魔法使いの幼馴染を助けたら俺も魔法使いになってしまった件について   作:ひざぎ

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1-16 『カラフル』

 

 人それぞれに色がある。それは、それぞれの個性と言えるのかもしれないし、もしくは縛られている物と言えるのかもしれない。人はその色を変えることはできず、どこまでいってもその色のままで生き続ける。まるでそれが呪いとでも言うべきかのように。

 

 僕はそれを呪いだと思った。どこまでも変化も変革も変質もなく、変色なく続くそれは、救いなどない呪いだと、僕は捉えた。

 

 自分以外の人間はどうだろうか。それを救いだと思うのだろうか。もしくは希望だと思うのだろうか。それとも一つの願いをその色に込めるのだろうか。

 

 やはり、それさえも人それぞれでしかない。

 

 それも、きっと同じように『色』なのだ。どこまでも続く色なのだ。始まりから終わりまで続く色なのだ。いいや、終わらない色なのだ。

 

 葵の色を考えた。彼女はきっと赤色なのだ。橙に近い、人に温かみを与える赤色なのだ。

 

 先生の色を考えた。彼はきっと青色だ。どこか世界に溶け込むような存在が青色なのだ。

 

 明楽くんはどうだろう。天音さんは、天原は、そのほかの人は。

 

 僕は、他の人の色を知らない。その人を知らないのだから色を知ることなどできやしない。人間だったころの関わり合いを振り返ってみても、結局それは変わらず、どこまでいってもわからない。世界とはこんなに狭いものだったのだろうか。

 

 僕は、どうだろう。

 

 ずっと考えている。自分自身の色を。どこまでも呪いのように続く色は何色なのかを。その答えを知っているのに、答えを出さないまま思考を続けている。その色であるということを認めたくない、そんな一心で。

 

 ──でも、結局それは見つかることはない。

 

 人間に染まることもなく、魔法使いにも染まることがない。黒とも白ともつかない、中途半端な色。どこまでも、どうしようもない曇天の色。

 

 灰色が、心を占有していく。

 

 色彩もなく、明暗もなく、灰色だけが世界に広がり続ける。

 

 そんな光景を見て、ようやく気付く。

 

 ああ、今見ているのは夢なんだ。

 

 

 

 

 毎日見る環の顔は、日に日に真っ青へと染まっていった。流石にその顔色に危険を感じた私は、環に声をかけたけれど、その声は結局、他愛のない会話に上書きされて、そうして私の心配は彼には届かない。

 

 躍起になっている。彼のそんな側面を私は見たことがない。

 

 いつものようにお茶らけて話しかけてみても手ごたえがない。

 

「……結局、環くんは今日まで来なかったなぁ」

 

 立花先生がそう言葉を漏らした。

 

 天原くんと模擬戦闘をやると決められた前日になっても、環の姿は空間には現れない。それは、彼がまだ魔法を使えていないという事実を私たちに教えるようなものだ。

 

 だからこそ、彼はずっと努力をしている。だからこそ、彼はきっと今も血を流し続けている。

 

 そうさせているのは、きっと私なのだ。私が魔法使いにさせなければ、そんなことにはならなかったはずなのに。

 

 でも、私に選択肢などなかった。彼がいない世界なんて、私には想像できなかったから。

 

 魔法使いである私の家族は、父親しか存在しない。母親についての存在を聞くことは憚られて、その理由を知ることさえない。きっと、聞いてもろくでもないものだ。魔法使いの家の事情なんて、そんなものでありふれているに決まっている。

 

 幼い頃からそんなものだった。それがどこか他人と違う視線を私に味わわせた。

 

 そんな時に、私は環と出会った。忘れもしない。小学生の時だ。

 

 小学一年生、みんなが入学という雰囲気に染まって、ああだこうだと騒ぎ立てていた幼い周囲の中、とりわけ人の目を疑うように、静かにたたずむ彼の姿は、誰から見ても異質だったように思う。

 

 きっと、私もそんな人間だった。何が楽しいのかわからない周囲の雰囲気を飲み込めず、静かに佇んでいた。私も精神的に幼い人間だったけれど、そんな年頃であっても何となく理解した。

 

 彼も、私と同じなんだろう。

 

 それがきっかけになったのかはわからない。別に私から話しかけるということはしなかったし、彼から私に話しかけることはなかった。でも、確実に周囲から浮いている存在であった私たちの存在は、浮かんでいるからこそ近づいて、いつの間にか仲良くなった。

 

 それから、なにかをするにしても二人ぼっち。誰かが私たちの仲を裂くこともなく、互いに関わっていく。

 

 距離感は近くなっていき、いつまでも変わらないと思える関係が、長く長く続いていく。それぞれが大人になって、魔法使いってことを彼に隠しながらでも、きっと長く続く。それが、私の望んでいたことだった。

 

 これはどういった感情なのだろうか、私にはわからない。友愛、という言葉だけでは収まらないし、家族愛というものとも違う。恋愛、というのも正直わからない。でも、彼に対して特別な感情を抱いていたのは確かだ。

 

 だからこそ、彼がいない世界を私には想像できない。彼がいない世界を、私は歩むことなんて選択したくない。

 

 ──例え、それが禁忌と言われる行為であっても、家族にとがめられる行為であっても、私は絶対に彼が生きる世界に生きたかった。

 

 それが、目の前の現実だ。その現実が彼の苦悩を重くさせている。

 

 それが、私にはひどく心に刺さる。鈍感なふりで無視できないほどに大きな罪悪感が、私の心をむしばむ。

 

 どうしようもない。だから、私は彼が魔法を使えることを祈るだけしかないのだ。

 

 

 

 

 意識がふらついている。どことなく気持ちの悪い浮ついた感覚が身体全体を支配している。それでも歩かなければいけないから歩いている。

 

 劣等感は、拭え切れていない。それでも僕は『空間』に行く。

 

 学校の壁の空洞を抜けて、光が僕のことを迎えてくれる。その光を受け入れた先には──。

 

「来たんですね。逃げるかと思いました」

 

 天原 雪冬は、独りでそこに佇んでいた。

 

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