ウマ娘 バーニングフェスッ!! -アルストロメリア・チャレンジ- 作:稚拙
不肖稚拙、4ヶ月ぶりの投稿です!帰ってまいりました!!
評判がいいと聞いて買ってみた真・三國無双ORIGINSにハマッてしまいまして……
執筆時間が削りに削られ、さらには持病の腰痛にも苦しめられて遅れに遅れてしまって……
ではでは、スズカ姉妹の壁面走行の続きをご覧あれ!!
《未だ嘗てこのような光景を人類もウマ娘も見たことがあるでしょーか!?ウマ娘の脚はついに重力をも振り切った!!『異次元の逃亡者』サイレンススズカだけではない!!妹ラスカルスズカも異次元級だったァ!!》
はーっはっはっはっはーーーー!!!
ディスプレイの前の読者サンたち!!!
あ け ま し て お め で と う ご ざ い ま し た ! !(激遅ッ!!!)
2025年の初回はわたし、ラスカルスズカと姉・サイレンススズカが目出度く重力から解放された、祝いの壁面走行からスタートだーー!!!
前回ラストでポカンとした君たちに説明しよう!
……実はコレ、わたしと姉さんが小学生の時にはもうすでに出来てたんよねぇ。体育館の壁面を走り回って、『
しかし体育館の壁を靴跡だらけにした罪で、当然先生や親から大目玉を喰らってめでたく封印と相成りましたとさ。ま、同級生から一生涯イジられるネタを提供できたんだけど。
……そしてココだけの話。
やろうと思えば
感覚的に、たぶん無理じゃないと思う。
でもやらなかった。……理由?そんなの決まってるっしょ。
目にも留まらぬ疾さで壁やら天井やらを縦横無尽に駆け抜けた日にゃ、絶対『縮地』とか『宗◯郎』ってアダ名を付けられるに決まってるからねぇ。わたしゃいつもニコニコしてるワケでもなし、まして感情欠落しちゃいないよぉ?
まぁつまり―――
「よいこは真似しないでねぇぇぇぇぇ!!!」
―――――――――
「「「いやできるかぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」」」
ドッジボール部の皆さんが一斉にツッコミを入れた。
「ラスカルの奴、あんな隠し玉持ってたのかよ!?」
「…………『縮地』か」
「!?知っているのですかみつひろ!?」
「…………あぁ。『瀬田宗◯郎ウマ娘説』は、ネットでは密かに囁かれていたからな。よもや本物の『縮地』をお目にかかれようとは思わなかったが」
「みつひろお前る◯剣読んでんのか!?」
「……………………アニメも毎週見ている。悪いか?」(ギヌロ)
「い、いや……」
みつひろさんの鋭い眼光に、しんいちさんはビビッてたじろいだ。
しかしこんな中でも、こうじさんだけは―――
「こ、こうじさんは冷静なんですね……」
「ん?……ああ……いや、驚いてるさ。付き合いが長かったせいかな、ラスカルがウマ娘だってことを忘れかけてたからな。だが……」
コートの壁をぐるぐると回るくまさんとスズカ先輩を見つめながら、こうじさんは顎に手を当てて「むぅ……」と唸った。
「…………ここから、どうするつもりだ?」
………………………………
………………
…………
……
「……………………ほわぁ?」
長い沈黙。目を細めているメジロブライト先輩が首をかしげる。
確かに……やってるコトはジョーシキ外れでスゴいって言えばスゴいんだけど、冷静に考えればコレ、『ただ走ってるだけ』だ。ドッジボールと何にもカンケーないぢゃん……
「ただ走ってるだけじゃ、ドッジボールは成り立たないぞ。ボールを持っているラスカルがここからどう動くか……見せてもらおうか……」
こうじさんは、凶悪な笑みを浮かべていた……
「『ウマ娘のドッジボール』とやらを―――」
「お前それシ◯アかよ」
「言うなよ」
―――――――――
……
《さぁついにラスカルスズカが桜にシュートを放った!この速度からのシュートは相当な慣性がかかっているが、この正確な狙い!壁面からのシュートに桜、対応できず肩口にヒットし『20』のダメージ!こぼれたボールを……おぉっと、サイレンススズカすかさずボールを奪ってまた外周へ!完全にスピードに乗っている!そして今度はサイレンススズカがシュート!どうやらスズカ姉妹、小学生桜龍太朗をロックオンしたようだ!》
時速60kmでコートを横切ってんだから、ヘタに触れると交通事故よ?さしもの天才ドッジボール少年も日本代表も手は出せまい。
コートを横断してこぼれ球を確保したらすぐさま壁に戻ってそこからシュート、その繰り返し。パターン入りましたねぇ。
生憎だったねぇ小学生くんよ。キミには“わからん殺し”の餌食になってもらおうじゃないの。
―――――――――
| ウマドッジチャンピオンシップ 模擬戦 | ||||||||
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 1枠 | ラスカルスズカ | 190pt | 306/400 | |||||
| 2枠 | サイレンススズカ | 170pt | 300/400 | |||||
| 3枠 | ひろし | 10pt | 240/400 | |||||
| 4枠 | 桜 龍太朗 | 184pt | 200/400 | |||||
―――――――――
《開始3分が経過!依然サイレンススズカとラスカルスズカはコート外壁を走行中!桜とひろし、徐々にダメージが蓄積しているが……ここで2個目のボールが投入!ここからどう転ぶか!?》
そうだった。ここからはボールが2個になる。
そーいや、ボールを2個使うドッジなんてやったことなかったな……
「……驚きました。確かにこんなドッジは初めてですね……」
2個目のボールを持ったヒロシ兄さんは、前傾姿勢でわたしと姉さんに交互に視線を送る。
「けど、ヒトでもウマ娘に『追いつける』方法はいくらでもありますからね―――」
ヒロシ兄さんは野球のアンダースローを思わせる動きで、すらりと振りかぶると―――
「ボールなら、時速60kmを超えるのは容易いです」
投げられたボールがコートの床に落ちたと思うと、あり得ない猛回転を始めて赤熱、ついには生きた蛇のごとくコートをのたうち始めた……!!
「ぉわあっ!?」 Hit! 20DAMAGE!!
イレギュラーなボールの動きに小学生くんが対応できず、膝に喰らって思わず転んだ。
それだけではない。シュートはヒロシ兄さんの意思が宿ったかのように、今度は外壁を這い上って、壁を走る姉さんを追いかけ始めた……!!
「ボクの『蛇』は壁程度では止まりませんよ」
「ウソでしょ……!?」
それがマジなのよ姉さん……
ハッキシ言って、この人たちのドッジは人智を超えてるのよ。
投げたボールが分裂したり、瞬間移動したりするのは序の口の世界。だから、こんな風にボールを
でもまさか……壁を走るサイレンススズカが光るボールに追いかけられる絵面が出てくるとわ……
「っ……!」
たまらず姉さんはコートの床に戻って足を止めてしまった。“逃げの天才”たる姉さんだけど、長時間の壁走りはキツいか……!
「きゃっ……!」 Hit! 30DAMAGE!!
そこを逃さずボールが足元をすくい、姉さんは尻もちをついた。でもボールの勢いは止まらず、今度はわたしを標的に逆回転してターンしてきた!?
ちょっとコレドッジボールじゃなくてアニメのベイブ◯ードかクラッ◯ュギアじゃない!?それかカブ◯ボーグばりにリモコン操作されてるっぽいけど!?しかも脳波コントロールできるとはいえ程度がヤバくない!?
そしてここにきて、脚に無理が来ていた。屈腱炎明けの脚にはチトキツかったかな……
思い切って壁を蹴って、横へ跳んだ。コートの床に、受け身を取って着地する……!
「……いくらウマ娘でも、長時間壁を走ることは負担になります。いつかは止まらなければなりません」
ヒロシ兄さんの言葉とともに、素早く立ち上がったわたしの視界に、ウネウネとのたうちながら這い迫る必殺シュート……!!
「足を止めれば……容赦なく咬みつきます」
持っているボールで応戦しようと思った時には遅かった。
「くまさん避けてーー!!」
後輩ちゃんの叫びも虚しく、わたしの死角まで潜り込んだシュートが、跳ね上がってわたしの鳩尾を直撃してきた―――
「!!ご…………ッ……!!」 CRITICALHIT!! 90DAMAGE!!!
息が詰まって、思わず片膝をついた。エグいシュートよこりゃ……女の子相手にするシュートぢゃねぇよ……
「ウマ娘の皆さんの走りは素晴らしいです。アスリートとして尊敬しています。ただ、
わたしが取り落としてしまったボールを、ヒロシ兄さんが拾い上げる。
「本気で勝ちたいのなら、もっとボクをビックリさせてください」
そう言い放ったヒロシ兄さんは5、6メートルの高さまで軽くジャンプして見せると、頂点からボールを放った。
空気を裂く音と閃光が迸ったかと思うと、1個のボールが2個、4個、8個、16個、32個……と倍々ゲームみたいに増えて、そのすべてが爆撃のようにコートに降り注ぐ―――
「「ウソでしょ…………」」
「オレまで巻き添えかよォォォォ!?」
―――――――――
トレセン学園体育館の中に、爆弾でも爆発したかのような轟音がけたたましく響き渡った。
灰白色の煙がもうもうと立ち込め、特設コートと体育館は沈黙に包まれた。
そんな中―――
「「「「………………………………」」」」
「「「「………………………………」」」」
あたし、トゥザヴィクトリーとチーム<アルストロメリア>の皆さん、そしてエアグルーヴ副会長さん以下チーム<フリージア>の皆さんは、全員揃ってジト目でこうじさんを見ながら、無言で一斉にコートを指差していた。
いわゆる、『話と違うじゃねーかのポーズ』だ。
「何も違わないだろ。言ったろ?『敵に回すと恐ろしい』ってさ」
「いやいやいや!?あのヒトも大概だよ!?さっき分裂シュート教えてくれた時は3個くらいだったのに!?」
「ボールが何十個にも分裂して……それに爆発するなんて聞いておりませんわ!?」
「投げたボールが生きてるみたいにスズカの旦那を追いかけ回しやしたぜ!?」
「アリエナイザーでありますっっ!!」
「…………今度の“ネタ”に使えるかもしれないわね」
「ほわぁ……………………(呆然)」
「大殺界です!!暗剣殺です!!歳破で本命殺です〜〜〜!!!???」
「……コレは……現実……なのか……?」
8人のウマ娘による一斉ツッコミ(?)がこうじさん達熱血高校ドッジボール部のおにーさん方に向けられるけど……
「……?オレ達だって本気を出せばコンクリートくらいはブチ抜けるぜ?校舎の壁に風穴開けたのはいい思い出だぜ」
「……………………いちろう。『百舌落としシュート*1』をヘリコプターに当てたのは軽く事件だったな」
「みつひろこそ、『加速シュート*2』で300キロ出したじゃないですか」
「……そういうワケだからアレくらいは日常茶飯事だ」
「………………………………」
……え゛?
このおにーさん達、何なの……??
男のウマ娘?
ウマ息子?
人外?
「それに、世界にはもっと凄いヤツらがいた……アレくらいで驚いてちゃ、真のドッジボーラーにはなれんさ」
「…………………………………………」
こうじさんは淡々と語る。
うん、世界は広い。(白目)
くまさん、もしかしてもしなくても、トンでもないヒトたちをコーチに呼んじゃったんぢゃ……
あたし達ウマ娘も、よく『超人』だとか『人間離れしてる』って言われるけど、このおにーさん達にはたぶん……いや絶対負ける。走り以外なら、確実に……
さっきくまさんたちの壁走りにツッコミ入れてたケド、どっちもどっちじゃないッスか……
「……今の一連のプレーにこそ、ひろしの最大の強みが現れている」
「えぇっと……誘導ミサイルシュートや絨毯爆撃シュート??」
「『観察眼』さ。ひろしはプレー中、常にコート内に眼を光らせている。背中にも眼があるんじゃないかってくらい、アイツには試合の全てが見えているんだ。だからこそ、相手の突飛な戦術にも、即座に対応できる。壁も登れる『スネークシュート*3』で壁から引きずり下ろして、『分裂シュート*4』で一網打尽……試合の“組み立て方”……ことに相手の“崩し方”において、ひろしを上回るヤツは日本には居ないだろう」
立ち込めていた煙が、少しずつ減ってきた。誰かが排煙装置を使ったのかな……
「……さて、再開するぞ。ラスカルと姉さんは、ひろしの『眼』をどう潰すかな……?」
―――――――――
| ウマドッジチャンピオンシップ 模擬戦 | ||||||||
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 1枠 | ラスカルスズカ | 190pt | 50/400 | |||||
| 2枠 | サイレンススズカ | 170pt | 50/400 | |||||
| 3枠 | ひろし | 716pt | 200/400 | |||||
| 4着 | 桜 龍太朗 | 184pt | K.O. | |||||
―――――――――
《……ゴホッゴホッ……失礼しました……ひろしによる必殺シュートがコート全体を爆撃!他の3選手全員を巻き込んだ形になりましたが―――おぉっとここで!?4枠・桜龍太朗の体力が尽きているーー!!小学生ドッジボーラー桜龍太朗、無念のKO!4着での脱落となります!!》
「マジかよォォォォォ!?」
どーやら小学生くんに想定外のダメージが蓄積したらしい。
あの時、わたしと姉さんは“ボールの雨”から一発でも逃れようと避けに徹した。何発かは喰らっちゃったけど、まだKO判定はされてなかったようだ。
「ん!?な、なんだぁこりゃぁ!?」
場内にコールが鳴り響いたと思うと、灰色に『⚠️』マークが描かれたミニ気球のアームが小学生くんをキャッチし、そのまま上昇していく。なんともはや、知る人ぞ知る『フルトン回収システム』とはマニアックですなぁ。詳しくは読者のみんなでググってねー。
《KOされた選手はこの『トレセンフルトン』によって、迅速に、安全に、そして強制的にコートから退場しますのでご安心ください♪》
ぅわ、名前までまんまだよ。もっと名前ひねろうぜスタッフよ。
「くぅ〜……情けねえ……ウマ娘の姉ちゃんたち!さっきのスゴかったぜ!またドッジやろーぜー!!」
「ありがとねー。番長にもヨロシク〜♪」
コート外へと運ばれていく小学生くんを笑顔で見送って、わたしはヒロシ兄さんへと向き直った。
これで残りはあと3人。しかしヒロシ兄さんをKOしないと、感動と宿命の姉妹対決にはならないワケで。
「さて、あとはヒロシ兄さんだけだねぇ」
「チーム戦じゃないんですよ、もう……」
苦笑いする兄さんだけど、目だけは笑ってない。ありゃマジね。ウマ娘2人相手に勝てる顔よ。
「ラスカル。私、試してみたいことがあるの。いい?」
「面白そうですな。どれ、近ぅ」
姉さんの方から提案とは。だんだんドッジボールに慣れてきたみたいで何より。
それに多分、わたしの策はヒロシ兄さんにはもう通じない。勝手知ったる後輩の悪足掻きよ?聖◯士とアニヲタに二匹目のドジョウは通じん。これもはや常識。
しかし姉さんが何を言い出したかというと―――
―――――――――
《さて、スズカ姉妹は再度作戦タイムでしょうか……?サイレンススズカ、ラスカルスズカに耳打ちをしておりますが……解説のしんいちさん、どう見ますか?》
「さっきの壁走りはもう使えねぇだろうぜ。サイレンス
くまさんとスズカ先輩はコート上でヒソヒソ話を始めてた。小学生の桜くんがKOされたけど、まだ最恐の敵・ひろしさんが残っている。果たしてスズカ先輩姉妹に勝ち目はあるんだろーか……
《ボールはサイレンススズカとラスカルスズカが所持、ここから2人同時にシュート、という展開も考えられますか?》
「そりゃありきたりだな。ひろしも想定済みだろうよ。それに……」
しんいちさんはくまさんの顔を見た。くまさんは―――ぅわ、悪い顔。ありゃ絶対何かアレなコトを思いついた顔だよ……今度はスズカ先輩がくまさんにヤバめなコトを吹き込んだと見た。
「ラスカルは勝つ気でいるぜ。目が死んでねぇ。姐さんもだ」
「……………………注意するべきは……姉の方だな」
「同感ですね。今回の作戦提案はサイレンススズカさんみたいですし」
「しんいち、さっきサイレンススズカに隠し玉は無いって言ってたな?」
「う、うっせータコッ」
ドッジ部のおにーさん達も注目する中、くまさんはひろしさんをまっすぐ見据えた。そしてボールを―――
《ラスカルスズカ、シュート……ではなく!?ボールを上へ放り投げた!?》
瞬間―――
スズカ先輩がシュートの態勢に入った。
《その後方からサイレンススズカがシュー……―――》
―――ダンッッッッッッッ!!!!
何かの破片がくまさんの足元から弾け飛んだと思うと、くまさんが消えた。
いや―――違う。すぐにあたしは視線を移す。
くまさんはひろしさんの背後に回っていた。さっきのはキョーレツな踏み込みでコートの床面が砕けたんだ。ってコトは、純粋な脚力だけで一足飛びに10メートルほどをステップで踏み込んだってコト!?くまさんパねェっす!?……今度マネしてみーよぉっと。
《―――……ト!しかし勢いが無い低速!牽制なのかそれとも》
―――――― / ――――――
「ぐッ!?」 Hit! 20DAMAGE!!
……………………………………え?
たぶん、あたしだけじゃない。
その場にいる誰もが目を疑った。
《…………?……な………………何が……起きたのでしょ……え?…………えええ!?》
実況さんも絶句しているのであたしが説明しよう。
くまさんがひろしさんの背後に回ったのを見計らって、スズカ先輩がごく低速のシュートを放った。しかし、だ。
そのボールは何故か、次の瞬間には
そしてくまさんはガラ空きのひろしさんの背中目掛けてシュート、命中した―――
ついでに説明すると、くまさんが最初に上に投げたボールは、誰にキャッチされること無くそのまま落ちてきてコート上でバウンドしていて、くまさんはこのボールを投げたわけじゃない。
この間のボンドちゃんだけじゃない。今回はこのスタンドにいる全員がポルナ◯フ状態だった、いや……
「今回はキング・ク◯ムゾンでありますかっ!?!?」
そう、それだボンドちゃん。
スズカ先輩の投げたボールが飛んでいって、くまさんの手に収まるまでの『過程』が抜け落ちてしまっている……!!
「あ、あの、こうじさん……あーゆーの、出来るヒトっているんですか……?世界に……??」
「……いると言えば、ひとりだけ、いる……アイスランド代表キャプテンの『ヘイルマン』だ……ボールが消える『ワープシュート』の使い手だった」
「ワープシュート……!?スズカはそれを再現した、と……!?」
「なんと!?摩訶不思議なっ!?」
「だが……ヘイルマンのワープシュートは、独特のスピンを掛けながら強靭な腕力で投げることで、ボールが
「ああ、だな……さっき、あの3人は完全に一直線上にいた……ヘイルマンと同じ原理なら、ひろしにヒットしてなきゃおかしいぜ……!」
「“空間を切り取って飛んだ”……そうとしか……!!」
「つ、つまり……」
「……………………
みつひろさんが厳かに呟き、そして―――
体育館は騒然と沸いた。
―――――――――
「……ホントにやっちゃったよ姉さん……」
超展開過ぎてヤバいわ、マジで。
さっきはヒロシ兄さんへのハッタリのつもりで悪い顔をしてみせたけど、まさかねぇ……
錯覚なんかじゃない、ガチでワープするワープシュート。そしてそれを応用した
確実に言える。
姉さんはこの宇宙の法則を超えた。
「出来たわねぇ。ふふっ♪」
「ふふっ♪、て……いやいや?ソレってすんなりと出来ないからね?フツーのヒトには無理だからね??」
この模擬戦をアグネスタキオンに見られてなかったのが、ある意味ラッキーかねぇ。まぁ、時間の問題だろうけど。
「『勝ちたかったらビックリさせてください』とは言いましたが……本当にビックリさせてくれるとは思いませんでした……サイレンススズカさん。……一体、どうやったんです?」
ヒロシ兄さんもドッジボーラーとして、純粋な興味があるようだねぇ。
「どうって……このドッジボールの練習をしてる時、『もっと速く、もっと遠くへ』って思って投げたら、ボールが一瞬消えたように見えて……今日は練習の時以上に、強く心に念じて投げたんです。そうしたら……出来ちゃいました☆」
「思って心に念じた、って……」
ね?ありえんでしょ?
わたしだって未だに半信半疑でワケワカメなんだから。
「……解説さーん?」
意地悪に話をスタンドに振ってみる。さて、コレの原理を説明できるヒト、いるかなー?
―――――――――
「いやわかんねーよ!?こっちに振んな!?お前の方が近くで見てたろ!?」
慌ててしんいちさんが首を横に振った。
「…………これはあくまでも、あっしの推測でやすが……」
神妙なカオをしたクワイトちゃんが、アゴに手を当てながら語りだす。
「一部のウマ娘の御仁が、レースの最中に剣やら薙刀やらをどこからともなく出してきて振り回す情景を見たことあると思いやすが……要は“アレ”と同じ……じゃぁないかと」
……言われてみれば。
グラスワンダー先輩やエイシンフラッシュ先輩のアレ、どーやってるんだろうかと疑問に思ったコトは何度かある。
「確かに……メジロライアンさんがレース中に突如筋トレを始めたのを見た時は驚きました……そして数秒後、何事もなかったかのように再開されるレース……
いちろうさんが得心したように頷く。
そーいえば、スペお姉さまもレース中に『変身』してたし、アレって幻覚とかじゃなくってみんなに見えてたんだ……
「ウマ娘の『思考』……もっと強烈な『感情』や『情念』、或いは勝利への『執念』……それらがある一定の段階を超えた時、ウマ娘は自身の限界以上の力を内から引き出すことが出来る……と、聞き及んでおりやす。『ソレ』を、自身の身体のみならず、『ボール』という『媒体』を通して、『自身の外』へと波及出来たと仮定すれば……」
「非現実的……ではないな。現に起きてるから、仮説とは言い切れないよ」
こうじさんは苦笑いしながら頷いた。
……それにしても。
「クワイトちゃん、なんかアグネスタキオン先輩っぽかったね。科学とか詳しいの?」
「……いやいや、ニワカ齧りでさぁ。まぁ最近、あの旦那とは奇妙な伝手が出来やしてねぇ。時折御高説を賜わっているところでござんすよ」
へえ、アグネスタキオン先輩とクワイトちゃんが、ねぇ……あまり接点無さそうだけど。
「……つまり……」
それまでずっと、言葉もなく目を細めていたメジロブライト先輩が、ぽつりと呟く。
「『強く想えば』、わたくしたちウマ娘なら、
……ん?今どんなシュートもって―――
―――わぁぁぁぁぁああぁぁぁ!!!
地の文でお馴染みの返しをしようとしたら、それはもう凄い歓声が周りから鳴り出した。
ってか、いつの間にか体育館のスタンドが満員御礼になってる!?
最初は4人しか『偵察』がいなかったのに、もうこんな数のウマ娘が!?
有名どころの先輩・後輩ウマ娘もちらほら見えるし……くまさん、『大穴ウマ娘作戦』は失敗っすよ〜……
―――――――――
「瞬間移動シュート、私も投げてみたい!」
「相手を追っかけて必ず当たるシュートもイケるんじゃね!?」
「ボールを巨大化させたりとか……」
「爆発する炎のシュートなんてどう!?」
……観客席のそこかしこから物騒な発言が。夢がひろがりんぐですなぁ。
「……正直、ボクは甘く見ていました。ウマ娘さん達とはフィジカル面で明確に差はあれど、ドッジの経験とテクニックで容易に埋めた上で、さらに凌駕出来ると踏んでましたが……」
ヒロシ兄さんは、観念したように笑っていた。
「……『心』だけで必殺シュートをポンポン投げられたんじゃ、立場がないじゃないですか……」
「まぁまぁ、気を落とさないでよ。不可抗力みたいなもんだし。でも……」
わたしはちょうど転がってきたボールを拾い上げた。
「使えるもんは使わせてもらうね❤」
―――『速く走る』ことをイメージしながらボールに伝えて投げ飛ばす……っと。
これでお手軽に必殺シュートが投げられたら、せっかく練習してコツ覚えた昔のわたしは何だったんだって―――
―――ギュゥン!!!
ボールが投槍のように細長く変形して、鋭く飛んだ。これって『貫通シュート』じゃん!?
案の定、こちらはヒロシ兄さんも見飽きたシュートだったらしく、あっさり止められてしまった。
……けど。
「……いやホント、立場無いわ、昔のわたしよ……」
……専門的なテクニック云々関係無しに投げれちったよ、必殺シュート。こりゃお手軽すぎる。わたしが必殺シュートを投げるために汗水流した2ヶ月の青春、クーリングオフできんかねぇ?
あと同時に、ボールに『同じ思考』を流し込んでもウマ娘によって個人差が出ることもハッキリした。『速く』っていうイメージでも、姉さんはワープシュートに、わたしは貫通シュートになった。……となると他のコたちも別々の……
……って、今練習試合中よ?頭タキオンになってどーすんのよ。
「面白くなってきましたね……ラスカルさん、サイレンススズカさん!遠慮は無しで行きましょうか!」
らしくなくイイ笑顔になったヒロシ兄さんがスネークシュートを放つ。右に左に、上に下にと曲がりくねるボールが迫る―――
その目前に、また別のボールが瞬時に現れてぶつかり、イレギュラーした2個のボールは別れて飛ぶ。
「……もしかして完全にコツ掴んだ?」
「そうね。今も『思った通り』の場所に、ボールを『跳ばせた』から」
真後ろに振り返ると、案の定姉さん。もはやこのコート内なら、思い通りの座標にボールをワープさせられる空間跳躍能力者と化したサイレンススズカの明日はどっちよ?
「気を抜かないで。彼を“差す”わよ」
「……合点!」
ついに姉さんが勝負師の
「……!『ナッツシュート』まで……!!そのシュートを投げられるとは……警戒せざるを得ませんね……!」
投げられたボールがナッツ状に変形するほどの超高速球だから名付けられた『ナッツシュート』―――『番長』の十八番。かつて高校生ドッジボール世界大会で、『番長』はこのシュートで名だたる世界の猛者達をコートに沈めまくったとか。
ヒロシ兄さんは『番長』の一番の親友だから、その伝家の宝刀をカンタンにモノマネされたことを腹に据えかねてるようで、顔は笑っていても目がマジだ。
「……叩きます!」
サイドスローから放たれる『スネークシュート』。左右に曲がりくねりながら迫ってくる……
……けど!
「見える!」
ニュータイプばりに、額にビビッとスパークが走る感覚。そして―――正面からガッチリ―――
―――バシッ!!
「捕れたよ……!」
必殺シュートだって所詮は物体、見切れない道理はないってモンよ。こちとら生身で時速60km出して走る仕事してるんだ。
ウマ娘の動体視力、
《ラスカルスズカ、先程翻弄されたスネークシュートを真正面からキャッチ!これは完全に見切ったか!》
「勝ちは見えたよ、ヒロシ兄さん!―――姉さん、アレを使うよ!」
「アレ?……
どっちなんですか姉さん。
しかしここは姉さんの勢いに乗った時の真っ直ぐさと、なにより彼女がわたしの姉さんであることに賭ける!
壁に向かって走り出して、蹴って、コートの中央へ跳ぶ!
姉さんは―――よし、合わせてくれた!併せウマなり、ビンゴでドン!
これが、ウマ娘のドッジだ!!
「喰らえ、超必殺合体攻撃!!」
「ぐああぁぁぁぁぁぁッッ!!!!」 CRITICAL HIT!! 120DAMAGE!!!
空中で交差したわたしと姉さんからの同時ナッツシュートがヒロシ兄さんの土手ッ腹に突き刺さり、兄さんはコート奥までワイヤーアクションのように真っすぐ吹っ飛び、壁に激突して止まった。
最初に姉さんも同じ吹っ飛ばされ方してたけど、なんとまあドラゴ◯ボール的な……コレが本番で繰り返されると思うとヤバいねぇ……
「……あはは、やられちゃいました」
そう力なく笑うと、兄さんはホコリを払いながら立ち上がった。
「その調子なら、相手が同じウマ娘の皆さんでも、互角以上に戦えるでしょう」
「……兄さんのお墨付きを貰えるとは嬉しいねぇ。本気出した甲斐があったよ」
「『想い』だけで、自由にチカラを引き出せるその才能……同じアスリートとして、この上なく羨ましいですよ」
「兄さんたちだって大概じゃん」
「そう言ってもらえると、嬉しいですね。では、これで」
兄さんをフルトンが掴んで、コート外へと運んでいった―――
……さて。
「……ようやくふたりっきりになれたね。みなさんおマチカネの姉妹水入らずだよ」
「ラスカル……」
「決着、つけようよ。ファン待望の姉妹対決といこうじゃあないの」
「―――いいわよ。私と離れてた間に貴女が身に着けた力……見せてちょうだい。……でも、私の方が前に行くけど」
「……言ってくれるじゃん」
ま、そうじゃなきゃ、姉さんじゃない。
これがやりたくて、わたしはこのコートに立ったんだからさぁ!
「楽しもうよ、姉さん!仲良くぶつけ合いと行きましょーーかぁぁぁ!!!―――」
たぶんこの時、わたしは最高にイイ顔してたと思う。今まで当然のようにわたしの前を走り続けていた姉さんを追い抜ける。そう思ったらハイになるしかないっしょ!!
―――ピッ!ピッ!ピーーーーーーッッ!!
んだよこの音水差すなっての。これから待ちに待った姉さんとの勝負―――
《あーっと、こ・こ・でタイムアップ〜!!試合終了です!》
「…………………………………………ゑ?」
―――――――――
| ウマドッジチャンピオンシップ 模擬戦 | ||||||||
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 1着 | ラスカルスズカ | 450pt | 50/400 | |||||
| 1着 | サイレンススズカ | 450pt | 50/400 | |||||
| 3着 | ひろし | 716pt | K.O. | |||||
| 4着 | 桜 龍太朗 | 184pt | K.O. | |||||
―――――――――
《なんと!!サイレンススズカとラスカルスズカ、同着!同着です!!ただ二人生き残り、さらに得点も同点!!なんという結末でしょうか!!姉妹対決の決着は感謝祭本番へと持ち越されることとなりました〜〜!!!》
「…………マジで?」
スコアボードを見て、愕然呆然。
どうやらヒロシ兄さんとの“会話イベント”が想定以上に時間を食ってたっぽい。イベント中はタイマー止めておくれよ……無駄な時間経過はRTAの敵だッ。
「終わっちゃったわね……」
「…………ッか〜〜〜〜〜〜っ……!!!」
もうね、瞬間脱力よ。わたしはボールを取り落としてコートに大の字にばたんきゅー……無機質な体育館の天井とライトの光が眩しく視界に射し込んでくる。
「…………っっはははは……イイ汗かいたわぁ〜…………」
「勝負を決められなかったのが残念ね」
「まったくよ……てか、面白かったろ?姉さん。コレが『走ること以外』の世界。ホンのハシリ、だけどね。……実況ちゃんも言ってたけど、どーよ?本番」
「そうね…………考えておくわね♪」
「あ、コレ出ないパティーンや」
思えば、こうして姉さんと話すのも久しぶりな気もする。普段は姉さんに気を遣ってほとんどわたしから話しかけないようにしてたから、プライベートな姉妹の会話ってのがほとんど無かった。寮は同じだけど、ちょいと遠慮しがちだったのかもね。
「―――お互い、頑張りましょう。“みんなで見る先頭の景色”のために」
「“みんなで見る”……か。……うん。そだね」
でもま、姉さんがいい方向に変わっていってるのはよくわかった。『みんなで』なんて、“先頭マシーン”だったころの姉さんだったらまず言わなかったし。
「楽しくやろーよ。……みんなで、ね♪」
わたしも……まぁ、頑張ってみようか。
図らずもカワイイ後輩が4人も出来たことだし―――
「くまさーーん!」
この子に引っ張られて『先輩』始めてみたけど、まぁ悪くないね、コレ。姉さんもスペちゃんって後輩ができて変わったように、わたしも変わっていってるのかな。
後輩ちゃんやチームのみんなに手を振り返しながら、わたしは思う。
―――後輩ちゃん達と、見たことのない景色……見れたらいいな。
―――――――――
でもまぁ、しんみりと終わらないのがトレセン学園のウマ娘なわけでして。
この後、後輩ちゃんたちや副会長たちもわたしと姉さんに続けとばかりに鼻息荒くして熱血ドッジ部の兄さんたちとの模擬戦に挑んだわけだけど―――
プボちゃん&ブライトのズブっ娘コンビは小柄ですばしっこいイチ兄さんに一撃も当てられずにパーフェクト負け。
お嬢ちゃん&ドーベルのお嬢様コンビはキャッチの鬼のミツ兄さんに必殺を含む26発のシュートを全弾キャッチされて手も足も出ず。
始末屋ちゃん&フクキタルの正反対コンビはシン兄さんの容赦ない必殺シュートの嵐に轟沈。
そして、みんなの期待を背に出陣した後輩ちゃん&副会長のリーダーコンビは……
「や、やられちゃったっす〜〜……」
「これが世界の実力、か……」
コージ兄さんにコテンパンに叩きのめされましたとさ。
結局、世界一のドッジボーラー相手に爪跡を残せたのはわたしと姉さんだけ、というオチがついたのだった。
あ、それともうひとつこんな後日談もあるんよ。
この模擬戦が終わってから、ウマドッジの模擬戦は必殺シュートが乱れ飛ぶ修羅の巷と化した。
超速球に分身魔球に誘導魔球、なんでもござれの無法地帯。あげく炎やら雷やら氷やら……ウマ娘は自然現象すら操る術を得たのだ。近い内に魔法学校か忍術学園に変わらね?この学校。
まぁ、『ウマ娘なら誰でも必殺シュートが投げれる』なんてわかったら、使いたくなるのが
あとわたしと姉さんが繰り出した、いわゆる『壁走り』もちょっとした流行を見せた。体育館に来てみれば、誰かしらがウマドッジコートの壁をぐるぐると走ってる。そんな恐るべき光景が日常の風物詩となった。
……んだけど、一週間経った頃に理事長と生徒会の連名で壁走り禁止令が出されてしまった。理由は単純明快だった。理事長、どーぞ。
「危険ッ!」
……ありがとうございます。
まぁそれと、試合展開の単調化の防止という観点でも理に適ってるだろーし。
こうして“スズカサーキット”は再び歴史の闇に葬られたのだった。
……でも理事長。
必殺シュートは禁止ぢゃないんすね。
―――――――――
「……これは……凄いコトになってきたかもね」
体育館で乱れ飛ぶ、人智を超えた必殺シュート。
観覧席の出入口の扉にもたれ掛かりながら、ひとりのウマ娘が横目でウマドッジの模擬戦を見つめていた。
「ウマ娘だけが持つ不思議な力……やっぱり、間違ってなかった……!」
そのウマ娘はウマホを取り出してとんとんとひとしきり弄ると、口許に笑みを湛えてコートに背を向けた。
「……すべては冷峰学園の……“あの方”の大願のために……―――」
さてここまで読んでくださってひとつ。
……スコアに関してはツッコまないであげてください。
実はダメージ計算はまったくの適当、最後の「同着」ありきで勢いで書いていたものでして……
まぁその……本作はノリで出来ております故……
次回……正義の不良は1人じゃない。