ウマ娘 バーニングフェスッ!! -アルストロメリア・チャレンジ-   作:稚拙

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6枠 コシアンデアリマスッ!!

 ―――『ぼん』は走るのがとっても速いねぇ。もっとワシに、『ぼん』の走るところを見せておくれ

 

 おじいちゃんがそう言ってくれたから、自分は走ろうと決心したのであります。

 走って、走って、走り抜いて見せると、そう―――

 

 見ていてください。

 自分は、限界のその先まで、駆け抜けてみせるのであります!!

 

 ―――ディープボンド、吶喊であります!!

 

―――――――――

 

「……『ハチャメチャGP』……でありますか?」

「そーだぞ!お前見てねーのか!?この間の『マスク・ド・テーストの挑戦状』!」

 

 ここはトレセン学園の食堂。鼻息荒くそう語るのは、同級生のパンサラッサ殿であります。

 

「なんてーか、燃える展開だよな!遠征以外でこんなテンション爆アガリなの初めてだぜ!」

「そ、そうでありますか……」

 

 パン殿が旅行以外でここまで高揚するのは珍しいでありますな……

 それはともかくにんじんオムライス美味しいであります。学食のシェフ殿、また腕を上げたでありますな。

 

「でさ!ターボ師匠から一緒に出ないかって誘われてさ!『塾』の連中全員で師匠と出るんだ!プボ、お前もどうよ?どっかチームに入って、やり合おうぜ!な!?」

「う〜ん……」

 

 話には聞いているであります。

 ……ただ……

 

「なんだかこわいであります〜……」

 

 件の『挑戦状』に添付されていたPVを観たのでありますが、『大食い』以外まともな種目ぢゃないであります……!

 第一、自由参加の感謝祭イベントなのに、みんながこんなにイレ込むなんて、なにかおかしいでありますよ。

 

「そうか?でもやっぱ人生冒険だぜ?何が起きるかわかんねぇから面白いんじゃねぇか!」

「そーでありますか〜……?」

 

 

……その通りですよ❤

 

 

「ッ!?!?」

 

 パン殿の背後からささやくような声。

 気配を消してパン殿の背後に立ったのは―――

 

「グ、グラスワンダー先輩……」

 

 満面の笑みを湛えた先輩殿であります。元々、『大和撫子』の四文字がとても似合う、それはもうストイックで清楚な方だったと聞いていたのでありますが、なんというか……

 

うふふふふ………………❤」

 

 パン殿に()()は、何故かこのように慈愛に満ちた目を向けてくるのでありまして……

 

「……隣、いいかしら?」

「ぷぼっ!?き、キング殿!も、もちろんであります!ど、どうぞ!」

 

 グラスワンダー殿の隣にキングヘイロー殿もいらっしゃったのでありますな……いや、失敬したであります……

 キング殿は、入学式の日に道に迷って困っていた時に助けていただいて以来、何かとお世話になっている恩人なのであります。

 

「何やら盛り上がっていたみたいね」

「え、ええ……今度の感謝祭でヘンなイベントがあるらしくて……」

「それって、『ハチャメチャGP』のことかしら?」

「は、はぁ……それで皆が異様にハイになっちゃってるんであります……優勝したら『ウマ娘・ザ・ウマ娘』になれるとか言ってるでありますけど、胡散臭いにも程があるでありますよ。……まぁ、キング殿はそんなウラ見え見えの話には乗らないでありますよね〜……」

 

 キング殿は思慮深い方、こんな詐欺まがいのわかりやすいワナに引っ掛かるような単純なウマ娘ではないのであります。なんだか喉が渇いたでありますな、ひとくち水を……

 

「何を言っているのかしら?私も出るわよ」

「ぼぷーーーーーーーーっっっ!?!?!?」

 

 プボ の みずでっぽう !

 

「げほっげほっぷぼっ……キ、キング殿……!?」

「大袈裟ねぇ。松田◯作や左◯太郎じゃあるまいし」

「で、でもキング殿……あんなあからさまな宣伝に乗っかってしまうなんて……」

「……そうね。確かに普通のレースとはルールも趣旨も正反対……それでも私は、競い合って、頂点を目指す舞台を選り好みすることはしないわ」

「どうして……なのでありますか?」

「愚問ね」

 

 そしてキング殿は、いつものように笑うのであります。

 

「私がキングだからよ」

 

 このお言葉が出てしまうと、もはやキング殿を止める手段は無いのであります……

 

「反対に訊くけれど、貴女は『見たことがない』とか、『したことがない』という理由だけで尻込みしてしまうのかしら?」

「そうだぜ?ウマ娘ならチャレンジ上等!勇気ってのを見せてみろよ、な?」

「パンちゃんの言うとおりですね❤」

「……!?!?」

 

 見ると、グラスワンダー先輩殿の手がスッとパン殿の反対側の肩に乗せられているであります……

 

「晴れ姿をたくさんの人に見てもらって、楽しんでもらうこともウマ娘の役目じゃないかしら」

「そ、そうそう!先輩の言う通りだぜ?」

「うふふ……『先輩』だなんて他人行儀じゃなくてもいいのに❤私のことは―――」

「……!!!」

 

 グラスワンダー先輩殿はパン殿の耳元で何かを囁いたのでありますが、その瞬間パン殿の両耳がぴーんと逆立って、髪の毛と尻尾がよだった……ように見えたであります。

 

「……勇気を持って挑戦すれば、必ず道が拓けるはず……『何が起きるかわからないから面白い』……パンちゃんの言葉……もう一度、その意味を考えてみてくださいね」

「先輩殿……」

 

 ―――自分は……生来の臆病者で、アガリ症であります。

 トレセン学園に入ったのも、自分の走りを褒めてくれたおじいちゃんに、自分が走るところを見てもらいたかったからで……

 ウイニングライブの歌や振り付けも必死で覚えて、自分はディープボンドじゃない別のウマ娘だって、自己暗示しながらステージに上がっている次第でありまして……

 

 ―――勇気……で、ありますか……

 でも……

 

 やっぱり自分、こわいであります〜……

 

―――――――――

 

 そんな臆病な自分に、転機は突然『襲って』きたのでありました……

 

「さ〜て、今日も練習終わったであります♪」

 

 今度の阪神大賞典に向けて、そろそろカロリー制限をしなければならない時期に差し掛かっているでありますが……

 帰り道、学園から寮までの道にある商店街にある“あのお店”……今日はちょっと寄り道しちゃうであります。自分、ちょいワルであります……♪

 ウキウキ気分で校門を出ようとしたその時―――

 

「!?な、何者でありますか!?」

 

 突如、自分の前に現れたのは、サングラスにマスク姿のあからさまに不審なウマ娘……!

 

「くまさん!ロータスちゃん!や〜っておしまい!」

「あらほらさっさ〜♪」

「ジャンケンで負けたとはいえ……何故蓮華がこんな役を……シップ様❤にはお見せできませんわ~……」

 

 突如、横から二人の不審ウマ娘が飛び出してきたであります!

 何をする気か知らないでありますが……!

 

()る気でありますか!無礼(ナメ)ないでほしいであります!おじいちゃん直伝の綜合武術格闘術で―――ぷぼっ!?」

 

 後ろから急に視界が塞がれたであります!?

 四人目がいたのでありますか!?ふ、不意打ちとはヒキョー千万であります!!

 ぷぼっ!?浮き上がった!?麻袋に詰められて運ばれてるでありますか!?

 ま、まさか……ハッ!?……聞いたことがあるであります……

 自分、“うまぴょい”されちゃうんでありますか〜〜!?!?

 

―――――――――

 

 10分ほど麻袋の中でもがいたんでありますが、なかなかどうして、ウマ娘の力でも破れないとは……

 そのまま成す術なく運ばれたその先には―――

 

「ぷぼっ!―――なんなんでありますか貴官らは!?こんな狼藉を働いて、タダで済むと思うなでありますっ!!」

「ま、まぁ落ち着いて、あたし達も悪気があってやったわけじゃないから!」

「じゃぁそのサングラスとマスクは取ってほしいであります!貴官らは何処(ドコ)誰兵衛(ダレベエ)でありますかっ!?」

「あ……そーだった」

 

 怪しい3人組のウマ娘は変装を解いたでありますが……

 ぱっつんの鹿毛、ショートボブの栗毛、ツインリング三つ編みの鹿毛の3人組でありますが、もちろん自分と面識はなく……しかし3人ともトレセン学園の紅白ジャージを着ているところを見るに、同輩ということは確かでありますが……

 

「ごめんね〜、こんなゴーインな方法で連れてきちゃって……だからわたしはやめようって言ったんよ」

「えぇ〜!?くまさんノリノリだったじゃないっすか〜!?」

「シップ様❤のいらっしゃるチーム<スピカ>の伝統的なメンバー勧誘法とはいえ……あんなはしたない姿……蓮華、シップ様❤にどうお伝えすれば……❤❤」

「……いやホント、なんなんでありますか貴官らは……」

「いやはや……騒々しくて悪ぅござんすねぇ。見ての通り、まとまりの無い面子なもんで」

「……!」

 

 そこへ、長髪鹿毛のウマ娘が出てきたでありますが……

 このウマ娘、気配を消して自分の隣に立ってきたでありますな……

 さっき、自分の背後から麻袋をかぶせてきたのも、おそらくこのウマ娘……切れ長の鋭い瞳……

 油断ならないであります……

 

「……いったいぜんたい、貴官らは自分をどーするつもりなのでありますか!?」

「……実は……」

 

 ぱっつん鹿毛のウマ娘―――トゥザヴィクトリー殿が伝えてきたのは―――

 

「また()()でありますか……一体『何』が皆々様を駆り立てるんでありますか!?自分はキョーミないであります!『ウマ娘・ザ・ウマ娘』も、海外のレースも、商品券5万円分も!一切合切自分には必要ないでありますっっ!!!」

 

 この方達も『ハチャメチャGP』絡みだったでありますか!?

 まったく、みんなしてこの熱狂ぶり、トレセン学園はいつからこんな流されやすいウマ娘の集団と化したのでありますか!?

 昨年の『冷峰学園事件』の時も、生徒会長の下結束し、冷峰の脅威に対して断固とした対応をしたのはなんだったんでありますかっ!?

 

「なるほどなるほど……彼女はそうおっしゃいますが……ヴィクさん、お前さんはどうなんでさぁ?」

「……へ?あたし?」

「紹介したのはあっしでござんすが、真っ先に首を縦に振ったのはお前さんですぜ。お前さんも彼女が欲しいと思ったからあっしにノッた。だからここはお前さんがキリッと引き締める場面でござんすよ」

「……うん。わかった」

 

 クワイトファイン殿の言葉に頷いて、トゥザヴィクトリー殿は自分の目をまっすぐ見て、こう言ったのであります。

 

「ボンドちゃんが欲しい」

「………………ぷぼっっ!?」

 

 な、何を言い出すんでありますか!?告白でありますかっ!?

 

「言い訳とかおべんちゃらはナシにしたいからね。あたし達はあとひとりメンバーが欲しいの。だからボンドちゃんが欲しいの」

「……つ、つまり頭数合わせってコトでありますか!?」

「否定はしないよ。見ての通りあたしたちは今4人だから、あなたが最後の一人なの。だからお願い!一緒に『ハチャメチャGP』に出ようよ!」

「さっきも言ったでありますけど、自分は出る気はないのでありますっ!」

「……………………う〜ん……」

「言い淀んでしまいましたわね」

「ま、後輩ちゃんだからねぇ。……始末屋ちゃん、よろ〜」

「せっかく主人公らしくキメる場面をご用意しやしたのに……キメ切れないんでござんすなぁ」

「しょっく〜〜!!」

 

 し、主人公???なんのことでありますか??

 

「……やはり、お前さんには理屈云々よりも、わかりやすいモノでこちとらの熱意を伝えたほうがいいでござんすからなぁ―――」

 

 そう言ったクワイトファイン殿は、懐からあるモノを取り出したでありま―――

 

「ぷぼーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっっっっっっ!!!!!」

 

 『それ』を目にした瞬間、おそらく……自分は我を忘れて『それ』に飛びつこうとしたのでは、と……

 

「おおっと、今すぐに『これ』をお渡しするワケにゃぁ参りませんなぁ」

「そ、そ、それはッ!『餡餅庵のあんころもち』の引換券でありますッッッ!!!」

「御名答。そしてここには100枚綴りの束が3つ……つまり……。」

「あんころもち300個分!!!!!」

 

 ……白状するであります。

 自分、子供の頃から『あんころもち』に目がないのであります……

 おじいちゃんのお家で食べたあの味が忘れられなくて、トレセン学園に入ってからは商店街にある甘味処『餡餅庵』のあんころもちにドハマりしてしまって……

 レースに出て走らなければならない身の上故、体重管理が大変になってしまうのが目下の悩み……しかし!!それはそれ、これはこれ。増えた体重はまた減らせばいい……それだけであります!!

 実は今日も、帰りがけに寄って食べようかと思っていたのであります。……“教官(トレーナー)殿”には申し訳ないのであります、が……

 

 食欲にウマ娘は勝てないのであります!!!

 

「あっしらが言わんとすること……もう、おわかりでござんすねぇ……?」

「……ごくり。……ごくり。」

「2回も生唾呑みましたわ!」

「ごくり。」

「3回も呑んだねぇ……あのや◯゛やですら2回なのに」

 

 最早周囲のツッコミも届かぬ自分、クワイトファイン殿の持つ引換券しか目に入っておらず……

 

「自分……入隊するであります!!『ハチャメチャGP』に出撃志願するでありますッッ!!」

 

 

 ……つまり、自分はものの見事にあんころもちに釣られてしまったのであります……

 ど、読者殿!物を投げないでくださいであります!!ドラマチックな展開を期待させておいてオチが買収なんて申し訳ないでありますっ!!

 

 し、しかし、このイベントはテレビ中継もされるとのこと、あわよくばおじいちゃんに自分の姿を見せることができるかも知れないでありますな……

 グラスワンダー先輩殿の言葉……“勇気”……自分にそれがあるのかわからないでありますが……

 こうなればもはや、退路は無いのであります……!

 あんころもちを燃料に、前進あるのみ、吶喊であります!!

 

 

 

 ……結局自分は、食欲からは逃れられないのでありますなぁ……




ざっくり未実装ウマ娘紹介

ディープボンド

 地力はあるが、極度のアガリ症のためなかなか実力を発揮できないウマ娘。
 走りを褒めてくれた祖父に自分の走る姿を見てほしい一心で、トレセン学園の門を敲いた。
 軍人を思わせる凛々しい口調で話すが、肝心なところでビビってしまう。
 あんころもちが大好きで、学園近くの甘味処に足繁く通っているが、そのせいで増える体重管理にも頭を悩ませている。一方、あんころもちが絡むと豹変する一面も持つ。
 入学したてのころ、親切にしてくれたキングヘイローを尊敬し、慕っている。
 『スペ卒』にも登場しており、ほぼキャラクターに変更はなし。しかしあのロータスの後だとどうにも薄くなってしまう……

パンサラッサ

 細かいことは気にしない、海よりでっかい心意気の持ち主。
 ツインターボ主宰の大逃げウマ娘サークル『ターボ塾』の一員でもあり、師匠と仰ぐターボのもとで“極限の大逃げ”を追求し続けている。
 旅行好きで、遠征を何よりも楽しみにしている。
 座右の銘は「人生は冒険」。
 何故か慈愛の視線を向けてくるグラスワンダーがちょっぴり苦手。
 『スペ卒』には小学生として登場、今回晴れてトレセン生としての登場と相成った。

―――――――――

限界状態の私生活から生み出された買収劇。
次回は多分しょっぱなからカオス。
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