

 タキオンの旦那は再度、シャカールの旦那手製の電子ロック解錠ツールを壁のパネルに接続して作業を再開しやした。あっしはその間、この男について色々問い質すとしやしょうか。

 

「やれやれ……“ターフのサイエンティスト”……アグネスタキオンの実物は思いの外マッドだな……」

 

 頭を掻きながら、早坂は苦笑いしやした。タキオンの旦那を間近で初めて見るヒトは、みんなこの顔になりやすな。

 

「興味を持ったことには良くも悪くも一直線な御仁ですからなぁ」

「……ところで、君は?テレビじゃ見たことのない顔だが」

「あっしゃぁクワイトファイン……生徒会の素破として、学園に居させてもらっておりやす。テレビに映らないのは……まぁそういうコトでさぁ」

「……なるほどな。頑張れよ」

 

 ウマ娘の本分のレースで勝ててないのはあっし自身気にしてるんでやすよ……勝てるなら勝ちたいのはあっしだって同じでぇ。

 ……ま、今は愚痴っても仕方ありやせんが……。

 

「……応援の言葉、ありがたくいただきやす。……さて、それじゃあ聞かせてもらいやしょうか。冷峰学園の生徒のお前さんが、深夜のトレセン学園の理事長室に用がある理由って奴を」

「約束だからな。……前の冷峰学園の生徒会長が、他の高校にちょっかいを出したのは知ってるよな」

「『冷峰学園事件』……でやすね」

「ああ。そいつは懲らしめられて転校して、もう冷峰(ウチ)には居ないんだが……その後を継いだ現生徒会長ってのも、これまた奇特な人間だったのさ。まず『不良』が大嫌いでな。例の事件を解決したのが不良だったのが、大いに気に食わなかった。それから度が過ぎるほどの“愛校主義者”。あらゆる分野で冷峰がトップじゃなければ気がすまない。だから例の事件で冷峰の権威が失墜したことも気に入らなかったのさ。そして極めつけが……学園に資金を出してる大物理事のボンボンでさ。資金力と行動力が常識離れしてる。……さて、ここまで言えば、もうわかるよな?」

「……わかりやすい解説、痛み入りやす。『全国高等学校選抜大運動会』や、その後の高校対抗スポーツイベントの仕掛け人は、その御仁でござんすか」

「その通り。要は『たったひとりの不良』を潰すためだけに、冷峰のみならず他の高校まで巻き込む変人なのさ」

「……元生徒会長と何ら変わらぬように思えやすなぁ……」

「表向きは『高校生同士、スポーツで汗を流しながら交友を広めよう』って、健全なイベントに映るからな。それだけにプロデューサーとしては相当な敏腕に映る。ある意味前の奴より(タチ)が悪い」

「……それで、今回の件と何か関係が?」

「その現生徒会長が、今度は『ウマ娘』を利用して何かを企んでるって、俺の“依頼人”が目星を付けていてな。現生徒会長とトレセン学園の理事長……両者が繋がっている明確な証拠が欲しいんだとさ」

「そちらのお言葉から察しやすが……冷峰も一枚岩ではないみたいでござんすね」

「その通りさ。ウチの生徒会はいくつかの派閥に分かれていて、それぞれが水面下で結託や対立を繰り返してるのさ」

「確か……お前さんは“四天王”の望月って旦那の派閥の次席と聞いておりやすが」

「昔からの付き合いでな。お陰で余計なトラブルに何度も巻き込まれたよ。ただ、今回の件は望月とは関係ない。単に生徒会長に対する俺と“依頼人”の見解が一致した、それだけでしかない」

 

 意外と多くの情報を出してくれやしたな。話してみるとなかなかどうして、わかる御仁みたいでありやすし。

 しかし……冷峰の生徒会長がウマ娘を利用して、一体何を企んでるのやら。

 それに、そのために奇祭(ハチャメチャGP)を企画して何とする……?

 いろいろと情報は更新されやしたが、それでもまだ判らないことが多すぎやすな……

 

「ご開帳だねぇ」

 

 タキオンの旦那の機嫌の良い声がした。同時に、ドアノブからガチャリと小さな音が響きやす。

 

「さて、何があるやら……」

「またトラップがあるかも知れない。気をつけよう」

「―――その心配はないよ♪」

 

 ……!!??

 

 聞き覚えのある声が、理事長室の中から響いてきやした……!

 窓から差し込む月明かりに照らされ、理事長公の机の前に仁王立っていたのは……!

 

「だって証拠はこのとおり!ボクが貰っちゃったもんね〜♪」

 

 前髪の流星、小柄な体格、幼さを多分に残した声……!

 何故、こんなところにいるんでやすか……!?

 

 

「トウカイテイオーの……坊っちゃん……!?」

 

 

 いや、あり得ない……!

 どうやって施錠されている理事長室に入った……!?

 いや……それ以前に!

 何故テイオーの坊っちゃんが、証拠書類と思しき紙束を持って……!?

 そして、どうして―――

 

 ()()()()()()()()()()()()()を着ているんでやすか……!?

 

「ウマ娘……トウカイテイオーだと……!?」

「早坂の旦那!手を出さねぇでおくんなせぇ!!その()は……!!」

「そっちが出さないのなら助かるよ。でも、こっちは出しちゃうもんね~!」

 

 と、不意に鋭い痛みが手足や頬に走りやした。咄嗟に防御態勢を取るも、なおも撃ちかけられる不可視の攻撃。交差した両腕の隙間から見やりやすと、坊っちゃんの左右にLEDの光と、隠しきれないジャイロの回転音、そして足元に転がる沢山のBB弾……。

 横目に視線を険しくする早坂の旦那がちらと見えやす。

 

「オートエアガンを仕込んだAIドローンか……!」

「えへへっ、“コレ”を持っていっちゃったら、カイチョーどんな顔するかなぁ〜♪」

「本当に……!本当に坊っちゃんなんでごぜぇやすか!?どうしてこんな……!」

「落ち着け!奴から証拠書類を取り返せば済む話だ!」

「でっきるかな〜?でも出来ないよね〜?ボクはウマ娘だから!フツーの人間が、ウマ娘に勝てるワケないじゃん。それに……GⅠどころかGⅡすら勝ててないそっちのキミも、GⅠウマ娘のボクに勝てるとでも思ってんの?笑っちゃうよね〜〜♪♪」

 

 明らかに様子がおかしい!

 坊っちゃんはさっきから坊っちゃんが言うとは思えない台詞ばかりを並べ立て、ケタケタ嗤っておりやすが……!

 

「惑わされるな!どういった事情があるかは知らないが……それをこっちに寄越してもらう!力づくでもな!」

「だ、旦那!!」

 

 手を出さないでくれと言った傍から……!!

 早坂の旦那は鋭い踏み込みから坊っちゃんに肉薄しやしたが、坊っちゃんの表情は憎たらしげな嗤顔(エガオ)のまま―――

 何かある、と思った時にはもう遅く―――

 坊っちゃんと早坂の旦那の間にドローンが割り込み、スプレーを噴射するような音が理事長室に響き渡りやした……!

 

「ぐ、うあああ!?」

「旦那!!」

 

 途端に早坂の旦那は仰け反り、顔面を手で覆ってのたうち回りやした。見ると、目の辺りが真っ赤に染められておりやす……!

 

「こいつァ……!」

「いちみーいちみーいっちみー♪いちみーをかけーるとー♪かおがーかおがーかっおがー♪いたくーなるー♪♪……ぷっ、あは、あははははははは!!」

いちみ(一味)ーって……そういうことですかぃ……!」

「護身用のトウガラシスプレーを仕込んでおいて大正解♪誰もボクには近寄れない!無敵のテイオー様だからね~!」

 

 なんて質の悪い冗談を見せられてるんでさぁ、あっしは……。

 テイオーの坊っちゃんが“人形師”側について、今こうしてあっしらを翻弄している……。

 ねぇ坊っちゃん……こんな姿、ルドの旦那が見たら、どう思うんでしょうかぃ……。

 あっしは……どうすればいいんです、旦那―――。

 

―――ヅガッ!!!!

 

「!?」

 

 何かが硬いモノに突き刺さる音が2つ同時に響いた瞬間―――

 あっしは床に転げ落ちた2機のドローンを見やした。

 2機とも、注射器が突き刺さっておりやした……。

 

 

「陳腐だねぇ」

 

 

 かつ、かつ、かつ。

 落下したドローンに目もくれず、坊っちゃんに歩みを進めるのは―――

 

「タキオンの、旦那……」

「……私特製万能中和剤を染み込ませてある。使いたまえ」

 

 そう言いながら早坂の旦那にハンディタオルを放った、今の今まで、だんまりだったタキオンの旦那は、気持ちうつむき加減にゆっくりと、そしてゆらりと坊っちゃんに向いて―――

 

「見知った顔に()()()、精神的に揺さぶりをかけるのは実に合理的だ。ただ、方法の構築は兎も角としてやり方が陳腐千万だ。古今東西で散々使い叩かれた手じゃぁないか。もっとやり方を考えたまえよ」

「……………………」

「……そもそも、だ。私の知り合いの顔と声を無断借用しての安い挑発行為―――」

 

 

鬱 陶 し い ん だ よ 。

 

 

 底冷えするような旦那の声と、氷のような視線。

 ―――ギリ、と、坊っちゃんが歯を噛む。

 

()()()無礼(ナメ)るな」

 

 タキオンの旦那は残酷な(カオ)のまま坊っちゃんに迫り、注射器を振り上げて―――!

 

「坊っちゃんッッ!!」

 

 思わず血の気が引く感覚。しかし旦那は躊躇なく、坊っちゃんの着ている冷峰学園の男子制服の上から、その腕に注射器を突き立てやした―――。

 

「―――スクリーンの役割を果たす微粒子と、それを固着する制御装置…………しかし詳細な原理は全く以て理解が出来ない。顔どころか声までも真似ることが出来る“その機構”は実に興味深い」

 

 瞬間、あっしは目を疑いやした……!

 テイオーの坊っちゃんの顔が、霧散するように別人の顔へと変わった……!?

 三白眼で逆立ったボサボサ頭の、坊っちゃんとは似ても似つかぬ凶眼の男……!?

 

「しかしだねぇ……そのやり方と使い方は、流石の私も立腹せざるを得ないねぇ…………冷峰学園3年生、科学部部長―――」

 

 まるで以前からの知己のように、旦那はその名を吐き捨てやした。

 

松戸京介(まつどきょうすけ)君」

 

 聞いたことの無い名前でやすな……。

 

「……お知り合いで?」

「科学コミュニティで何度か、ね。図ったように私の理論の正反対を説いてくる、気に入らない男さ」

「ああ、そうだな。物質と反物質のようにな」

 

 松戸と呼ばれた男の手首から、破壊された腕時計のようなモノがずるりと床に落ちやした。注射器が突き刺さったままということは、さっきはコレを壊すため、ということですかぃ。

 

「……『変身技工(ヘンシンギコウ)』……改良の余地はまだあるか」

「スクリーン粒子の固着のために()()()()()()()()()のは致命的欠陥もいいところだねぇ。それに服装や体格が誤魔化せないのもまだまだだねぇ」

 

 確かに……言われてみれば、坊っちゃんにしては背が高く見えやした。公称150cmにしては大きかったですからな、男子高校生の身体の上に坊っちゃんの頭だけが載っかっているのは確かにアンバランス……。

 一見しただけで動揺して、『それ』を見破れなかったたぁ……素破としてはまだまだ修行不足でありやすな、あっしゃぁ……。

 

「チッ……それもお見通しか。全く……全く憎たらしいな、アグネスタキオン……!お前がいた事が一番の計算外だ……!」

 

 口元を歪ませてタキオンの旦那を睨む松戸に、早坂の旦那が詰め寄りやす。

 

「松戸!何故お前がここにいる!?生徒会の派閥争いから距離を置いて、中道の立場だったお前が生徒会長に肩入れするのか!?」

「こうは思わないか早坂良麻?中道だからこそ、あらゆる方へ傾く、と。俺に益があると判断すれば、俺は何にでも乗るんだよ。俺の『理論』、その追求と実験……それが出来れば、他はどうでもいいんだよ」

 

 ……“雇われ”としては最悪でやすな。思想も信念もなく、ただ自分の損得だけで動く傭兵気質……。

 

「ふぅン……君の思想云々のほうが実にどうでもいいコトだ。しかしだねぇ、君の『変身技工』、それ“だけ”には大いに興味が湧いた!どうだい松戸君!?研究データを私に譲渡してはくれまいか!?私はその研究を大いに役立てられる自信がある!さぁ!さぁ!さぁ〜!!」

 

 あぁもうこの御仁も大概でござんした……!

 それに目先の大発明に釣られてそんな無防備に松戸に近寄っては……!

 

「チッ……!」

 

 松戸が舌を打ったその瞬間、擱座していたドローンから真っ白な煙が噴き出し、思わずあっしらは怯みやした……!

 

「煙幕かッ……!」

「くッ……!逃がしやせんぜ!!」

 

 しかしあっしはその間隙を縫って松戸に迫り、その手に持つ証拠書類に手を伸ばしやす―――!

 

「……時間稼ぎとしてはコレで十分か」

「何ッ!?」

「今時、重要な情報をこんな紙切れに書いてると思うか?情報の入ったUSBは既に我が科学部員達がとうに頂いて行ったよ」

「……!?」

「忠告しておくぜ。これ以上、この件に首を突っ込むのは―――」

 

 松戸の手元から強烈な閃光が放たれ、思わず目が眩んで、目の前が見えなくなりやした……。

 そして残響のように、耳元に言葉が残って―――。

 

 

 

 

 ―――やめときな。ろくなことがねぇ

 

 

 

 

 ―――確かにそうでござんしょうなぁ。お前さんみたいなヤツと出遭っちまったんでやすからなぁ。

 しかし……。

 そうまで言われちゃぁねぇ、余計この件が怪しくなるもんでさぁ……!

 松戸京介……他人に化ける技を使う、“科学幻術”使い……。

 そんなヤツを擁する“人形師”―――冷峰学園の生徒会長……。

 思ってたよりも、今回のヤマはドデカいようですぜ、ルドの旦那……。

 

「……撒かれたか……」

「申し訳ありやせん……目眩ましを喰らっちまいやして」

「……何処までも行け好かない男だねぇ……」

「それと、“証拠”は既に持ち去られた後みたいで……少しでもヤツから情報を得たかったところでやすが、取り逃がしちまいやした……。」

「アイツが殿(シンガリ)だったというわけか」

「それも我々への『実験』を兼ねた、ねぇ。科学を志す者らしからぬ自己顕示欲の持ち主だねぇ」

「……ツッコミが必要で?」

「結構」

 

 それにしてもまあ、キレイに証拠が隠滅されておりやすなぁ。

 ドローンの残骸やBB弾といったこの騒動の“残滓”が、最初から存在しなかったみたく消えて無くなってるんでやすから。

 理事長室から出てみると、なんと壊れたスポドリマンまで撤去されていて、そりゃぁもう驚きやしたとも。

 

「せっかくの“実験機材の部品”が!……やってくれたねぇ松戸君……!!」

 

 本気でお持ち帰りするつもりだったんですかぃ、旦那……

 

「ウチの科学部は諜報部隊も兼ねてるからな。こうした工作はお手の物だろう。実際の手並を見たのは初めてだが、凄いもんだな……」

「諜報部隊がある高校って……お前さん方、戦争でもやるつもりなんですかぃ?」

「ある意味“戦時中”さ。『東地区』ってのはそういうところだ。だからこそ、地区外のトレセン学園に迷惑をかけていることに関しては、謝罪しなければならないな」

「よしてくれたまえ。確かに君の学校の関係者が首謀者なんだろうけど、君じゃあない。首謀者本人に頭を下げさせるのが世の道理というものだろう?」

「旦那……するってぇと……?」

 

 タキオンの旦那は、口元に笑みを湛えて振り返りやした。

 

「ああ、『ハチャメチャGP』に出ようじゃぁないか。丁度ポッケ君にチームへの参加を打診されていてね。どうしたものかと思案していたが、良い理由ができたよ。クワイト君、私も君と同じく“中”から“この件”へのアプローチをするとしよう」

「タキオンの旦那が協力してくれるとなれば百人力でやすが……よろしいんで?」

「元々私は理事長とたづなさんを操ったカラクリが知りたかったし、それに松戸君の“あの装置”にも大いに興味が湧いた。しかし今宵、私の求めるモノは何一つ得られなかったからねぇ。期せずして魅力的な研究対象が見つかったよ」

 

 この御仁の本分は科学者で、興味がわく物事にはぐいぐいと喰いつきやす。今夜の一件で、完全に旦那の好奇心に火が点いちまったようでやすなぁ……

 

「ふぁぁ~……ここに来てようやく眠気が差してきたねぇ……朝まで研究室で仮眠をとらせてもらうとするよ。二人とも、大目玉を喰らう前に撤収したまえよ。お休み」

 

 散々やることやって、タキオンの旦那は大欠伸をしながら夜闇の廊下へ消えていきやした……

 まったく、この御仁のブレなさときたら……

 

「……すいやせんね、あの御仁、ああいったコトに目がないもんでやして……」

「ああ、らしいな。もっとも松戸よりは良識はありそうで助かる。……とりあえず、連絡先を交換しておこう。これから先、何が起きてくるかわからないからな」

「あっしとしても、冷峰の事情に詳しい御仁とパイプが出来ると助かりやす」

 

 結局、理事長室にあったとされる“証拠”は持ち去られ、骨折り損のくたびれ儲けに終わっちまいやしたな。

 ただ、“人形師”―――この件の首謀者が冷峰学園の生徒会長だということはハッキリしやした。まぁ、ルドの旦那のコトでやすから、もう突き止めてるんでしょうがね。

 それと、この件を追っているのがあっしらだけじゃ無い上、冷峰の内にも味方がいるってぇ事情もわかりやしたから、収穫が全くないわけではありやせんでしたなぁ。

 奇祭(ハチャメチャGP)まで、あと2ヶ月―――。

 その間でどう事態が動くか……見定めねぇとなりやせんね、ルドの旦那…………。

 

「あ」

 

 情報交換しつつ一緒に廊下を歩いていた早坂の旦那が、何かを思い出したように足を止めやした。

 

「どうしやした?」

「俺が入ってきた場所…………鍵が締められてるな……マズいな、女子校に閉じ込められるとは……」

「……あっしの使ってる“通用口”から出られやすよ」

「む……すまない」

 

 ……少しヌケたところが、そこはかとなく不安でやすな……




東地区学生名鑑
~本作におけるくにおくんシリーズキャラ設定(原作設定とは微妙に異なります)~


早坂(はやさか)  良麻(りょうま)
初登場:ダウンタウン熱血行進曲(1990)

 冷峰学園3年生。
 官僚を目指して勉学に励む秀才で、チャラチャラしたことを好まない、一見硬派な男。
 喧嘩に進んで参加することはほとんど無いが、売られた喧嘩は逃げずに買う主義。以前大人数の不良グループをひとりで返り討ちにしたこともあるらしく、校内では文武両道に秀でる少年として、『冷峰学園事件』以前から一目置かれていた。
 冷峰四天王の望月駿(もちづきしゅん)とは中学時代からの親友。一応、望月派のナンバー2という立場であるが、望月派全体のアットホームな雰囲気もあり、校内での勢力争いには一歩引いている。
 見た目に反して義に篤く、割とノリが良いが、闘志は表に出さず、静かに燃える炎のような性格。
 生徒会副会長とは、生徒会長に対する見解が一致していて、そこから密かに協力しており、副会長の依頼で冷峰学園内外の事件を調査することも少なくないようである。
 クワイトファインとは一見クールだがお人好しなところや、頼まれ事を断れない性格などがよく似ており、割とウマが合うようだ。

松戸(まつど) 京介(きょうすけ)
初登場:ダウンタウンスペシャル くにおくんの時代劇だよ全員集合!(1991)

 冷峰学園3年生。科学部部長。
 様々な最新鋭機器や科学技術を導入し、他勢力の手足となって行動、『冷峰の傭兵部隊』と裏で渾名される、冷峰学園科学部を率いる男。
 それなりの実力はあるものの、表向きはそれを隠しているためほとんど注目はされておらず、校内派閥の勢力争いからも距離を置いて中道を貫いているが、自身の研究に没頭するためにそうした俗世間のことには一切興味が無い、というのが正確。
 前生徒会長が持っていた“超常の力”に対抗心を燃やし、以前からのライフワークであった『他者への変身』の研究に心血を注ぐようになった。
 しかし、研究のためには手段を選ばず、『実験成果』を得るためにはどんな人間の下にも付く節操のない人物でもある。
 アグネスタキオンとはネット上の科学コミュニティで何度か交流した顔見知りであるが、まったく論理が噛み合わず、犬猿の仲となっている。

―――――――――

ハチャウマをプレイしてるんですが、「ゴルシちゃんの大冒険Ⅱ」が面白すぎてストーリーがまるで進められませぬ……
何しろ、「ストーリーを1話クリア→あとはひたすらゴルシちゃん」というプレイスタイルをほぼ毎日繰り返しているので……(笑)

ストーリーはコスモス編はクリアしたのですが、現在はフリージア編の第3話、ローズ編とリリィ編は未プレイです。

ゴルシちゃんの方は1万メートルをどうしても超えられませぬ……金装備もどうにか手に入るようになったんですけどね……
カミナリそうちを愛用している稚拙は異端なんでしょーか。
本サイトと同じく「稚拙」の名前でランキング登録されておりますので、ランキングで見かけたら「あぁ、稚拙はこの程度の実力か」とクスッと笑っていただくと嬉しいです。
……実はマーちゃん推しです。

さて次回からは、ウマ娘×くにおくんシリーズのクロスが本格化していきます。
感謝祭まで1ヶ月を切り、チーム<アルストロメリア>のメンバーが各競技の練習に挑みます。
そして……目次ページのストーリーやタグも更新しました。
……そうです!参加チームはゲーム版の4+3チームを含めた全48チーム(!)
登場ウマ娘総数は驚愕の240名(!!)
原作ゲームを遥かに超えた超絶スケールの稚拙版『ハチャメチャGP』、乞うご期待!!


……また途中で投げ出さないように自戒しますです、ハイ。
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