肉体年齢を操作できる病弱男子生徒が血反吐を吐きながらホシノを曇らせるお話 作:絶対正義=可愛い
「タツ…ヤ……?」
「おう、おはようさんアホ毛。髪伸びてんのに背とアホ毛は伸びねぇのな?」
ベッドに上半身を預ける形で寝落ちした私が起きた時。
憎たらしいほど懐かしい笑みを浮かべたタツヤが、私に喋りかけた。
私に、喋りかけた…!
一方的じゃない、会話の成立。
「……タツヤ」
「おう」
反応が帰って来る。
じわっと景色が歪む。
「……タツヤぁ…!」
「お、おう?」
頬を触って、額に触れて、頭に触れて。
ちゃんと、心臓が動いてる。
息をしている。
冷たくない……!
ゆっくりとした動きでギュッと、けれど無我夢中に抱き締める。
「心配…っ…させて…!!」
強く抱き締めて、その肩に顔を埋める。
涙で服が汚れてしまうとか、大胆なことをしてしまったとか、今の私には些細な問題だ。
ああ、ちゃんと生きてる!
人としての温もりがある!
それを全身で感じるのに、必死だった。
「おいおい、そんな泣いてんじゃねぇよ……。てか、おまえそんなキャラだったっか?」
困惑した声が私の耳に聞こえるが、今の私には、それを聞くだけの余裕がない。
「ぅ…っあ……おそ…い、遅いん…だよ…!」
「…………………それは…すまん。遅くなっ…た?いやそもそもどれ位時間が経ったのか知らねぇんだけど」
本当に謝る気があるのか分からない謝罪を聞いてると腹が立ってくる。
でも、怒りよりも安堵や安心の方が勝ってしまって、いつもみたいにできない。
「ばかぁ……、ほんとうに、ばか…なんだ…から」
「すまんて」
「心配…かけないで……」
タツヤが私をあやすように抱き、ぽんぽんと背を叩く。
覇気のない罵倒と謝罪を繰り返して、私たちは再会した。
「……………」
「落ち着いたか?」
「…うん」
ひとしきりタツヤの腕の中で泣いた後。
私は色々なことを話した。
借金のこと。
生徒会のこと。
ノノミちゃんのこと。
シロコちゃんのこと。
対策委員会のこと。
「へー?まあ、生徒会に関しちゃ俺は何も言うことはねぇよ。一応俺は風紀委員会所属だし……」
少しモヤッとする。
確かにタツヤの正式な所属は風紀委員会だけど、ほとんど生徒会役員みたいなものなのに……。
「それより俺は後輩ちゃんの方に興味がある」
「うん、直ぐにでも紹介するよ」
タツヤがベッドから降りる。
一体いつぶりか。
タツヤが病院で目を覚ました日から、徐々に弱っていって最終的に立つことすらままならなかった日々。
タツヤが二の足で立っている。
それだけで、胸に込み上げてくるものがある。
「っ…案内するね」
「おう」
涙腺が緩みそうになるのをグッと堪えて、保健室をでる。
委員会室に連れて行こうとすると、タツヤは振り返って保健室を見た。
その翡翠色の瞳が細められる。
本人的には寝ていた間の記憶はなく、普通に寝て起きた感じらしい。
だとしても、眠る前のタツヤは体が動かなくて保健室から一歩も出ることができない状態だった。
久方ぶりに出た保健室という居城。
感慨深いものでもあるのだろう。
「…よし。行くか」
パチンッと頬を叩く。
たまに見せるこういう子供っぽいところも、随分久しぶりに見た気がする。
「ケホッ………」
……タツヤは言った。
前よりは断然マシ…と。
けど、体が弱いことに変わりはない…と。
つまり、完全に治ったわけじゃない。
あくまでも症状が和らいだだけで、根本的解決にはなっていない。
……そもそもタツヤの体は、完治しないと医師に診断されている。
そこはどうしようもなく変えられない現実だ。
モヤモヤとした不快感が胸の奥底に溜まっていくのをできるだけ無視して、私はタツヤの隣を歩く。
心配かけ無いように、笑顔を貼り付けて。
「もう、いい?」
「おう。すまねぇな、止まっちまって」
「ううん。行こっか?」
それでも、今はタツヤが目覚めたことに素直に喜ぼう。
さ〜て。
タツヤの対策委員会入りを祝して、何かやろうかな?
みんなも巻き込んで今日はぱーっとやりたいな…。
この少し後対策委員会の部屋から驚愕の叫び声が木霊するのだが、それはまた別の話。
夜の帳がとっくに下りた丑三つ時。
頭上には月が満ちて妖しく月光を放ち、世界は静寂が支配していた。
そんなほとんどの人間が寝静まる中、複数の影がジッと目の前の砂にまみれた学校を見ていた。
その建物から、影が一つ現れる。
小さな影だが、ゆっくりとたむろする影達の下に歩を進めていく。
それと同時に、月に雲が掛かる。
「今日はステキな夜だ…」
銀白色の髪を雑に一本に纏め、前髪をアップさせた少年が、ズルズルとサイズの合っていない制服の裾を地面に引きずりながら軽やかに歩く。
「体の調子はいいし、楽しみにしていた後輩達に会うこともできた……ついでに同期との感動の再会」
左手には黒塗りの拳銃が、右手にはアビドスの校章が入った狙撃銃が握られていた。
「みんなで遊んで、ゲームして、思い出話をして、下らないことで笑い合う。そんな事をしたのは久しぶりだ」
詠うように、唄うように、謳うように……。
その少年は語る。
「せっかく皆遊び疲れて寝てるんだ……起こしちまったら悪ぃだろ?」
ガンスナップを利かせてクルクルと左手で拳銃を回す姿は、妙に様になっている。
右手に持つ狙撃銃の銃口は空をさし、右肩にのっている。
「だからよ…こんな良い
その少年を囲うように数多のヘルメットを被った少女達が少年に銃口を向ける。
天に輝く月光を遮っていた雲が晴れていく。
少年の髪が、幻想的なまでにきらきらと輝く。
と同時に、翡翠の眼光がヘルメット団を射抜いた。
「鉛玉でイイ
「う、撃t
ゴギバギグシャッ!!!!!
数十m以上先に居た影が、一瞬にして距離を詰めた。
そして、指揮官らしきヘルメット団の足を蹴り払い、狙撃銃で顔面を殴打する。
一瞬で意識を刈り取られたリーダーには、象徴たるヘイローが消え去っていた。
空気が固まる。
「静かにしろよ、ご近所迷惑だぜ?」
ニヤリと笑った口元に、左手で握った拳銃を持っていき、しーっ、とジェスチャーする。
それが合図となった。
真夜中の戦い。
ヘルメット団の奇襲に少年は人知れず迎撃した。
「
やっぱり、弱くなってんなぁ……と頭を掻きながらやや納得がいってない表情の化け物を見て、最後の一人となったあたしはガタガタと震えていた。
仲間の皆が、手も足も出せないまま、攻撃すらさせてもらえずに叩き潰された。
悲鳴を上げることすら許されず一人、二人、三人と次々に倒れ伏していく光景は、あまりにも恐怖すぎる。
「こ、こんなの……聞いてない……!」
思わずこぼれたあたしの泣き言を聞き、その化け物は心底不思議そうに首を傾げて、あたしを見た。
「はぁ?」
「ただの潰れかけの学校って話だったのに……!」
「へぇ……?どういう話を聞いたのか……ちと教えてもらえねぇかな?」
「言え…言えな……ガッ!!!」
急に頭を掴まれて容赦なく地面に叩きつけられる。
ヘルメットのシールド部分が壊れる音が、静かに木霊する。
「あー、何か勘違いしてるみてぇだから言っとくが……」
片手で頭を掴まれたまま持ち上げられ、砕けたシールドから見えるあたしの目を、昏い昏い翡翠の瞳があたしを至近距離から覗く。
「発言には気をつけろよ?」
ゾッとする程低い声が、あたしの喉元に牙を立てたように錯覚させた。
「おまえ、今際の際だぞ」
耐え難い恐怖が、
あたしを襲って、
その瞳が、
あたしの、
頭の中を、
いつまでも、
駆け巡って、
意識が……
ブツリと音を立てて切れた。
「チッ……たかがこの程度で気ぃ失うとか……雑魚かよ」
全く動かなくなった最後のヘルメット団の一員を放り捨て、タツヤは立ち上がる。
転がっている少女達を一瞥し、尋問は無理だと判断したタツヤは、校舎に戻るために足を動かす。
体についた砂を手ではたき落としながら昇降口に向かい、2年1組と書かれた寂れたプレートの下足箱に靴を戻す。
みんなの寝静まる保健室にそのまま行かず、タツヤの本来の委員会室。
風紀委員会の本部に行く。
本部と言っても、ゲヘナのような立派なものじゃない。
一般的な部室と言うべき狭い部屋だ。
そこの部屋の扉を開けて、中に入り、直ぐ側にあるロッカーに武器を全て押し込む。
ふと部屋を見る。
今年から作られた対策委員会の部室とは違い、殺伐とした、武器の手入れの用具が棚に詰まっている。
一年生の最初の頃は生徒会室ではなくこの部屋で武器の手入れをする事が多かった。
もちろん、途中から生徒会室で過ごすことが多くなっていったが……。
「……変わってないと思ったが、あいつが掃除でもしたのか?」
そんなことをボソッと呟きながら部屋を後にする。
そろそろ戻らないと、誰かが起きて俺がいないことを騒ぎ始めるかもしれない。
駆け足気味に、保健室に戻るため暗い廊下を歩く。
「……ゲホッ」
胸のあたりを押さえる。
まずいとと思う前に、ソレは来た。
「ゲホッゲホッ…!!」
咳が酷くなる。
「ゲホッゲホッゲホッ!!!!」
口の端から血が垂れる。
「ヒュー……ハァ……ヒュー……」
息が上手く出来ず、受け身もろくに取れずに倒れてしまう。
「ハァ……ゴホッゴホッゴホッガフッ!!!」
咳とともに血の塊が吐き出され、砂に侵された廊下に嫌な染みを作っていく。
「……くそっ…たかだか…あ゙の程度で……このざまかよ゙…!!」
戦闘において、全く攻撃を受けなかったため、外傷はない。
あるのは内側。
ヌルリと鼻血が出る。
ポタポタと地面に血痕を作る。
「………やべ…ねみぃ…」
貧血か、あるいは生存本能か。
重くなる瞼に抗おうとするも、耐え難い眠気に襲われ続けて、とうとうタツヤはその場で意識を落とした。
微睡む意識が覚醒していく。
だが、もう少しこうやって温々としていたい。
その気持ちを押し殺して、瞼を上げる。
チュンチュンと小鳥のさえずりが聞こえる。
朝日が窓から差し込まれる。
「うへ〜…んぅー……はぁ」
伸びをして完全に目覚める。
今日はとてもいい目覚めだ。
いつもの悪夢を見なかった。
そして、いつもの自分の部屋でないことに気づき、昨日はみんなで学校で雑魚寝をしたのだと思い出す。
懐かしい。
ユメ先輩ともこうやって学校で寝泊まりしたことがあった。
その時はユメ先輩企画でお菓子を食べながら屋上で寝転んで天体観測をしたんだ。
ふと、辺りを見回す。
各々持ってきたお菓子やゲーム機、色々なものが散乱している中、ノノミちゃんとシロコちゃんが寝ている。
けど……あれ?
タツヤは?
ブワッと嫌な汗が流れる。
寝間着のまま、急いで保健室を飛び出した。
廊下を駆ける。
がむしゃらに駆け続ける。
タツヤの名前を呼ぶ。
返事はない。
呼ぶ。
返事はない。
呼ぶ。
返事はない。
返事はない返事はない返事はない返事はない返事はない返事はない返事はない返事はない返事はない返事はない返事はない返事はない返事はない返事はない返事はない返事はない返事はない返事はない返事はない返事はない返事はない返事はない返事はない返事はない返事はない返事はない返事はない返事はない返事はない返事はない返事はない返事はない返事はない返事はない返事はない返事はない返事はない返事はない返事はない返事はない返事はない返事はない返事はない返事はない返事はない。
返事は、ない。
「タツ…ヤ?」
旧風紀委員会の部室前の廊下で、血溜まりの中にタツヤが倒れていた。
いや、正確に言えば、血溜まりであろう場所は時間が経過して乾ききっていた。
「ホシノ先輩!どうしたん……っひ!」
「ん、急に大きな声を上げて………っ!」
後ろからパタパタと足音が聞こえてくる。
誰か来た……?
でも、腕の中のタツヤは、一言も返事を返さない。
「ホ、ホシノ先輩!急いで病院に連れて行かないと……!!」
「っ、ノノミ、私どうすれば……」
視界が暗くなってくる。
音が遠くなる。
「救急の方ですか?すみませんアビドス高等学校に救急です!!人が血塗れで!!」
「ホシノ先輩!!落ち着いて、今ノノミが救急車呼んでるから!!」
ああ、失うのか、喪ってしまうのか。
私は、
「ねぇ、黒服の人。タツヤの体は治せる?」
歴舟タツヤ(二年生)
→実は超強い。病弱?そんなの関係ねぇと言わんばかりの暴れよう。(後遺症が治ったとも反動がないとも言ってない)とある学園の情報部にはきちんと彼の名前が要注意人物として書き出されている。
小鳥遊ホシノ(二年生)
→原作よりも涙脆い。またおじさんムーヴとホルスモードの区別が曖昧。着々と
十六夜ノノミ(一年生)
→タツヤの髪を弄りだすこと間違いなし。曇らせ対象入りNew!
砂狼シロコ(一年生)
→この時期は背が低いため若干タツヤを見上げてる。1年後には見下ろす側。曇らせ対象入りNew!
梔子ユメ(故人)
→ホシノの過去の女。影響力は凄まじい。が、やはり故人である。
ヘルメット団
→手法を変えて昼ではなく夜に決行。無事にタツヤにトラウマを刻まれたため、二度と夜に襲撃することはないだろう。
黒服の人
→???
後遺症リストNew!
「返事はない」
→戦闘後のリバウンド。時間と使った神秘によって指数関数的に反動が重くなる。今回のは下の中レベル。(咳、吐血、鼻血、貧血によりぶっ倒れる)
「調子がいい」
→永眠したことで前よりも咳や吐血の頻度が減り、ベッドの上での生活を余儀なくされた一年時代とは決別。しかし、だからといって活動時間は変わらないし、無理をすればそれ相応の報いは受ける。
曇らせのない、いわゆる日常回的なものを挟んでも良い?
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良き
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ダメ
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好きにしやがれ