ゼンレスゾーンVI Hollow in the ERIDU   作:スロー、スロー、クイッククイックスロー

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みんなはどのキャラに惚れた?
私はライカンに骨抜きにされたァッ!




邪兎屋のアルバイト・レイヴン

 

 

 

 「アンビー、ブツは手に入れた?」

 

 

 「問題ない。ここにある。」

 

 

 「ビリー!追手は!?」

 

 

 「ジャンジャカ来てるぜぇ!!」

 

 

 「プロキシ!」

 

 

 『5秒後に右折して!』

 

 

見渡すは街の中。突き抜けた一本道を走るは世にも奇妙な4人組。

 

一人は桃色の髪の少女。

ほか三人に指示を出しつつ、逼迫した状況であるにも関わらずその口元には笑みすら浮かんでいる。

 

一人は白髪の少女。

胸にはスーツケースを抱え持ち、顔色一つ変えず前を走るメンバーに続いて爆走する。

 

一人はなんと機械人間、いわゆるサイボーグ。

両手に拳銃を構え、無機質なカメラアイが人間顔負けの百面相を繰り広げる。

 

さらにもう一人……いやにもう一ボンプといったほうが正しいか。

一際異質なソレは何故か人の言葉を話し、一同に道を示しながら先頭を駆け抜ける。

 

 

 「待ちやがれー!」

 

 

背後より迫りくる追手の波。

数えるのも億劫に感じるほどに膨れ上がったそれらを尻目に一同の足はさらに早まる。

 

 

 『カウントいくよ!5、4、3、2、1……』

 

 

ゼロ。

その瞬間、進行方向が直角に曲がる。

完全な一本道。路地でもなければドアがあるわけでもなく、しかし一同は迷いなくそびえ立つ壁に直進し、

 

 

 「YAAAAHUUUU!!!」

 

 

そんな叫び声とともに、突如現れた暗い穴へと消えていった。

 

 

 ◇◇◇

 

 

上空に暗い穴が浮かび上がり、中から先程の追手達が現れる。

一際巨大な体躯の男を先頭に子分達が並び立ち、彼等は勝ち誇ったように笑った。

 

 

 「ククク…どうした?鬼ごっこは終わりか『邪兎屋』ぁ!?」

 

 

指を刺された4人がゆっくりと振り返る。

揃って俯いているせいで表情は見えないものの、それにより一層勝利を確信した男は大きく笑った。

 

 

 「ニコ・デマラ、アンビー・デマラ、そしてビリー・キッド!お前らのことは全て!調べ尽くしてある!」

 

 

 「……だから?」

 

 

 「チッ。少しはビビったらどうだ。」

 

 

予想していたものとは違う反応に男は舌打ちを一つ打つ。

しかし、依然自分たちの有利を疑わない男の立ち直りは素早かった。

ビシ、と効果音でもつきそうな仕草でもう一度4人を指差し、声高らかに語り始める。

 

 「前にウチの取引を邪魔しやがったときから、俺達はずぅっっと復讐の機会を伺っていたのさ。

 

今日の取引そのものがエサ。調子に乗った兎共なら絶対に食いつくと思ったぜぇ?

 

そして!事前にこのホロウ内部を調べ尽くしたことでお前たちの逃走ルートもこの通り把握済み。

 

お前たちだって気がついてんだろ?その先に俺の仲間が待ってることくらいはよ。だから足踏みしてんじゃねぇのか?あぁん?」

 

ニコたちは何も答えない。ただ肩を小刻みに震わすのみ。その反応を見てさらに気分を良くした男は、大股に彼等へと歩み寄る。

 

 

 「どうした?怖くて言葉も出ねぇか。安心しろ。すぐにそんなことすら考えられなくーー「フンッ」ーーえ、ぎゃあぁああ!?!?」

 

 「ボス!?」

 

 

男が突然うずくまる。

ニコの足の角度、膝の位置から察するに、間違いない。男の股間に向けて膝蹴りを叩き込んだのだ。

 

 

 「て、てめぇ……!?!」

 

 

脳天まで突き上げんばかりの想像を絶する痛み。脂汗がにじみ出て、歯を食いしばっていなければ意識が飛んでしまいそう。そんな様子だ。

 

 男はどうにかこうにか視線を持ち上げ、精一杯ニコたちを睨みつける。しかし、

 

 

 「オーホッホッホ!長ったらしい説明どうも。笑うのを我慢するのって大変ね。」

 

 

 「映画によくあるシーンね。勝ちを確信した途端に形勢逆転される展開。お決まりとも言える。でもコレはこれで王道のストーリーでいい。」

 

 

 「オイオイオイ!説明だけで何文字使ってんだ?!これじゃドクシャサマも読み飽きちまうぜ!」

 

 

そこに見えたのは、先程まで自分が浮かべていた表情そのもの。

痛み7割困惑3割。そんな男の眼前に、自信に満ち溢れたニコの顔がズイ、と迫る。

 

 

 「さっきから聞いていれば……。逆に聞くけど、私たちがその程度のこと予想してないとでも思ってたわけ?」

 

 

 「なに……?」

 

 

 「こっすいアンタたちのことだもの。報復を仕掛けてくるなんて、ちょこぉっと考えればお猿さんにだってわかるのよ。」

 

 

 「何が、言いたい」

 

 

 「あら、わかんない?やっぱりおバカさんはどれだけ頭を捻ってもおバカさんなのね。アンタ達のお粗末な作戦にわざとノッてあげたって言ってんのよ!」

 

 

先程までとは一転し、フフンと鼻で男たちを小馬鹿にするニコ。

一撃でリーダーを沈められたせいか、子分たちは及び腰で反論する気すらないようだ。

 

なんとも情けない連中だが、邪魔が入らないなら都合がいい。

 

 

 「それに、ここで逃げるのをやめたのは足止めを食らってたからじゃない……もう一人、仲間を待ってたからよ!」

 

 

腰に添えられていた腕が上に伸び、人差し指が上空を指差す。

釣られて空を見上げる男とその子分たち。

 

……次の瞬間煌々と輝く太陽を、待ってましたとばかりに黒い影が覆い隠した。

 

 

 「んなっ……」

 

 

ニコの隣に降り立った姿に男は驚愕を露わにする。しかしそれは、一瞬にして怒りの感情に変換された。

男の怒号が響く。

 

 

 「どういうつもりだ……レイヴン!」

 

 

漆黒の髪に、左目から顔の下半分をまるっと覆い隠すサイバーマスク。

右の背から伸びる巨大な黒翼。そして、してやったりと弧を描く右の眼。

 

 

 「フフン。どう?ウチのアルバイトは。なかなかの演技だったでしょ。」

 

 

 「まさか、はじめからこのつもりで近づいてきたのか!」

 

 

 「セリフがベタすぎるわ。50点。」

 

 

 「いきなり何の話だ?」

 

 

 「ハイふたりとも静かにな。

 

ーーコホン。お仲間さん方は縛り上げてきたぜ。これで形勢逆転……いや、そもそもあんたらは掌で踊ってただけだったか。」

 

 

マスクでくぐもっているものの、発せられた声には明らかな挑発と嘲りが聞こえてくる。

 

レイヴンが左の背に背負っていた大剣をゆっくりと引き抜いた。そして怒りに震えつつも地に伏したままの男に向け、その切っ先を突きつける。

 

 

 「騙して悪いが……仕事なんでな。消えてもらおうか。」

 

 

 「アンビー!ビリー!一人も逃がすんじゃないわよ!ここにいる全員を治安局に引き渡せば大儲け確定なんだから!」

 

 

 「ラジャー」

 

 

 「シンミョーにお縄につけい!」

 

 

4人が共々、最早金蔓と化した男たちへと突っ込んで行く。

その後の結果は……皆さんのお察しのとおりだ。

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

 「ひーふーみー………ぐフフフ……」

 

 

 「ニコの親分、ずーっとあの調子だな。」

 

 

 「名のあるギャングだったし、かなりの額になったみたい。」

 

 

町外れのアパート、その一室。何でも屋「邪兎屋」のアジトに一つだけのソファを占領して寝転がり、ニコは何度も同じ書類を見返してはニヤニヤと口元を吊り上げていた。

 

瞳はすっかりディニーの形で、アンビーとビリーの視線も気にならない様子。

 

残された二人は顔を見合わせ、肩をすくめてテレビの画面に視線を戻す。今ニコを現実に引き戻すのはなんだか気が引ける。自然とそう思ってしまうほどに彼女は浮かれていた。

 

 

 「いんやー、それにしても店長サマサマだよな。今をトキメクホロウレイダー、レイヴンにわざわざウチを紹介してくれるなんてさ。」

 

 

 「ツケをさっさと払ってほしいのかもしれない。本人もプロキシ先生の依頼だって言ってたし……ちゃんと払わないと私たちの首が物理的に飛ぶにちがいないわ。」

 

 

 「怖いこと言うなよ!映画の話か?そうなんだよな?!」

 

 

顎に手を当て、至極真面目な表情でとんでもないことを言い始めるアンビー。恐れ慄き仰け反るビリー。

 

 

 「ええ。今朝見たやつのワンシーン。」

 

 

 「だぁ!ビビって損したぜ……」

 

 

不意に口元を緩めたアンビー。ソレをを見てまんまと脅かされたことに気がついたビリー。

 

彼は悔しそうにうなだれるものの、「でもよ」と、照れくさそうにフェイスパーツの中央、人で言えば鼻の下あたりを指でこすった。

 

 

 「どっちにしたって俺はアイツのこと結構気に入ってるけどな。スターライトナイト好きに悪いやつはいねーって!」

 

 

 「ソレは同感。バーガー好きには良い人しかいない。」

 

 

二人はもう一度顔を見合わせ、互いに笑みを零した。

 

 

 「いよっし!」

 

 

そんな中、今の今まで黙っていた突然ニコが立ち上がる。二人がソファの上に立つなとツッコミを入れるよりも早く、彼女の拳が天に向かって突き出された。

 

 

 「この調子でガンガン稼ぎまくるわよぉおおお!!」

 

 

 

 ニコの決意が夜の街に木霊する。次の日、上の階から「うるさい」と苦情が来たことは言うまでも無い。

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

同時刻、とある廃ビルの屋上にて。

誰も寄り付かない。精々肝試しに学生グループが年に2、3組やってくる程度。そんな場所に人影が一つ見える。

 

ソレはフェンスを越え、屋根の縁に腰を掛け、足をブラブラと夜の街に放り出す。

 

 

 「……あぁ。今日も世話になったなプロキシ。」

 

 

 『こっちこそ。ニコ達を助けてくれてありがとうね。レイヴン。』

 

 

雲一つ無い星空を背景に、漆黒の片翼が静かに揺らめく。

通信から聞こえるのはあの喋るポンプと同じ少女の声。

彼女の言葉にレイヴン、彼はクツクツと可笑しそうに笑った。

 

 

 『なに?なんか変なこと言ったかな。』

 

 

 「いや?借金返させる為に金を払うとは、相変わらず儲からない商売だな、と思って。」

 

 

ピタリと通話が途絶える。図星を突いたか、もしくは的はずれなことでも言ったのだろうか。

 

暫くして『あ〜』『う〜』と言葉にならない声が聞こえ、ようやく捻り出された言葉には恥ずかしさやら怒りやらがごちゃ混ぜになっているように聞こえた。

 

 

 『う、うるさいな!良いでしょ別に!私だって別にニコ達が路頭に迷って欲しいわけじゃないし……』

 

 

どうやら図星の方だったらしい。興に乗った彼がさらに一通り少女をからかうと、腹を立てたのか電話を叩き切る音が頭に響く。

思わず耳を塞ぐが、既に後の祭りだった。

 

 

ーー通信が切れましたーー

 

 

 無機質な報告が、反響で痛む頭をさらに突き刺す。

 

 

 「ちょっとやりすぎた?」

 

 

ーー肯定、次回からの仕事に影響が出る可能性あり。推奨、速やかな謝罪ーー

 

 

 「友人の距離感ってのは難しいな」

 

 

ーー推測、強化人間E4-621とプロキシ、『パエトーン』は“友人”ではなく“仕事仲間”と言われる分類に近いと思われるーー

 

 

ーー推奨、より適切な人間関係の構築及び速やかな謝罪ーー

 

 

 「わかったわかった。」

 

 

彼の頭に住み着くこの声は、言う事を聞いておかないへそを曲げる。

 

次プロキシにあったらちゃんと謝っておこう。彼はそう心に決めた。

 

さもないと、また頭に直接説教を叩き込まれる羽目になる事を彼は知っていた。

 

 気を取り直して。

彼は翼をはためかせ、ふわりと背後のフェンスを飛び越える。

 

 

 「さて、レイヴンの時間は終わりだ。」

 

 

ーー了解、強化人間E4-621通常モードに移行ーー

 

 

マスクを外し、夜の風に素顔をさらす。

隠れていた左目は赫く輝き、口元にはうっすらと笑みが浮かんでいた。

 

 

ーー中断されていたハンドラーの最終命令を再開ーー

 

 

 「戻るとしようか」

 

 

ーー強化人間E4-621、明星九遠のサポートを開始しますーー

 

 

 

 「普通の人生とやらに」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーー警告ーー

 

 

 「ってなんだよ……せっかくかっこよく決まったのに」

 

 

ーー現在時刻、午後10:52ーー

 

 

 「え?」

 

 

ーー現在明星九遠が契約しているアパートの門限まで残り8分経過ーー

 

 

 「マジで?」

 

 

ーー報告、大マジ。尚、この門限の時間設定は“普通の”男子高校生であれば問題なく遵守できるものであり、コレを破った場合ーー

 

 

 「場合?」

 

 

ーー明星九遠が“普通ではない”男子高校生であると周囲に露見する可能性があるーー

 

 

 「よし帰ろうすぐ帰ろう今すぐ帰ろう!」

 

 

ーーアパートまでの最短ルートを提示。推奨、当機への感謝の意ーー

 

 

 「あぁくっそ!」

 

 

 

 

 

 

 締まんねぇエエエ!!

 

 

 

 

 

 

一匹の鴉の絶叫が、新エリー都の空にこだました。






親愛なるご友人、こんな駄文を最後まで読んでくれるなんて……感激だ

次回も読んでくれたなら、……素敵だ





レイヴンのコスチューム

独立傭兵レイヴンの装備。
防衛隊が採用している戦闘服に独自のアレンジを加えたもので、装甲をより小さく加工することで機動力を確保し、右の背には翼を通すための穴が開けられている。

対して左の背には武装を携帯するためのウェポンハンガーが取り付けられており、ここに格納されている装備を使用して戦闘を行う。
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