ベアトリーチェを開幕早々ぶん殴った男   作:テッポウエビ

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アリウス自治区、君を殴る。

……その時間、鳥も寝静まる様な深夜……アリウス自治区は大変な賑わいを見せていた。賑のあまり銃声が響き渡ってしまうほどだ。

 

……理由?決まっている。

 

現在このアリウス自治区を仕切っているフィクサー。

 

アリウスに生きる彼女たちにとっては、自分達を遠巻きにこんな目に合わせたトリニティとゲヘナに復讐する機会をくださった人。

 

アリウス分校の生徒会長であるベアトリーチェが、反乱者によって殴られ怪我を負わされたと言うのだ。

 

反乱者の名は越谷ゴウ。履歴を調べ上げれは、ほんの1年の内にベアトリーチェの元に下った新参者だ。

 

長年アリウス分校の自治区内を転々として、略奪し略奪されを繰り返していたいた……言わば典型的なアリウスの人間。

 

それて、なりよりも特異なのはその能力だ。

 

右腕が甲殻類の様な色鮮やかな殻に包まれガントレットの様になって高いパンチ力を誇る他、前腕部のハサミ型の突起――当人はそのままハサミと呼んでいる――が閉じる事でテッポウエビの様に衝撃波を放つ事ができる……正に異形を用いた異能。

 

ベアトリーチェにとっては真っ先にどうにかしておきたい相手だろう。そんな相手が野良に居られては、ベアトリーチェの支配も揺らぐ可能性がある。

 

不穏分子は早めに排除しておきたいのだ。

 

彼女は、複数の部隊を動かして飽和攻撃でゴウを、多数の人間が衝撃波でぶっ飛ばされる犠牲を払いながらも捕獲することに成功した。

 

捕獲した後は只管に拷問の日々……ストレスの溜まったアリウス生達のサンドバッグとして利用させた。

 

幸か不幸か、ゴウはほかのキヴォトスの人間よりも脆い代わりに甲殻類の様に高い再生能力を秘めていた。多少手荒く扱っても問題ないと言う訳だ。

 

……それが功を奏してか、最近はめっきりおとなしく独房の中にいることに抵抗しなくなっていた。

 

ベアトリーチェは……ハッキリ言えば驕っていた。

彼女は、ゴウが大人しくなったのをサンドバッグ扱いされたのが、溜まったストレスの捌け口にされたのが参ったのだろうと。

 

これまでも、典型的なアリウスのチンピラはそうして暴で分からせてきた。所詮は子供、すぐに折れると……アレだけ痛めつければ、多少は言う事を聴くだろうと。

 

しかし、ベアトリーチェは甘い、甘すぎた。

 

ゴウと言う少年を甘く見すぎていた。

 

ゴウは参ったのではない……待って居たのだ。あえて大人しくして屈服した様に見せることで、その拳の範囲にベアトリーチェが届くのを、只管に。

 

まるで獲物を待つ狩人の様に……支配者を、狩人を気取るベアトリーチェは、既にゴウの中では獲物へと変わっていた。

 

今回の件は、ゴウに言わせれば()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――早く゛!早く゛そい゛つ゛を始末しろ゛――

 

 

……話がそれてしまった。現在ゴウは、アリウススクワッドの一人、リーダーの錠前サオリと真正面から戦っていた。

 

サオリの脳裏には、痛みに悶えながら崩れた口調でサオリに命令するベアトリーチェの姿と声が浮かんでいる。

 

あの感覚……なんとも言えない感覚だった。

――それは、所謂スッキリしたと言う感覚なのだが、サオリはそれに気づくことはない――

 

ゴウも組織の頭をぶん殴ってただで済むわけがないのは分かっているので、ゴウも流石に()()()()()()()()となっている。

 

ゴウは建物の壁をぶっ壊して外へ逃げ……サオリもまた、そんなゴウを追いかける。

 

「貴様……ッ!マダムに手を挙げるなど!」

「下剋上は歴史の華だぜ!……まぁ、あの程度じゃ死んじゃねえだろうがなぁ!……お前さんだってスッキリしたろう!?」

 

ゴウは建物をけって飛んだり、衝撃波を利用して加速したり、まるで猿のように壁をよじ登ったり蹴ったりして、3次元的な動きでサオリの銃撃を回避する。

 

「くっ!?こいつ……」

「すばしっこくでごめんよぉ!」

 

ゴウがそんな軽口を叩く。ゴウは拳を握りしめて、ハサミを閉じると、衝撃波を推力代わりにしてサオリに接近して、その体を拳を振るう。

 

「っ!?」

「ちぃっ!?」

 

サオリは咄嗟に体を捻って胴体の直撃を免れるが……肩にその一撃を食らわせる。

 

「っ!」

 

サオリは顔を顰めて、蹲り肩を押さえる。ゴウはそんなサオリを見て、静かにつぶやく。

 

「……さぁてと、逃げ――」

 

しかし、逃げようとしたゴウを邪魔するかのように、辺りに煙幕が巻かれる。

 

「あぁ!?んだこりゃ!?」

 

サオリのものでは無い……しかし、その煙幕はどんどん濃くなりサオリの姿を覆い隠す。

 

……これでは道が見えないが……その程度ゴウには関係ない。腕の()()()を閉じて衝撃波を放てば、簡単に煙幕をかき消せる。

 

「ちぃ!こうなりゃぁ!」

 

ゴウは地面を蹴って飛び上がり、腕を振りかぶり、腕の腕の()()()を閉じようとする……瞬間、ゴウの腕に一発の弾丸が飛んできた。

 

「うおっ!?」

 

……弾丸があたったのはあたったのは外殻のある右腕なのでさしたる問題はない……ゴウは体勢を崩しながら、地面へ着地すると、スティンガーミサイルが飛びかかってくるのをみた。

 

「っ!やべっ!?」

 

次の瞬間、激しい爆発が起こる……爆炎はゴウを包み煙幕とは違う色の煙を放つ……

 

 

 

 

サオリは煙幕の中そっと後ろを振り向くと、そこにはアリウススクワッドの仲間が居た。

 

「リーダー、手こずったね。」

「だ、大丈夫ですか!?」

「……」

「……あぁ。しかし、もう終わる。」

 

戒野ミサキ、槌永ヒヨリ、秤アツコ、錠前サオリを、含めてアリウススクワッドが勢揃いだ。

 

こうなれば、ゴウに勝ち目はない、一人一人が順々に相手するならいざ知れず、向こうはチームワークで戦ってくるのだ勝てるわけがない。

 

だが……一つ言おう。

 

そんな理屈が通用する相手なのならば、そもそも大人を殴りつけたりしない。

そのために1年大人しくするなんてしない。

 

 

 

 

次の瞬間、煙幕は放たれた衝撃波によって吹き飛ばされる。

 

 

煙が晴れてそこにいたのは、スティンガーミサイルを諸に受けてもなお立ち上がり……不敵な笑みを浮かべる越谷ゴウの姿だった。

 

「おいおい……まだ来てくれんのかよ。嬉しいねぇ……1年大人しくしてた甲斐がァッ!あるッ!」

 

そう言ってゴウは再度拳を握りしめて、腕を伸ばす。握りこぶしを作り、閉じた()()()を再び開く……しかし、ハサミはギチギチと音を鳴らして開くのには少し時間がかかった。

 

「……まだやるの?」

「うぅ……辛くて苦しいはずなのにぃ……」

「……」

「貴様正気か?大人しく投降しろ。」

「正気も正気、超正気ですよぉ……」

 

ゴウはふらりふらりと立ち上がり、拳を握りしめる。

 

(……しかし、アリウススクワッド相手か。やべぇな。)

 

……ゴウも、ベアトリーチェを殴った後に追手に追われることは覚悟していた。

 

……囲まれれば、また数で攻められて捕まって終わりだ。そうなれば、今度はどんな目に合うかわからない、流石のゴウももうサンドバッグになるのはごめんだ。

 

そうなるのがわかっていたから……今まで恐れて足を踏み出せなかった()()()()に、トリニティに出ようとしたのだ。

 

その為にも、早く地下墓地(カタコンベ)という出口を通りたかったのだが……こんなに早くアリウススクワッドと相対するとは予想外だ。

 

……いや、予想外だが行動は変わらない。

 

「ただ握った拳をぶち込む……だけっ!だぁッ!」

 

ゴウはそう叫ぶと、その拳を地面へと打ち付ける。

 

その行為の意味はわからなかったが、咄嗟にアリウススクワッドはそれぞれが各々の武器の引き金を引く……だが、次の瞬間、ゴウの()()()は閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

次の瞬間、衝撃波の轟音と共に、砕かれた地面の残骸が辺りに漂い、自治区の空には大きく飛び上がる一人の人影の姿があった。




ゴウ:ベアおばに捕まってからフラストレーションが溜まったアリウス生のサンドバッグにされていた。
ゴウはベアおばをぶん殴りたかったので耐えた。

サオリ:なんだ……この感情は?(スッキリって言うんだと思います。)

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