肉体年齢を操作できる病弱男子生徒が血反吐を吐きながらホシノを曇らせるお話   作:絶対正義=可愛い

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自己満足。


第1話

「ゲホッゲホッ……!!」

 

タツヤはあれから徐々に体調が悪化していった。

日に日に睡眠時間が長くなり、今では1日の大半が(ユメ)の中。

 

1日に起きている時間の殆どは、保健室のベッドの上。

健康的だった肌は病的に青白くなり、咳が目に見えて増えた。

 

慣れた……と言えば慣れたのだろう。

表面上は…。

 

タツヤが咳をするのも、唐突に鼻血を流したり、吐血したりするのにも。

 

慣れた……と思いたい。

 

これが良いことなのか、悪いことなのか。

それが正しい事かは分からないけど、…でも私たちは変わり始めている。

 

()()()()()()()()()()()()()()

 

最近私は髪を伸ばし始めた。

さすがにタツヤよりは短いが、ポニーテールにできる位には伸びた。

 

タツヤも……最近更に髪が伸びて、立っていても地面に髪がつくレベルだ。

 

本人も切ろうとしているらしいのだが、ハサミの方が切れるという怪現象が起こるらしい。

 

歳をとってもハゲないですねと言って殴り合ったのが、懐かしい。

 

そういえば、ユメ先輩がいた頃はしょっちゅう髪型を弄られていたっけ?

 

俺は人形じゃねぇー!ってザ・不満という顔で抗議していたのも懐かしい。

 

なんだかんだ、ユメ先輩にされるがままだったのは、タツヤなりの優しさだったんだなと思う。

 

思わずくすっと笑ってしまう。

 

「おいコラ何笑ってやがる」

 

「いえ、別に?」

 

変な奴だな、と保健室のベッドで胡座をかくタツヤがぼやく。

 

「そういや、アホ毛」

 

「……いい加減その呼び方やめてくれません?」

 

「ならそのアホ毛引っこ抜いてから言わねぇと」

 

ブチッ!!

 

「いったぁ!!?」

 

「あ、生えてきた」

 

「乙女の髪に何してくれてるんですか!?」

 

う〜ん、世界の謎だな…なんて馬鹿なことを神妙な面持ちで呟くタツヤを見て、やっぱりこの馬鹿は変わっていないなと思い始める。

 

「ところでアホ」

 

「……まさか、引っこ抜いたら『毛』が抜けたんですか?」

 

「上手いこというなお前」

 

「……こんの男……!!」

 

センシティブな気分を台無しにしてくるような発言に、さすがにムカッとくる。

 

ゲホッ……ま、気が向いたら別の用意してやるよホシノちゃん?」

 

「やめて下さい、鳥肌が立ちますセクハラですか?」

 

「喧嘩なら言い値で買うぞ?お?お?」

 

わざとらしく腕をブンブン振って青筋を立てるタツヤだったが、ふと思い出したかのように呟いた。

 

「あー、そうだアホ毛」

 

「今度は何ですか……」

 

と、おもむろにベッドの掛け布団の中に手を突っ込んで何かを取り出す。

 

「おら誕プレだありがたく貰いやがれ」

 

「明日は雪ですか?」

 

「おうコラまな板ァ……今なら無料(タダ)で喧嘩買ってやるぜ……?」

 

それなりの大きさの白い箱に赤いリボンの巻き付いたソレを押し付けるように渡された私は内心かなり動揺していた。

 

「私、誕生日なんていつ教えました……?」

 

「ふんっ誰が教えるかバーカ……それに、直に分かるしな

 

「……そもそも私の誕生日まだ一ヶ月以上先の事だと思うんですけど……」

 

「………黙秘権を行使する」

 

「というか、どういう風の吹き回しです?」

 

「…………………」

 

「…………まぁ、受け取ってはおきますけど」

 

何も喋るつもりがないのか、黙ったタツヤを傍目に、そのプレゼント箱を眺める。

 

え?

あのタツヤが?

()()、タツヤが!?

 

私に誕生日プレゼント!?!?!?

 

 

「……こ、これここで開けていいですか?」

 

「あー、……駄目。それに、お前のためにも家に帰ってから開けたほうがいいだろ」

 

「?」

 

「ま、後で嫌でも分かる…つーことで、おら!とっとと帰りやがれ!!」

 

「は?ちょ、何ですかいきなり!」

 

私の背中を強引に押して保健室の外に放りだして、タツヤは最後に私の方に向かって、ニヤリとした笑みで言った。

 

 

 

「そんじゃ、()()()()()()

 

 

これが……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私が高校1年生最後に聞いた、タツヤの声だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

家に帰った私は早速貰ったプレゼントの封を開けた。

 

中に入っていたのは、鯨のぬいぐるみ。

人によっては間抜けそうと判断するかもしれない、愛くるしい目と口が特徴の鯨だった。

 

ちょうど私の腕に収まる位の大きさで

 

 

「わぁ〜……!!」

 

今まで友達なんて居なかった私が初めて貰ったプレゼント。

 

その可愛さに思わず抱きしめてもふもふ具合を確認してしまう。

なるほど、確かにこれはタツヤの前で開けなくて良かったかもしれません。

 

だって、このもふもふ感をその場で味わえないなんて……生き地獄です!

 

鯨をぎゅーっとひとしきり抱きしめた後、ふと、箱の底に()()()()()が見えた。

 

 

なんだろうと思って、その1枚。

可愛らしくプリントされた手紙の封を切る。

 

 

「え?」

 

 

かすれた声が、僅かに私の鼓膜を揺さぶった。

 

だって、この文字は……。

 

 

「ユメ……先輩?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ホシノちゃんへ

 

 

突然手紙なんてびっくりしたかな?

だとしたら、サプライズ大成功だね!

えーっとね、改めて文字にして伝えるのはちょっと恥ずかしいけど……。

 

でも、こういうのは貰った側は嬉しいもんだーってタツヤくんが言うから、書いてみちゃった。

えへへ……。

 

えっと……こういう時になんて書くのか、分からないんだけど。

 

私はホシノちゃんが生まれてきた事にありがとうって伝えるよ。

 

私が困っているときはいつも助けてくれて、強くて、かっこよくて、とっても可愛いホシノちゃんが居てくれて本当に嬉しいの!

 

こんな頼りない先輩だけど、私と一緒にいてくれるホシノちゃんが、私は大好きだよ!

 

多分、この手紙を渡す頃には私はもう卒業間近だと思うけど、ホシノちゃんが居てくれた日々はきっと、とっても楽しかったはずなんだ!

 

も、もちろんこれを書いている私はまだホシノちゃんと知り合ってほんのちょっとしか経ってないけど、不思議とそう思えるんだ。

 

だから、ホシノちゃん。

 

生まれてきてくれてありがとう!!

これからもよろしくね!!

 

ユメより

 

 

 

 

 

 

 

途中から、涙で前が見えなかった。

零れ落ちた涙が、滲み、染みを作っていく。

 

手に持つ鯨のぬいぐるみに顔を押し当てる。

 

力んでしまったのか、少しよれてしまった手紙と一緒に強く、強く抱き締める。

 

 

 

 

「ばかじゃないですか…………うっああああぁぁぁ!!!!

 

 

 

抑えきれない嗚咽が、感情が溢れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ねぇねぇタツヤくん!』

 

『……なんすかパイセン?』

 

『ビッグニュースだよ!』

 

『俺これからパトロールなんすけど……』

 

『まぁまぁ、ちょっと聞いてよ〜!』

 

『はぁ……手短に頼んますわ』

 

『ふふっ……実はホシノちゃんの誕生日を知ることができました!』

 

『はぁ』

 

『そんな「なんで俺に?」見たいな顔しないでよタツヤくん!』

 

『んで?それ、俺関係あります?』

 

『もう!ニブチンだな〜チッチッ』

 

『あんたにだけは言われたくねぇ……』

 

『だ・か・ら!ホシノちゃんの誕生日プレゼント、買いに行こ?』

 

『何がだからなのか分かんねぇすけど……パスで』

 

『生徒会長権限でタツヤくんに拒否権はありません〜!』

 

『下部組織の風紀委員長に対して横暴じゃね……?』

 

 

 

 

『これなんてどうかな!』

 

『パイセン、センス糞すぎね?』

 

『ひぃん!酷い!』

 

『いや、だって、ナニコレ?バナナの…鳥?』

 

 

『可愛いでしょ…?』

 

『いえ全く』

 

『うぅ〜……。辛辣だぁ……。じゃあ、タツヤくんは何かアイディアあるの?』

 

『は?何で俺の意見が必要に……』

 

『参考までに…ね?お願い…!』

 

『あー……、手紙…とか?』

 

『手紙?』

 

『まぁ、貰って不快になることはねぇと思いますけど?……やっぱ今のナシで。キャラじゃねぇ……』

 

『いい……、いいよタツヤくん!その案採用!』

 

『んげっ!ちょ…!……やっめろ…脂肪の塊が……殺す気か……!!』

 

 

 

 

 

『気は取り直して、アイツ魚好きだし、こういうのがいいんじゃねぇんすか?』

 

『あ、じゃあこれとか………』

 

『いや、触り心地はこっちの方がいいだろ』

 

『でもでも、こっちはふわふわしてる!』

 

『なら、こっち方が触り心地もふわふわ感もある』

 

『あ、本当だ!……で、でもちょっとお値段が……』

 

『はぁ……。俺もだしますよ』

 

『え?……え!?いいの!?』

 

『ま、せっかくなんで……。……それに、後から新しいの選ぶのめんどくせぇんで、二人でプレゼントって方が楽ですし』

 

『ふふふっ……♪素直じゃないなぁ〜タツヤくんは〜!』

 

『ちょ、おま、抱きつくなうざったい!』

 

『んへへへ〜♪』

 

『はぁ……。で?アイツの誕生日いつなんすか?』

 

『えっとね、たしか……1月2日だよ』

 

『ざっけんな!半年以上先じゃねぇか!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

「ったく……懐かしいなぁホントに」

 

「………」

 

「……ゲホッゲホッゲホッ!!!!」

 

「……早く寝ねぇと」

 

「そろそろ、俺の命が持たねぇ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ちんちくりんのまな板アホ毛ピンクへ

 

まず、箱に同封してあるもう一つの手紙を先に読んでおけ。

それを読まずにここから先は読むな。

 

そんでもって、落ち着いた時にこっから先をちゃんと読め。

 

 

良いな?

警告はしたぞ?

 

 

 

 

お前も知っての通り、俺の体はもうどうしようもないくらいにズタボロだ。

ぶっちゃけ、いつ死んでも可笑しくない状態だ。

俺の体だ。

俺が一番理解してる。

 

それでも生きていられるのは、俺の神秘(チカラ)の影響がデカいんだが……。

 

あー、でだなぁ。

ちょっと俺の力について話すわ。

お前には、ちゃんと話したことなかったしな。

 

 

俺の神秘(チカラ)は自身の『時』に干渉する力だ。

 

 

何度か見せたことはあると思うが、俺の体がデカくなったりガキになったりするのは、俺が自身の肉体の『時』に干渉しているからなんだな。

 

この神秘(チカラ)の不思議なところはな、どれだけ俺の『時』に干渉しても、俺自身の本来の時間は常に進んでいる状態なんだ。

 

そんで俺がガキの姿だと、本来生きていくための生命力と呼ぶべきもんが、限りなく低コスパで動くようになってる。

 

本来100使われるべきエネルギーが、ガキの時だと50位で済むわけなんだな。

 

重要なのは、この使われなかったもう50のエネルギーの所在さ。

 

この50のエネルギーは俺の中に貯蓄(ストック)される。

この力で俺は今何とか、生きてんだけどよ。

 

今のままだと、貯蓄(ストック)分が底をつく。

 

今までも、ガキの姿でそうしていたんだけどよ……。

さすがに、こんな体になっちまったせいか、生きていく力の消費が馬鹿にならなくてな……?

 

 

 

だから俺は今日、俺の『時』を止める。

俺自身の時を止めて、100あるエネルギー全て貯蓄(ストック)する。

 

 

……。

 

分かりづらかったらすまねぇな。

 

要は、生きていくための力を蓄える為に、ちょっとの間寝るだけだ。

 

急な話で悪ぃとは思ってる。

 

起きたときに一発殴られる覚悟もできてる。

………本当に、すまねぇ。

 

最後に、介護じみた俺の世話をしてくれたことに感謝する。

 

出来れば、次目覚めた時はお前と後輩たちのためにも元気な姿を見せてやりてぇ。

 

 

後、これは俺のエゴだから、おまえが責任を負うことじゃねぇぞ。

 

 

それじゃあホシノ。またな。

 

P.S.

パイセンの手紙を読んだお前の泣き顔が見れねぇのが心底残念だぜ。ハッハッハッ!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日、タツヤは眠りについた。




主人公
歴舟タツヤ。

素直になれない、病弱系男子(ツンデレ属性持ち)。

何だかんだで、ユメに言われなくても誕プレを個人で用意しようと思っていたり、途中からちゃっかりノリノリでプレゼント選びをしていた。

ユメ先輩の手紙で本日情緒をぐちゃぐちゃにされ、タツヤの手紙で絶望顔を晒したと思われる過去おじ。

ユメの手紙で嬉し涙と悔し涙。
タツヤの手紙で一気にどん底まで落とされたホシノの絶望顔を、どうかご想像ください。 


ユメ先輩の天然具合。
誕プレを買いに行ったのは大体生徒会にホシノが所属して少し経った後のお話。



後遺症リストNew

「体はいつ死んでもおかしくない」
→神秘の力で何とか生きているだけで、本当だったら死んでいてもおかしくない体である。

「完治不可能」
→後遺症に関して、完全に治すこと()絶対にできない。例えそれが怪しい()()のナニカであれ、()()()()()()()()の力であれ、()()()()()()()()の奇跡であれ……。







……血反吐を吐かせたい。

曇らせのない、いわゆる日常回的なものを挟んでも良い?

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