TS転生したらハーレム主人公の親友ポジだった 作:まよねえず
今日は朝から俺の家に人がたくさん来た。
それも全員女の子だ!モテモテだ!……とは思うわけでもなく、勝手に来られても困るだけである。
一応来てくれたのにそのまま返すのはどうかと思ったので、家の中に連れ込んでしまった。
別に変な下心があるとかそういうわけではない。俺は春香一筋だ。
昨日プールで遊んでいる途中で帰られたのはとっっっっても傷が付いた。この傷を癒してくれる幼馴染はいないだろうか。
まあ昨日の事は昨日の事だ、ということで課題をするという口実で春香を家に呼んだ。
嘘はついていない、俺の家に来たみんなも俺に勉強を教えて欲しいから来たとのことだった。
……一年生の朱里ちゃんならまだしも、二年生の卯月さんや早瀬さんには教えられないが?
そこで俺も勉強を教えて欲しい兼課題を終わらせてほしいということで、謎に頭の良い春香を呼んだ。
別に変な下心があるとかそういうわけじゃ…………ない、ですけど。
と、まあ春香を呼んだは良いんだけど、俺としたことが春香に気づけなかった。
最悪な奴だ、自分から呼んでおいて気づけずに『あ、いたんだ』なんて傷つくに違いない。
俺は名前も忘れたいつかの同級生に言われたときでも一日中凹んだ。春香に言われたら鬱になり自殺を考えてしまうかもしれない。
俺はなんてことをしてしまったのだろうか。
……そんなことを犯してしまった俺だが、アイツはちょっと不機嫌になるくらいだった。マジ神。
あ、いやそうとは言えないかもしれない。
──1P-WIN-
「ふ、まだまだだな」
悔しい、悔しすぎる。俺の方がやっているであろうゲームで負けるのが悔しすぎる。
課題が終わってからなぜか家に来た三人は疲れたのか帰ってしまった。
三人が帰った後に、俺と春香はゲームをしまくっていた。
課題終わったし。まだ一か月ぐらい夏休みは残っているし。どうせ感想文とかすぐ終わるだろう。
と、まあゲームをしまくっていたのだが楽しめているとは言えない。
一方的にボコされているからだ。俺は今何が楽しくてこのゲームをしているのだろうか。
俺の持ちキャラを使っても変わらずボコされるだけだった。
もしかして無視してしまったことを根に持ってしまっているのか?
それはごめんなさいだけど、ここまでボコさなくてもいいだろ。なんで何十試合もやって俺は一回も勝てていないんだ。
「やめようぜこのゲーム、俺のプライドが壊れる」
「……あったんだ」
「あるわ」
さりげなく吐かれたであろう言葉に心が傷ついた。俺にだってプライドの一つや二つぐらいあるものだ。
それにしても、なんだが。
……俺の今の状況すごいな。
いつもいつも当たり前のように過ごしているけれど、自分の好きな幼馴染が俺の部屋にいるってどこのギャルゲーですかね。
そんな中で数年の片思いを続けている俺は主人公……的な?
そういえば少し前に家に遊びに行ったとき着替え中の春香が居たり……俗に言うラッキースケベみたいな。あの時はありがとうございました、強風さん。
ダメだ。こんなことを考えていると顔が赤くなるのを感じる。幸い春香には見られていなさそうなので、変なことを考えているとかは思われないだろう。
せっかく春香が居るのに一人で考えているのはだめだ。俺が変な奴みたいじゃないか。
「なあ春香」
「?」
課題が終わったとは言ったがすべてではない。読書感想文とか意見文とかそういう面倒くさいものはまだ残っているのだ。
やっぱりここは幼馴染の力を使って春香様に助けてもらおう。春香は小学校の時謎に賞を取ったりしていたし得意だとは思う。
あのときからなんか大人っぽかった。小学校の読書感想文とは思えなかった覚えがある。というか内容を理解することも出来なかった気がする。
「やっぱり何もない」
けどまあ、こんな話を言っても『自分でやれ』と言われる未来しか見えないので俺の心の中で終わらせておこう。
俺は覚えているぞ、中学の時同じ状況でお願いした時。その時は軽く俺のお願いを吞んでくれたが終わった後に金を請求してきたこと。
『人生は甘くないぞ』と言ってきた顔を一度たりとも忘れたことは無い。返せよ俺の五百円。一か月のお小遣いだったんだぞ。
……というか隣の奴がずっと俺の事を見てくる件。春香Loveな俺としては嬉しい他無いのだが、ここまで見つめられると流石の俺でも戸惑いが生まれてしまう。
すいません、何かしましたでしょうか。もしかして俺のお願いが見透かされてしまったのか。
……嫌だ。嫌だからな。俺のお小遣いはもう上げないぞ。
よし、残った課題は俺がすべて自分でやろう。俺に与えられた課題なのだからやっぱり自分でやるべきだろう。
「……何か?」
あまりに見つめてくるものだから俺の方から話しかけた。言いたいことがあるなら直接言ってくれないと分からないぞ。いくら幼馴染とは言え完璧に相手の考えていることが分かるわけではない。
「その、なんか祐樹ってハーレム主人公みたいだなぁって」
「前も聞いた気がするんだが」
「色々な女の子たちにモテてて喜んでるし」
「……」
一つ言うと俺だってなりたくてこうなっているわけではないのだ。
俺の数少ない男友達からも『お前鈍感系主人公みたいだな』とは言われている。つまり今流行りのラノベ主人公みたいなことだろうか?聞いたことはある。
いやいや、俺は鈍感ではないぞ。少なくとも好意には気付いているから違う。俺の思い違いだったら一番恥ずかしいが。
それに俺は春香の言うようにハーレム主人公ではない。春香一筋だ。確かに周りから見ればハーレムに見えるかもしれないが、俺自身としてはそのような気はない。
「否定しないし……。後輩同級生先輩全員に好かれて幸せそうですね」
「え?」
「で。祐樹は誰と付き合うの?やっぱり祐樹も一応男だしそういう願望もあるんでしょ?」
「そういうって……」
俺の周りにはどのような娘がいただろうか。
一人目、松前朱里。ラノベ風に言うと後輩ヒロインみたいな感じだろうか。
いつも休み時間になると二年生の教室、俺の居る教室まで来てくれる娘だ。
小動物系というか守りたくなるようで庇護欲がくすぐられる。
……というだけで恋愛的には見られないだろう。父性本能が顔を出してくるので娘とかそういう存在である。
二人目、早瀬桜。同級生ヒロインみたいなものだ。
俺自身としてはあまり話すことは少ないと思う。……なんで俺好かれてるんだ?え、何もしてないんだけど。
一応同級生だが相手の事は詳しくは知らないし、挨拶と少し会話をする程度の仲、だろうか。
三人目、卯月綾乃。……説明する必要がないほどの典型的ツンデレである。
……実際に存在したんだな。本人のスタイルやその顔が可愛いというかは美しいから成り立っていると思う。
実家お金持ちそうだしお嬢様っぽい。
口調や普段の態度から勝手に想像しただけだが。
四人目、葉風泉さん。先輩であり生徒会長とか言う俺にはとても敵わそうな肩書を背負っている。
因みに良い思い出は持っていない。やっぱり生徒会長だし先輩だしで尊敬はしてるんだが、無理やり生徒会に入れてくるのはどうにかしてほしいところだ。
この前とか春香とグルになって入れようとしてきたのだが、何とかトイレ休憩で抜け出すことが出来た。
五人目……花佐菜依だ。俗に言うヤンデレヒロインちゃんである。
怖い。プレゼントとかは嬉しいんだよ、それはまあありがたいし。
……異物混入させるのやめてもらえますかね。
「……うわぁ」
考えてみると周りのメンバーが濃すぎて頭が痛くなる。俺は平凡な男子高校生じゃないのか。
「付き合う気とかは無いってやっぱ」
「うわ、世の中の大半を敵に回した」
そうだ、そもそもとして付き合う気はない。こちとら数年間ずっと片思いだぞ。今更諦めてたまるかという状態だ。
絶対に諦めてたまるか。
「……俺には好きな子がいるしな」
「…………え?」
どうなろうと、当たって砕けろだ。
◇
「……俺には好きな人がいるしな」
「…………え?」
思考が止まった。
……あんなに好きな子はいないし、誰とも付き合う気はないとか言っていた祐樹が好きな人ができたと言ったのだ。
驚くのも無理はないだろう。
しかしまあ、祐樹の好きな人とは誰なんだろうか。ハーレムの娘の誰かではないのか。だとしたら誰なのだろうか。
私の知っている人なのだろうか。
それとも知らない人なのだろうか。
「好きな人いるんだ」
同級生か、後輩か先輩か。それとも学校外の人なのか。それでもなければどこの人なのだろうか。
祐樹とは一緒に居たし、行動してきた。少なくとも今まで過ごしてきて、そのような気配はなかった。
ならば、祐樹のこの話は嘘なのか。
「まあ、な」
「ふーん……いつぐらいから?」
「……中学生?」
中学生の頃からとなると、だいぶ絞られてくるだろう。同級生だった人らの誰かだ。
しかし、祐樹の中学校生活を思い浮かべてみる。
……仲の良い女友達はいなかったし、私以外とは話すらしなかった、と思う。せいぜい話をしても係の仕事など事務的なものだけだ。
それでも好きな人が居るのか。
世間一般的に言うと一目惚れ、というやつだろうか。
けれど現在進行形で好きということは、今も連絡を取り合っているに違いないだろう。
私の中の祐樹ではそんな様子は見られなかったが、流石にそういう連絡は一人でいるときにするから当たり前と言えば当たり前だ。
もしかしてだが、休日とかに会ってたりするのだろうか。
こんな何もない祐樹だが、なぜか女の子たちに好かれる素質だけはあるようだし、向こうの女の子も祐樹の事が好きなのだろうか。
私は祐樹からはただの友達だとしか思われていない。
決定はしたくない、認めたくないから。
「どういう子なの?」
「えーまあ、優しくて時々厳しいけどたまにデレて可愛いな」
好きな人に目の前でそんなことを言われて嬉しい奴が居るのだろうか。惚気ないでください。
それで、相手はそのような人か。私の周りにそんな人はいただろうか。
ハーレムの皆は祐樹に対してデレデレだし、厳しくものを言うことは無いだろうと思う。
他の同級生や知っている先輩にも思い当たる人はいない。
……もしかして相手は女性ではなく男性なのか。
確かに祐樹はただの男ではない。あんなに可愛い女の子たちが近くに居るのに邪魔だと思っている人間だ。
実は、恋愛対象は女性ではなく男性だったのかもしれない。
これならいろいろと説明がつく。
私は男友達が少ないし、思い当たる人が居ないのは当然。祐樹が女の子たちに何も思わないのも、好きなのが男性で興味がないから。
そうか、そういうことだったのか。
「えっ……気づけなかった。今までずっと一緒に居たのに」
「っ……ああ」
「そっか、祐樹は男の方が好きだったんだ」
「どうしてそうなる???違うからね?!違う、女の子の方が好きだから、ノーマル」
違ったらしい。私的には結構自信を持っていたんだが。
まあ祐樹が男性を恋愛的に好きではないのは分かっていた。流石にそんなわけないだろうと思っていた。
では、祐樹が好きなのは誰だ、私の知らない人で男性ではない。そんな人と祐樹は関わりがあるのだろうか。女性とあまり話をできない祐樹が。
「で、誰なの」
「……それは」
「……」
なぜ言い佇む。まあ好きな人を言うのはかなり勇気がいると思うが。
それとも、私に言いにくい人だったりして。
「やっぱり五人の中の誰か?それとも他の子?」
そうだ、祐樹は何も特長がないけれどハーレム主人公のように謎にモテる。モテてしまう。
私はその祐樹の親友ポジで、基本的に結ばれることは無い。
祐樹と結ばれるとしたら、あのヒロインたちの誰かだ。
もしかしたら私が知らないだけで隠しヒロイン的な人が居て祐樹はその娘が好きになったのかもしれない。
「春香さ、さっき俺をハーレム主人公に例えてきたじゃん?……まあそれも間違いじゃないかなって」
「え、今からモテ自慢始まる?」
「いや違うけど」
祐樹が真剣な顔になって何を言う出すかと思ったら、先ほどの話だった。確かに、祐樹はハーレム主人公にしか見えない。他に呼ぶとしたらなんと呼んだらよいのだろうか。
「詳しくは分からないけど、俺を好いてくれている人は五人いる。まあ春香も知ってるかもしれないけどね」
「……知ってるわ。あんなに目の前で見せつけられて無視できる奴いないから」
「同級生、後輩先輩問わず俺を好いてくれているわけだ」
「いやモテ自慢じゃねこれ。世の中を敵に回し過ぎてる」
自分がハーレム主人公だと気づいていきなりモテ自慢を繰り広げてきた。なんだ、喧嘩売ってんのか。
モテてる俺かっけーとか思ってるのだろうか。
「だから、ハーレム主人公の居るラノベ風に言うとヒロインが六人居て、五人好いてくれている」
「……」
「その中で、一人だけ俺の事好いていないように見えるヒロインが居るんだよね」
「それは良かった」
ヒロインが六人いたことにびっくりした。私が知らないだけでヒロインは六人いたようだ。
これはもう確定だろう。祐樹はこの子の事が好きなのだ。
そして多分好いていないヒロインはその子だ。ハーレム主人公の祐樹でも好かれないヒロインとか攻略難易度高いに違いない。
「小さいときから一緒に居てさ」
「……」
「なんでも気兼ねなく言い合うことが出来て」
そんな子が居たとは初耳だった。あの祐樹が、小さいころから出会って言い合える関係の人が居るとは。
何だろう。幼稚園とかで会って、高校生になって再会したとかそういう展開なのだろうか。
「中学校も一緒で、高校もずっと一緒に居る」
「え」
「昔から頭が良くてさ、それでいてもどこか抜けているところがあって」
頭に浮かんだ小さな考え。小さすぎて、今のところ『もしかして』ぐらいの可能性しかない。
一人だけ、祐樹の言うことに当てはまる。一人だけ思い当たる人が居る。
小さいときから一緒に居て、中学高校とずっと一緒に居て、気兼ねなく言い合うことが出来る。
でもそれは……いや、まだ、まだ分からない。
「そういえば中学の頃読書感想文書かせちゃったこともあったな」
「……」
「……あの時は一か月分のお小遣い取られたしな。覚えてる?」
「……」
「え、まだ分からない?俺の……好きな人」
知っている。すべて覚えている。あの時取った五百円は罪悪感から、ハンカチを買って祐樹に渡したことも覚えている。祐樹は気付いていないようだが。
私の間違いじゃなければ、祐樹の好きな人は。
ありえないと思っていた。祐樹はハーレムの誰かとつながると思っていた。
「春香……その、嫌じゃなければ俺と付き合ってください!」
祐樹が好きな人は、私だったんだ。……そんな素振り何も見せなかったくせに。
祐樹の出した手を取って、その胸へと抱き着く。
地味に手震えてたし……どこまで行っても子供だった。
「えっその……え?」
「バカ……遅いわ」
「で、その……返事は?」
「言わせんな」
「あっはい」
この状況。もはや返事すらいらないだろう。それに相手は小さいときから一緒に居る祐樹だし、こっちの気持ちも察してくれるはずだ。
……ただ恥ずかしいだけだが。
「……振られるかと思った」
「なんでだし」
「まったく俺に好意があるようにみえなかったしさ」
「あー……まあそうかもしれないけれど」
親友ポジだし、無意識の内に親友を意識しすぎてしまっていたらしい。
しかしまあ、祐樹はさっきヒロインが六人と言っていたけれど、あれはどういうことなのだろうか。
先ほどまでの会話の流れだと、私が六人目ということになるが、私は親友ポジだ。間違ってもヒロインにはカウントされないだろう。
「そういえば私がヒロインってどういうこと?」
「あぁ、それはさっきみたいにラノベ風に言うと──」
「──幼馴染ヒロインみたいな」
「あっ……」
……。
そうだ、忘れていた。ラノベなどにほぼ百パーセント居る存在を忘れていた。
小さいころからずっと一緒に居る存在、幼馴染。
私と祐樹の存在を例えるなら、幼馴染が一番しっくりくるだろう。
親友ポジという思い込みの所為で変にネガティブになっていたし、なぜ気づかなかったのか不思議である。
そっか、私は親友ポジではなく幼馴染ヒロインで、祐樹とつながれた。
「ふふ」
笑みがこぼれる。間違いなく、今までで一番うれしい瞬間だろう。
私が祐樹と付きあったことで、ハーレムの娘は祐樹と付き合えなくなったわけだ。
正直、可哀想には思えてくる。けど、それでいい。
誰かに祐樹を渡してなんかやるもんか。
皆知ってた。
次で最終話です……今年中と言ったな、あれは──