やはり俺が彼女をレンタルするのはまちがっている。 作:肌石友樹
「海だーっ!!!」
七海の友達のなんとかさんの声によって、俺の意識は覚醒した。どうやら寝てしまっていたようだ。べ、別に今日の旅行が楽しみで眠れなかったとかじゃないんだからね!
寝ぼけ眼で車窓を覗くと、確かに下田の海水浴場が見える。
「やっぱりテスト終わった後の解放感は最高だねーっ!」
うるせぇ。もう少し詳しく言うとうるせぇ。
「ゴメンね〜八くん。起こしちゃった?」
「いや、別にいいけど…」
「おい八幡!貴様が寝たら我の話し相手がいなくなるだろうが!」
「栗林とメイドカフェの話でもしてろよ…」
「え〜!材木座くんメイドカフェ行ってるの?オタクじゃん、おもしろ〜い!」
「え、ほ、本当?我が面白い?そ、そうかな〜?」
哀れ、材木座。この世にオタクに優しいギャルなど存在しないのに…。
「とりあえずホテルにチェックインしてこよう!」
「「イェーイ!!!」」
だからうるさいって言ったでしょ!あ、言ってないか。
― ― ― ― ― ― ― ― ― ―
「わーっ!すごーいきれーっ!ここが黒船ホテルかー!」
「これが714号室、こっちが715号室の鍵。じゃあ水着着替えて、十分後ここで集合な」
「はいはーい♡」
「みんなテンションたけーな…」
「お前が低すぎるだけだっつーの!ほら、行くぞ!」
― ― ― ― ― ― ― ― ― ―
水着に着替え終わった俺たちは、ホテルのエントランスへと向かうため、エレベーターに乗っていた。
「やべー、女子たちの水着を考えただけで興奮が止まんねぇ!特に麻実さんとか。おい、比企谷はどうなんだよ!」
分かってはいたが、栗林って結構やばい奴だな。
「特になし」
「そんなアンケートみたいな答え方するなよ。最近、麻実さんといい感じなんだろ?」
「そんなんじゃねぇって…」
こいつらは七海の本性に気付いていないのだ。幸せな奴らめ。
「フッフッフッ…」
「なんだよ材木座、そんな気持ち悪い笑い方して」
「いやなに、少し愉快でな。いずれ分かるだろう…。フッフッフッ」
「へ、へぇ…」
こいつが企んでいることなんて、きっとろくでもないことに違いない。放っておこう。
「おーい!男子たち遅いぞー!」
エレベータがエントランスに着き、ドアが開いた先では女子たちが俺たちを待ち受けていた。
「わりぃわりぃ、比企谷がなかなか着替えなくてよー」
「それはしょうがないか」
俺がやる気がないのはデフォルトだと思われてるんですね。いや、別に間違ってないけど…。
「行くぞ!海へ!」
「「オー!!!」」
こいつらエントランスで叫ぶとか、普通に迷惑客じゃんか…。他人の振りしよ。
「八くんも早く行くよ~」
「あ、ああ…」
そう俺に声を掛けに、七海は俺の前まで来てくれた。なるほど、50を書かれたビキニに裏にはたくさんの星が描かれた上着ですか。アメリカがテーマなんですね、分かります。
「どうしたの、八くん?」
「い、いや、何でもない」
― ― ― ― ― ― ― ― ― ―
「よし、色々設置し終わったな!」
「やっと終わったー!」
ビーチに出た俺たちは一緒に飲み物やテント、テーブルの用意をし終えた。
「じゃあ今度こそ海!?」
「いや、もう少し待ってくれないだろうか。そろそろ来るはずなのだが…」
珍しく材木座が全体の話を遮った。こいつ、もしや陽キャかっ!?いや、そんなわけがない。
「あっ、いたいた!はちまーん!」
「え?」
この声、そしてあのシルエットは間違いない…
「戸塚!?」
「探したんだよー!」
「八幡!貴様が今回の旅行で彼女を作るんじゃないかと思ってな、一番可愛い人間が誰か思い出させてやろうと思って呼んでおいたのだ!」
なんで戸塚がここに!?誰か説明を頼む!いや、そんなことより一刻も早く戸塚の水着姿を目に焼き付けなければ!どうやら今回は千葉村の時に来ていたものと同じ、水色のラッシュガードを着ているようだ。可愛い。
「今日も可愛いぞ、戸塚」
「え、可愛いってそんな…」
恥じらう姿も可愛いとは、これ如何に。
「おいおいおい、比企谷!なんだこの可愛い子は!?お前の知り合いなんだろ、紹介してくれ!」
「お、俺も俺も!」
戸塚の可愛さはやはり男をダメにするようだ。木部や栗林がこうなるのも仕方がない。
「初めまして、八幡の高校の時の同級生だった戸塚彩加です」
「さ、彩加さんって言うんですね!いや~いい名前だなぁ!」
「まさか八幡が他の人と遊びに来てるだなんて思わなくて…。邪魔…だよね?」
戸塚は材木座に誘われて来てくれただけなのに、気を遣って帰ろうとするだなんて、なんて優しいんだ!材木座は後でシバく。
「い、いや邪魔だなんてそんなわけないじゃないですか!おい、いいよなお前ら!」
「お、おう!もちろんだ!」
「いいよ~!」
「可愛いですね~。まさか比企谷君にこんな可愛い知り合いがいたなんて」
「そんなに可愛いって言われても…。僕男なんですけど…」
「「「えっ」」」
戸塚彩加、0.2秒の領域展開!!
「男の娘だなん、て…」
「お、おい!栗林しっかりしろ!栗林ー!」
「え…。八くん、この子が男の子だなんて嘘だよね?」
女に女と勘違いされる男、戸塚彩加。この文章意味不明すぎるだろ。
「いや、戸塚は間違いなく男だ」
流石の七海麻実も言葉を失っている。まぁ非術師ならしょうがないな。
「ま、まぁとにかく彩加さんも一緒に遊ぶってことで!じゃあ気を取り直してお前ら、海へ行くぞー!」
「「お、おー」」
笹野さんの言葉を皮切りに、みんなは頭を冷やそうとするかのように一斉に海へと向かっていった。まぁ俺は椅子にでも座って眺めるだけにしとくか。疲れるし。
― ― ― ― ― ― ― ― ― ―
「キャッ!もー、水かけないでよ!それっ、お返しだ!」
「おい、スイカのビーチボール持ってきたし一緒にやろうぜ!」
「いいねー!」
「我、めっちゃ浮くんだが。どういうことなんだ、栗林殿!」
「普通に脂肪の割合じゃね?」
雲というものは見ていて飽きない。常に西から東へと移動し、その実同じ形になることはない。種類は十種類で、そのうち雨を降らすのは積乱雲と乱層雲だけ。
「どう?遊んでる?」
おっと、台風が上陸してしまったようだ。
「結構楽しんでるぞ。一人遊びなら慣れてるしな」
「え~?大学一年の夏なんて、みんなと遊ばないと命の冒涜だよ~?」
台風系女子な七海は、上陸しても勢いは収まることなく、水分を吸収してより強化しようとしているようだ。要するに水分補給をしようと、海から上がってきたらしい。
「それ、俺が生きてる意味ないって言ってるってことだよな?言い過ぎじゃね?」
「八くんもオランジーナいる?」
無視かよ…。てか、上半身だけかがめてジュース取るとか流石です、ビッチさん。
「八く~ん。ジュースいるかって聞いてるんだけど~」
「え?あ、ああ」
あなたの水着を見ていて返事が遅れましたなんて言えない。理由は言ったら殺されるから。
「はい、これ。それにしても彩加くん可愛いね~。男だなんて信じられないよ~」
こいつ、女子相手には絶対に可愛いなんて言わなそうな性格だが、男の戸塚は素直に可愛いって言うんだな。
「そりゃあ、戸塚は戸塚だからな」
「へ、へぇ~…」
あれ、俺なんかおかしなこと言ったか?事実しか言ってない気がするが。
「はちまーん、呼んだー?」
俺たちの会話が聞こえていたようで、戸塚も海を上がってきた。
「彩加くんが可愛いって話してたんだ~」
「だから僕は男だって!それにしても二人とも仲良いね!」
戸塚の心は透き通ってるから、七海の腹黒さに気付かないのも無理はない。
「そんなことなっ!」
突如飛んでくる肘鉄に俺は思わずたじろいでしまった。
「え~、そうかな~」
「そう見えるよ!七海さん、だよね?
もしかして七海さんが由比ヶ浜さんが言ってた八幡の彼女さんなの?」
「は?」
…え?
感想、評価など頂けたら、店頭に並んでいるPS5の箱に本体が入るようなります。