魔法使いの幼馴染を助けたら俺も魔法使いになってしまった件について   作:ひざぎ

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1-EX4 その後の顛末

 

「え……?」

 

 立花先生が意味の分からないというような声を出すのを、天原が「それはこっちのセリフですよ」と怒声で返した。

 

「いや、普通に考えてみてよ。未成年だけのお泊りとかいかがわしいに決まっているじゃないか。そんなの、大人として見過ごせないよ。なにか過ちがあってからじゃ大変じゃないか。もし、雪冬くんにその気がなかったとしても、環くんはその気があるんだからね?!」

 

「なんでそうなったんですか?!」

 

 僕も意味の分からない情報が紛れてきて、思わず口に出してしまう。

 

「雪冬くん聞いてくれよ。これは本当の話なんだけれどもね。環くんはね、君が昏睡しているときに『僕が輸血します』って、声高らかに宣言したんだよ?これがその気じゃなくて、どういう気だと言うんだい?」

 

「いや、それは普通に貧血で倒れているからせめて僕の血液を輸血した方がすぐにめがさめるから、とかそんなことを考えただけで!」

 

「ほら、なんか言い訳があからさまな言い訳っぽいし、そもそも『キスをしたら目覚めるかな?』くらいの言い訳じゃないかそれ。だから環くんは雪冬くんのことを狙っているんだよ!!」

 

「狙ってないですよ!!」

 

 魔法使いの価値観が分からなかっただけで、僕は別に他意があったわけじゃない。

 

「うわぁ……」

 

 僕がそんなことを考えていると、天原がドン引きしたような目でこちらを見てくる。

 

「いや、本当に違うんだよ!僕と天原の付き合いじゃないか!わかるだろ?!」

 

「……いや、僕、先生との付き合いの方が長いんで……。というか、付き合いとかを出してくるのが本気っぽくてちょっと……」

 

 なんか、やることなすこと全部裏目に出てきているような気がする。どうしてだ、どうしてこんなに状況が錯綜するのだろう。

 

「ま、それはさておき、僕も雪冬くんの家に泊まりたいっていうのは本当さ。環くんが君にどんな劣情を催していてもどうでもいいが、単純に生徒の家に泊まる、というなかなかない経験を僕はしてみたいんだよね」

 

「いやですよ!それなら環先輩にお願いしてくださいよ!」

 

「それは無理だよ!だってご家族の目があるじゃないか!その点君なら心配無用!なんたって独り暮らしだから!」

 

 おいおいさらっとデリカシーのないことを言いやがったよこの教師。

 

「だからって泊めるわけないでしょう!嫌ですよ!」

 

「……なに?もしかして雪冬くんの方がそっちの気が……」

 

「違いますから!違いますから!」

 

 

 

 ……だんだんと収拾がつかなくなってきた頃合いで、騒ぎ立てていた自傷教師と、生徒二人は店員さんに結構しっかりと注意をされて、そそくさと退散することを余儀なくされた。

 

 

 

 

「あ、そろそろ帰んなきゃいけないんだった」

 

 立花先生はファミレスで気まずい目に晒されながらも清算を済ませると、そんなことを言ってひょいと一瞬の間に姿を消した。そうして残されるのは男子高校生二人なのだが。

 

「……」

 

「……」

 

 ……どうしようにも気まずい。あれ、こんな空気だったっけ。もっと明るいというか、話すくらいの酸素はあったはずなのだけれど、そこは真空なんじゃないかと思えるほどに静かでどうしようもない空間になってきている。

 

 夕陽が陰ろうとしているのに、それでも夏の暑さは抑えが効かない。ファミレス前、伸びる影に意識を向けても、まだ傾いているだけの太陽の日射に二人は晒されて、その熱気が苦しい。

 

「……えと、その」

 

 なんとなく気まずさに耐えられなくなって、言葉を発してはみたけれども、結局それは無に還元されて、特に続きが話されることはない。

 

「……あの、環先輩」

 

 逆に沈黙に耐え切れなくなったらしい天原が口を開く。

 

「宿泊の件、また今度にさせてください。なんというか……、立花先生が来そうなのが……」

 

 怖い、と小声で彼は呟いた。

 

「え、あ、うん。それでいいや」

 

 なんというか、ここまでくるとすべてがどうでもよくなってきた。確かに友達の家に宿泊したいような気持はあったけれど、ここまで先生によって状況がかき乱されると、途端にため息をつきたくなるだけになってしまう。

 

「……それじゃあ、僕はこれで失礼します」

 

「あ、ああ。またね……」

 

 夕闇の中、そんな声だけを二人は響かせて、互いに違う道を歩いていく。

 

 ……すごく疲れた。キャラ的に無理をしすぎたのかもしれない。そんな気持ちが繰り返されて、そして僕はまたため息を吐く。

 

 ……うん。今度、携帯を買えるようにバイトでもしよう。公に会話をすると先生に絡まれて事態が混乱するのだから、先生にばれないように携帯を買おう。そうしよう。

 

 そんな、夏休みの一日だった。

 

 

 

 

 その後の顛末。簡潔に。

 

「高校生なんだから……」

 

 食事時、母さんが、そんなことを呟きながら何かをテーブルの隅に置いた。

 

 その何かを察することはできたけれど、これ以上は何も考えたくなかったので省略。

 

 結局、母さんの誤解を拭うことはできなかった、それだけの話なのであった。

 




これで第一章は終了になります。
次回からは第二章「天使時間の歯車」が始まります。
お付き合いいただければ幸いです。
よろしくお願いいたします。
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