TS転生したらハーレム主人公の親友ポジだった 作:まよねえず
貧なTSっ娘に女の子座りで見つめられたい(切実な願い)
「これどうですか?……いやこっちもいいですね」
「……」
目に映るのはどんどんと私の目の前に積まれていく水着たち。いろいろな色があってカラフルだ。
校門の前で待ち合わせていた葉風さんと私は、そのまま近くのお店まで来ていた。
今までは自分から積極的にこういうお店に入ったことがなかったので未知の体験にわくわくしながらお店に入った。
着くや否や葉風さんのことを少し知ることとなった。
葉風さんも生徒会長を務めているとは言え年頃の女の子、相応にお洒落に興味があったのだ。
「じゃあこれを着てみてください」
「……はい」
葉風さんにそのままお店の中に連れていかれ、水着の着せ替え人形と化した私は今も心を無にして着替えていく。
この水着は何着目何だろうか。とっくに十着は超えていると思う。
「あっそれいいですね」
「ほえ」
今までどの水着を着ても『いいんですけど……なにか』としか言わなかった葉風さんが初めて肯定的な意見を出してくれたのだ。
そんな返事が返ってくるとは思わなかった私が気の抜けた返事をしても許されるはずだ。
近くの姿見で、自分の姿を見る。
まずお目当ての水着は水色を基調としたワンピースタイプの水着だ。
水色という爽やかな色にリボンやフリフリなどといった装飾がマッチし印象を醸し出し、幼い印象を受けられる。
……認めたくはないが私には合ってしまっている。
そしてさらに私の成長期でも成長しなかった身長や胸が幼い感じをさらにレベルアップさせてしまっている。身長は160cmは超えたかったし胸もこんな断崖ぜっ……別に欲しいと思ってないが。
正直に言って可愛い私がこの水着を着ることによってさらに可愛く目に映る。
今までに来た水着の中だったら間違いなく私に一番合っているだろう。
「……これ、買います」
「はい、良いと思います」
自分の着ていた水着を脱いでもともと着ていた制服に着替える。
着替え終わったら試着室を出て葉風さんと一緒にお会計へと向かう。
そういえば葉風さんが持ってきたので分からないけれどこの水着って何円くらいするんだろうか。
……。……え。うん、まあ予想の範囲内だ。これも必要な出費だし親友と遊びに行くならこれくらいは使ってやろう。
私の目的も果たせたし、そろそろ葉風さんとはお別れの時間だろうか。
葉風さんには水着を買うための意見をしてくれるために来たのだし、これ以上私と居ても意味はないだろう。
「ごめんなさい、桐原さん。そこの喫茶店寄っても大丈夫ですか?」
「あ、はい大丈夫ですけど」
いつもの通学路を歩いていると葉風さんから誘われた。
指さしている方向を見ると、いかにもお洒落なお店だった。女子高生が好みそうなお店だ。
「いらっしゃいませ」
店内に入り席へと案内される。お店の見た目と同じく店内もよく装飾されていた。
「ごめんなさい。ここ前から来たかったので」
「こちらの相談も乗ってもらったので全然」
そうだ、葉風さんには相談に乗ってもらったという恩がある。私でも少しの恩返しはしたいと思うのだ。
適当にメニューにあったミルクティーを注文する。コーヒーは昔から苦いので苦手なのだ、決して飲めないわけではないが。
それにしてもこのお店は良いところだ。学校から近く値段も見たところ安い。何よりも洒落ている。
葉風さんもここに来たかったと言っているし、人気のお店なのだろうか。
たまには祐樹と一緒にこういうところでのんびりするのも良いかもしれない。
どうせ大人ぶってコーヒーでも頼むだろうから苦そうにしている写真を撮って──
「ふふ。今藤井さんの事考えてました?」
「えっいや」
「……分かってますから焦らなくとも」
「……」
私ってそんなに顔に出やすいか?よく人に心の中を読まれるような気がする。
アイツの事を考えていたのは事実だ。この喫茶店に来て一緒に楽しむ、そんなことを考えていた。
「どう思ってるんですか」
「……大切な親友です」
朱里ちゃんにも同じような話をされたと思う。
一体私と祐樹が何だっていうんだ。みんなは恋愛で脳がやられているかもしれないが、私と祐樹の間に恋愛感情などはない筈だ。
周りがどう思っていても私は祐樹の友達で親友。ハーレムの娘の誰かと繋げてあげる親友ポジだ。
「……好き、なんですよ私は藤井君の事が」
「……はい」
知っていることだ。葉風さんもハーレムの中の一人で平凡な高校生の祐樹を好いている。
「だから、藤井君の近くに居られるあなたが羨ましいです」
「……」
「……なんて独り言でしたね。申し訳ありません」
確かに私たちが何とも思っていなくとも相手は近づきにくいのかもしれない。
男子高校生と、いつも一緒にいる女子高生。そういう関係に見られるのはまあまああると思う。
親友ポジとして最善の行動は距離を置くことだろう。
でも、私は離れたくない。いつも一緒に居る、だからこそ親友だと思うから。
……モテ自慢だけはやめてほしいが。
◇
「ただいま」
「おかえり」
葉風さんとは喫茶店でそのまま別れて各々の帰路へ着いた。
少し日が暮れているからと言って、特に何もなく家に帰ることができた。
「どこか行ってたの?」
「水着を買いにちょっと」
「あら、また何で」
「夏休みプール行くことになったから」
この人は私の母だ。年齢よりも若く見られることが得意らしい。実際その通りでまだまだ若々しく見られることが多い。
どうやらこの母は可愛く見られるらしく、よく若い子に声をかけられたなどと自慢することが度々ある。
私もこの母の遺伝子を受け継いでいるため当然可愛いのだ。
「ふーん。誰と行くの?」
「祐樹」
先ほどから生暖かい目で見守られているのが気になるが、良い母だと思う。
桐原家と藤井家は家族ぐるみの付き合いだ。私が祐樹の家に入り浸っていると顔を覚えられ、家を覚えられ、今の今まで関係が続いてきている。
懐かしい記憶として、一緒に旅行に行ったこともある。
あ、祐樹のお父さん『このままくっついてくれれば楽なんだけどな』と言った事まだ覚えてます。
ということで母にとっても祐樹は自分の子供のような存在なのだ。
「春香もいい加減告らないと誰かに取られちゃうわよ」
「……」
母も母で勘違いをしている。私と祐樹が可哀想に思えてきた。何でこんなに勘違いをされなければならないのか。
私は男女の友情は成立すると信じている。
「まあいいけど。遊びに行くなら良い思い出作りなさいね」
「うん」
「デート楽しんできなさい」
「違うしっ」
母のこの性格は治って欲しい。
◇
──同時刻。
「そう?春香ちゃんとプール行くの?」
「まあ」
春香への遊びのお誘い。
プールへ誘うことには勇気が必要だった。……祐樹だけに()
何とか誘うことができたが心臓はバックバクだった。
今日は珍しく春香とは一緒に帰らなかった。向こうにも用事というのがあるのだろう。
寂しく一人で家に帰るのは辛かった。辛いというか悲しいというかなんというか。うん。
そして、俺としたことが夕食の時間にうっかりと口を滑らしてしまった。
おかげで今は両親から質問攻めにあっている。
「告白しないの?」
「出来たら苦労しない」
「好きなんでしょ?」
「……」
「このプールでどこまで進展するのかねえ」
「ほっとけ」
母からの話を無視しておく。あれには関わらない方が良いと見た。
そして突然だが俺には悩みがある。
春香が天然無自覚無防備すぎることだ。
特に最近は理性が持たない。
この前とかなんだあれ。
『──私と一緒に居る時間は減らないよね?』ってなんだよ。
本当に一瞬告白だと勘違いしてしまった。いや、しょうがなかった。
この前男の会話を聞くことがあった。
『桐原さんって完璧で可愛くね』
『優しいし』
『藤井はいいよな。幼馴染なんて』
『ずるいよな』
この会話をしてたやつ全員に物申したい。
確かに俺は幼馴染でとても恵まれているし、俺も嬉しい。めっちゃ。
でも、俺はいつも理性に耐えながら春香と一緒に居るんだよ。
偉いよ祐樹君。お前がナンバーワンだ。