肉体年齢を操作できる病弱男子生徒が血反吐を吐きながらホシノを曇らせるお話   作:絶対正義=可愛い

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「希望なんて、存在しねぇんだよ」

「だって、そういう物語だろ?」


いつも通り……?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

クックック……。

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「つまんねー」

 

「………」

 

タツヤ先輩が心底つまらなそうに天井に向かって呟く。

だけど、分からなくもない。

 

暇だ。

 

私は隣のベッドで同じようなことを思いながらも天井の染みを数える。

 

……でも暇だ。

 

「つまんねー!」

 

「………」

 

それにしても、泣き過ぎで脱水症状って……思いだすだけで恥ずかしくて顔から火が出そうだ。

 

ズキッ。

 

「つまんねー!!」

 

「………」

 

そういえば明日は柴関ラーメンにバイトだ。

さすがに明日までには治っているだろうけど、ちょっと不安だ。

主に、私の隣で寝ている人のせいで。

 

「つまんねーーーーー!!!!」

 

「うるっさいわね!!病人は黙っててよね!?」

 

さっきなら「つまんねー」を連呼している先輩が喧しくて怒鳴り返した。

 

駄々っ子のように吠え始めた()()()()先輩がガバリとベッドの上で起き上がり無駄にキリッとした表情で私を見る。

 

「つまんねぇもんは仕方ねぇだろ!爺の気は短ぇんだよ!」

 

「私とそう歳変わらないでしょ!っていうか、ホシノ先輩もそうだけど、その『おじさん』『爺』ネタは何なの!?」

 

「……ノリ?」

 

「なんで疑問形なのよ!自分のことなんだからちゃんと分かっていなさいよ!」

 

「なに?セリカ怒ってんの?生理?ゲームでもする?」

 

「あ゙ぁぁぁぁ!!!!!!デリカシー!!!!」

 

頭をガシガシと搔いてしまう私は悪くないと思う!

何なのよ!

先輩、私よりも重症っていう自覚あるわけ!?

人がせっかく心配してるっていうのに!!

 

ズキッ。

 

「ん、セリカもタツヤ先輩も元気そう」

 

「ええ元気よ!いっそ今から校庭でも走り出しそうなくらいに……はっ……シロコ先輩!?いつの間に……!」

 

「だいぶ前からそこにずっと居たぞー」

 

「嘘でしょ!?」

 

なんで気配消してんの!?

そんな敵組織に潜入するスパイじゃあるまいし……。

 

「ん、ほんと。でも、セリカもタツヤ先輩も仲が良さそうで何より。私はお邪魔だったみたい」

 

「はぁ?」

 

何を言ってるんだこの先輩は。

思わず素で返してしまう。

 

「ん、残念だったねタツヤ先輩。セリカは先輩に脈なし」

 

「そんなっ……!」

 

「え、ちょっと待ってよ!なんでそんなショック受けてんの!?」

 

みゃ、脈なしって……。

私先輩をそういう目で見たことないんだけど!?

…どちらかといえばアヤネちゃんの方が先輩と仲良いでしょ。

 

「え?だってセリカ俺のために泣いてくれたらしいし」

 

「わあ゙あ゙あ゙あぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」

 

どうして…!

こう!

この先輩は!

こうもデリカシーに欠けるの…!?

本当に、あの時はめちゃくちゃ心配して……っ!!

 

ズキッ。

 

 

「ん、先輩の勘違い。そうそう、こういうとき『乙w』『草生える』っていうらしい」

 

「なにそれくっそウケるハッハッハ……!………シロコ、後でインターネットの使い方についてオハナシがあります

 

「ん、急用を思い出したお大事に」

 

シロコ先輩とタツヤ先輩の漫才に私がツッコむという()()()()風景が私の目の前で展開されてる。

……あ、もしかしてシロコ先輩、私たちを元気づけようと……?

 

………。

ぶ、不器用なんだから…。

 

「……あ、その…ありがとうシロコ先輩……」

 

「……ん。セリカは最近デレすぎ。ツンデレキャラはどこに行ったの?」

 

「やっぱり今の無しぃ!!!!」

 

 

先輩達ってこんなんばっかり!!

私の気も知らないで!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうでした?」

 

「ん、いつも通り。いっそ怖いくらい」

 

「………」

 

保健室から帰った私にノノミが心配そうに聞いてくる。

 

タツヤ先輩はいつも通りだった。

あの人はこういうとき大体あんな感じだから、心配は要らない……のかな?

 

それはそれで問題がありそうだけど。

 

問題はセリカで……。

セリカも…まあ、一応いつも通り。

 

「“自己防衛かな……。たぶん、普段通り振る舞うことで記憶に蓋をしているんだと思う。医者じゃないから、なんともいえないけど……”」

 

先生が表情を歪ませてそう言う。

 

きっと、先生の言う通りあの時の状況を思い出したくないんだろう。

 

命の象徴たる赤で全身くまなく彩った先輩。

その先輩を抱き抱える、これまた全身を先輩の血で染めたセリカ。

 

いっそ殺人現場と言われても遜色ない、凄惨な光景。

 

私も、あの日の光景が脳裏にフラッシュバックして、胸の奥がザワザワした。

ドス黒い感情が私を支配して……っ。

 

……私だったら、耐えられていたかな?

……いや、無理か。

それをセリカは、その瞬間を見てしまって……。

 

とにかく。

 

セリカはちゃんと休ませないとイケナイ。

私が保健室に入ったことにも気づかないくらいだ。

肉体的な消耗よりも、精神面の摩耗が酷い。

 

明日柴関ラーメンにバイトと言っていたけど、無理にでも休ませないと。

 

「その、タツヤ先輩は……」

 

アヤネが恐る恐る呟く。

誰に向けて言ったのかは定かじゃないけど、きっと、私やノノミ、ホシノ先輩の誰かだ。

 

「先輩のお体が悪いのは知っているんですけど、それって結局何なんですか?」

 

それは……。

 

………。

 

私も知らない。

詳しい内容や理由は知らない。

 

精々体がすごく弱くて、銃弾1発で血が流れたり、あんまり長時間動けない位しか……。

 

でも、そういうタツヤ先輩のことを一番知ってるのは……。

 

「“………私も聞いても良い?”」

 

「……………」

 

「ん、私も気になる」

 

 

ホシノ先輩はずっと腕を机の上で組んで、顔を埋めて寝ていた。

……いや、目を凝らせばヘイローがちゃんと見える。

ずっと起きていた。

 

暫くして、顔を上げずに口を開いたホシノ先輩は、いつも通りの声色で話す。

 

「うへ〜……それこそ、人に話すようなもんじゃないと思うけどな〜。好奇心は猫を殺すっていうしさ。知らなくてもいいんじゃないかな?」

 

「……それでもっ、私たちはタツヤ先輩のことを知らないといけないと思うんです…!私たちの、先輩ですから…!」

 

「アヤネ……」

 

アヤネが不安そうにタブレットを胸に抱えて、突っ伏したホシノ先輩に言う。

…タブレットを持つ手は少し震えていた。

 

「で、でも……ホシノ先輩が話したくないって言うなら」

 

ノノミが慌ててホシノ先輩の気持ちも大事だとアヤネを諭そうとする。

けど……。

 

「で、でもっ……タツヤ先輩が誰かを助けようとして、それで、し…死にかけるだなんて……見たく…ないです」

 

「そ、それは……」

 

語気が段々と弱くなりながらもアヤネが思いを吐露する。

さすがに、ノノミでもこれには言い返せずに言葉が詰まる。

そんなやり取りをしている間、ホシノ先輩は何も言わなかった。

 

「……おじさんちょっと外の空気吸ってくるね〜」

 

椅子から立ち上がったホシノ先輩が俯きながら私の横を通り過ぎていく。

 

「あ、ホシノせん……っ」

 

止めようと振り返って、その瞳を覗き込んで伸ばしかけた手と言葉が途切れた。

 

 

昏い昏い、果てしない闇がそこにはあった。

どこまでも、どこまでも昏い闇が……。

 

 

 

 

そして。

そして。

そして。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日、ホシノ先輩は学校に戻らなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇ、黒服の人。タツヤの体は治せる?」

 

ああ……。

ああ……!

ようやく、ようやくここまで来た……!

長かった……。

気の遠くなる年月をかけて、ようやく引き出せた言葉。

 

気分が高揚して、思わずニヤけてしまいそうです。

 

おっと、イケナイ、イケナイ。

ここで悟られてしまえば全て台無し……。

冷静に、いつも通りを心がけて行きましょう。

 

「タツヤ……と言うと、歴舟タツヤさんでしょうか」

 

「私の質問にだけ答えろ。お前のチカラで、タツヤの体は治せるのか」

 

暁のホル……小鳥遊ホシノさんが私を鋭く睨みつけているのを傍目にこれまでを振り返る。

 

思えば、ここまでの道のりは長かった。急造したプランとはいえ、こうも上手くいくといっそ怖いくらいです。

しかしまあ、今となっては、失敗作たる彼を再利用しようとした()()()の自分に盛大な拍手をしたい位です。

 

実に、実にいい気分ですねえ。

 

「可能だと言えば……どうなさるつもりで?」

 

「…………あの契約にそれを追加するなら、受けても構わない」

 

 

歴舟タツヤ。

 

我々ゲマトリアの総力を使って作られた傑作にして失敗作。

 

 

名もなき神々の王女の再現実験。

神性の別側面の観測実験。

記号による神性の解釈拡大と反転実験。

その他諸々、各々が持ち込んだ知識と技術をもってこの世界に誕生した個体。

 

 

Error作品たる彼が死にかけ、肉体に許容できないダメージを負った時こそ心底失望しましたが、あのとき彼を処分せずに良かった。

 

 

アビドス最高の神秘たる暁のホルスを手に入れるために生かし続けた彼は、彼女にとって()()()()となった。

 

 

 

いやはや……クックック。

 

 

 

全て私の手のひらの上だというのに。

綺麗に踊っていただきました。

 

そんなあなたに、とびきりの感謝を。

 

そしてありがとう。

 

彼を信じてくれて。

彼と親交を結んでいただいて。

 

ああ、湧き上がる好奇心と探究心が私の心を弾ませてくれる。

 

ありがとう昏のトト。

あなたのお陰で、私の目的は叶いそうだ。

 

 

「では……詳しい内容の詰めは、また後日にでも」

 

 

クックック………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さあて、後の問題は彼の存在だけです。

先生……ですか。

中々興味深い存在ですねえ。

 

クックック……!




歴舟タツヤ(主人公)
悪意から誕生した世界のバグ、エラー。

小鳥遊ホシノ(ヒロイン)
やはり今作のメインヒロイン(嘲笑)。この真実に気づいた時、彼女はどんな顔をするんだろうか……。
逃れられない事実に怯え、震え、まだ無知である内に眠りなさい。
さて、彼女の心はもつのかな?

砂狼シロコ
彼女から始まり彼女で終わる。

十六夜ノノミ
―――。

奥空アヤネ
悪意のモデル。

黒見セリカ
心身に甚大なError発生。

先生
奇跡の担い手、救世主。

黒服
悪意の一欠片。

ゲマトリア
悪意。



最低最悪の真実。
あらゆるモノが交錯する中、果たして結果には何が残るのだろうか?

実に、実に……。
興味深い。

曇らせのない、いわゆる日常回的なものを挟んでも良い?

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