TS転生したらハーレム主人公の親友ポジだった 作:まよねえず
「はあ……」
自分が嫌になる。勝手に舞い上がって、勝手に落ち込んで。
自分はそう思っていても祐樹は違ったのかもしれない。
ばふんと音を立てベッドに飛び込む。服が乱れ髪も乱れるが、私には関係の無いことだ。
親友じゃなくて。
ハーレムの皆と同じただの同級生だったら私にも可能性はあったのだろうか。
……私は自分で見ても可愛い方だと自覚している。それも、前世が男であるがため男基準での可愛いを熟知している。
でも結局は祐樹は家族や親友としてしか思っていない。
何度も頭をよぎる嫌な妄想。
告白しては、振られて。今までの関係でいようなんか言われて。
……。
こんな私じゃだめだな。
そうだ、アイツが何を言おうと関係ない。私を通すだけだ。祐樹に拒否権なんかあるわけない。
うん、ポジティブに考えればいいんだな。
少なくともアイツが私の事を嫌っているわけではないのだし全然可能性はある。
今は違くてもこれから頑張れば、祐樹も変わってくれるはずだ。
幸いというか今は夏休みだし、時間は十分にある。
あのハーレムウハウハの祐樹だけれど、ハーレムの誰かと遊びに行くということは無いだろう。そんな勇気なさそうだし。
ハーレムのみんなを嫌っている雰囲気を出しているけれど、いつその気持ちが好感に変わってしまうか分からない。
この夏休み中に祐樹の意識を私に向けさしてみる。
名付けて『祐樹LOVE春香』である。ダサいとかいうことは置いておく。覚悟の証だからそれぐらいはつけなければ。
ひとまず、明日から頑張るとしよう。
だから、今日だけは別に。
「……っ」
──泣いても、別に。
◇
翌日。
「で、来たわけだけれども」
一緒に課題をやろうという言われたので祐樹の家に着くと。
「藤井先輩、ここ分からないんですけど」
「え~と朱里ちゃんそこはここをこっちに移項して──」
……。
「藤井君、あのちょっと私も良いかな」
「はいはい、えっと……俺もわかんないや」
……。
「祐樹君、なにか分からないところある?別に教えてあげても良いけど」
「……あとこれ全部……」
いや、え?
なんかハーレム作ってたんだが。
私の気持ちに気づいて、『お前もハーレムメンバーだから一緒に勉強しようぜ』とかそういうことか?
うーむ。何でこんな奴好きになっちゃったんだろう。……しょうがないけど。
めちゃめちゃムカついてきた。人の気持ちで遊んでるだろコイツ。
あと私が完全に場違いになってるんですが。何か話しかけくれても良くないですか?呼んだの誰だよ。
「あ、春香いたんだ」
「は?」
……は?
帰るか。
「じゃあまたね」
「え、いやちょっと待ってって」
話しかけてこいとは思ったけども、そういう形だとは思わないじゃん。家に来てから気付かれてなかったの私。
ショック受けました。慰謝料請求するしかない。やっぱり祐樹は許されざる存在だった。
まあいくらひどい奴でも、このまま帰るのは可哀想だし少しぐらいは話を聞いてあげようじゃないか。一応……人の頼みだし。
「で、何の用?」
「いやあの勉強を教えて欲しいなって」
……軽くあたりを見回してみる。目が合う。一人、また一人、さらに一人。
「私必要か?」
「彼女らはなぜか家に来てですね」
「入れたんだ」
「……まあ来てくれたしな」
「ふ~ん。ま、勉強くらいなら教えても良いけど」
祐樹にも恐らく事情があるのだろう。多分。
前世大学生だし高校位の勉強ならまだまだ解ける範囲だ。こんな昼間から家に女四人連れ込んでいる奴に勉強を教えたいという気持ちは湧いてこないが、留年してほしくもないので一応教えてやる。
祐樹も大学に行くのか?私は全然行く気だ。……そのために一応復習ぐらいはしないといけないけれど。
もし行くとしたら一緒の大学へ行くのもありかもしれない。
「桐原先輩、私も教えてもらってもいいですか?」
「ん?あ、うん。どんどん聞いてきちゃって」
ふむ、やっぱり人に頼られるというのは気分が良い。私がちょっと不機嫌なのは祐樹の所為、すべてコイツの所為なのだ。自分から呼んでおいて気付かずに無視するような奴が悪い。
ハーレムの皆は悪くない。みんな可愛いし、可愛いは正義だし。いや私も負けてないとは……思うけど。
「桐原さんその……なんか雰囲気変わった?藤井君と話すときに目を逸らすことが多かったけど」
「──えっ、いや何もないけど」
「そう?もし桐原さんが藤井君の事好きならライバルになっちゃうし、良かった」
「あ、あはは」
転生してから気付いたけど女の子って恋とかに煩いよね。ほんの少しの違いでも何かと恋に結び付けるもんだから。
桜ちゃんが言いたいのは、私が祐樹の事好きだと思っているってことね。まったく勘違いもやめてほしいね……まあそうだけど。
なんで好きになっちゃったんだろうな。ずっと一緒に居たからか?かれこれ大体十年くらい一緒に居たからなのか。
桜ちゃんに一つだけ言うなら祐樹はまともな奴じゃないぞ。ハーレムウハウハで嫌そうに見せているけれど喜んでいる奴だ。
その事実を私だけが知っている。……喜べない。
まあそんな言葉は桜ちゃんにも言えるわけがない。目の前の桜ちゃんめちゃくちゃ目輝かせてるし、完全にそういうモード入ったよね。
先ほどから変な妄想でもしてるのかぶつぶつと呟いているし、止められそうな気配がない。
よし、そろそろ課題やるか。今日はそのために来たのだ。このままでは目的が忘れてしまいそうになる。
バッグから課題を出すと目の前の机に広げた。夏休み期間すべての課題だからか、当たり前だが相当な量がある。
逆に言えばこれを終わらせれば夏休みずっと遊ぶことが出来るわけだ。
そう思うと集中力が上がってきた。
とりあえずこのまますべてを終わらせる勢いで課題を──
「──桐原さん、今日は勝ちましたわ」
「……何が?」
「私、ついに祐樹君の家にお邪魔しました」
「私いつも邪魔してるけど」
「え」
家に入るだけで勝利宣言してくるピュアな綾乃ちゃんは可愛い。……私だって負けていないぞ。こちとら小学生からずっと入ってんだ、これが幼馴染ぱわー。
なんなら祐樹を私の家に連れ込んだりしてるし、私の方が何歩も先に行っていると言っても過言ではないだろう。
「わかんねえ。春香教えてここ」
「去年の範囲じゃん、解説でも見たら」
「……なんか俺に厳しくね?」
誰の所為だと。
◇
あの後流石に二年生が四人、一年生が一人の計五人が居れば課題ぐらいはすぐに終わった。
と言っても完全ではなくまだ読書感想文などの面倒くさいものが残っている。
けれど夏休みはまだまだ残っているし計画的に進めていけば終わらせることは出来るだろう。
課題が終わるとハーレムの娘たちは疲れたのか各々の家に帰ってしまった。数時間もぶっ通しだと疲れるのはしょうがない。学校側は課題の量を減らせないのだろうか。
みんな疲れている顔をしていたけども、同時に満足そうな顔をしていた。家に入れたもんね。
反対に私と祐樹は。
ガチャガチャ。
……ガチャガチャ。
……ガチャガチャガチャガチャ
──1P-WIN-
「ふ、まだまだだな」
「ぐぬぬぬぬぬぬぬ」
課題が終わるや否やゲームをしていた。時刻は既に午後6時を回っている。
ふふ、人生で最も楽しいと感じる瞬間はいつだろう。
私の場合はこのゲームで祐樹に勝った時だ。勝った時といってもいつも勝っているのだが。
多くのキャラクターを選択できて、選んだフィールドで戦うこのゲームは前世の私もプレイしていた。つまりは経験の差というやつである。
「いや、次だ!まだ次がある!!俺はこいつを選ぶ!」
その声に画面を見てみれば2P……祐樹が選択していたのはピンク色をした丸っこい奴だった。
あのなんでも吸い込んで自分の力として戦うやつだ。
祐樹が自分の持ちキャラといつも言っているキャラクターだ。一度として負けたことは無いが。
私はとりあえず最高の屈辱を味合わせるためにランダムのところを押した。正直私はどのキャラクターでも満遍なく使えるオールラウンダーである。それをまた器用貧乏ともいうが。
まだまだ家に来た時の事を忘れてはいないからな。
私という存在を心に刻ませて、二度と同じことをできないようにしてやる。
──1P-WIN-
画面には大きく文字が映し出されていた。
ちょうど強いキャラが出てきてくれたので簡単にボコすことが出来た。
これで祐樹は私の事を無視することは無くなるだろう、多分。
「やめようぜこのゲーム、俺のプライドが壊れる」
「……あったんだ」
「あるわ」
祐樹の願望によってゲームをやめたは良いが他に何かすることが思い浮かばない。
そう考えるとゲームはただボタンをポチポチするだけでよいから楽だ。
祐樹の横顔をチラチラと伺う。ふむふむ、あの顔は何をしようか考えている顔だ。私と同じように何も思いついていないようだ。
こうやって顔を見ると祐樹は格好いい系というか、やっぱり普通だ。何も特徴がない。
なのになぜかあんなにモテている。
モヤモヤしないと言うと嘘になる。別にモテていなくても良かった。
やっぱり何かの主人公なのだろうか。あくまで例えだが。
「なあ春香」
「?」
「やっぱり何もない」
「一番気になるやつじゃん、教えてって」
「えー」
少し部屋が暑いのだろうか。祐樹の顔が赤くなってきた。暑いのなら暑いと言って窓を開ければいいのに。
私は全然勝手に開けてもらっても大丈夫だ。もとよりここは祐樹の部屋だが。
……今日の事を思い出す。来た時からハーレムの皆を家に居れていて楽しく会話をしていて。
「──やっぱハーレム主人公……なんだなぁ」
皆と話すその姿は、やはり様になっていた。
今年中に終わらしたい…