生徒会の切札   作:ニヒト

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原作一巻ラスト!(エピローグはありますがね)

ただ"原作は"ですがね…

あ、それと今回はあの人が登場!…まぁ原作読んでる人は分かっていらっしゃるでしょうが

では一巻ラスト、どうぞ


更正する生徒会③

「では続きまして、会長がすごく気になっているようなので、会長との出会いをば」

 

 鍵が中学時代の頃の話、主に俺のことに関する事(俺との出会い方は少しぼかした)を話し終わり、次の話題に行こうとする。

 でも俺は、鍵の話した中のとある部分を考えていた。

 

(俺は鍵に嫉妬されていた?俺は鍵が持っていないものを持っている?)

 

 そんなことはない。俺は、鍵の思っているような人間なんかじゃない。俺はただの、独りよがりな人間なんだから…。

 

「会長との出会いは学校の廊下です」

「廊下?…まさか、すれ違っただけとか言い出すんじゃないでしょうね?」

「違いますよ。ちゃんと会話もしましたし」

「ええ?……うーん……全く覚えがないわ」

「でしょうね。会長はあの時、俺の顔を見ていない…というより、見れていないですから」

「?廊下で会って、喋ったのにもかかわらず顔は見れていないの?」

 

 会長が首をかしげながら考え込む。

 …こうして聞いてると、鍵と会長の出会いの経緯を詳しく知りたくなってくるな。

 他のメンバーも俺と同じ気持ちなのだろうか、興味津々な様子で鍵の話に耳を傾けていた。

 それに気づいたのかは分からないが鍵は番茶で口を潤し、再び語り始めた。

 

「そもそもあの頃の俺は、真と出会ってから緩和されたとは言え、中学の経緯があって少々荒れてまして。別に暴力を働いていたわけじゃないですよ?ただ、真達以外とは極力喋らずに、こう…『俺には近づくなよ?』という空気バリバリでして…」

「さっきの話を考えたら、まぁ…分からない話ではないわね」

「飛鳥は内地へ行っちゃうわ、妹とは面会謝絶になるわで、ますます自分を責めていましたね。そのせいか、すっかり落ちぶれた生活を過ごしていたんですけど…。そんな時に、出会ったんです。そう、…」

「お、とうとう私の登場ね!」

「The ghost of a books …そう、『本の化物』と」

「誰よ!てか、何で一回英語で言ったのよ!」

「貴方ですよ、会長。貴方との出会いを話しているんだから。あと、英語で言ったのはなんとなくなんで気にしないでください」

「気にするわ!それに私はざ ご、ご…『本の化物』じゃないわよ!」

 

 会長が鍵の『本の化物』発言に対して全力で否定してくる。

 てか会長、途中で英語訳言うの諦めたでしょ。見栄張ろうとするから…。

 

「具体的に言えば、大量の本を持って上半身が隠れちゃってるちびっこい先輩に出会ったんです。廊下の先から急にそんなのが出てきたら、本の化物かと思いますよ」

「う…そういえば、去年は副会長としてよくそんな雑用をしていた記憶も…」

「で、極力他人と交流を避けていた俺でも流石にそれを見過ごせるはずもなく、『大丈夫ですか?』と声をかけたのが、初めての出会いです」

「そ、そうだったんだ…あれ?でもそれじゃあ、何で私は覚えてないの?」

「それはですね、結局俺が本を半分ぐらい持って手伝うことにしたんですけど、それでも会長ちっこいから、俺の顔が自分の持ってた本の束のせいで全然見えなかったみたいですね。運び終わった後、俺もすぐに立ち去りましたから、結局俺の顔は見られなかったのかと」

「う……」

 

 話を真面目に聞きつつ、鍵の『ちっこい』発言に傷ついたようだ。会長は胸を押さえつつ呻いていた…ご愁傷様です。

 

「まいりましたよ。なんせ会長、三階の図書室から同じ三階の生徒会室に資料を持っていく途中だってのに、なぜか一階でウロウロしてたし」

「うっ」

「ただでさえ歩幅が小さいのに慎重に歩いているせいで、階段に辿り着くのに十分以上かかってましたし」

「うう…」

「そんなんだから、見かねて『俺が全部やりましょうか?』って声をかけても、『ふ、副会長をなめてはいけません!』とか妙に意地張るし。おかげで、余計に俺も時間潰されるし」

「ううう……」

「階段上る時なんて、腕と足がすんげープルプルしていて痛ましいし」

「あぁ、去年の私って……」

 

 会長ががっくりとうな垂れる。……でも会長。今の会長もそんな変わってないですよ?

 

「んで、期せずして長時間同行する羽目になってしまいまして。荒れていた俺もついつい油断して、軽くですけど会長に色々と話してしまいまして。二股で両方の女の子を傷つけて、自分はどうすれば良かったのか……みたいな愚痴ももらしたんですよ。そうしたら会長が……」

「?私がどうしたの?」

 

 首を傾げる会長。それを鍵が見て、溜息をつきつつ続ける。

 

「会長はこう言ったんですよ。『恋愛シミュレーションゲームをしなさい!貴方には主人公精神が足りないわ!』と」

 

『……は?』

 

 会長のみならず、俺を含めた生徒会全員が目を点にして耳を疑う。

 会長は必死に反論しているが、鍵は聞く耳を持っていない様子で話を再開する。

 

「どうやら会長はその時期に、丁度なんかの恋愛シミュレーションゲームをやって感動した直後だったらしくてですね。友達から勧められてやったら、不覚にも泣いてしまったとか言ってましたけど……」

「あ」

 

 どうやら思い当たる節があるのか、会長が声を上げる。

 まぁ、この人は流行にすぐ流されるからなぁ。この前も好きなお菓子が二転三転してたからなぁ。

 

「当然俺はキョトンとしましたよ。当時の俺はそういう系統のゲームに全く興味がありませんでしたし、会長みたいな人の口からそんな単語が出るなんて思いませんでしたから」

「あぅぅ…」

「でも会長はいたって本気で言うんですよ。『ああいうゲームの主人公を見なさい!モテモテなのに、結局皆を幸せにするじゃない!貴方はアレを参考にしないさい!それぐらいでちょうど良いわ!」

「きょ、去年の私はいったい……」

「その突飛な発想は、意外と俺の心にグサリときましてね。それからですよ。ギャルゲとエロゲに染まったのは」

「その性格や趣味って、私のせいだったんだ!」

 

 会長が深く落ち込んで、世界の終わりみたいな顔をしている。

 まぁ、今まで問題児と考えていた奴の性格やキャラが、自分の言った一言が切っ掛けだったんだもんな。

 知弦先輩と椎名姉妹もぎこちない表情で苦笑いをしている。

 

「でも…おれはそれで、救われました。ありがとうございました、会長」

「え?」

「あの頃の俺は、何をすれば良いのか全く分からなかったんです。でも会長は、そんな俺に指針をくれた」

「……ギャルゲだけどね」

「そうは言いますけど、あの頃の俺には結構衝撃だったんですよ?あれ。真に借りたりしてやっていたんですけど、特に…ハーレム系の展開になるものはカルチャーショックだったんですよ。ああ、こんな展開もあるんだなぁって。荒唐無稽だけど、でも、皆が微笑んでいられる未来は、ちゃんとあるんだなぁって」

「……杉崎……」

「特に、ギャルゲの主人公ってどういうわけか俺の状況にそっくりなのが多かったから。義理の妹とか幼馴染がいて、三角関係になって、軽くドロドロして」

「………」

「でも、悔しいんですけど、アイツら主人公と来たら十中八九、最後には幸福を掴みやがる。ホント…俺、何度泣いたことか。あぁ、どうして俺はこうはなれなかったんだろう。どうして俺は…二人をちゃんと、幸せにしてやれない情けない俺だったんだろうって。だから俺は決めたんです。俺は…『主人公』になろうって。真や主人公みたいに、皆を平気で幸せに、笑顔にする『コイツら側』になってやるって」

『………』

 

 鍵が拳を握りこむ。皆から視線を集めるが、鍵はいつもの表情で微笑む。

 

「俺はもうあの頃の俺じゃない。中学に真に助けてもらって、春には会長と出会って切っ掛けを貰って。夏には深夏に渇を入れられ、秋には知弦さんに癒され、冬に真冬ちゃんに励まされて。バイトも勉強もギャルゲも全部全力で取り組んで。そうやって一年自分を磨き続けて、俺は…もう、あの頃の俺じゃない。だから俺はこの生徒会に来た時、自信を持ってこう言えたんだ」

 

 一度息を吸って、鍵がもう一度あの言葉を告げる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「好きです。超好きです。皆付き合って、絶対に幸せにしてみせるから」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぁ~あ…あー眠い」

 

 次の日、俺は眠気を抑えつつ早朝の校舎を歩いていた。鍵に貸した最初のギャルゲをやり直していたせいでほぼ徹夜したからなぁ…。

 昨日はあの後会長が、残りの生徒会メンバーの邂逅を鍵から聞き出そうとしていたが、時間も時間ということではぐらかして終わらせていた。

 まぁ、知弦先輩達の話に俺も少しは興味があったけどな。

 階段を上り、文科系クラブの掲示板がある廊下を歩いているとブロンドの髪の女子生徒がせっせと新聞を張り出していた。

 その女子生徒に近づきつつ、びっくりさせないように声をかける。

 

「どうもです、リリシア先輩。こんな早朝からご苦労様です」

「ん?あら、真さんじゃないですか、ごきげんよう。あなたこそ、こんな早朝に登校なんて珍しいじゃありませんか」

 

 新聞部の部長である藤堂(とうどう)リリシア先輩は、優雅に微笑む。…昨日の事に関しては悪いことをしたとは思っていないな、こりゃ。

 彼女が俺を下の名前で呼んでいるのは、俺の外見が関係しているらしいが…いまいち分からん。まぁ、そこそこには信頼されているんだろうな。俺はいまいち苦手だけど。

 そうこうしているうちに新聞を張り終わったようだ。俺は再びリリシア先輩に声をかける。

 

「それで、昨日の今日でもう新聞新しくしたんですか?」

「ええ。杉崎鍵のあんな下らない間に合わせネタより、もっと面白いネタが入りましたので」

 

 そう言われて壁新聞を見てみると見出しには、『保健室で目撃!?看病をしたがるナース幽霊!』とデカデカと書かれていた。

 鍵の過去は、こんな間に合わせネタに負けたのか…哀れな鍵。

 

「どう?面白いでしょう?この藤堂リリシアにかかれば、一晩でこんな新聞作っちゃうのも朝飯前というものですわ!おーっほっほっほっほ!」

「え?まさかこの記事、一晩で作ったんですか?新聞部の皆さんも大変ですね」

「何を言っていますの?この事件が起きたのは昨日の放課後でしたし、わたくしがそのことを聞いた時点ではほとんど帰っていましたし、部員を集めるのは面倒でしたので、わたくしが徹夜で一人で作成しましたわ」

「え!これをたった一人で?」

 

 リリシア先輩の目元を見ると、ファンデーションで隠されてはいるがうっすらと隈が見える。

 

「…リリシア先輩は、どうしてそこまでするんです?お嬢様の道楽としては入れ込みすぎなのでは?」

「あら?あなたがそう言うとは思いませんでしたわ。道楽に入れ込むことにおかしい事があるのかしら?あなたのゲームや、杉崎鍵のハーレム作りだってそうでしょう?そんなことしなくたって生きていける。でも人間《生きるだけ》では満足できない生き物なのよ。極限状態にでも追い込まれない限りね」

 

 極限状態…か。あの時の俺みたいなことを言うんだろうか…。

 あの頃の俺は、何かに縋らないと生きていけなかったからな…。

 

「まぁ、下らない理由で始まったことですけど、今は楽しみをそこそこに見出してわたくしは新聞を書き続けていますの。確かに普通に考えれば、徹夜してまでするようなことではないかもしれませんわね。でも…わたくしの記事で取り上げる人間もそうですけど、人間はおかしいからこそ面白いのですわ。理解できないからこそ、人間なのですわ」

「へぇ……」

 

 リリシア先輩の言葉に、理解は出来なかったけどそうなのかもなとは思った。リリシア先輩はこういう部分が面白いんだろう。

 

「俺はそういうの嫌いじゃないですよ?むしろ好きなくらいです」

「…あなたはそういう点を直すべきだと思いますよ…」

「え?何がですか?」

「なんでもありません!もうこんな時間なので失礼いたしますわ。真さんごきげんよう。あ、杉崎鍵に彼に対しては追跡調査を行うのでまたお世話になると伝えておいて下さいましー」

 

 そう言うとリリシア先輩はスタスタと立ち去っていった。もうちょっと話してみたかったんだけどな。

 でも、今日のこの会話だけでもリリシア先輩の評価はがらりと変わったな。

 壁新聞の記事を見る。会長の嫌いなホラー系の記事…普通ならここははがしておくべきなんだけど…。

 

「先輩の道楽を邪魔しちゃいけないよな」

 

 そんなもの知らなかったような態度で掲示板から立ち去る。

 

 

 

 …決して会長が怖がるのを見たかったってわけじゃないぞ?

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