ベアトリーチェを開幕早々ぶん殴った男 作:テッポウエビ
「こんにちは!ゴウさん!」
「おう、レイサ。こんちは。」
ゴウとレイサは、出会ったあの日から……ほぼ毎日のように同じ場所で待ち合わせをした、理由らしい理由はない。何となくだ。
2人が集まるのは、トリニティしては珍しく人気の少なくシャッターの多く降りている商店街……強いてここに集まる理由を挙げるなら、なんとなくそこが落ち着くからだ。
しかし、いざ友達として集まるとしてもどうしたらいいのか分からなかった……ゴウも、自身の境遇が境遇なだけに、友達との遊び方なんて全く知らない。
現に今も、二人は隣同士に立ちながらも、何も会話をせずに空を見上げる始末だ。……このままではいけないと、はじめに声を上げたのは、意外にもゴウだった。
「あぁっと……本日は、お日柄もよく……」
「うえっ!?は、はい!!……お日柄?」
「ちげぇか……」
ゴウは第一声には失敗した模様だ。
しかし、ゴウのなんとか会話をしたいという意思をレイサは汲み取ったのか、すかさず言葉を紡ぐ。
「で、でも本当にいい天気ですね!昨日まで雨だったのに!」
「あぁ……昨日は濡れて大変だったぜ。」
「本当、すごい雨でしたものね!」
……これでは、友達と言うよりも『親しくとない友達の友達と会話』している様な物だ。流石の二人も、これではよろしくないと頭を抱える。
しかし、互いにあまり踏み込んだ話をするのも良いものか考えてしまう。互いが互いに気を使って話してしまっているのだ。
……しかし、このままでは友達らしい会話ができない!それは嫌だ……2人は互いに仲良くなれる兆しは見えているのだ。後はそこに踏み込むだけだ。
何か会話を上げなければ――すると、リベンジと言わんばかりにゴウが言葉をあげる。
「そういや……何も言わないんだな。」
「えっ……!?何が、ですか?」
「いや、俺の
そう言って、ゴウは自身の異形の右腕を撫でる。……この腕のせいで、アリウスでは相当な苦労をした。どいつもこいつも化け物を見るような目で見てくる。
正直、トリニティにきてからも通行人から異形を見るような目で見られる事も多い。
しかし、レイサはゴウの腕は目もくれず、ゴウの瞳だけをしっかりと見てはなしてくれる。
それが、どうしてか気がかりだったのだ。
……ゴウ自身も、こんな異形の腕は好きではない。
確かに、この腕のおかげで助かった事も多い――特にベアトリーチェをぶん殴れたことに対してはこの腕なしではできなかったことだ――が、それで自分の異常な面が好きになれるかはまた別の話なのだろう
……そんな事を思い、レイサにそんな事を問いかけてみたのだが、とうのレイサは何処かぽかんとしている。その様子もみて、ゴウも釣られて唖然とする。
「……?ゴウさんの腕、ですか?」
「おう……これ。」
そう言って、ゴウは自身の腕を突き出す――既に
握ってみると、硬い甲殻に阻まれて人肌を感じることはできない。と言うか、妙にトゲトゲしていて痛い。……しかし、レイサの表情は変わらなかった。
「この腕がどうかしたんですか?」
「いや……怖かったり、気持ち悪いとか……」
「そんな事思いませんよ!むしろカックイイです!まるでロボットみたいで!」
「っ!?」
カッコイイ……初めて言われた言葉だ。自治区ではたいてい気持ち悪いか、怖がられるか……ともかく化け物扱いが殆だった。
その性でまともなテリトリーにも入れずに、放浪して奪う奪われるの生き方しかできなかった。
当人としては……奪う側も奪われる側もあまりいい気分ではなかった。喧嘩自体は好きだが……それとこれとは話が別、と言う奴だ。
すると、レイサはゴウの手をギュッと握ってゴウの瞳を見て言葉を紡ぐ。
「と言うか、だったらキヴォトスには羽のある人や獣耳のある人達ばっかりです!」
「いや、そうかも知れねぇがそれとこれとは、話が別だろ……」
羽や獣耳と、異形の甲殻類のような腕……これを比べるのは些か強引な気もするが、少なくともレイサの中では同じようなものなのだろう。
……キヴォトスにも持ってる人が多い翼や獣耳、それと同列。言わば一人一人が持っている
ゴウはそんなレイサをみてから、自分の腕を見て静かにつぶやく。
「しかし、羽根や獣耳と変わらない……そうか、そうだな、そうかもな………その程度の物なのかもな。」
ゴウは、自分の視野がすこし広がった気がした。やはり、トリニティへ出れたのは正解だったのかも知れない。こんな人と出会えるのだから……
「……レイサ。」
「はい!」
レイサは首を傾げながら、ゴウを見る。
「……ありがとうな。」
「?……はい!」
レイサはそう言って、にぱぁと嬉しそうな笑顔をゴウへと向ける。レイサ自身、良くわかってなさ下だが……良くわかってなくて良いのかも知れない。
ゴウは、その笑顔がとても眩しく見えた……守ってやりたいと、この笑顔を曇らせたくないという思いが、心のなかで生まれていた。
……そして、つくづくあのベアトリーチェに対する憎しみが募る。なにがトリニティは悪だ……確かに悪人がいないわけではなかろう。過去の所業がそれは証明している。
しかし、レイサの様な人間もいるのではないか。他にもいるのかも知れない。そんな人達を悪人のために恨むような真似できるものか。
……ゴウはそんな事を考えていると、レイサはゴウの異形の右腕を見て、唸るように呟く。
「しかし、これロケットパンチみたいなことできないんですか?」
「俺の腕千切れてるじゃねぇかそれ。」
確かに、見た目だけならジェットエンジンなびかせて拳が吹っ飛んでロケットパンチが出来そうな見た目だが、あいにくそれは出来ない。
しかしゴウは、何処か自慢げに呟く。
「……まぁ、衝撃波出す事は出来るんだけどよ。」
「衝撃波!?」
すると、レイサは目をキラキラと輝かせてゴウの腕と顔を交互に見ると、テンションを上げて声を上げる。
「なんですかそれすごい格好いいし強そうです!私にも体得できますか?」
「俺と同じ腕になったらできるかもな……今度機会があったら見せてやるよ。」
そう言って、ゴウは自慢げに腕を組んで胸を張る。それを見てレイサは「おぉ!楽しみです!」ト言って笑顔で彼の腕を見つめる。
そう言って二人は、その日の会話に花を咲かせていくのだった。