魔法使いの幼馴染を助けたら俺も魔法使いになってしまった件について   作:ひざぎ

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2-7 ……今からたまきくんにまほうをうちます

 

「……えと、僕、まだ使えていないんすけど」

 

 僕が彼女にそういうと、彼女はまた沈黙した。

 

 僕が魔法を使えないのは、きっといつも見ているから知っているはずなのに。その上で。

 

「……ええと、その、ちがくて」

 

 彼女は静かに言葉を紡ぐ。

 

「魔法の反発の、練習」

 

 あ、そっちの話ですか。

 

 

 

 

「魔法の反発の練習……、っていっても何を練習するんでしょう」

 

「……ええと、その」

 

 彼女は困ったように口を噤む。思いつきで話したのだろうか。

 

「……魔法の反発について理解していないと、この先ふべんかも」

 

「……不便?」

 

 不便、というか、そもそも僕は魔法を使いたいのだから、そんな練習は意味がないと思うのだけれども──。

 

 あ、そうか。

 

 そもそも、僕は魔法についての認識を改めていないからこそ魔法を反発してしまう。それでこの前天原の腕を切断したとかなんとかあったんだっけ。

 

 実際には目撃していないから現実感がわかないけど。

 

「……だから、練習」

 

「……了解です」

 

 そうして、彼女と魔法の反発についての練習?とやらをすることになった。

 

 

 

 

「……それじゃあ、どうすればいいんでしょう」

 

 僕が彼女にそういうと、ぼそぼそと彼女は喋る。

 

「……今からたまきくんにまほうをうちます」

 

「……まあ、そうなるよね」

 

 そりゃあ、反発をするからには魔法を発動して僕に当ててもらわないといけない。

 

「……でも、それだと天音さんが危なくない?天原くんの時のように大変なことになったら──」

 

「──大丈夫。なんとかなるから」

 

 彼女はそう言って、いつの間にか持っていた白色に輝くナイフを左腕にあてがう。

 

「最初は火をあてます」

 

「了解です」

 

 形式的な言葉をかわして、僕と天音さんは距離をとる。周囲の方を確認すると、皆は魔法の練習をやめてこちらを見ているようだった。

 

 あてがったナイフを左腕にスライドさせる。白い柔肌がぷつりと肉をはじいて、赤い液体が垂れていく。

 

「Enos Dies, Magna Dhiorr」

 

 いつも葵から聞いている魔法の詠唱。確か、火の玉だったはずだ。

 

 ──そして僕の想像した通り、火の玉がそこに顕現する。だが、葵が火の玉を持つような印象とは異なって、その炎の球体は勢いをもって、僕の方へと射出される。

 

 ええと、魔法の反発をしなければいけない。魔法の反発をしなければいけないのなら、僕は魔法に触れなければいけない。

 

 ──でも、魔法を反発することができなければどうなる?先ほど、葵の炎の剣を見て魔法を信じる心づもりができていたから、そんな不安が心を覆う。

 

 それでも、一応射出された炎の球を見て、僕は反射的に手で触れてみる。僕の抱いた不安は、その行為で一瞬で無に帰る。

 

 ──反発する感覚。

 

 炎の熱さが確かに手に触れる。一瞬触れた熱度は、そこに停滞することはなく、元の流れに逆らうように、持ち主のもとへと変えるように、天音さんのもとへ──。

 

「──危ない!」

 

 僕がそう彼女に声をかける束の間。

 

「Enos Dies, Magna Dhiorr」

 

 ──先ほど唱えたものを同じ言葉を彼女は繰り返す。いつの間にか垂れていた血液。火に対して火の魔法を発動して、火の玉は火の玉同士で触れ合う。火はその勢いを燃やす──。

 

 ──ことはなく、なぜか炎は何事もないように存在を消失した。

 

「……え?」

 

 ……理解が、できない。

 

 火に火。それは火に油を注ぐような、薪をくべるような、更に増長させるような印象があるのに、──それはゼロに還元された。

 

「それじゃあ、次は──」

 

「──待って、今のはどういうこと?!」

 

 僕の疑問は空間に響く。驚きのあまり、声がいつもよりも大きくなってしまう。

 

 僕は魔法のことを知らない。だから、きっと知らないからこその事例があるのかもしれない。炎には水、という印象は人間の価値観なのだろうか。

 

 その声を聞いた立花先生がニタニタと笑いながらこっちに来る。何が楽しいのかはわからないけれど、まるで子どもが何かおもちゃを自慢するように。

 

「先生、炎に炎の魔法を当てたら消えるんですか?!」

 

「そんなわけないじゃないか。炎に炎が増したら更に勢いが加速するだけだよ」

 

「そ、それならなんで──」

 

 僕がそんな疑問を先生に繋げると、立花先生はにっこりと楽しむように。

 

「──だから言っただろう?彼女は化け物みたいに凄いんだ」

 

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