魔法使いの幼馴染を助けたら俺も魔法使いになってしまった件について   作:ひざぎ

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3-3 家族について

 

「……はあ、最初から言ってくれればよかったのに」

 

 母はあからさまに呆れるように僕の左手を見る。最初こそはファンデーションを厚塗りをして隠していた黒い紋章だったのだけれども、そんなこと知っていると言わんばかりに水でこすられて、その姿を現す。最初こそ誤魔化そうとも思ったけれども、何かを知っている母に詭弁などは通用しないので、結局あきらめてしまった。

 

「……別に、これがあるからって、何か意味があるの?」

 

「知らないふりも大概にしなさいな。もう粗方わかっているんでしょう?」

 

「……」

 

 わかっているといえばわかっているといえるが、その理解の密度に関してはそこまで無いと思う。

 

 とりあえず、僕の頭の中で理解しているのは、この紋章が魔法使いのものではないということ。魔法使いの紋章とは右手に宿るものであり、左手に宿る紋章は確実にそれとは別である、ということ。

 

「──でも、正直よくわかってないよ。これがなんなのか」

 

 ──結局、それだけなのだ。立花先生に保証された魔法使いという証は、空想でしかないということだけしか、僕は知らない。黒い紋章があるからといって、それで自分の存在が何なのかを理解するほどに、情報は与えられてないのだ。

 

「……はあ。父さんもこうなるって言ってくれたらよかったのに」

 

 母はどこか諦めたような目をした。その言葉にどういう意味があるのかは捉えようはない。

 

 魔法使いであれば、家族のごたごたはありがちなものだと聞く。葵や雪冬、天音だってそうだったのだから、例外はそこまでないのだろう。

 

 だから、『父さん』という言葉を母から聞くと、どういう意図が含まれているのかを把握することができない。今までは家族の話題を出すことはしてはいけない、そんな暗黙の了解が意識の裏にはびこっている気がして、特に話すこともなかったのだけれど。

 

「父さんって、何ものなの?」

 

「うーん、そうねぇ。神父?」

 

 なんで疑問形なんだよ。

 

 そう突っ込みたかったけれど、茶々を入れたら話は進まないような気もしたから、言葉に出すことはやめた。

 

「そろそろ、環にも話さなきゃいけないとは思っていたけれど、こうも早くそのタイミングが来るとはねぇ」

 

 母は、決意したような表情でぼくをみつめる。

 

「今から突拍子のない話をします」

 

 ……また、この始まりかよ。

 

 

 

 

「は?」

 

 あまりにも突拍子のないことを言われるのだから、僕はそう返すしかない。

 

「そうなるのはわかるけど、とりあえず受け入れなさい。あんたには──」

 

 そうして紡ぐ言葉。ファンタジーの言葉を考えていた僕に、あまりに現実的で現実味のない言葉。

 

 咀嚼を終える前に、母は同じ言葉をつぶやく。

 

「姉がいるのよ」

 

 

 

 

 とてもくらいところに僕はいた。明かりがあったら、怖いというきもちもなくなるけれど、お父さんにだめだって言われたからあきらめた。そのかわりに、ろうそくの火がまわりにおいてある。

 

 いつも、ここはこんなかんじでくらい。ここはそういう場所なんだ、とお父さんに教えてもらった。

 

 そこにはぼくと、お父さんと、お姉ちゃんがいる。くらいから顔はよく見えないけれど、くらいなかでもだれかがいると安心する。

 

「……天に召します我が神よ、私はここに祈りを捧げます」

 

 なにかをいっている。お姉ちゃんはこれをキネンだって、そういってた。むずかしい話だから、よくわからない。

 

 またいつものようにお父さんに聞こうと思ったけど、ここではなにもしちゃいけないんだって、お父さんもお姉ちゃんも言っていたから、なにもしない。僕はえらいこだから、ちゃんとやれるよね、ってそう言ってくれていたから、そのやくそくを守らなきゃいけないんだ。

 

「──我が子に人としての生活を、神聖の宿らぬ人生を与え給うこと、我、希う」

 

 お父さんはそういいながら、僕のおでこをなでてる。ぬるぬるした感触、ちょっときもちわるいし、くすぐったい。

 

「──さようなら、ごめんね」

 

 お姉ちゃんが僕の頭を撫でながら、そう言ってくれたけれど、なんでごめんね、っていうのかわからない。

 

 ──そうして、僕の意識はくらい世界におとされる。

 

 僕は、なんでここにいるんだろう?

 

 

 

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