魔法使いの幼馴染を助けたら俺も魔法使いになってしまった件について   作:ひざぎ

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3-12 魔法使いって便利だなぁ

「なんというか、最近行動的だよね、環」

 

「……そうかな」

 

 というわけで、僕と葵は保育園の門前まで来ている。

 

 現在の時間帯は、おおよそ深夜二時あたり。いつもならば魔法教室が開校される時間ではあるものの、僕はここ最近の通りにサボり、葵に関しても珍しくサボってここにいる。

 

 なんでこの時間帯にここにいるかを振り返ってみるけれど、さして大したものでもない。

 

 ◇

 

 シスターの話を聞き終わり、僕たちは教会を後にした。

 

「……葵はどう思う?」

 

 僕は彼女にそう聞く。シスターの話を聞いてどう思ったのか、率直な感想をを。

 

「……なんというかだけど」

 

 葵は少し困ったように考えながら呟く。 

 

「──あの人、なんか嘘をついてる気がする」

 

「……だよな」

 

 僕も彼女の意見に同意する。

 

『──ごめん、知らないかな』

 

 僕を見知っているらしいシスターは、天音のことを尋ねると、明らかに自然的な行動でそうつぶやいた。

 

 なんというか、あからさまというくらいに自然的に。

 

「普通ならさ、『この人知ってますか?』って聞かれて答える言葉は、それぞれ違うけれども、普通なら『誰?』っていう言葉が出てくると思うんだよな」

 

 昨日、立花先生や明楽、雪冬に関しても聞いたら、最初に言ったのは、誰なのか、という疑問。

 

 だが、先ほど聞いたシスターに関しては『知らない』と、そう答えたのだ。

 

 単純に知らない、という可能性もあるけれど、その言い方はどこか不自然だ。自然的に答えるからこそ、それは違和感の塊だと思う。

 

 本当に知らないなら、きっと戸惑いが言葉の中に生まれるだろう。『なぜ』、『なにが』、『どうして』、そんな気持ちは言葉に宿るものだ。

 

 でも、シスターの返答は、そんな気持ちが言葉には宿っていなかった。聞かれることをどこか想定していて、そのうえで、あくまで自然的に答えた彼女の言葉は、不自然でしかない。

 

「それならどうするの?」

 

 葵は僕の目を見つめる。

 

 ここまでは想像の範疇で、なんとなく希望的な何かがあればそれでよかったのだが、先ほどのシスターとの会話で、なんとなく確信めいた感覚がある。予感にも近いもので。

 

「……じゃあ、夜に忍び込んでみよっか」

 

 

 

 ◇

 

 というわけで、僕らは夜の時間帯に保育園に来たというわけである。

 

 もし予想が違うならば、ただ単に不法侵入になるという、どうしようもない不安が心に反芻するけれど、よくよく考えてみなくても、以前までは魔法教室に入るために、何度も中学校に不法侵入を重ねていたのだから、今さらとしか言いようがない。

 

「それじゃあ、入る?」

 

「……うん」

 

 ──おそらくここに、天音はいる。きっと。

 

 彼女に会って、そうして問い質したいことはたくさんある。僕のことや彼女のこと、記憶のことや、魔法教室のみんなのこと。

 

 僕はそんな気持ちを抱きながら、保育園の門を乗り越える。葵もそれに続いて敷地内に侵入した。

 

 

 

 ◇

 

 教会については鍵がかけられている。当たり前といえば当たり前としか言いようがないのだけれども。

 

「……そういえば、感覚が麻痺していたけど、普通に侵入するには鍵がいるよな」

 

 毎日魔法教室に通うために、もしくは雪冬にお見舞いするために中学校に侵入していたから気づかなかったけれど、本来は鍵がかけられていて当然なのだ。

 

 魔法教室に関しては、別に外に入り口があるので容易に侵入することはできるけれど、保健室については立花先生の計らいがあってのものだ。だから、いきなりこんな困難に立ち向かうことになるとは思いもしなかった。

 

「……」

 

 どうすればいいだろう。沈黙が空間にはびこる。

 

 一応、教会には窓がついていることを昼間に確認したけれど、それを割ってまで入るのはしのびない。というかそもそもそれは忍べていない。

 

 こんな時間に来たのは、人に知られないようにするという思惑をもっての行動だ。だからこそ、窓を割ったり、などそんな大それたことはしないし、そんな度胸もない。

 

 と、思っていたら。

 

「──ここ開ければいいの?」

 

 葵がとぼけた声でそう言う。

 

「え、ああ、うん」

 

 その声に適当な返事をしてしまうが、その言葉を聞いて葵は、そっか、とそれだけ返して、何か音を響かせた。

 

 ──ぷつ、と肉が少し弾ける音。それで何が起こるのか、だいたいを察してしまうのは、きちんと魔法教室に行っていた甲斐があるということなのだろうか。

 

Enos Dies(我、希う), Contlioet Demple(扉の開錠を)

 

 聞き慣れた言葉、もう言うこともやめてしまった言葉。

 

 その声が響き終わって、彼女のが切って生じたであろう血液は、すべて無に還元される。光景については暗がりだから見えないけれど、きっとそんなことになっている。

 

 ──カチャッ。

 

 そんな擬音が目の前から聞こえてくる。

 

「魔法使いって便利だなぁ」

 

「……そこそこにね」

 

 葵は苦笑しながら、そうして目の前の扉を開けた。

 

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