ウマ娘 バーニングフェスッ!! -アルストロメリア・チャレンジ- 作:稚拙
……元からあっしゃぁ、この件には首を突っ込む気はありやせんでした。
だって胡散臭すぎるでしょう?『マスク・ド・テースト』やら『ウマ娘・ザ・ウマ娘』やら。
しかしまぁ、始まる前から乱痴気騒ぎのこの学園、善からぬ考えもふつふつ湧き出てくるわけで……
困りごとから寄ってくらぁ。
そんな時ぁ、あっしを頼りねぇ。
『購買の商品券』。それだけが、お前さんが支払う対価だ。
あっしゃぁクワイトファイン。
人はあっしを―――「トレセンの始末屋」と呼びやす……。
―――――――――
さて、まずはあっしがこんな物騒な二つ名を頂戴することになっちまったいきさつを語らせてもらいやしょうかねぇ。
こう見えて、あっしゃぁ生まれつき『頼み事』ってえのにからきし弱くてねぇ。お願いされちまうと嫌だ駄目だと断れねぇタチなんでさぁ。んで、まわりの人様のお頼み事をきっちりこなしてきたワケで。
そうなると頼む方も気楽になるのか、今度は『カレシと別れさせてほしい』だの、『他校の生徒とトラブルになったからなんとかしてくれ』だの、ちょっとそいつぁお上か探偵に頼みねぇって頼み事まで舞い込むようになっちまって、いやぁ、参った参った。
……全部片付けやしたがね。
基本、あっしはタダで頼み事を引き受けておりやした。こんなしゃべくり方をしておりやすが、あっしゃぁ花も恥らう10代半ばのウマ娘、
しかしまぁ、考える奴ぁ考えるもんで、なんとトレセン学園の購買で使える商品券を謝礼に渡してくるウマ娘が出てきやしてねぇ。最初はあっしも断ってたんですが、面目ねえことにどうにも断りきれなくなっちめぇまして。
こうして、『商品券を渡せば何でも解決してくれる“トレセンの始末屋”クワイトファイン』が誕生したってワケでさぁ。
前置きがちょいと長くなっちめぇましたねぇ。 ここからは、あっしが『ハチャメチャGP』に首を突っ込むきっかけを、
今日―――『マスク・ド・テースト』ってえ傾奇者が
「………………入りやすぜ」
照明が一切落とされた生徒会室。黄昏時、それはまぁ風情がありますなぁ。
「来てくれたか……クワイト」
「他ならぬ、ルドの旦那のお呼びですからねぇ……………………で、誰を“始末”するんで?」
旦那があっしを呼び出す時ってぇのは、切羽詰まった厄介事の始末をあっしに任せる時に限っておりやして……まぁ元々、生徒会のお偉方が表沙汰にゃぁ出来ねぇ汚れ仕事は、ぜぇ〜んぶあっしが片ァ付けてきたんですがねぇ。
旦那とも持ちつ持たれつ、なんでさぁ。あっしがトゥインクル・シリーズで大した活躍ができてないくせに
ただ……今日はちょいと事情が違うようで、旦那は「いや、今日は別件を頼みたい」と前置きやした。
「……理事長が、奇想天外な行動を取り始めた」
「ほぉ、理事長公がねぇ。しかしまぁ、あの御方が突飛なのは今に始まったことじゃぁありやせんぜ?」
「確かにそうだが―――」
おいおい、それを言っちまうんですかい?まぁ、旦那なりに普段から理事長公には含むところがあって、ついそれが口をついちまったんでしょうな。
「―――今回は少し異なるようだ」
「……どういうことで?」
「突飛さのベクトルが違う。行住坐臥の心得すら捻じ曲げられてしまっているようにな」
「旦那にそうまで言わせるってこたぁ、余ッ程のコトがあったんでしょうが……」
「うむ……実は……」
旦那は、先日理事長公と会談して、その時に破天荒な企画をブチ上げ、さらに言動に違和感を覚えたことを話してくれやした。
「『ハチャメチャGP』……確かに眉唾物ですなぁ」
「常に我々ウマ娘の事を第一に考えておられるあの方が、むざむざウマ娘を危険に晒すことを考えるはずがないからな」
「たづなさんは?多少の無茶はあのヒトが引き絞ってくれるでしょうに……よもや?」
「うむ……彼女もまた、同じ術中にあるのかも知れない」
「……、ほぅ。そういうコトですかぃ」
旦那は『術中』と言った……。
つまり―――。
「理事長公やたづなさんに糸を括って手繰っている……“人形師”がいるってぇことですかぃ」
「十中八九」
「残りの
「そういうことになる…………だし」
「?……旦那?」
「しかし……理事長や“黒幕”に、我々が動いていることを勘付かれてはならない。そこで…………だし」
「だ、旦那……空耳だったらすいやせんけど、さっきからやたら『出汁』と聞こえるんですが……どうしたんで?昆布か煮干でも漬けてるんで?」
「……も、もう……我慢が…………!」
―――ぼわん!!
いきなり眼前に煙が撒かれ、あっしの視界が塞がれやした。よもやこの会合を“人形師”に掴まれてた……!?何はともあれ、まずは旦那の安全を確保しねぇと―――
―――がたり。
「ッ!」
奇妙な気配を察して、あっしは“得物”を放ちやした。カッ!!という、独特の手応え。しかし。
―――外しやしたか。
「や、やめるし〜!」
「!?」
煙はすぐに換気装置で晴れやして、あっしの眼前に姿を現した
「ふ、ふぅ~……死ぬかと思ったし……」
……………………………………たぬき?
……のような、垂れ耳の物の怪……??髪型が旦那に似ておりやすが、これはまた奇ッ怪な……
……の横の壁に、先程あっしが放った風車が突き刺さっていやした。つまり奇妙な気配はこの物の怪のモノってことになりやすが……
「な、なんでぇお前さんは!?旦那をどこにやった!?」
「お、落ち着くし!私がルドルフだし!」
「世迷言を……そのぷにぷにもちもちちんちくりんのどの口が言いやがる!?えぇ!?」
「や、やめるし~……ほっぺたをつねらないでほしいし~……」
「まさか……本当に……ルドの旦那……なんで?」
「理事長があんなコトを言い出したショックで、気を抜いたらこんな姿になってしまうようになったし」
「気を抜いたらってぇ……そりゃアンタオール◯イトじゃあるめぇし……」
「私が来たし!!」
(ドン!!)(集中線顔アップ)
「わざわざデカい文字使ってボケなくてもえぇです、狭いでしょーにッ……効果音や演出まで書いちゃって……あぁもう、わかりやしたよ……とりあえずアンタはルドの旦那ってことで話を進めやしょう」
埒があかぬと、あっしはそのたぬきを旦那の執務机の上にちょこんと載せやした。だって読んでる
「で、理事長公に気取られずに“人形師”を始末する……いったいどんな策で?」
「クワイト……君には『ハチャメチャGP』に参加してもらいたいし」
「あっしにも……でやすか?」
「探りを入れるのは、“外”からではなく“中”から……食い破るにはその方が都合がいいし」
「確かに……当日いきなりご来賓の席に飛び込んで大立ち回りをするよりかは、紛れ込んで隙を窺いながら、人形師の目星を付ける方が効率的ですからなぁ」
「その通りだし。無論、私も選手として参加して理事長と“黒幕”の目を欺きながら探りを入れるし。君には私とは別のチームに潜り込んで、別ルートで“黒幕”の正体を掴んでもらいたいし」
「……わかりやした。善処いたしやしょう。……グルーヴの
「言わないほうが賢明だろうし……余計な心配をかけたくないからし……」
「でしょうね。ただでさえ感謝祭の運営でてんてこ舞いになりやしょうから。……にしても……」
「……どうしたし?」
……
いやぁ、あっしもさっきからどうにも気になってたんでやすがねぇ……
「その……すいやせん……真面目に話してくださってるんはよくよくわかってるんでやすが……」
「?」
ついにあっしは吹き出しちまいやして……
「話の内容とフォントのギャップ……温度差で風邪ェひいちまいやすよwww」
「好きでにくまるフォントになってるわけじゃないし……」
「せめて感謝祭当日までにはどうにかしといてくだせぇよ、旦那wwww」
「ションボリ……」
旦那はますますションボリし、ジタバタしやした。
―――――――――
……とまぁ、擦った揉んだの末に、あっしは『ハチャメチャGP』の裏に潜む“人形師”の始末をつけるべく、この世にも珍奇な祭に首を突っ込むハメになったんでやすが……
「……へぇ、あんたが噂の......こりゃスゴい
「クワイトファインさんもチームメイト探してるの?」
無邪気な顔を向けてくる鹿毛のぱっつんウマ娘と、垢抜けた顔の栗毛のショートボブのウマ娘。
―――この2人にはさっきの事情を話しておりやせん。
当たり前でやすが、旦那の依頼は他言無用の極秘任務……誰にも悟られずに遂行しなければなりませんからな。
深く静かに……コトを運ばなきゃぁいけやせんから……。
「……ええ、まあ。あっしも面子探しの途中だったんでやすが、あっしゃあどうにもウマ娘の皆さんに好かれねえタチみたいでして」
「マジっすか!?じゃ、じゃぁ、それならウチはどう!?ちょうどメンバー募集してるから!」
「確かに……渡りに船ってこのことねぇ。“トレセンの始末屋”が入ってくれるとなれば、なかなか面白くなりそうじゃん」
「??しまつや?」
「後輩ちゃん知らないの?購買の商品券次第でいろんな問題を解決してくれるって評判なんよ……ってことはあんたのお目当ては副賞の商品券5万円?」
そんな副賞が用意されていたとはねぇ……。
…………使えやすな。
「……そそられますなぁ。あっしも商品券欲しさにこの“稼業”をやってるようなもんですから、5万もあれば当分は危ない橋を渡らずに済むってもんで」
「じゃ、じゃぁ……!」
「…………本来なら、依頼料として商品券4枚を相場にしておりやすが……今回は……『出来高払い』ってことにしやしょうか」
「やったぁーーー!!」
「心強いね、よろしく頼むよ、始末屋サン」
「こちらこそ。ヴィクさん、熊ッさん」
「??名前、言ってないのに……」
「こういう“仕事”をしておりやすから、トレセン学園のウマ娘の顔と名前は、一通り頭の中に入っておりやすよ」
「わたしゃたった今『くま』って命名されたのにねぇ。まったく恐れ入るよ」
これで『足場』は出来やした。
お二人には感謝しやす。こうしてあっしが動ける場所を作ってくれたことに……。
お二人がどういった動機でこの奇祭に飛び込もうとしてるのかは追々聞くことになるんでしょうが、たぶん、あっしはお二人には敵うめぇ。あっしの事を知ったその日にゃ、後ろ指を指して心行くまで罵ってくれても構いやしませんぜ。
心の中で、今から謝っておきやすよ……。
そんなあっしの心を知らず、熊ッさんはすっと顎に手を当てて考えやす。
「さて、これで3人になったわけだけど……後2人……偶然屋上に上がってくるなんてことは無い、か……」
「知り合いにはほとんど声かけて断られちゃったっすもんね……」
どうやらお二人さん、これ以上チームに入ってもらえるウマ娘にお心当たりがないようで。
……であれば。
「……それなら……多少はあっしに当てがありやすよ」
「ホント!?」
「ええ。……ただ、あっしの知っている限り、これから紹介するお二人は一筋縄でも二筋縄でもいかねぇ……でもって有名どころでもない
あっしは、お二人に敢えてキツく視線をぶつけて見やした。
「御覚悟は……できてござんすか……?」
ざっくり未実装ウマ娘紹介
クワイトファイン
人呼んで「トレセンの始末屋」。
一見すると近寄りがたいクールな雰囲気を漂わせるが、実は頼まれ事を断れない『お人好し』であり、教師のみならず他の生徒からの雑用・依頼を多数こなしている。
また、生徒間のトラブル解決も進んで請け負っており、その過程で独自の人脈を築いていった。
ある時、謝礼として学園購買の商品券を渡す生徒が現れてからは、いつしか『商品券を渡せばどんな頼みも引き受けてくれて、トラブルも解決してくれる』という、便利屋か探偵めいた評判が生徒間で立ってしまい、ついには「トレセンの始末屋」という奇妙かつ物騒な呼び名が付されてしまった。当初はクワイトも商品券については固辞していたが、やがて断り切れなくなってしまい、今に至っている。
レースではあまり目立たないが、実は生徒会長シンボリルドルフの懐刀。生徒会が表立って動けない案件を密かに処理してきた、ルドルフの個人的なエージェントでもある。
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残る2人も、胃もたれしそうな濃い娘です。