ベアトリーチェを開幕早々ぶん殴った男   作:テッポウエビ

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ベアトリーチェ、君を殴る。

アリウス……それは、世界から逸れその存在を忘れかけられた悲しき分校。

 

王道に外れ意見を貫いた結果、本元である現在のトリニティ総合学院によって迫害され、潰され、消された。

 

そんの王道ではない者達の子孫が暮らすのが……アリウス分校、その自治区だ。しかし、個々の所余所者が……()()()()()()()が幅を利かせていた。

 

彼女の名はベアトリーチェ。アリウスの、彼女の元に付く人間からはマダムと呼ばれている。

 

彼女はvanitas vanitatum et omnia vanitas、この言葉をアリウスの者達へ授け、彼女達を自らのコマとしている。

 

徹底的な虚無主義……ニヒリズム。この世は全て虚しいだけだと……その言葉を使い、アリウスの人間を惑わせた。

 

アリウスをこんな目に合わせたトリニティ、そしてゲヘナ、その報復を約束として。

 

いつしか、初めは少なかったベアトリーチェ派の人間も、年々数を増やして、やがてアリウスはベアトリーチェの手の中にある状態となった。

 

アリウスの人間は、それが幸福であると、正しい道なのだと信じてやまなかった。

 

 

 

 

 

 

 

しかし、アリウスが過去にそうであったように、どの世界にも王道を外れた者、決まった道をあるかない者――アストレイやリベリオンが居る。

 

ベアトリーチェの存在を良しとせず、その存在をとことんまで否定し、気に食わないという野蛮な理由で牙をむかんとする者がいた。

 

()は、只管に待った。

 

牙を研ぎ続け、異形と蔑まれた自身の身体を撫でて、ベアトリーチェと言う存在と相まみえる日を焦燥と共に。

 

アリウスのベアトリーチェの元につきながら、誰にも気づかれずに、獲物がそと手の射程範囲にくるのを只管に待った……そして、その日は来た。

 

『来い、マダムがお呼びだ。』

 

部屋の中にマスクをつけた1人の少女が入ってる……名前は、錠前サオリ。と言っても彼は彼女のことを名前しか知らない。

 

配給の時に一緒になる程度だからだ……そもそも彼は一般兵で、彼女はアリウススクワッドと呼ばれる分隊の一員。交わることなんてないのだ。

 

彼は立ち上がり、自らの異形の腕を撫でる。その腕は、甲殻類子様に硬い甲羅で守られた、手はガントレットをつけたように肥大化している。

 

前腕部には、上部下部に一対の大きめな突起があり、その形状はまるでカニとかが持っているハサミだ。

 

彼は立ち上がり、静かに先を行くサオリについて行って歩く……そして、ある一つの重厚な扉の前で立ち止まる。

 

「……入れ。」

 

サオリの言葉に従い、彼が扉へ入る――サオリは外で番をする様だ。――すると。そこには()()

 

赤い肌に白いドレスを纏った異形の存在――ベアトリーチェ、今のアリウスを牛耳っている存在、彼がこの世で最も忌み嫌う者。

 

彼は、溢れ出る憎悪を心に置き止めて……静かに言葉を紡ぐ。

 

「失礼します。マダム。」

「……来ましたか。越谷(コシヤ)ゴウ。」

 

彼――ゴウは、ベアトリーチェの言葉に一つ礼をする。すると、ベアトリーチェは愉快そうに笑ってゴウへ告げる。

 

「最近のあなたの働きぶりは聞いています。射撃の腕を犠牲に貴方の神秘、授かった力。その力、私の為に使っていただきますね?」

 

ベアトリーチェは、その問いにゴウが答える前に言葉を紡ぐ。

 

「貴方には任務を与えます――需要な任務です。私はあなたにこそ任せられると思っています。」

 

――ベアトリーチェがそう言って嬉々としてゴウに命じたのは、トリニティ総合学院への入学。

 

それによる内部事情の偵察……はて、偵察ならもう一人、トリニティに潜り込んでいたアリウスの生徒がいたと思うが、一体どういう事なのか。

 

「……もう一人の駒に()()()があった時の保険です。」

 

つまりは、そのもう一人と言う駒が向こうに取られた場合の保険……だろう。これから起こることも知らずに、悠長にベアトリーチェは命令を続ける。

 

「……保険と言っては少々不服に思われるかも知れませんが、大切な役割です。どうか、お願いしますよ。」

 

そう言って、ベアトリーチェは笑う。そして、諸々の説明……入学の手続きや、入学後どの様に動けば良いのか、その説明を受ける。

 

しかし、ゴウは言葉をひたすらに右から左で受け流す。聞く必要がないからだ、目の前の女の言葉を、ゴウは本当は一言だって耳に入れたくないのだ。

 

ベアトリーチェは一通りの説明を終えると、ゴウを見ながら言葉を紡ぐ。

 

「安心しなさい、私は貴方の味方です……()()()()()()()()()()()()()()()()……だから、そう恐れることはありません。」

 

……そうかも知れない。目の前の大人に逆らうというのは、実に無謀と言ってもよい。

 

ここは言えば敵陣のど真ん中、ベアトリーチェの言葉の通り……せめて自治区の中にいる間だけは彼女の味方で居たほうが良いのは確実だ。

 

だが、そんな、自分を殺すような真似をゴウはそう長いこと続けてられなかった。もう限界なのだ……

 

 

それに、それ以上に理由は簡単なのだ。

 

「……!」

 

ゴウは、ベアトリーチェから背を向けると弓の弦を引く様に肘を曲げて拳を向ける。

 

そうだ、やりたかった。

 

……目の前のベアトリーチェを――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……?何をしているのです。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ただ、只管に――!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一発目もらっとけぇぇぇぇぇッ!!!

 

 

 

 

ぶん殴りたいと!!

 

 

 

 

 

 

少年のその甲殻類の様に硬い甲殻に守られた拳が空振る。その瞬間ハサミが閉じて拳からは衝撃波が放たれた……その原理を簡単に説明するなら、テッポウエビの様な物だ。

 

テッポウエビは1000000/1秒もかからずにハサミを閉じて、海中を震わせて、衝撃波を放つ事ができる。

 

その衝撃波を用いてゴウはベアトリーチェへ近づき……後は拳を握りしめて、作った拳をそのムカつく赤い面にぶち込む。

 

「がはぁぁっ!?」

 

拳を撃ち込まれたベアトリーチェは、大きくのけぞり、テーブルへその体をぶつけて叩き割る。

次の瞬間衝撃音を聞いたサオリがドアからアサルトを構えて入る。

 

「貴様ッ!!マダムに何を!」

 

サオリが見たのは、その場に倒れたベアトリーチェ……そして、妙に清々しい顔をした越谷ゴウの表情だ……アリウスでは決して見えないほどに、清々しい顔をしていた。

 

「……おっ、撃つかい?いいねぇ…そうこなくっちゃ!!気分がいいからな……喧嘩だ喧嘩ァ!喧嘩をやってやらァァァァァァァァッッッ!!!

 

そう言って、ゴウはまた拳を振りかぶり、腕のハサミを開き拳をサオリへ向けるのだった。

 

 

……この日、アリウスに一人の裏切り者が現れ、彼が好き勝手してキヴォトスを混乱の渦に陥れるのは、また別のお話。

 

 




ベアおば:流石に自治区で私に喧嘩売る奴はいないでしょうなぁ……
ゴウ:ベアおば嫌い!ぶん殴る!右ストレートでぶん殴る!(思考停止)
サオリ:えっこれは……何?
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