ウマ娘 バーニングフェスッ!! -アルストロメリア・チャレンジ-   作:稚拙

9 / 16
幕間 陰謀の理事長室ッ!!
8枠 スポドリマンッ!!


 ……夜の学園というのは、全く以て不気味でござんすなぁ……

 怪談モノの題材になるわけだ……。

 さて、今までは我らが『チーム<アルストロメリア>』の結成秘話を読者(おめぇ)さん方に見てもらったでござんすが、今回はちと横道に逸れやす。

 あっしことクワイトファインは、今回の“奇祭”を行わせるように理事長公に仕向けた“人形師”を追うためにチームに入ったことは、もう知ってるでござんすね。あ、このことはくれぐれもチームの皆さんにはご内密に……。

 チーム登録を済ませ、『チーム<アルストロメリア>』が本格始動し、全員まとめてフジキセキの旦那にお説教を食らった、その翌日―――

 

 眼下に、トレセン学園の校門を閉めて施錠し帰っていく、私服姿のたづなさんを確認したあっしは、気を引き締めやした。

 時は午前2時。草木も眠る丑三つ刻……。

 この時間まで、気配を消して生徒会室に潜んでいた理由は唯一つ。

 理事長室に忍び込み、理事長公と“人形師”―――その両者を繋ぐ証拠を掴むため。

 

「さァて……お仕事を始めやすか……。」

 

 生徒会室と理事長室は、校舎の反対側*1……生徒会室が潜伏するには丁度良かったとはいえ、ちと距離がありますなぁ……。

 それに……。

 夜間は監視装置が働いておりやすから、見つかったが最後、大目玉を食らっちまう。そうなるとルドの旦那にとっちゃあ迷惑千万ですからなぁ……。

 特殊ゴーグルを使って、と……ほうほう、案の定、廊下には赤外線センサーが張り巡らされておりますなぁ。

 このセンサーを如何にして掻い潜るのかも、こうした仕事の醍醐味というモノで―――

 

「……ふぅン。確かにそれも面白い。しかしこの場合、効率というモノを重視すべきではないのかい?」

「ッ!?」

 

 ―――この声は!?

 そう思った途端、網目のようなセンサーの赤い線が一瞬のうちに掻き消えやした。

 

「安心したまえ―――私は味方だよ」

 

 ゴーグルを外し、あっしはその人物の人相をまじと見やした。

 

「……驚きやしたねぇ。まさかお前さんとこんな時分に出くわすとは予想外でやす―――タキオンの旦那」

 

 暗闇に白衣が異様に映えやすな……目立って仕方がありやせんが。

 

「こんな時間まで校舎内に居残ってるたぁ……とんだ不良ウマ娘ですなぁ」

「お互い様じゃないか」

「フッ、これはしたり、違ェねェ」

「私は研究に耽って時間を忘れていてねぇ。期せずして校舎内に閉じ込められる羽目になったのさ」

()便()がお上手で。……積もる話は道すがら」

「そうだねぇ。どうやら―――」

 

 タキオンの旦那の視線は、理事長室の方角に真っ直ぐ向いておりやした。

 

「求めるモノも、同じようだからねぇ」

 

―――――――――

 

 それからあっしとタキオンの旦那は、各所の監視カメラを死角から目隠しで覆いつつ、忍び足で理事長室へと向かいやした。

 

「するってェと……あんたも今回の件を訝しんでるクチで?」

「訝しがらざるを得ない案件じゃないか。理事長はともかく、たづなさんに勝負服を着せることができるとは、普通じゃない」

「それを聞いて安心しやしたよ。理事長公とたづなさんのあの変装……あっし以外に誰も気付いてないんじゃないかと思ってたんで」

「理知的な思考ができるウマ娘や、勘の良いウマ娘はとっくに気付いているさ。カフェやシャカール君もそうだし……あとは、トランセンド君やネオユニヴァース君あたりも察しているだろう。もっとも、気付いた上であえて口にしていなかったり、面白そうだからノッているウマ娘もいるだろうけどね。『ト レ セ ン 学 園(コ コ)』は、そういう集団だ」

「流石の客観論、お見逸れしやす」

「だからこそ……私は“それ”の『手段』が()りたいのさ。確固たる意志を持つ理事長に、我々ウマ娘すら凌駕する身体能力を持つたづなさん、その両者を意のままに支配し使役する!……実に興味深いとは思わないかね……!?」

 

 タキオンの旦那の鳶色の瞳が燃えておりやす……。

 スイッチの入ったこの御仁を止めるには、ちぃと骨が折れやすからねぇ……。

 

「……流石の好奇心……心底お見逸れしやすよ。それから、それだけで夜の校舎に忍び込む行動力も、ね……。」

「誉め言葉と受け取っておくよ。……さぁて、そろそろ目的地にご到着だねぇ」

 

 いつの間にか、あっしらの目の前には理事長室の木扉が聳え立っておりやした。

 ノブを握って捻りやすけど、ビクともしやせん。案の定施錠されておりやすか……。

 

「やはりこじ開けるしかないようですなぁ」

「想定内だねぇ。シャカール君謹製の電子ロック解錠ツールの出番というわけだ」

「……あの御仁、そんなモノまで造ってたでやすか……。」

「『“今回の件”はロジカルじゃない』だそうだ。今夜も誘ったがにべ無く断られたがね」

「こんな泥棒めいた真似はあの御仁には似合わないでござんすからな」

「違いない。……下がっていたまえ」

 

 タキオンの旦那は懐から配線剥き出しの機械の塊を取り出すと、扉横のバネルにコードを接続して、何やら弄り始めました。さしものあっしもコンピュータ関連は並のウマ娘程度の知識しか持っておりやせんから、この御仁がいて本当に―――

 

「…………すまない。手が滑ってしまった」

「!?」

 

 背筋が(フル)えやした。

 一瞬間を置いて警報が鳴り響き、回転赤色灯が煌々と廊下を彩る―――

 

「わざとじゃぁありますめぇな!?」

「いや、本当に私の操作ミスだ。文句なら煩雑なマン・マシン・インターフェースを構築したシャカール君に云いたまえ」

 

―――プシュゥウゥゥゥ!!!

 

 ―――何かの機械が動く音!?

 思わず振り返りやすと、赤光る視界の中、黒い影が屹立するのが見えやした……!

 その姿は面妖にして(オオ)きく、廊下の天井ギリギリのガタイをしたヒト型。両手の甲には銃砲のようなモノが見えて、本能的にあっしは慄えやす……!

 しかし何より、その胴体に収まっているのは巨大なウォーターサーバー……!何を思ってこんな珍奇珍妙な見てくれにしたのか、考えた人間の頭の中を見てみたいもんでござんすよ……!

 

「……警備ロボットでござんすか……!」

「これはこれは……理事長も面白いモノを仕掛けてくれたもんだねぇ」

「知ってるんでやすか!?」

「うむ。藤堂重工製セキュリティ・ガード・ドロイド……Security Perfective Operation Dominating Reactive Interceptor Maneuver Approach Nationalizer……通称―――」

 

S.P.O.D.R.I.M.A.N.(スポドリマン)

 

「……なんとも巫山戯(フザケ)た名前で」

「世間には出回っていない試作機を、藤堂グループがこのトレセン学園に寄付したモノらしいからねぇ」

「……傍迷惑なこってすな」

《侵入者確認。『ウマ娘』二名。『対ウマ娘モード』起動。出力20%上昇》

「どうやら手加減はしてくれないようだねぇ」

《捕獲開始》

 

 スポドリマンは無機質な電子音声の後、機械的な五指の右腕を突き出してきやしたが、そんな直線的な動きに捕まるあっしとタキオンの旦那ではなく、鋭く跳躍してスポドリマンの両側に位置しやした。

 

「どうしやす、旦那!?」

「どうするもこうするも、機能停止させるほかあるまい」

「ならば叩き壊して―――」

「あぁ、できれば原型を留める程度に破壊してもらいたいんだが。研究用機材の部品取りに使いたいんだよ」

「そんなコトを言ってる場合じゃありやせんぜ!?」

 

 ―――まったくこの旦那はこれだから……!!

 ―――他人を巻き込むこの好奇心ときたら……!!

 余計なコトに思考を割いたのを機械ながらに気取ったか、スポドリマンはこちらにすっと振り返ると、左腕の甲の銃口をまっすぐあっしに向けて―――

 

《発射》

 

―――ブシュゥゥウゥゥゥウ!!!

 

 液体!?非殺傷の暴徒鎮圧兵器としちゃうってつけでしょうが……!

 

「ぁぶぅッ!?」

 

 顔面に高水圧の液体を喰らったあっしは、仰け反って吹っ飛び、キリモミ回転してうつ伏せに倒れ伏しやした。

 

「クワイト君!」

「げほッ、ごほッ!……こ、こいつぁ……!」

 

 口の周りについた液体を舌で舐め取りやすと、独特の人工甘味料の味。

 

「スポーツドリンク……!」

 

 名は体を現すとはよく言ったもんで……

 

「危険だねぇ……仕方ない」

 

 タキオンの旦那は色とりどりの液体が入った試験管を両手の指の間に挟み持つと、高々と跳躍して空中で捻り運動を加えながらそれを一斉に解き放ち―――

 

ケ ミ カ ル ・ゲ ー ミ ン グ ・ サ ー カ ス

 

 試験管が複雑な軌道を描きながら宙をカッ飛び、スポドリマンに殺到して炸裂、緑や黄色の爆炎を浴びせる―――

 

「……旦那もなかなかの使い手のようで」

「科学者なら誰しも、『こんなこともあろうかと』という、偉大な先人の言葉に憧れるものさ」

 

 シュタ!と、白衣を靡かせながらスーパーヒーロー着地する科学者って、見たことありやすかい?

 

「ふぅン……これはこれは……」

「だ、旦那……!?」

 

 あっしの隣に立っていた旦那は、あっしの頬に付いたスポーツドリンクの雫を指ですくい取り、舌に乗せやした……

 まったく……この御仁の思考は全く以て理解不能ですぜ……!

 

「カロリーゼロのスポーツドリンクだねぇ。カロリー制限に苦労するウマ娘にも嬉しいタイプだ」

「はァ!?」

「元々このスポドリマンは常時はウォーターサーバー、緊急時にはガードロボットとして機能するように設計された“画期的”なロボットなのさ」

「……用途が両極端すぎやしやせんかい?」

「案外そうでもないんじゃないかな。ほら」

 

 旦那が促す先を見ると、赤い単眼を怪しく輝かせたスポドリマンがあっしらを見据えて、

 

《要水分補給者確認。熱中症予防。熱中症予防》

 

 ……とのたまいながらスポーツドリンクを噴射してくるもんだからたまったもんじゃない。

 

「つまりは水分補給が必要な人間やウマ娘を自律的に探して水分補給させる、熱中症予防ロボットでもあるわけさ」

有難(アリガタ)迷惑にも程があるでござんすな……しかも今は冬……あんな冷水浴びせられちゃぁ身体に毒でさぁ」

「乾くとベタつくしねぇ。……関節(アクチュエータ)を潰して動けなくするしかあるまいか」

「簡単に言ってくれますがねェ……こんなバケモノ、ウマ娘2人がかりでもどうにかできる代物じゃありやせんぜ……!?」

 

 

 ―――じゃあ、人間ひとり加えてみるか?

 

 

 聞き覚えのない男の声が響いたと思うと、スポドリマンの後頭部に見事な跳び蹴りが入れられる様を、あっしとタキオンの旦那は見やした。

 そのままうつ伏せに倒れるスポドリマンの背中に立っているのは、赤く輝く回転灯の中でもわかるほど真っ赤な学生服を着た、少し年上に見える人間の青年でありやした。

 

「……まったく。余計なお仕事増やしてくれてまぁ……」

「お……お前さんは……!?」

「あんたたちと目的は同じさ。この学校の理事長と、悪企みしようとしてる『ウチ』の関係者……その関わりの証拠が欲しい……って、依頼でさ」

 

 どうやらこの御仁も、あっしと同じく“下請け”のご様子。

 しかし、後方からの不意打ちとはいえ、ロボットを一撃で転倒させるとは相当な使い手……。

 

「助けてくれたことには素直にお礼を言わなければねぇ。で、君は何処の何者かな?」

 

 タキオンの旦那の問いに、男は襟を正して、こう答えやした―――

 

 

 

 

「冷峰学園3年生―――早坂良麻(はやさかりょうま)だ」

*1
あくまで本作における設定であり、原作における設定は不明。




果たしてこの男、敵か、味方か。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。