ゼンレスゾーンVI Hollow in the ERIDU   作:スロー、スロー、クイッククイックスロー

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数多の親愛なる新しいご友人。またこの小説を読んでくださるのですね。感激だ……。

アップデートも迫り、ストーリーにさらなる展望が……本当に心が躍ります。

今回は、みんなだいすきなあの友人が登場します。楽しんでいってくれたなら、素敵だ……。





めちゃくちゃ機嫌が悪い、レイヴン

 

 

 

 

 

 

 「………」

 

 

 「………」

 

 

 「………」

 

 

街角のカフェテリア、そのテラス席。とある3人が同じ机を囲み、そして誰もが口を開くことはなく、ただただ沈黙が流れてゆくのみ。

 

 

「「「………」」」

 

 

話が進まないので、とりあえず3人の紹介をしておこう。

 

黒い髪に赤い左目をランと輝かせる青年。左だけの黒翼はブワリと逆立ち、これでもかと吊り上がった両の眼が目の前のもう一人を離さない。

 

明星九遠。又の名を独立傭兵レイヴン。

彼は今、途方もなく機嫌が悪かった。

 

 

原因は目の前にいる壮年の男。

白い髪に朱色のメッシュ。濁った目は弧を描き、同じく口元にもいやらしい笑みが浮かんでいる。

顔にはいくつもの古傷があり、右目は潰れているのか、眼帯から傷跡が覗いていた。

 

歴戦の猛者、といえば聞こえはいいが、普通の人間が至っていい風貌ではない。

 

調査員か治安官か。いや、ソレよりも……

 

 

 「……おい猟犬。」

 

 

 「黙れ。喋るな。虫唾が走る。」

 

 

男が口を開いた瞬間、2割増で膨れ上がる殺気と恐ろしく平坦かつ攻撃的な口調。

 

二人の間にある重苦しい空気の塊。ソレに当てられた最後の一人、緑髪の女性はただ身をすくめるしかできずにいた。

 

 

 (な、なんでぇ?)

 

 

彼女の名は明けの明星。

 

若くして一流の情報屋であり、特に初心者に部類される若いプロキシやホロウレイダーを相手に仕事を斡旋している。

 

若い女性といえど一流の情報屋。

修羅場はいくつもくぐってきているし、顧客とのトラブルも初めてではない。その度自身でどうにかしてきたし、どうにかできる自信もあった。

 

……のだが、

 

 

 「だいたい、誰と誰の仲がいいって?」

 

 

 「私とお前に決まっているだろう。今すぐにでも殺し合いたいくらいじゃないのか?」

 

 

スカン!!

 

ブレる九遠の腕。音の出どころを探すと、テラスの床に1本のフォークが突き刺さっている。

 

男が躱していなければ、今頃その首元に突き刺さっていたはずだ。

 

彼女の顔から血の気が引く。下手をすれば文字通り、このあたりが血の海になっていたかもしれない。

 

 

 「お望みなら今すぐその首切り落としてやろうか。」

 

 

 「相変わらずだな猟犬。」

 

 

なんてことない仕事のハズだった。

 

若い層に顧客を持つ彼女のもとには、そういった人材を紹介してほしいという依頼も少なくない。

 

向上心や野心、若さからのパワー、そういったものを求める者はそれなりにいるのだ。

 

だから今回、この男から頼み事をされたときも同じような仕事だと思っていた。

 

男からは面識はあると、仲の良い友人だと言われた。下調べもつつがなく終わり、特段怪しい部分もないため了承したのだ

 

それが、どうだ。

 

 

 「おい、明星。」

 

 

 「ひゃいぃっ!?」

 

 

 「ほんとにこいつと俺の関係は知らなかったんだな?」

 

 

顔を上げると、男に向いていた視線がそっくりそのまま自分に向けられている。

 

こちらを見定めるような視線、そして襲いかかるあまりの迫力に、思わず目尻に涙が浮かんだ。

 

 

この嘘つき!

 

 

彼女は胸の底で叫び男を睨みつけるが、当の本人は素知らぬ顔でフィーカを啜っている。

 

もう涙目でうなずきまくるしかなかった。

 

しかし今回ばかりはこれで正解だったようで、

 

 

 「……ハァ。」

 

 

ため息を一つ吐き、九遠は殺気の矛先を収めた。

左眼の光は消え失せ、ガリガリと頭を掻き、目の前のコーヒーを一口飲む。

 

 

 「こいつは俺をコケにするためなら何でもする。次から気をつけるんだな。」

 

 

 「おいおい。酷い言いようだな猟犬。あれに言ったことも全て本当のことだろう?」

 

 

 「そういうのををコケにしてるって言ってるんだ。スッラ。」

 

 

あいも変わらず険悪な空気は変わらないが、どうやら危機は脱したようだ。今にも殺されそうなヒリついた空気はなくなり、固まっていた心臓が正常に動き始める。

 

なんというか、とてつもなく心臓に悪い。

今にもはち切れそうだった緊張の糸はついにプッツリと切れ、今更カラカラにのどが渇いていることに気がついた。

 

目の前のコーヒーを一口飲み、その温かさに感動する。

 

生きてるって素晴らしい。

 

 

 「……で?何の用だスッラ。こんな凝った嘘までついて」

 

 

 男は、スッラはまたニンマリと嫌な笑みを口元に浮かべ、懐から1枚の封筒を取り出した。

 

 

 「猟犬……独立傭兵レイヴンだったか?お前に仕事を持ってきた。」

 

 

 「はあ?お断りだ。自分でやれ。」

 

 

 「まぁそう言うな。お前にも悪い話じゃない。もしやすればーー」

 

 

興味ないね。そう言わんばかりにそっぽを向いた九遠。しかし、続いてスッラの口から放たれた言葉に彼は、文字通り目の色を変えることになる。

 

 

 「飼い主のこともわかるかもしれんぞ?」

 

 

 「……あ?」

 

 

ビシリ。

 

音の発生源は九遠が持っていたマグカップ。

鷲掴みにしていたそれがひび割れ、隙間からコーヒーが漏れ出していた。

 

左の瞳が、再び真紅に燃え上がった。

 

 

 「見せろ。」

 

 

またもやテラス席が地獄に染まる。

 

空が綺麗だなー、と現実逃避を始めた明けの明星。

そんな彼女を他所に、九遠は渡された封筒を奪い取る。そして、中の書類に目を通し始めた。

 

一文字、一行、読み進めるたびに眉間の間にシワが刻まれ、ページを捲るたびさらに深く彫り込まれていく。

 

読み終え、再びスッラの方に向いた顔には、文字通り鬼のような形相がへばりついていた。

 

 

 「本当なんだろうな?」

 

 

 「さてな。だが、現状よりはマシだろう?」

 

 

 「………」

 

 

しばらく考えた後、九遠は封筒をジャケットのポケットにねじ込んだ。

 

ソレを見たスッラは浮かべていた笑みを一層深め、クツクツと喉を鳴らす。

 

 

 「契約成立だな。」

 

 

 「……あぁ。引き受けよう。」

 

 

ゆっくり、スッラが手が差し伸べる。

握手でも求めているのだろうか。

 

九遠もソレに答えて手を差し出しーー

 

 

 「詳細は追々伝える。まずはーー」

 

 

ガシリ

 

 

 「ほう……」

 

 

手首をつかみ、スッラの体を引き寄せる。

互いの息使いまでもが聞こえる距離で、九遠はギロリと目を光らせた。

 

 

 「裏切ったらただで済むと思うなよ。」

 

 

 「信用ないなァ……。錆の付いた強化人間同士、仲良くやろうじゃないか?相棒。」

 

 

 「誰が相棒だ!」

 

 

手を離すと、スッラはわざとらしく手首をさすって椅子に座る。

何を言っても無駄だと悟ったらしい。九遠は盛大にため息を付いた。

 

 

「……チッ。もう行くぞ。」

 

 

 「あぁ、よろしくな。猟犬。」

 

 

顔を引き攣らせながらも、九遠は踵を返して歩き出す。

が、何か思い出したかのように振り返り、またテーブルに……正確には明けの明星の前に戻ってきた。

 

 

 「悪かったな。妙なことに巻き込んで。」

 

 

 「へ?あ、ううん。大丈夫よ。」

 

 

テーブルに置いた手を離すと、ジャラリと音を立てて積まれたデニーが崩れ落ちた。

 

 

 「釣りはいらない。……また頼む。」

 

 

今度こそ去っていく黒い翼。それが消えると、遂に彼女は椅子の背もたれに力なく持たれかかった。

 

 

 「どうした情報屋。」

 

 

 「だ、誰のせいだと思って……!」

 

 

優雅にコーヒーを啜るスッラに殺意が芽生える。

自分もナイフの一本投げつけてやろうかと血迷うが、どうせかなう訳もないのでやめておく。

 

 

それよりも、だ。

 

 

 「あなた、あの子に何したのよ。」

 

 

 「アレに……というより、アレの飼い主と少しな。」

 

 

目も合わせず、スッラはぼんやりとした言葉を口にする。どうやら真面目に答える気はないらしい。

 

ほんの少しの時間を共にしただけだが、絶対こいつとは仲よくなれない。彼女が培った情報屋の直感が告げている。

 

それに、こいつと居ると絶対ろくな事にならない。多分。

 

二度と仕事も受けてやるものか。

 

 

 鼻息荒くマグカップを持ち上げ、残っていたコーヒーを飲み切ってしまう。少し冷めているが……まぁいいだろう。

 

さっさとここから離れてーー

 

 

 「しかし……哀れなものだな。」

 

 

 立ち上がろうと椅子を引いたとき、不意にスッラのつぶやきが聞こえた。

 

ふり向くと夕日が逆光となり、表情は伺えない。しかし、そこに先程までの笑みや嘲りが微塵も浮かんでいないことだけは理解できた。

 

初めて見る表情に、思わず聞き返す。

 

 

 「……どういうこと?」

 

 

 「アレは主のいない猟犬そのものだ。外れた首輪を自ら咥え、千切れた手綱を探して地べたを這いずり回っている。

 

……やはり馬鹿な男だな。右も左も、生き方すらもわからん駄犬に自由を与えればどうなるか。そんなこと考えなくともわかるだろうに。」

 

 

彼らの間に何があったのか、彼女にはわからない。

だが、きっとそこにあったのは単純な増悪ではなかったのだろう。

 

彼女はほんの少しだけスッラへの評価を改めた。

 

 

 「あなた、案外面倒見がいいのね。」

 

 

 「私が?なんの冗談だ。」

 

 

 「あら失礼ね。本心よ。」

 

 

 この男は気がついていないのだろう。自らの声に、哀れみと共にほんの少しの情が紛れていることに。

 

この男が口にした「友人」という言葉、彼の中では存外嘘ではないのかもしれない。

 

 

 つまらなさそうにため息をつき、スッラは席を立つ。

コーヒー代を払う気はないらしく、そのままポケットに手を突っ込んで後ろを向いた。

 

 

 「……あぁ、そうだ。」

 

 

だが彼もまた足を止め、少しだけ振り返る。

その顔には、あのいやらしい笑みが浮かんでいた。

 

嫌な汗が背中を伝う。

 

 

 「お前、アレに随分絆されているようだが……」

 

 

何を言われるかと身構える彼女に向けて、スッラはポケットから引き抜いた左手をかざした。

 

 

 「あの猟犬はやめておけ。」

 

 

小指を立てたソレを見て、その意味を理解してフリーズする明けの明星。

我に返った時には、時すでに遅し。

 

 

 「そ、そんなんじゃないわよぉお!!」

 

 

顔を覆って絶叫するものの、紅く染まった頬を隠し切ることはできない。

 

彼女もまた乙女。ほんの一瞬脳裏をよぎった光景を、彼女はなかなか振り切ることができなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

九遠がアパートへ戻ると、一室の窓からひょっこりと見知った顔がのぞいた。

 

 

 「おや、明星君。おかえりなさい。」

 

 

 「大家さん。戻りました。」

 

 

茶けた金属製のボディは年季を感じさせ、左右不揃いのカメラアイが何処となく愛らしさを感じさせる。

 

その正体は旧式の機械人。彼こそがこのアパートの大家であり、門限を11時に設定した人でもある。

 

一切の感情を表現できない鉄の体。しかしその声は優しげで、合成音とは思えぬ安心感を抱かせてくれた。

 

 

 「ずいぶん遅かったようですが……また、お仕事ですか?」

 

 

 「まぁ……今からってところ。」

 

 

 「そうですか。熱心なのはいいことですが、過ぎて体を壊さないように気をつけてくださいよ?」

 

 

 「いつもすんません。」

 

 

 「いえいえ。もし辛いことがあったなら、遠慮なくおじさんを頼ってください。彼には、よく頼み込まれていますから。」

 

 

「いいですね?」と念を押し、大家はツールアームを器用に使って窓を閉める。

 

学生の身でありながら傭兵稼業を続けられるのは、ひとえに彼のおかげと言っても過言ではないだろう。

 

彼と、そして彼に自分を任せてくれていたハンドラーには感謝しかない。

 

 

ーー推奨、当機のへの感謝の意ーー

 

 

 「はいはい。助かってるよ。」

 

 

鍵を開け、部屋に入るや鞄をベッドに投げ捨てる。

 

クローゼットを開けると、中には洋服類……ではなく、傭兵の仕事道具が所狭しと置かれていた。

 

その中から幾本かのケーブルに繋がれていたマスクを取り出す。

 

慣れた手つきで顔に装着。目を閉じて訪れる一瞬の暗闇。次の瞬間には左の義眼とマスクが接続され、視界に変化が訪れた

 

中央に三角形のエンブレムが現れ、女性をイメージさせる合成音が頭に響く。

 

 

 『登録番号、Re23、識別名レイヴンによる認証を確認。』

 

 

エンブレムには[ALM]と記され、ソレは明星九遠をレイヴンへといざなう。

 

 

 『傭兵支援システム、[オールマインド]へようこそ。レイヴン、貴方あての依頼が届いています。ブリーフィングを確認しますか?』

 

 

九遠がハンドラーと仕事をしている時から使っている、インターノットとはまた別のシステム。

 

ばら撒かれている仕事を取りまとめて傭兵たちに斡旋したり、傭兵と顧客の連絡手段としての役割も果たす。

 

インターノットとの違いは……かなり物騒な仕事も取り扱っている点だろうか。

 

 

例えば、「誰かを殺せ」というものであったり。

 

 

 

 依頼内容:[ターゲット人物の排除]

 

 

 依頼主:赤牙組・シルバーヘッド

 

 

 『お前がレイヴンだな?スッラの奴は約束を守ったらしい。う、うう……まさかアイツが辞めちまうなんてなぁ……。とりあえず仕事を説明するぞ。

 

今回お前にはある男を消してもらいたい。名前?……あんなヤツの名前、口にしたくもねぇよ裏切りもんがぁああ!!

 

俺たちゃ同士じゃなかったのかよ……うううっ!』

 

 

不意に、視界の端にホログラムが展開される。

映し出されるのは壮年の男が一人。

 

 『こいつは俺たち専属の武器商人だった男だ。で、俺たちは武器のほとんどををこいつから買っている。つまりこいつはある程度俺たちの戦力と財布事情を握ってるってわけだ。

 

あろうことかこいつはよぉ、あっちこっちでソレぜ~んぶ喋っちまったのさ!

 

もう出ちまったもんは引っ込まねぇが……既に末端のアジトがいくつか潰されてる。兄弟たちが、死んじまってるんだよぉ。ぅ、ううう!!

 

許しちゃおけねぇ……そこで、だ。レイヴン!お前は尻尾を巻いて逃げるコイツを地の果てまで追っかけて殺せ!

 

ウチからも戦力は出すが、奴はボディガードを雇ったらしい。ソレもおっそろしい腕利きのな。

 

情ねぇ話だが、アイツラがどれだけ役に立つかは解らねぇ。もう兄弟を失うわけにもいかねぇだろう!?

 

本当なら俺たちがやっちまいたい。だがここは、スッラの推薦を信じることにするぜ。

 

裏切ってくれるなよ………いいな!!』

 

 







モンハンワイルズのチャアクが思ったよりもカリンちゃんだった件について。

コラボとかしないかなぁ。


燃える瞳

レイヴンの左目に埋め込まれた義眼。
身体や強い感情の揺れ動きに伴い見える世界が変化する。

マスクに取り付けられているバイザーと接続することでその機能を十二分に引き出す事ができる。

彼の見る世界は、何時でも赤く染まっていた。
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