今回のはあったかもしれない鍵の中学時代の話です
ちなみに過去話でオリキャラで登場しますが、今後も(出番少なめで)登場します
ではどうぞ
俺は今現在、クラスの連中に取り囲まれている。
事の発端は、俺の林檎と飛鳥の二人に対する行動の事をクラスの一部に知られたからだ。
それからというもの、校舎の裏によく呼び出されては、その連中からサンドバックにされていた。
でも…、俺のことはどうだっていい。林檎や飛鳥が受けた心の傷は、こんなものではないからな…。
今日もいつもの様に、校舎裏に呼び出されてその連中に殴られる。俺もいつものように流されるままにしていた…。
でも、今日は違った。
「何してんだよ、お前ら」
何度か殴られているうちに背後から、威圧されるようなドスの聞いた声が届く。
俺を囲んでいた奴らもそれに反応して、後ろを振り向く。
そこには金髪で蒼い目が鋭く、日本人とは思えない容姿の生徒が、不機嫌そうな表情で立っていた。
真 side
あー…よりによって、放課後に用事なんか頼まれるなんてなぁ…。
ほんとだったら今頃、皆でカラオケに行って放課後を満喫しているところだったのに。
さてと、確かこっちに…ん?なんだあれ?なんか1人の生徒を5・6人が囲んでいる。見た感じ、友好的な雰囲気じゃなさそうだけど…。
囲まれているのは…うちのクラスの杉崎…だよな?
俺は様子を見ようとして、校舎の影に身を隠す。
すると、杉崎を囲んでいた連中が急に杉崎を殴り始めた。が、杉崎は抵抗するそぶりが見られない。
「何してんだよ、お前ら」
そんな連中に若干イラつきながら、俺はそれを止めるために声をかけながらゆっくりと近づいていった。
真 side out
俺を囲んでいた連中がその生徒、『豹堂真』を見て若干顔を青ざめている。
というのも、あいつは様々な理由でこの学校では有名人だ。
中学入学と同時にこっちに引っ越してきたんだが、自分の過去…というより、前に何処にいたのかすら分からない謎の存在。
日本人離れした容姿を持ち、成績はいつもトップ。運動も出来て本人に自覚はないが周りの女子のあこがれになっている。
でも当初はかなりの問題児扱いされていて、一時期には『近辺の不良全てを牛耳っている』なんて噂も流れていた。
結局、その噂はガセだったんだけど、それからも一部の生徒から怖がられている。おそらくこいつらもその生徒の一部なんだろう…。
「んで?結局何してんの?おまえら」
「ひょ、豹堂さん!?い、いやなにも!ええ!何もしてませんよ?」
「ふーん…じゃあ、さっきそいつを殴っていたように見えたのは、見間違い…ってことか?」
『!?』
見てたのか…全部…。周りの奴もかなり焦っているようで、体が若干震えている。
「え、えっと、あの、その…」
「はぁ…とりあえずさ」
『はい!』
「……失せろ!!」
『は!はいいいいいいいいいい!』
その一言で俺を囲んでいた連中全員が、情けない声を出しながら走り去っていった。
俺だけがその場に残っていると、豹堂がゆっくりと俺に近づいてくる。しかし、その表情は先ほどのような威圧するような表情ではなかった。
「大丈夫か?」
「……………」
「あ、あれ?おーい?」
豹堂が心配そうに声をかけ、手を差し伸べてくる…。それを俺は…
バシッ!
「?!」
払いのける
「どうして…」
「?」
「どうして助けた!俺なんか!助ける価値なんてないんだ!ああされるのも、当然のことをしたんだ!」
そう言いながら俺はそこから、いや、豹堂から逃げるように走っていった…。
翌日、俺はいつもの様に自分のクラスに入っていく。すると昨日まで俺をいじめる…というより、ストレスのはけ口にしてきた連中は顔を逸らす。
どうやら昨日の一件で、俺に対する接し方を考え直したようだ。それほどまでにあいつの影響力はかなりのものなんだろう。
そんなことを考えつつ、自分の席に向かい鞄を下ろして席に座―
「おーっす!おはよー!」バシッ
「いって!なにしやがる!」
―ろうとして背中を叩かれる。思わず後ろを振り向くと、綺麗な金髪が最初に目に入る。
そんな人物は自分の中では一人しかいない…そう、豹堂だ。
でもなんで?いままで挨拶どころか、ろくに喋ったこともなかったのに…。
「ごめんごめん。でも、挨拶は大事だろ?やっぱり」
「だからってそんなに思いっきり背中を叩くな!…てか、急にどうしたんだ?今まで挨拶なんてしたことないのに…」
「ふぇ?」
「食べ物を口に入れたまま返事をするな!てか、何食ってんだよ!?」
「モグモグ…はぁ。で、何の話だっけ?」
「なんで急に俺に話しかけてきたのかって話だよ!」
「あぁ、それの事ね。単純な話だよ」
豹堂が笑いながらそう言う。それよりも、さっきの「ふぇ?」って台詞のせいで周りの女子がざわついているぞ…。
「今日からお前と友達になろうかと思ってさ!」
「……はっ?」
…え?今こいつなんて言った?友達?え?理解できないんだけど…。
ということで、俺はたった今から豹堂の友達になった…らしい…いまいち納得いかないけど。
その日の昼休憩、豹堂に屋上に来いって言われた…なんで屋上なんだ?
まさか、あいつもあの連中と同じように俺をサンドバックにするつもりか?
それだとしたら何で俺のことを助けたり、友達だって言ったんだ?…あいつの考えは分からん。
そう思いつつ、屋上の扉の前にたどり着く。
…この扉を開けずに立ち去ろうかとも考えたが、なんだか癪なので開けることにした。
「おーい、豹堂~?言われたとおり来たけ…は?」
その時俺の目に映った光景は…
「阿璃朱ちゃんナイス!後はコストオーバーになった弥生をたおすだけだ!」
「了解だ、伊勢崎一等兵。これより、敵機を殲滅する。可能な限り援護をしろ」
「あ、今回は軍人キャラなんだ…てか俺階級低くない!?」
「ボケながらこっち攻撃しないでよ…ってあれ?ボタン間違えた?」
「姉ちゃ~ん、それはロックオンボタンだって~…てか体力やばいからよけてよけて~。真~フォローしてあげて~」
「はいよ~…ってか、弥生ゲーム苦手なんだから無理してやらずに玲に任せればいいのに…これ、見るだけでも面白いぜ?」
「む…悪かったわね、ゲーム下手で。どうせ私はゲーム下手で真達の会話に入れない除け者よ」
「おい真…お前また地雷踏んだな…知らないぜ?どうなっても…って阿璃朱ちゃん?なにさらっと撃墜されてるの!?」
「油断した、気にするな伊勢崎二等。これから再び出撃する」
「なんかさらっと階級下がってるし!真も笑ってんじゃねーよ!」
5人の男女が仲良く食事しながら、輪になってP○Pをしていた…。何このカオス…。
「えーと…とりあえず、皆自己紹介しようか…んじゃまず要から」
あの後、俺が来たことに気づいた豹堂が俺を輪の中に加わらせてお互いに自己紹介をすることになった。
よっしゃあ!と言いながら、要と言われた男子生徒が立ち上がる。
ちょっと長めの黒い髪が特徴の男子生徒。いわゆる"イケメン"に部類される男子のようだ。
「俺は伊勢崎(いせざき)要(かなめ)だ!よろしく!」
「見た目と言動が馬鹿っぽいけど、そこそこにこいつ頭良いから」
「誰が馬鹿だあああああああああ!」
そう言いながら豹堂に殴りかかるが、あえなく取り押さえられてる…。前言撤回、こいつは馬鹿だ。
「相変わらずね要は…あ、私は柊(ひいらぎ)弥生(やよい)よろしく。それとこっちは弟の玲(れい)よ」
「よろしく~。あ、姉ちゃんとは同い年だけど、双子ではないから~」
「…別にそれは言わなくても良いんじゃないの?」
今度はピンクっぽい髪の女子と、童顔…というより女子っぽい顔立ちの男が挨拶してくる。
良かった、どうやらこの二人は、先ほどの伊勢崎と違って(?)常識人のようだ。
「ふぅ…肉弾戦じゃ俺には勝てないのに…よくやるよ、要の奴」
笑いながら豹堂が帰ってくる。というより、伊勢崎は大丈夫なのか?なんだかぐったりしてるが…。
「あ、要に関しては別に心配しなくても大丈夫だよ~?いつものことだし、ギャグ補正でいつもすぐ復活するから~」
「ギャグ補正ってなに!?現実にそんなモンが存在すんの?!てか、今俺の心読まなかったか!?」
「え~?そんなわけないじゃ~ん、アハハ~」
柊玲…恐るべし。見た目に反してこいつは中々に厄介な奴と見た。
「えーと、弥生たちは自己紹介したから…後は阿璃朱だけか」
「そうですね、それでは…んっん」
阿璃朱って呼ばれた子…下級生かな?なんだか喉の調子を確認してるけど…。
「んっん…初めまして、彩城(さいじょう)阿璃朱(ありす)です。この中で唯一の2年生ですが、気軽に話しかけてくださいね?」
喋り終わった彩城―いや、もうこの際アリスちゃんで良いや―が自己紹介を終え、こっちを見ながら笑っている。
…え?ちょっとまてよ?今、アリスちゃんが喋った声って俺の声じゃなかったか?
俺が目を白黒させていると、豹堂達が俺の様子を見てクスクスと笑っている…なんか腹立つな。
「驚かせて悪かったな。阿璃朱は一度聴いた声なら何でも喋ることができるんだよ」
「え、なにそれ。つまり今のは、ちょっと聴いた俺の声を真似たって事か?」
「そういうことです。だから…んっん…ほら、口調も真似れば本人と聞き間違えるでしょ?」
今度は柊姉の声を真似た上に、口調も似せてきたから本人かと思った…。
「とまぁ、こんな感じかな?俺らの紹介は。それじゃ、次は杉崎の紹介と行こうか」
豹堂のその一声で全員がこちらを見てくる…なんだか、そんなに見られると恥ずかしいんだが。
「えーと…杉崎鍵です…あのー…よろしくお願いします」
この日から豹堂…いや、真達とよく一緒に過ごすようになった。
最初の頃こそ戸惑って、いまいち話すことも出来なかったけど徐々に慣れていった。
後から聞いたが、真は暗かった俺を心配してこの集団に入れたらしい。
そうやって過ごしていくうちに林檎や飛鳥のこと、吹っ切れてはいないがこれからどうするかを良く考えるようになった。
そんな俺を見かねたのか、真は良く俺の相談を聞いてくれた…。
そんな真だからこそ林檎と飛鳥、この二人に対する俺の行動を話した。真は親身に話を聞いた上で、俺に聞いてきた。
「つまり、お前はその二人を傷つけたと考えている。だからあの時連中にされるがままにしてたって事か?」
「あぁ、そうされるのが一番だと思ったんだ…。二人の受けた心の傷はあんなもんじゃないと思ったから…」
そう俺が言うと真は俺の正面に立って言い放つ。
「鍵、それは自惚れだ」
「!?な、なんだと?それはどういうことだよ!」
「じゃあ逆に聞くが、その二人はお前がそうされるのを望んでるのか?」
「………」
反論することが出来ない…。
「そんな風に考えるよりさ、二人を同時に幸せにすることを考えたほうが良いじゃないのか?」
真はその場から立ち去ろうと俺から離れ、急に振り向いて口を開く
「一人で抱えるな、今のお前には俺や要たちがいるからな」
その時に気づいたんだ、 俺は真に嫉妬…に似たものを感じていたんだ…。
あいつの周りにいる皆はいつも笑顔でいる。俺には出来なかったことだ。
真には、俺にはないものがある。そしてその俺にないものを見つけるのが、これから俺のするべき事だと。