肉体年齢を操作できる病弱男子生徒が血反吐を吐きながらホシノを曇らせるお話   作:絶対正義=可愛い

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自己満足……


救いようのある彼の物語
Vol.1 対策委員会編


ガタンゴトン……。

 

心地よい揺れの中、私の意識は目覚める。

 

視界は暗い。

真っ暗だ。

 

前方から、懐かしい声がかかる。

 

 

――私のミスでした……。

 

 

世界に色がつく。

白い服を着た子供が座っていた。

 

 

――私の選択、そしてそれによって招かれたこの全ての状況。

 

 

ズキリと頭が痛み、流れるノイズ混じりの光景。

 

()()()()()()がいた。

 

一人は私に黒塗りの銃を向けていて、もう一人はその少女の後ろで背を向けて拳をやるせなそうに握っていた。

 

場面が変わる。

……ヒビ割れたタブレット。

……黒ずんだカード。

 

 

――結局、この結果に辿り着いて初めてあなたの方が正しかったことを悟るだなんて……。

 

頭の痛みが唐突に消える。

あの光景はもう脳裏にはない。

 

……あれ?

 

私は今何を見ていた?

 

分からない。

…記憶が抜けている気がする。

とても大切なことなのに、忘れてしまっている。

 

 

――……今更図々しいですが、お願いします。

 

 

………あれ?

私は何に焦っていたんだっけ?

わからない。

 

 

――先生。

 

 

先生……私が……?

……ああ、そうだ。

私は“先生”だ。

 

どうして忘れてしまっていたんだろうか?

いや、私が先生ならばこの子は私の………。

 

 

――きっと私の話は忘れてしまうでしょうが、それでも構いません。

 

 

ふと、気がつく。

彼女は血だらけで、その足元には血が流れ血溜まりとなっていることに。

 

 

――何も思い出せなくても、おそらくあなたは同じ状況で、同じ選択をされるでしょうから……。

 

 

大丈夫!?と声を出そうとして、声が出ないことに気づく。

 

 

――ですから……大事なのは経験ではなく、選択。

 

 

……君は誰だろう?

私は君を知っているのに、どうしても名前を思い出せない。

 

 

――あなたにしか出来ない選択の数々。

 

今度は痛みはなく、そして鮮明に脳裏によぎる、数々の生徒との思い出。

でも、それさえも真っ白に塗り潰されるように消えていく。

 

 

――責任を負う者について、話したことがありましたね。

 

 

………そんな話もしたっけ…?

何だか頭がだんだんとぼんやりしていく…。

 

 

――あの時の私には分かりませんでしたが……。今なら理解できます。

 

思考が、だんだん回らなくなってきて……。

耐え難い睡魔が襲ってくるような……?

 

 

――大人としての、責任と義務。その延長線上にあった、あなたの選択。

 

 

責任……義務……。

 

 

――それが意味する心延えも。

 

 

ズキッとした痛みとともに、再度私の脳内に流れる数々の記憶。

誰かが居た。

 

血を流した生徒が居た。

絶望に涙する生徒が居た。

諦めてしまった生徒が居た。

魔王となった生徒が居た。

身代わりとなった生徒が居た。

 

全員、私の生徒だ。

 

でも名前は……?

 

……わからない。

 

 

――……。

 

 

私の前に座る彼女の顔を見ようとする。

暖かな逆光で彼女の顔は分からないが、口元は優しく微笑んでいたような気がする。

 

 

――ですから、先生。

 

 

なぜか焦燥感が私を襲う。

伝えないといけないことがある。

多分、私の生徒である君に……。

 

 

――私が信じられる大人である、あなたになら。

 

 

でも……もう……意識が……。

 

 

――この捻れて歪んだ終着点とはまた違った結果を……。

 

 

伝えないと……いけないのに……。

 

 

――そこへ繋がる選択肢は……きっと見つかるはずです。

 

 

意識が遠のく。

 

 

――だから先生、どうか……。

 

 

プツリと、そこで私の意識と記憶は途切れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「“……”」

 

頭に霞がかかったかのような感覚がある。

夢に見た内容はとても重要で、大切な事だと分かるのに、覚えていない。

 

何とも言えない歯がゆさに頭を悩ましていると唐突にスマホが鳴った。

 

 

プルプルプル!!

 

控えめな電子音と共にロック画面を確認すれば、そこには最近知り合った生徒の名前が一つ。

 

 

“電話をとる”

 

 

『ごめん先生。寝てた?』

 

「“…ううん、起きてたよ”」

 

正直に言えば今さっき起きたが、わざわざそれを言う必要がない。

 

 

『アヤネから招集がかかって…先生今から来れる?』

 

「“どうしたの?”」

 

招集……?

こんな時間に……?

壁にたてつけられている時計を見ればもうこれなりの時間。

ヤンチャした学生が遊び始める時間帯だ。

……記憶が正しければかなり真面目な性格だと思っていたんだけど……。

 

人は見た目によらないのかもしれない。

 

そんな無駄な思考は、直後に言われた言葉で無に帰した。

 

『………セリカがまだ家に帰っていないみたいで』

 

「“今すぐ行くよ。場所は学校でいい?”」

 

意識を切り替える。

由々しき事態だと先生としての勘が告げている。

 

 

『う、うん。そうだけど……』

 

「“分かったよ。すぐ行くね”」

 

 

電話越しにシロコが戸惑いの雰囲気を漂わせたのがこちらにも伝わってきたが、それよりも今は行かなくては……。

 

 

シャーレの白い制服を身に纏い、似顔絵の付いたネームプレートを首にかける。

シッテムの箱などの貴重品を懐に仕舞う。

 

………。

 

 

 

“アビドスの校舎に行く”

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

セリカちゃんが音信不通だ。

 

モモトークでも既読がつかない。

試しに家に行ってみたけど、留守。

 

もうバイトは終わってる時間のはずなのに……。

 

もしかしたら学校に行ったのかと思って来たけど、居ない。

 

たまたま間が悪かっただけなのかもしれないと、少し待ったが来ない。

 

すれ違った可能性も考えて、セリカちゃんを見かけてないか聞くためにタツヤ先輩の居る保健室に行こうとして……。

 

 

 

「こんな夜更けにどうしたんだいお嬢ちゃん……」

 

 

 

背後から聞いたことのないアルトボイスがかかる。

 

 

「きゃあーっ!!」

 

 

思わず携帯している銃を引き抜いて後ろに振りかぶる。

 

「うごっ…!?」

 

それと同時に何か硬いものに思いっきりぶつかる感覚。

恐る恐る振り返って見てみれば………。

 

「いってぇ……」

 

鼻頭を赤くして手でおさえるタツヤ先輩が立っていた。

 

「タ、タタタタ、タツヤ先輩!?!?」

 

なんで先輩が!?

 

混乱する頭とは別に冷静な部分も働き、状況を客観的に見て、一気に血の気が引く。

私たちが大丈夫な衝撃でも体の弱い先輩にとっては致命的になりうる可能性がある。

 

 

「すいませんタツヤ先輩!!!大丈夫ですか!!?」

 

 

「お、おう……そんなデケェ声出さなくても聞こえてるし、大丈夫だよ。……俺もちょっと悪ふざけし過ぎたし」

 

バツが悪そうに目を逸らすタツヤ先輩が普段通りなのを確認して、ホッと息をつく。

 

大事にならなくてよかった。

それと同時に湧き上がる罪悪感。

 

ああ、ほんとうに何やってるんだろう。

そもそも校舎の中にはタツヤ先輩がいつも居て、先輩は害意とか悪意に敏感だから、そういう不審者なんかが侵入してきても勝手に倒しちゃうから校舎は安全なのに……。

 

 

思考が悪い方に悪い方にと傾いていく。

それを遮るかのように先輩の声が私を正気に戻す。

 

 

「つーか、こんな時間に何してんだよ」

 

 

先輩が呆れたように私に尋ねてくる。

 

「あ……、えっと、セリカちゃんを探していたんですが…」

 

「……?」

 

「そうだ、先輩セリカちゃん見ませんでした?」

 

「今日柴関ラーメンをみんなで食べに行った時が最後だと思うけど………、何かあったか?」

 

先輩の目が細められて、眉間にシワが寄る。

時折見せる、真面目な表情だ。

 

「それが、セリカちゃんまだ帰ってきてないみたいで…、モモトークも既読がつかないんです」

 

できるだけ簡潔に状況を伝えると、先輩は少し俯いて黙る。

すぐに顔は上げられたが、そこにはさっきまでの表情はない。

 

「……………アヤネ」

 

「は、はい」

 

 

キリッとした翡翠の双眸が私を射抜く。

普段はあまり見せない表情に心臓が跳ねる。

 

 

「ホシノ達に連絡しろ。今すぐだ」

 

「で、でも私の早とちりって可能性も……」

 

即決即断のタツヤ先輩に思わず聞き返す。

 

「それならそれだ。アヤネはセリカの事が大好きなんだな〜で終わる。笑い話だ」

 

「それ私だけがダメージを負うやつじゃないですか!?」

 

先輩がニヤニヤと笑って、まぁまぁ落ち着けよと私を宥め、また真面目な顔に戻る。

 

「それでも、万が一があったら……取り返しがつかなくなっちまうんだよ……」

 

悲しそうな酷く後悔しているような表情を一瞬浮かべる先輩が一瞬見えた気がして、でもまばたきの後にはいつもの先輩が居て……。

 

「わかりました……ホシノ先輩達に連絡してみます」

 

 

私はそれしか言えなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「簡潔に言おう、セリカが行方不明だ」

「…っ!」

 

タツヤから言われた言葉に肩が跳ねるのが分かる。

行方不明……。 

 

脳裏にフラッシュバックする数々の記憶。

 

砂漠で干からび倒れるユメ先輩。

砂に埋れた盾と電池の切れたスマホ。

 

病室で機械に繋がれ目を閉じるタツヤ。

罅の入った銃身……。

 

それら全てが頭の中を駆け巡る。

反射で自分の得物をつかもうとして……。

 

 

ブチィ!!!!

 

 

「〜〜〜ッ!!?」

 

思いっきり、豪快に頭頂部の髪の毛引っこ抜かれた。

 

「タツヤ先輩!?」

「なんてことしてんるんですか!?」

「ん、激痛……」

「“タ、タツヤ、それすごい痛いんじゃ”」

 

周りが何やら言っているが、ぶっちゃけ洒落にならないほど痛い……!

 

 

最近されてなかったからか、耐性が消えていたのかな…!?

 

 

「落ち着けアホ毛。まだ大丈夫だ」

 

絶賛タツヤのせいで落ち着けないんだよ!

頭がぁ……!!

 

「〜〜〜ッほんとうに、やって、くれるねぇ〜?」

 

机に頭をグリグリと押し付けながら痛みに悶えて抗議する。

 

「ホシノ先輩大丈夫ですか?」

「ん。タツヤ先輩って、何気にエゲツナイことするよね」

「あはは……」

 

後輩ちゃん達が私を心配するように寄ってくる。

もちろんタツヤはそんなこと知らぬ存ぜぬの傍若無人っぷりだ。

 

……こういうタツヤは、久しぶりだ。

人のことは言えないけど、それだけ焦ってるってことかな。

 

「とりあえず俺とアヤネで捜索範囲絞り込んどいた。大体4時間圏内で行ける場所、怪しそうなアジトその他諸々。シャーレの権限使えばそこら辺の防犯カメラとかGPSとかで更に位置絞れんだろ」

 

眉間にシワを寄せて、寝起きの髪をガシガシと掻きながらタツヤが言う。

 

一年生時代、タツヤはパトロールをやって来たから、ここら辺の周辺地理はお手のもの。

 

不良の溜まり場などに突貫して殲滅するのがタツヤの風紀委員長としての治安維持スタイルだ。

 

そういう場所はマークしてある。

 

そして実はタツヤは意外と頭が良い。

 

昔の頃から思ってはいたが、キャラじゃない気がする……。

 

でも、こういうところは流石としか言いようがない。

 

けど久しぶりにカチンと来てしまったので、それはそれ、これはこれだ。

 

私の髪の毛をブチブチブチブチ引っこ抜いて……、許すまじ。

 

「“できるかなぁ……”」

 

「ちげぇよ先公。できるか、できねぇかじゃねぇ。やるんだよ」

 

「“……そうだね。バレたらリンちゃんに超怒られるだろうけど……やろうか”」

 

「おう、頼むわ」

 

先生が一旦外に出ていくのを見て、頭を押さえながら席を立ち上がる。

 

「……ホシノ」

 

「まったく……後で覚悟しておいてねタツヤ」

 

念を押すように私に声をかけるタツヤに短く返事をして、先生の後を追う。

 

 

ガチャンとドアを開けて、閉める。

 

さぁて…と。

 

ここらは、私の出番だね。

 

扉越しにタツヤが色々と指示を出しているのを聞きながら、先生の背中を見つめる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「“セリカのGPSから色々分かったよ”」

 

「本当ですか!!」

 

「ん、大人ってすごい」

 

「“でもGPSの反応が途切れちゃったみたいだから…詳しい位置は……”」

 

「いや、お手柄じゃね?っと…その情報とセリカ推定誘拐時刻を考えて……アヤネ、ちょっと手伝ってくれ」

 

「はい!」

 

 

先生の教えたセリカちゃんの途切れたGPSから逆算して居場所の特定に話し合っているタツヤとアヤネちゃん。

 

 

 

……なんか、思ってはいたけど。

 

 

 

距離近くない……?

 

 

 

 

いや、役職とかタツヤの事情的にアヤネちゃんがタツヤと一緒になることって結構あるから別に不思議なわけじゃないんだけどさ。それにしたって、こう距離感が近いなっておじさん思っちゃったりするわけで。いやいや別に嫉妬とかそういうアオハル的な想いをタツヤに抱いているわけではないけど、何というか少し気に食わないというかなんというか。タツヤの事をこの中だと一番近くで見てきたのは私なわけで、タツヤが眠っていた間も世話をしていたのおじさんなわけでね?まあ、タツヤってば眠ってる間代謝すら止まってたのか体拭いたりするイベントもなかったけど、それはそれとして一番近くに居たのは私であってつまるところおじさんとしてはちょーっとモヤってくるっていうか?後輩と仲の良いタツヤは見てるとホッコリする気分でもあるから、複雑なんだけどさ。私よりも先輩らしいことしてるし。でも、後輩にあんなに優しいのに私に対してはいつも雑なのはやっぱり気に食わない。

一番長く一緒にいたのは私なのに……。

 

 

「ホ、ホシノ先輩……?」

 

「う、うへ!?な〜にノノミちゃん?」

 

「い、いえ……ちょっと雰囲気が……」

 

「……?」

 

若干表情が引き攣ってるノノミちゃんからの煮え切らない言葉に疑問符をつける。

そんなに変な顔をしていただろうか?

 

「よし、特定完了つってな!」

 

「みなさん!セリカちゃんの場所を特定できました!ルートを各自送るので確認してください!」

 

うん。

やっぱりすごいなぁ〜この二人。

アビドスの参謀と言っても過言ではないと思う。

 

 

「それじゃあみんなー!セリカちゃんを助けに行こっか」

 

「ん」

「はい〜☆」

「はい!」

「“行こうか”」

「おう」

 

今度こそ、自分の武器「Eye of Horus」と先輩の形見の盾を手に取る。

 

 

 

 

「あ、タツヤはお留守番ね」

 

 

 

そう、タツヤに釘を差して。

 

 

「あ゙?」

 

 

……そんな目をしても駄目なものは駄目。

 

私としては今タツヤが起きていることすら許しがたい状況なんだ。

 

分かってよタツヤ。

あなたは自分の体のことを勘定に入れなさ過ぎだよ。

 

「……タツヤ、()()()()()()()()()()()()()

 

「……………」

 

タツヤが無言で私を睨んでくる。

 

「あ……」

「……先輩?」

「そういえば……」

 

シロコちゃんもノノミちゃんもアヤネちゃんも、ようやく気づいたのか、驚いた表情をした後に顔を曇らせる。

 

 

「………………」

 

 

タツヤは無言だ。

 

…まったく。

隠し事があると直ぐに黙る癖。

 

昔からそうだけど、バレバレだよ。

 

そもそもの話。

今日は朝からヘルメット団の襲撃に加えて、謎の大人を警戒して柴関ラーメンにも同伴した。

 

この時点で3時間は削ってる上に、戦闘もしている。

…活動時間ギリギリのハズだ。

 

それなのに、今も起きて動いている。

その状態が危険なことくらい、私が見抜けないと思った?

どれくらい一緒に居たと思ってるの?

私が一番近くでタツヤを見て、気遣っていたんだから。

 

……それに、今起きている状況でタツヤを連れて行っても、途中でぶっ倒れるか、あるいは……無理をして動き続けるか。

 

どっちにしろタツヤの体に良い影響を与えるとは言い難い。

 

学校という生徒の学び舎に、不法に侵入し危害を加えるなんてことを大人がした場合、さすがに愚図な連邦生徒会でも動かざるを得ない。

 

キヴォトスは学生が行政の中枢を担う学園都市なのだから、大人による生徒への明らかな権利と領土の侵害を見逃してしまえば、キヴォトスという土台ごとひっくり返ってしまう。

 

学校が一番安全な場所。

だから、タツヤにはここに居てもらいたいんだ。

 

「ん、先輩は休んでいて。私たちだけでも大丈夫だから」

 

「私たちに任せて後はいい知らせをここで待っていてください」

 

「安心してくださいタツヤ先輩。私、先輩に教わった通りに出来ますから!」

 

 

シロコちゃん達も察してくれてタツヤを宥めてる。

 

 

「“?”」

 

 

先生だけがタツヤの体のことを知らないため、頭に?をのせている。

けど、あなたはそれを知らなくてもいい。

 

むしろ知られたら困る。

 

タツヤは、明確なアビドスの弱点。

信用も信頼も出来ない大人に、気軽に教えることなんて出来ない。

 

……まあ、担当顧問なんて立場になってしまった時点で、もう手遅れに近いかもしれないけど。

 

 

「そうか、お前らが俺の心配をしてくれてるのは嬉しいよ……、だが断る!!!!

 

……ま、そうなるよねぇ〜。

 

「うん、言うと思った………」

 

 

【タツヤを止める】←選択

【タツヤを連れて行く】

 

 

「だから、寝てて」

「……っやべ!?」

 

タツヤが気づいた。

けどもう遅い。

 

 

トンッ。

 

 

「“ホシノ!?”」

 

首に手刀を当てて気絶させる。

 

ヘイローが消失。

確実に意識を飛ばしたことを確認する。

 

…やっぱり、油断している時のタツヤは御しやすい。

これが戦場なら、私の攻撃なんて当たらない。

 

でも、だからこそ危険な場所に連れて行くのは…嫌なんだ。

 

 

「………ん」

 

「………先生、ホシノ先輩は悪くないので責めないで上げてください」

 

「…………」

 

「“どうして……”」

 

「…実は「シロコちゃん!!」……っ!」

 

「言わなくて、いいから……」

 

 

シロコちゃんに口止めをする。

タツヤの事を必要以上に伝えなくていい。

 

私は、まだこの先生という大人を信用できない。

 

シロコちゃんが気まずそうに私から目を逸らす。

……反論できないよね。

 

だって、無理させた結果あの日タツヤは病院に搬送されたんだから。

 

 

「ほらほらみんなそんなに暗くならないで〜。そんな顔じゃセリカちゃんを助けたときに心配されちゃうよ?」

 

 

沈痛な面持ちの後輩達にわざと明るい声をかける。

 

 

「…そう、ですね。早くセリカちゃんを連れて帰って、先輩を安心させないとですもんね」

 

「……ん」

 

「……はい」

 

「“…………”」

 

 

先生が何かを言いたそうにしているが、気づいていないフリをしてタツヤを背負い上げる。

 

私とそう変わらない体格なのもあるが、体の虚弱さもあって、とても軽い。

 

 

「じゃあおじさんはタツヤを保健室に寝かしてくるから、先に準備しといて〜」

 

優しく、それでいて有無を言わせぬ言葉で先生と後輩達に告げる。

 

 

 

 

…………。

 

…………………。

 

…………………………。

 

 

胸の奥にくすぶった気持ち悪い不快感が物理的に込み上げてくるのを必死に堪えて、足を動かす。

 

ああ…、本当に、気持ち悪い。

タツヤのため?

 

ふざけるなよ小鳥遊ホシノ。

お前は体の良い理由をつけてタツヤに手を上げただけだろ?

 

何がタツヤのためだ。

お前がタツヤを傷つけたことに変わりはない。

 

 

「ああ……ヤダな、この気持ち…」

 

 

吐き気がする。

 

目眩がする。

 

手と足が震える。

 

気持ち悪い……。

 

心底…、私は私自身が気持ち悪い……。

 

守るため?なら、今どうしてタツヤは傷ついているの?

私が今さっき手を上げたからでしょ……。

なのに、守る?

 

本末転倒も甚だしい。

矛盾という言葉が、容赦なく私を突き刺す。

 

 

「………っ」

 

背負った責任とは釣り合わないタツヤの軽さが、私の罪を突きつけてくる。

 

 

それでも足は保健室へと向かって動く。

 

背負ったタツヤを片手で一瞬支えて、ドアを開ける。

 

 

簡素な保健室には、タツヤの私物がちらほらと置いてある。

最近はゲームの配信をして、借金返済をしようとしているからか、見慣れない機械が置いてある。

 

……最近はゲームを一緒にすることが少なくなった気がする。

お互い忙しいのもあるが、何よりも私もタツヤも寝ている時間が多くなったからかな……。

 

 

 

そっと保健室のベッドに横にする。

 

……寝顔だけは、とても安らかだ。

 

…保健室を出る。

 

 

もう、限界だった。

耐え難い不快感が…抑えられずに口から溢れ出す。

 

 

 

「……っおぇ…ゲホッゲホッ……はぁ、はぁ……」

 

 

 

口の中に不快な酸味が広がる。

胃の中身が空っぽになっても、酸っぱい胃液が喉を犯していく。

 

 

 

「ごめん…ごめんなさい……タツヤ」

 

 

 

力なく呟いた言葉は、虚しくその場を彷徨い、誰にも届かなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……待ってろよセリカ、俺がすぐ助けてやるから」

 

 

保健室のベッドの上で一人の少年が起き上がり、呟いた。

 

 

「助ける…俺は先輩だからな……」

 

 

口の端から血が流れ、それを手の甲で拭う。

 

 

「助けなきゃなぁ……そうだろ…パイセン……」

 

 

いつの間にか開いていた窓から風が入り込み、カーテンを揺らしていた。

 

部屋には、人っ子一人居なかった。




歴舟タツヤ(地頭がいい)
無理無茶無謀を繰り返すアビドスの問題児。(アビドスの問題児の割合には目を瞑る)自己犠牲の塊のくせしてそれに全く自覚のない天然の曇らせ野郎。自分の存在がアビドスにとってお荷物であることに劣等感を抱いている。自身の有用性を示す為にその身を削る。ホシノによって気絶させられたものの、すぐに目覚めてセリカを救けるためにその足で向かう。ユメ先輩に囚われている。
曇らせまであと少し……。



小鳥遊ホシノ(三年生)
誰がために振るう暴力は正しいことなのか……。メンタルが強いのか弱いのかよくからない子。結果、今回は嘔吐した。地面に蹲って涙目のホシノさんをご想像ください。先生が信用に当たる人物かを見極めている最中。無自覚なヤンデレ属性追加。タツヤの事は恋愛的に好いているのかは分からない。
でも…。
……そのうちシンジ君みたいに「最低だ……」ってなりそう。


砂狼シロコ(二年生)
あの日の光景がトラウマ。いまだに引きずっている。タツヤが傷つくことを是としないが、タツヤを守るためにタツヤが傷つく本末転倒な現状に疑問を覚えてもいる。
だが、何も言わない、言えない。

十六夜ノノミ
ホシノよりも実は吹っ切れている。本末転倒な状況から目を逸らして、タツヤが無理をしないことに重きを置いて考えている。その為、タツヤが無理をしそうになったら力でもって止めようとするホシノを許容している節がある。

奥空アヤネ(一年生)
先輩達の覚悟に若干ついていけてない子。タツヤに無理をさせたくないという気持ちはあるものの、タツヤの気持ちを無視して守ろうとする先輩達に無意識的ながら恐怖を覚えていて何も言えない。

黒見セリカ
次回のヒロイン候補筆頭。

先生
対策委員会の闇に気づき始める。


豆知識

「肉体年齢」
タツヤの歳は17歳だが、体は11歳相当の体だ、故に、11歳の感性と17歳の感性が混ざっている。
例を挙げれば恋愛感情や性欲が感じにくくなっていたり、元気が有り余っている(病弱だが)ため自身の限界を超えやすい。(鬼ごっこを1日中やった子供が、帰る時も走って帰るみたいな感じ。もちろん、ご飯食べてる時に寝落ちするみたいな反動もある)
実は短気な性格は子供故の自制心の利かなさから来ている。(多分きっとおそらく……)
いうなれば、精神が体に引っ張られる現象に近い。(完全にそうではないが……。


「アルトボイス」
アヤネにイタズラし、結果アヤネを微曇らせした時の状況。
一瞬だけ肉体を17歳に戻したため、声変わりをした。
アヤネが振り返ってみたときにはいつもの11歳のショタだったため、アヤネは気づいていない。


「本当の姿」
タツヤのショタモード(11歳)が正常だと後輩達は思っている。17歳の姿はホシノ以外知らない。……もしかしたら、某元情報部の風紀委員長は情報として知っているかもしれないが。

「最近は配信」
アビドスの借金を返すため、いつまでも介護じみたお世話を嫌ったタツヤから出た金稼ぎの手段。
「妖怪爺」という名で、数万人のチャンネル登録者がいる。名前の由来は要介護の爺みたいな生活を送っていて、体が大きくなったり小さくなったりするから。
某開発部の部長は一緒に格ゲーをしたいと思っている。
もちろん言えてはいない。




後遺症リストNew!

「活動時間 Version2」
3〜5時間しか活動できないが、内側がボロボロになる前提であればもっと動ける。また、活動限界が来ると凄まじい眠気に襲われる。一度寝ると自力で起きる事が難しい。(出来ないとは言っていない)

「本当の姿の反動」
一瞬程度であれば大した問題ではない。もちろん長時間使えば命に関わる。



今回は曇らせ超少なめ……許してくださぁい……!!!

曇らせのない、いわゆる日常回的なものを挟んでも良い?

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