ウマ娘 バーニングフェスッ!! -アルストロメリア・チャレンジ-   作:稚拙

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トレセン学園に迫る魔の手!
立ち上がるのは……誰だッ!?


感謝祭2ヶ月前 結成、チーム<アルストロメリア>ッ!!
1枠 マスク・ド・テーストッ!!


 最初にあたしが見たそのウマ娘は、まるで太陽みたいだった。

 東京レース場の最終直線。“一生に一度の晴れ舞台”ともいわれる、すべてのウマ娘にとっての憧れのレースを先頭で駆け抜けていったその姿に、あたしは一目惚れしてしまった。

 

 ―――いつかあたしも、あの人みたいに。

 

 ドキドキとキラキラとワクワクで、あたしのココロを埋め尽くした、白と紫の勝負服。

 勝つための走りを、絶対に諦めなかった、不屈のウマ娘―――

 

 あたしは、心一杯の尊敬と憧れを込めて、こう呼んでいる―――

 

 

 ―――――――――

 

 

「…………スペお姉sがッ!?」

 

 額に重い衝撃を受けたあたしは、そのまま椅子ごとスッ倒れてしまった。

 気付くと、教室の天井だけが、視界一杯に入る。

 

「……知ってる天井だ」

「当たり前だ」

 

 天井だけが映る視界に、ぬっと入ってくる怒り顔。

 

「……スダホーク先生?」

「よく分かってるじゃないか。私の授業で居眠りするとはいい度胸だな〜……トゥザヴィクトリー」

「あ…………あはは………………」

 

 ―――――――――

 

 ―――ここは、人間と、異世界の『馬』と呼ばれる生き物のうち、とりわけ優秀な存在の名と魂を受け継いだ不思議な女の子『ウマ娘』とが共存する世界。

 

 ―――彼女たちは、走るために「おいおい…………何を今更説明してるんだい?」

 

 ―――名前と魂を受け継ぎながらも、この世界で走る少女たちに待つ未来は、誰にもわからない。

 彼女たちは、それでも走り続ける―――

 

「走り続ける……そうだねぇ。でもそれこそ今更じゃないのかい?ウマ娘が何のために走るのか……それを問うのは野暮ってものさ。『走る』。その行為そのものに―――」

 

 

―――四の五の理屈はいらないのさ。

 

 

―――さぁ、準備はいいかい?

 

 

―――ウマ娘諸君。

 

 

―――――――――

 

「大丈夫?ヴィクトリーちゃん……」

「う、うん……まだちょっとジンジンする……」

 

 授業が終わると、隣の席のリスグラシュー(シュー)ちゃんが声を掛けてくれた。

 

「寝不足なのかなぁ……なんか最近、疲れが取れにくいってゆーかさぁ」

「そんなトシじゃないでしょ。保健室行く?」

「……やぁよ。()()()にブスッてやられたくないし」

 

 しかしその不審者をお母さんみたいに慕っている先輩もいるという。まったく、トレセンは広い。

 

 ……さて、そんなわけで今回、メインの地の文を頼まれちゃったのはあたし、トゥザヴィクトリーでございます。

 スペシャルウィーク先輩、いやさ『スペお姉さま』のダービーを見て一目惚れ、あの人の隣を夢見ながら必死の猛勉強、すったもんだがありましてようやく入学叶ったトレセン学園で、さっそくチーム<スピカ>入りを目指して模擬レースに挑んだけれども見事に轟沈……。

 しかしそれでも諦め切れず、こうなったら少しでもお姉さまの一挙手一投足をこの身に刻むべくストーk……ゲフンゲフン、朝から晩まで観察しようと常にお姉さまに気付かれないように見届けていたところ、ある日の放課後―――

 サングラスをかけた怪しいウマ娘3人組に麻袋に入れられてさらわれちゃった!ヘルプミーマ◯オ〜!

 そうして連れてこられた先にはなんとお姉さま!そう、ここはチーム<スピカ>の部室だったのです!

 そこで出会ったキャンディー無礼無礼(なめなめ)トレーナーさんにトゥインクル・シリーズとお姉さまへの情熱を語り浴びせて拝み倒し、あたしは根性と執念でチーム<スピカ>に転がり込んだのだった!やったぜ!!

 メイクデビューで堂々勝利、つばき賞でも勝ってオープン入りを果たし、いざクラシック級はティアラ戦線へ!栄光のチーム<スピカ>の末妹として、そしてお姉さまの妹として、トゥインクル・シリーズに我が名を刻むのだ!

 ……でも桜花賞で3着、オークスでは直線までは勝てると思ったのに惜しくも抜かれて2着、秋華賞に至っては13着とワースト記録……オークスと秋華賞で1番人気をもらって期待されてたのに、それをことごとく裏切り、世間にため息をもたらしたあたしを、人はこう呼ぶ―――

 

 『ザンネンなウマ娘』、と。

 

 そして現在、あたしはトレーナーに無期限休養を言い渡され、シニア級の初戦をいつにするかトレーナーと相談しつつ、トレーニングしながら惰眠をむさぼるという、なんか矛盾した毎日をだらだらと過ごしているのです。はい、これが今までのあらすじ。

 だから今のあたしは、学生生活にも選手生活にも新たな刺激を見つけ出すことが出来なくて、だらけちゃってるワケでして……

 

「あ~あ……なんかさぁ、こう寒くちゃいろいろやってらんないよねぇ」

「またそんなこと言って……スペシャルウィーク先輩が今のヴィクトリーちゃん見たら悲しむか呆れちゃうか三行半(みくだりはん)だよ?」

「う゛っ……」

 

 それを言われるとあたしゃ弱いのヨ。

 確かに今のあたしをお姉さまに見られた日には、千年の恋も強制冷却だ。手前勝手に『妹分』を名乗っている以上、だらけるのはよくない、うん。

 それに、だ。シーザリオ(シー)ちゃんとブエナビスタ(ブエナ)ちゃんにも醜態は晒せない。入学式の当日にお姉さまの話題で話が弾んで仲良くなったふたりは、あたしよりも先にティアラ戦線に挑んで、スゴい成績を残している。そんな中で、お姉さまのチームメイトになれたあたしが情けない成績しか残せないのはアレでしょーに。

 

「な、なんてーかさ、刺激だよ刺激!もっとこう……あたしにハッパかけてくれるよーな刺激があればやる気が出てくる気もするのよ!」

「他力本願だねぇ……」

 

 そう、今のあたしに必要なのは『刺激』だ!

 トウガラシ的、スパイス的ハラペーニョなハバネロサムシングだよ。この退屈な学園生活を劇的にビフォーアフターしてくれるドラマがあればなぁ……

 

 

 ………………なのら~!

 

 

「……ん?」

 

 最初はチャルメラの音かと思ってしまった。いやいやいや、ここは天下のトレセン学園よ?ラーメン屋台が学園内を歩いてるわけないぢゃん。……ファインモーション先輩がラーメン屋台を引いてたって目撃情報があったけど多分無関係だろう、うん。

 ってかなんだろう?そう思ってシューちゃんと一緒に教室を出てみると。

 

「ご〜がいなのら〜!すく~ぷなのら〜!!りじちょ〜がなにかやらかすつもりなのら〜!!」

 

 新聞部のハリボテエレジー(ハリボテ)ちゃんが新聞をバラまきつつ廊下を練り歩いていた。

 

「何コレ?」

「わが『しんぶんぶ』がすっぱぬいたしょ~げきすく~ぷなのら!えっへん!」

 

 得意げに胸を反るハリボテちゃんを尻目に、あたしは学生新聞に目を落とした。

 

〈ウマ娘の常識を根底から覆す!?秋川理事長重大発表か!?本日午後2時より講堂で!〉

 

「コレは……」

「くわし〜ことはハリィもしらないのら!とにかく?このみちをいけば〜ど〜なるものか〜♪いけばわかるのら〜!」

 

 そう歌いながらハリボテちゃんは新聞をバラまきつつ行ってしまった。

 

「こら〜!新聞をバラ撒くな〜!誰が片付けると思ってるんだ〜!?」

 

 ハリボテちゃんの後ろを、風紀委員のタイトルホルダー(タイホ)ちゃんが追い駆けていったが、それをあたしは見ていなかった。何故なら、あたしはタブロイド判を握り締めたまま心を熱くしていたから。

 

「……ヴィクトリーちゃん?」

 

 あたしはシューちゃんに振り返った。

 

「…………キたんじゃね?コレ」(ニヤリ)

 

―――――――――

 

 そして時は午後2時。

 講堂は例の怪情報の真偽を確かめようと、多くのウマ娘でぱんぱんに膨れ上がった。

 

「す、スゴいヒト……」

「早めに来て正解だったねぇ」

 

 熱気が凄い。というか、なんか霧か雲みたいなのが講堂に浮かんでる。アレって噂の『コミケ雲』!?

 

静ェェェェェェェェ粛ッッッッ!!!!

 

 マイク越しの気合一閃、講堂が一瞬で静まり返った。

 と、次の瞬間、講堂の舞台両端からぷしゅーーーー!!と白いガスが噴き出る。テレビのバラエティ番組でよく見るアレだ。あんなものいつの間に仕掛けられてたんだろーか。

 

《ハーッハッハッハッハーッ!!歓迎ッ!!よく来たなウマ娘諸君!!私は諸君を恐怖と絶望のズンドコに叩き込むためにやってきた地獄からの使者―――》

 

『マスク・ド・テースト』だッッッッ!!!!

 

 舞台上には、汎用勝負服(スターティングフューチャー)のブラックバージョンみたいな服を着て、額に『北味』と書かれた真紅の覆面を被った、小柄な女の子がいた。さらに頭の上には覆面を被ったクロネコまで。何か見た事があるし、聞いた事がある声だ。

 さらにその横から、

 

「秘書を務めております、『ジ・イリュージョン』です♪」

「あたしが来たからには……ワォ、あんし~ん……できないわよぉ★『ニードル・ザ・セブンティーン』よぉ★おいおい★」

 

 このふたりも覆面とブラック勝負服だった。それともちろん、あたしを含めてセブンティーンと名乗った不審者にノリツッコミするウマ娘は誰もいなかった。

 そ、それにしてもあたしたちは一体何を見せられているんだ……!?中央のマスク・ド・テースト以外ちょっと無理がある漆黒の汎用勝負服を着た不審な3人組……いったい何者なんだ……!?暗黒聖闘士(ブラックセイント)か何か……!?

 あ、ジ・イリュージョンがこっち見た。睨まれた……?背筋にぶるっと来た。あの視線、やっぱり見覚えが―――

 その時、「ちょっと!?」と声を上げて立ち上がったふたりのウマ娘がいた。

 

「理事長はどうしたのッ!?あたし達は理事長の重大発表があるって聞いてココに来たのよ!?」

「理事長をどこへやったの!?答えなさい!!」

 

 正義感が強いテイエムプリキュアちゃんとクィーンスプマンテちゃんだ。そーいやこの二人、『プリファイ』好きなんだっけ。詰問もどことなくプリファイじみてる。いやぁ、カッコカワイイなぁ。

 このふたりに続いて、「そーよそーよ!」「重大発表はどーなったんだー!」「理事長を解放しろー!」と各所から怒号が飛ぶ。だがマスク・ド・テーストは不敵に笑った。

 

「フッフッフ……まぁ落ち着きたまえ!理事長は然るべき場所にて丁重ッ!にもてなしを受けている!諸君らが心配することはないッ!」

「あたし達は理事長さんの代・理★貴女達に最高のエンターテインメントを提供するために来たのよ〜★」

「来たる『春の感謝祭』……そのメインイベントをここで発表するのです!」

 ジ・イリュージョンの言葉に、講堂内がどよめいた。重大発表って、感謝祭イベントの発表でしたか、なるほど。

 

「刮目ッ!さぁ見るがいい!そして怯えるがいい、竦むがいい!!ウマ娘の性能を活かせぬまま、恐怖と絶望に身をよじれ〜〜!!」

 

 とたん、講堂がブラックアウトして、スクリーンにPVじみた映像が映し出される。

 

 

 ―――刻々と変化するコートに注意しながら、スーパーシュートでボールをゴールに叩き込め!刮目せよ、これが新時代のバトルロイヤルバスケットボール!!『バスケット奪取ステークス』!!

 

 ―――やるかやられるか、体力が尽きるまで戦うデスマッチドッジボール!今、コートの上は無慈悲なコロシアムと化す!!『ウマドッジチャンピオンシップ』!!

 

 ―――試される絆と食欲!仲間とともに胃袋の限界を超越せよ!!『大食いダービー』!!

 

 ―――府中市そのものが巨大なレース場と化した究極のサバイバルレース!ゴールへの手段は問わない!立ちふさがるあらゆるものを破壊しつくし、誰よりも速く駆け抜けろ!!『ファン感謝祭大障害』!!

 

 

「これぞ、トレセン学園春のファン大感謝祭特別メインイベント!!その名も『ハチャメチャGP(グランプリ)』ッッ!!!4種の過激極まる極限競技(ハイパーエクストリームスポーツ)を!5人一組のチームを組み!戦って!戦って!!戦い抜き!!!最終成績でトップとなったチームのウマ娘たちに、最強のウマ娘『ウマ娘・ザ・ウマ娘』の称号を贈るッ!!そして副賞として、理事長栽培のにんじん1年分と、このトレセン学園購買で使用できる商品券5万円分が!!5人全員に授与されるのだッ!!!」

 

 ……………………

 

 …………

 

 ……

 

 

 

「………………あ、あのぉ……『ウマ娘・()・ウマ娘』じゃないkうおおおおおおおおおおおおおおおををををををををををををを!!!!!!!!!!!!!!!!!!

 

 

 マスク・ド・テーストの宣言に講堂内はどっと瞬間沸騰し、シューちゃんのツッコミは哀れにもかき消された。

 ってか声太ッ!?野太(ノブト)ッ!?え〜と……ウチ、曲がりなりにも女子校だよね?カワイイ女の子しかいないよね?スクールアイドルみたいなモンよね?なのになんで蛮族の雄叫びが響き渡るワケ!?

 

「す、すげー!!面白そうじゃねーか!!」

「最強のウマ娘、『ウマ娘・ザ・ウマ娘』!悪くない響きですわ!!」

「商品券5万円も魅力ね……親から仕送り止められちゃってピンチなのよ!」

「腹一杯食べられて商品券と1年分のにんじんまでもらえるとは……いいな、タマ」

「だ、騙されたらアカンで……きっと裏があるハズや……せやけど商品券……欲しいし……」

 

 コレで沸かないウマ娘はいない。もちろん、あたしも。

 そして物で釣ろうという原始的集客法にも逆にそそられてしまった。この20XX年の令和の世に「モノで釣る」!!なんと潔い!あたしは感動した。強力でいいじゃないか!!

 

「コレよ……あたしが待ってたの、コレだ……!!劇的ドラマがkt(キタ)kr(コレ)!」

 

 あたしのだらけきった退屈な日々よ、さらば!しかもせっかくのチーム戦、スペお姉さまと一緒に颯爽と参戦、お姉さまの前でカッコよく勝って見せれたその暁には―――

 

―――凄いよ、ヴィクトリーちゃん!これなら、<スピカ>の未来も安泰だね!

 

―――いや〜それほどでも〜えへへ〜……

 

―――とっても速くてとっても強いヴィクトリーちゃんのコト、私、大好きだよ❤ちゅっ❤❤

 

―――はわわぁ〜❤❤❤(昇天)

 

「ぐへ、ぐへへ、ぐへへへへへ…………❤」

「ヴィクトリーちゃん、クレヨンしん◯ゃんみたいな顔してる……」

 

 我ながらだらしない妄想に耽っていると重々承知。しかし、だ。

 妄想で終わらせないためにも、この後必ずお姉さまをチームに誘わねば。見たところ、この会場にお姉さまはいないみたいだし、もしかするとこのイベントのこと、お姉さまや<スピカ>の先輩たちは知らないはず。よし、この後部室に征かねば。待っててね、スペお姉さま!

 

「静粛ッ!!」

 

 マスク・ド・テーストの一喝で、講堂は静まり返った。

 そして「おほん!」と咳払いをした。

 

「そして盛況ッ!なにやらウマ娘諸君は盛り上がっているようだが、忘れてはおるまいか?私は諸君らを恐怖と絶望のズンドコに叩き落とすためにやってきた情け無用の女だぞ?」

 

 静まり返った講堂が静かにざわめく。その様子を見てか、マスク・ド・テーストはニチャリと口角を上げた。

 

「先程見せたPVに映っていたのは表面だけを切り取った、種目の“表の顔”に過ぎんのだ……我々が用意したこれらの4つの種目は、我々が諸君らに叩きつける“挑戦状”ッ!!よって、諸君らには『ハチャメチャGP』に“参加”する権利を与えると同時に……逃げ出し“棄権”する権利も与えようじゃないか」

 

 どーゆーこと?あたしみたいに首を傾げる子もかなりいた。

 

「私はビビり散らかして逃げ出すような臆病者に用はないんでな……このイベントに参加する資格があるのは、本当に強く、本当に速い……『真のウマ娘』だけ……!このイベントは諸君らを容赦なく“破壊”しに牙を剥く……それでも、諸君らは受けて立つのかね?」

 

 煽る煽る。煽りおる。

 ハッキリと『ぶちっ』という音があちこちから聞こえた。

 

「あ゛ぁ!?今何つったァ!?」

 

 最前列にいたカツラギエース先輩が立ち上がる。

 

「ここにはそんな脅し文句で回れ右して逃げるような、弱っちいウマ娘はいないぜ!!」

 

 中列付近のジャングルポケット先輩が啖呵を切る。

 ……あ、ヒシミラクル(ミラ子)先輩がドサクサ紛れに講堂から出ていこうとしてたのは見なかった方向で……

 

「貴女こそ、私達トレセン学園のウマ娘に喧嘩を売ったこと……骨の髄まで後悔させて差し上げますわ!!」

「ちょ、ちょっと……!?」

 

 カワカミプリンセス先輩、怖ッ!?フサイチパンドラ先輩がぎょっとして止めようとしてたけどダメだったか〜……

 そ、そーいや去年の『冷峰学園事件』の時も、冷峰はウチには手出ししなかったんだっけ……何故かは知らないケド……

 しかし、この場にいるウマ娘全員を一瞬のうちに敵に回したマスク・ド・テーストとその一味に、動揺の色は無かった。それどころか、マスク・ド・テーストは両手をたたいて喝采する。

 

「結構ッ!結構ッ!!そうだ!それでいい!!それでこそトレセン学園のウマ娘ッッ!!その反骨心と競走本能に満ち溢れた()!感動ッ!実に感動ッッ!!フハハハハハハハ!!」

「うふふ……♪」

「ふっふ~ん★」

 

 不敵に笑うジ・イリュージョンとニードル・ザ・セブンティーンを両脇に、あたしたちの奇異の視線にまったく動じないマスク・ド・テースト……なんて度胸だ。

 それにしてもこの3人……一体何者なんだよ……ッ!?

 

「『ハチャメチャGP』の開催は先刻宣言した通り春のファン感謝祭当日ッ!!恐れ知らずのウマ娘諸君よ、5人でチームを結成し、生徒会まで申し込むがいいッ!!期限は特に設けん、当日飛び入り参加も大歓迎ッ!!諸君らの勇気と闘志に―――」

 

 みんなから突き刺さる熱く鋭い視線をスポットライトのように浴びながら、覆面の奥で、少女は嗤う。

 

「―――期待する」

 

―――――――――

 

―――クッピクッピクッピクッピクッピクッピクッピクッピクッピ

 

早くするし!こっちだし!

 

 私はルドルフに案内されるがまま、トレセン学園の廊下を講堂に向かって走っていた。ウマ娘しかいない校舎だからか、周囲から私に好奇の視線が向けられてくるのがわかる。

 それにしても、私の知ってるルドルフはキリッとしてて、“皇帝”の二つ名に相応しい、凛とした風格のあるウマ娘だった。

 でも今のこの姿は何よ!?確かにルドルフっぼいけど、2頭身でモチモチしてて奇妙な足音を立てながら走る、このシンボリルドルフっぽい生物(ナマモノ)は一体何!?本当にルドルフなの!?

 半信半疑のまま、ついに私は講堂にたどり着き、その扉を開けた。

 そこには―――

 

「フハハハハハハハ!『ハチャメチャGP』が、来る!来るのだーーー!!ハーッハッハッハッハーッ!!!」

 

 講堂の舞台で高笑いする覆面姿の少女と、喧騒に包まれる客席を見渡すと、ルドルフはぽてっと両膝をついた。

 

ああ……遅かったし……始まってしまったし……

 

 わなわなと慄えるルドルフをひょいと抱き上げ、私は講堂のスクリーンを見た。

 4つの種目で競い合う運動会―――既視感(デジャヴュ)ありまくりの種目概要に、私は頭を抱えた。

 

「“あのバカ”……今度は何を考えてるのよ……!」

 

 あれだけ懲らしめられても、まだ懲りてない……

 何度も何度も……まったく……!

 また、私は止められなかった。

 また、アイツに頼らなければならない事態にならなきゃいいんだけど―――




ざっくり未実装ウマ娘紹介

トゥザヴィクトリー

 主人公。未完となった前作『スペシャルウィーク、卒業します!』(以下『スペ卒』)でもメインキャラだった。
 スペシャルウィークのダービーの走りに一目惚れしてトレセン学園に入学、スペと同じチーム<スピカ>に執念で加入してトゥインクル・シリーズに挑むも、ティアラ戦線で1番人気を何度も得ながらも結果を残せず、『ザンネンなウマ娘』という評価が定着してしまっている。
 『スペ卒』と比べてぐーたらダウナー成分がちょいマシ、ザンネン成分がマシマシになっている。コレには理由が二つある。一つはスペと同部屋ではなくなり、性格が引き締まらなかったという設定上の理由。二つは本作がコメディ作品だからというメタな理由。

リスグラシュー

 トゥザヴィクトリーの親友兼ルームメイト。
 日本人の父とフランス出身ウマ娘とのハーフ。
 争い事とは無縁に見えるおとなしい性格。しかしヴィクトリーへのツッコミは時に辛辣。
 ヴィクトリーがま◯子orど◯みちゃんなら彼女はた◯ちゃんorは◯゛きちゃん。
 学園の花壇のお世話を率先してやっている。
 妹のネブラディスクがもうすぐトレセン学園に入学予定。

スダホーク

 トゥザヴィクトリー&リスグラシューのクラス担任教師。レース学担当。元競走ウマ娘。チョーク投げの達人。
 『スペ卒』では小学校の先生として登場予定だったが登場前に未完に終わった。

ハリボテエレジー

 新聞部に所属する無邪気なクラフトウマ娘。
 出走しているレースは新潟千直以外競走中止という極端な戦績。理由は言わずもがな。
 カルストンライトオを尊敬している。
 『スペ卒』とは違いタキオン謹製ではないらしい。
 
タイトルホルダー

 風紀委員会に所属する生真面目ガール。
 運に見放されて三冠を獲れなかった母の無念を晴らすべく、姉・メロディーレーンとともにトレセン学園に入学した。
 厳格な警察官の父に育てられた文武両道の優等生だが、内心はっちゃけたい年頃でもあり、悪ノリに誘われたらなんだかんだ言いつつノッちゃうタイプ。
 ドゥラメンテの姿と境遇を母と重ねており、思慕の念を抱く。
 『スペ卒』では小学生として登場していた。

テイエムプリキュア

 カワカミプリンセス以上にアニメ『プリファイ』にのめり込んでいる、自称『光の使者』。
 ちょっとイタいがまっすぐないい子で、人助けや手伝い、助っ人を進んでやっている。
 ツインターボが主宰する大逃げウマ娘サークル『ターボ塾』のメンバー。

クィーンスプマンテ

 テイエムプリキュアの幼馴染。
 プリキュアに『プリファイ』を見せてその道に引きずり込んだのは実はこの子。
 一見大人しそうに見えるが、一度頭に血が上ってしまうと後先考えずに突っ走ってしまう。
 プリキュアと同じく、ツインターボ主宰の大逃げウマ娘サークル『ターボ塾』に所属。

マスク・ド・テースト

 ウマ娘を恐怖と絶望のズンドコに落とすためにやってきた、自称地獄からの使者。スパ◯ダーマッは怒っていい。
 覆面を被って黒い汎用勝負服を着込んで変装しているが見た目はモロバレ。しかしウマ娘の皆さんには何故かバレていない。
 頭の上に乗ってるネコちゃんも覆面をしていたり。

ジ・イリュージョン

 マスク・ド・テーストの補佐役。やはり覆面を被って黒い汎用勝負服を着ている。そこ、キツいとは言わない。ご本人も気にしております。

ニードル・ザ・セブンティーン

 同じくマスク・ド・テーストの補佐役。覆面&黒い汎用勝負服以下略。やっぱりキツい?何を言う。17歳に失礼な。
 何故追われているはずの不審者が他の2人と並んで現れたのかは不明。

―――――――――

……何も考えずに読んでくださると助かります(汗)

24.9.20 フサイチパンドラ公式ウマ娘化に伴いキャラ変更。
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