一応オリジナルですが、終盤は原作のとある場面に繋がってます
期待せずに、どうぞ~
布団から出た俺は洗面所に向かい、歯を磨いて顔を洗ってタオルで顔を拭きながら自分の部屋に戻ってきた。
この手順を終わらせるのに15分以上かかったのは内緒だ。
「ふぅ…あー、やっぱ起きてすぐに顔を洗うと目が一気に覚めるな。…まぁこんな時間に起きる必要はなかったけど」
そう言いつつ俺は、自分のベッドの横の目覚まし時計を確認する。
[AM 06:58]
いつもなら7時15分まで寝ているから、今日はなかなかの早起きだ。
ん?15分しか変わらない?そんなことはない!15分早く起きるということは、15分間の布団のぬくもりを捨てることになる!
さらには15分あればドラ○エなら2はレベルが上げれるし、G○ェネならば戦闘アニメを飛ばせばかなりターンが進められる!
…うん、落ち着こう。朝起きたばかりなのになんなんだこのテンションは…。
やはり昨日(というより今日)、真冬ちゃんや阿璃朱とオンゲを2時くらいまでしたのがまずかったのか…。
そんなことを考えつつ制服に着替え、リビングに向かう。
するとそこには、一人の男が新聞を読みながらコーヒーを飲んでいた。
「じいちゃんおはよー」
「お、真今日は早いな。どういう風の吹き回しだ?…まさか、彼女でも出来て一緒に登校か?」
「そんなわけないじゃん。俺なんかに彼女なんて出来るわけないよ」
お互いに笑いながらそのような会話を進めていく。
会話の中から分かるが、今目の前にいる人が、俺の母方の祖父であり保護者でもある豹堂(ひょうどう)啓児(けいじ)だ。
確実に年齢は60以上いっているんだが、見た目は10代後半に見えてしまう程に若い。
この前に一緒に街に行ったときに「兄弟ですか?」と言われるほどだ。
その上自宅と同じ敷地に経営している道場の師範代で、俺もいまだに一度も勝てないほど強い。
おっと、そんなことしてる場合じゃなかった。折角早く起きたんだし、今日はちょっと張り切って多めに弁当作ってみるか。
「…調子に乗りすぎた…。まさかここまで作ってしまうとは…」
「お前は何人に配るつもりだ…」
「そんなつもりじゃなかったんだけどなぁ…」
作り終わった弁当を見て、俺とじいちゃんがあきれたようにその弁当を眺める。
何故そんなことになっているかと言うと、今目の前にある弁当の量のせいだ。
"ちょっと"気合を入れすぎて、重箱3段くらいになってしまった。
まぁ、クラスの連中と一緒に食えば大丈夫かな?鍵なんかも、食費が浮くから助かるとか言いそうだしな。
おっと、そうこうしているうちにかなりの時間が経っていた。そろそろ行こうかな?
「んじゃ、そろそろ学校行って来るねー」
「ん?もうそんな時間か。車に気をつけていけよー」
そんなじいちゃんの言葉を背に、俺は家を出る。てか、車に気をつけろって小学生かよ。
にしても、いつもと違う時間に家を出るだけで景色がガラリと変わるもんだな。
いつもなら見ない学生もチラホラ見えるし、あの女子生徒だって…あれ?もしかしてあれって…。
半分確信し半分疑いながら、その特徴的な水色のポニーテールの女子生徒に近づいていき、向こうからは顔が見えない位置から顔を確認し、声をかける。
「優姫先輩おはようございます。登校のときに会うなんて珍しいですね」
「?」
一瞬誰に声をかけられたのか分からなかったようで、ハトが豆鉄砲食らったような顔をした。
先輩はこっちの顔をまじまじと見て、俺が誰なのかようやく分かったようだ。
声を聞いて誰か分からなかったのが恥ずかしいのか、先輩の顔は少し朱色に染まっていた。
「ま、真君!?な、なんで!?」
「なんでって、ここが自分の通学路ですし…。まぁ、いつもはもうちょっと遅い時間ですがね」
俺は笑いながら話すが、先輩は何か考え込むような表情で話を聞かずにこっちを見てこない。
(ま、まさか真君に会えるなんて!今日の血液型占い、早速当たってる!でも、今週の正座占いは最悪だったから、慎重にこのチャンスを活かさないと…)
「せんぱ~い?お~い、聞こえてますー?」
「え!?あ、ご、ごめんね。ちょっと考え事しちゃってて。ア、アハハ」
"ワタワタ"と効果音が出ているかのごとく、普段のイメージからは想像できないくらい取り乱す先輩…うん、なんか可愛いな。
この人は七海(ななうみ)優姫(ゆうき)先輩。碧陽の三年生で、陸上部の部長さんでもある。この前のカオスラジオで話に出た人だ。
可愛いというより綺麗と言った方が似合う容姿で、碧陽だけでなく他校からもかなりの人気がある。
「んで、折角会ったんですし、一緒に登校しません?」
「ほんとに!?ふ、不束者ですが!よろしくお願いいたします!」
「先輩!?ちょ、顔を上げてください!なんか周りの視線が痛いですし!」
先輩が右手を前に出しつつ、腰を綺麗に90度曲げて大声でそんな事を言うもんだから、周りの学生やら近くのおばちゃんやらがこちらに視線を向けてくる。
先輩もそのことに気づいたようで、あわてて姿勢を正しつつ周りに視線を送る。…というより、これは威圧しているのではないだろうか?
まぁ、そんなこんなで先輩と一緒に登校する事になったわけなんだが…。
「ううううう…」
「あのー、先輩?」
「うわぁ!!なななに?」
「いや、さっきからずっと俯いて呻いていたんで、体調でも悪いのかなぁ…と」
そう、さっきから…いや、一緒に学校に向かい始めてから先輩の様子がおかしい。
最初は俺を見てにやけるだけだったんだが、途中で何かに気づいたかのような表情をして周りを気にし始めて、今に至る。
「体調悪いなら無理せず休んだほうがいいですよ?なんなら家までおぶって行きましょうか?」
「い、いや!いいから!…いや、でもそれもありかも…」
否定の後ろの部分は、ごにょごにょとしか聞こえなかった…なんて言ったんだろう?
そんな事を考えていると先輩が「それよりも!」と、俺に話しかけてくる。
「あ、あたし達って、今のこの状態、どんな風に思われてるんだろうね!?」
「どんな風にって…先輩後輩が一緒に登校してる…ってだけじゃないですか?」
何を当たり前のことをと思いながら言ったのだが、それを聞いた先輩はかなりしょげていた。
「だよねだよね…真君に限って、そういう浮いた話はある訳ないだろうし」
「浮いた話?何がですか?」
「なんでもないよ!」
そんな他愛もない会話をしつつ、俺と先輩は学校に向かった。
学校に着くまで、先輩の表情がずっとにやけと名残惜しそうな顔だったことを、付け加えておこう。
その後自分の教室に着いたのだが、着いたとたんに巡(めぐる)に絡まれた。
どうやら今日鍵が風邪をひいて休んだようで、機嫌がすこぶる悪いようだ。巡は鍵のことが好きだからな。
そのことを巡に言うと、ツンデレ口調で何か言って立ち去っていった…あ、守(まもる)が殴られてる。
まぁそんなことはどうでも良いが、鍵が休んだというのは結構気になる。
昨日巡に付き合わされて映画の撮影をさせられてたが…それが原因か?バイト終わったら見舞いにでもいってやるか。
俺は今日最初の授業、物理の実験中にそんな事を考えていた。
「おいどうした。手が止まっているようだが?」
「ん?あ、ごめん。何してたっけ?」
「あぁ、等速直線運動の実験だ。僕が機械にセットされているテープを引っ張る係だ。故に豹堂は、テープの間隔を計測する大事な役割を頼む」
「了解…全く関係ないが、その口調直したらどうだ?なんか普通じゃないし」
「僕が普通じゃない…か。何を今更なことを」
そんなたわいのない会話をしつつ、隣にいる奴と実験を進める。
こいつは中谷(なかたに)風雅(ふうが)。俺と同じクラスにいる"愛すべき変人"だ。
幼さの残る穏和な顔つきで一見すると常識人なのだが、行動やら考え方がとち狂っているために変人として見られている。
この前も二枚貝の研究だか知らんが、2日ほど姿をくらましてやがった。もちろん誰にも言わずに。
そんな事を考えていると後ろから声をかけられる。
「真~そっち実験終わったか~?」
「守か。終わったけど…どうした?簡単な実験なんだしすぐに終わるだろ?」
「実はさ…まぁ、見てもらったら分かると思うぜ…」
「何が…え?」
守に見せられたのは、目のハイライトが消えてブツブツと何かを小声で呟きながら実験道具をもつ守の姉・巡の姿だった。
…あ、そういえばこいつ等の紹介してなかったな…まぁいっか。
「いやそこはしろよ!ただでさえ出番すくねぇんだからここ位は頼むよ!」
「ここで超能力使うなよ。しかも今回はなぜか微妙じゃないし」
そう言いつつ、風雅に許可を貰い実験結果の書いてあるプリントを守に渡す。
めんどくさいが、この二人の紹介でもするか…。
男の方が宇宙(うちゅう)守(まもる)で女の方が宇宙(うちゅう)巡(めぐる)だ。
…え?それで終わりなのかって?他には…守は超能力者で、巡はアイドルってことぐらいしかないぞ?
「いや、僕は充分すごいと思うのだが」
「そうか?超能力者なんて知り合いにもう一人いるんだけど…」
「ふむ…興味深いな…今度、ぜひとも会って見たい」
「別にいいけど…解剖するとかは言うなよ?」
「流石にそんな事はしない…多分」
一応冗談で言ったのだが、やっぱりこいつは発想が駄目だ…。
話を戻すが、何故守達がこんな状況になっているのだろうか?
守に話を聞いたところによると、鍵が登校していないのにテンションが上がらない巡が、その鬱憤をすべて実験道具に向けた結果ぶっ壊れてしまったらしい。
そのために実験が続けられなかったらしい。実験道具を壊すほどの握力ってなんだよ…。
とりあえずその場は巡を教科の先生に謝罪させた。そのときも巡は放心状態だった…もう告っちまえよ…。
後ろで風雅が「興味深い…」と言っていた。お前はほんとにいろんなものに興味もつのな…。
「それで?そっちは協力取り付けれたの?」
昼休み、俺は昼飯を食べながらとある計画について話し合っていた。
この話はあまり他人に聞かれたくないため、俺を含めて4人で話し合っている。
「あぁ とりあえず文芸部と、阿璃朱のつてで演劇部は協力してもらうことになったよ。そっちは?」
「こっちもコンピ研の協力をなんとか取り付けれたわ…まぁ、変な条件つけようとしてきたから、殴りかけたけどね」
「頼むから穏便にしてくれよ。もしそんなことしたら、協力してもらえなくなるからな」
「心配しなくても良いよ~。もしも~姉ちゃんにそんな事する輩がいたら~…僕が徹底的に潰すから」
「それが不安なんだって言ってんだよ!」
"はぁはぁ"と俺は息を荒くしながら叫ぶ。そのせいで周りから刺さる視線、視線…。
相変わらずこの二人が同時に話をすると、どんな流れになるのか分からないから精神的に疲れる…。
最初に俺に話しかけてきたのは柊(ひいらぎ)弥生(やよい)。所属は2年B組ではないが、よく今みたいに昼飯を一緒に食べたりしている。
決して人付き合いが悪いと言う事ではないんだが、ちょっと口が悪くて皆から少し距離を置かれている。
だがその本性(?)はお化けなどのオカルト系がかなり苦手な普通の女の子だ。
話している途中で豹変したやつは柊(ひいらぎ)玲(れい)で、苗字や会話から分かるように弥生の弟だ。
普段はいつものほほんとした口調で、クラスでもマスコット的な存在。
弥生とは正反対で、人付き合いは積極的な裏表のない奴…と言いたいのだが、さっきみたいに突然雰囲気が変わることもある。
二人とも映画研究会に所属していて、最近では俺たちを巻き込んで映画を撮影しようとしている。
それがさっきから言っている、『計画』だ。映画研究会だけでは上映はおろか、撮影自体が出来ないため俺に相談して『様々な部活と協力して撮影してみないか?』と言うことになった。
ちなみにその映画研究会にはこの二人しか所属していない。
「あ、そうだ。小毬ちゃん、放送部の部長には話してみてくれた?」
「う、うん!部長にも、話してみたら、『面白そう!流石は生徒会会長補佐!』って言ってくれたよ!」
「なら大丈夫そうだね。てか、これ考えたの弥生たちだし、生徒会の役職は関係ないだろ…」
「あ、あはは…」
そう言いながら茶色のショートカットの少女が力なく笑う。
この子は赤荻(あかおぎ)小毬(こまり)ちゃん、俺と同じクラスの女の子だ。
普段はおとなしい上に口下手なんだけど、所属する部活動の一環であるラジオ放送においてはかなりのトーク力で人気パーソナリティーとして全校生徒に知られている。
彼女もこの映画撮影には参加してくれて、放送部への根回しなんかを手伝ってくれてる。
「今のところ演劇部、文芸部、放送部、コンピ研。エキストラは要とかにも来てもらうようにいってるけど…」
「うーん…俳優に脚本、機材に編集は目処が立ったけど、やっぱり難しいなぁ映画って」
「で、でも豹堂くんはすごいよ!豹堂君が動かなかったら、部への話し合いだって出来なかったかもしれないんだもん!」
「む…それはどういう意味?あたしと玲なんかじゃ、ここまで出きなかったって事?どうせ私は人付き合いが悪いですよーだ」
「い、いやそういう意味で言ったじゃなくて!えっと、あの…豹堂君助けて~」
弥生と小毬ちゃんが言い合いをしている…というより、弥生が一方的に噛み付いているだけだが。
まぁ、いつもの事だからスルーしつつ、昼飯に舌鼓をうとうと弁当を見る…あれ?エビフライが一つ減って、綺麗に尻尾だけが残っている。
「もぐもぐ…う~ん、カロリーメイトもいいけどマコ君の作るおかずもなかなかだなぁ~♪」
「おい四季、お前いつの間に来たんだ。そして俺の断り無しで勝手に弁当食ってんじゃねーよ!」
「え~こんなに作ってきたんだし、どうせキー君やみんなと一緒に食べるつもりだったんでしょ?♪」
「う…いや、まぁそうなんだけどさ…」
「やーいマコ君照れてるー♪」
「うっせぇ!照れてねぇよ!」
けらけら笑いながら薄い緑色の髪の女の子…いや、男の"娘"が俺を指差してくる。
こいつの名前は神埼(かんざき)四季(しき)。
前述の通り、見た目は女の子であるが正真正銘男…のはずだ。だから皆からは男の"娘"と呼称されている。
授業にはほとんど顔を出さないのにテストでは毎回10位以内に入っているためか、碧陽学園七不思議のひとつ『幻の男の娘』として噂されている。事実今日こいつを見たのは今が最初だし。
なぜそんな奴と知り合いなのかと言うと…まぁ、偶然に偶然が重なったとでも言っておこう。
「んで?なんでお前は俺の膝の上に乗っかってんだ?」
「ん~?そりゃあ、マコ君の弁当にありつくために決まっているじゃないか!」
「いや、そんな「何当たり前のことを」みたいな顔で言われても」
「え~いいじゃん、別に。あ、ついでに『アーン』でもしてくれない?」
「なぜ俺がそんな事をせにゃいかんのだ」
二つ目の要求は華麗にスルーする俺。
まぁ、別にたくさんある上に元より皆で食べようと思ってたし。でも膝の上に乗るのはやめてくれ、俺が食えないから。
そんな状況を見かねたのか、めずらしく小毬ちゃんが自分から四季に話しかける。
「し、四季ちゃん。豹堂君が困ってるし、どいてあげてよ(羨ましいなぁ…あのラジオでも言われてたけど、やっぱりこの気持ちはきちんと伝えないといけないのかな…)」
「そうよ、今は食事を楽しむ時間なんだからさっさと退きなさいよ(…なんなのかしらこのぶつけどころのないムカムカは)」
「…とか言って、二人ともほんとは羨ましいんでしょ。顔に書いてあるよ♪」
『え゛!?』
「んなわけないだろ、二人がそんな事思うなんて…なぁ玲」
「え!?う、うん無いと思うよ~(相変わらずだなぁ真は。小毬ちゃんの好意に全く気づいてないし…でもそれは姉ちゃんにも言える事か)」
四季の言葉に対し、小毬ちゃんと弥生は反論し玲は呆れたような表情で言葉を返す。なんで呆れているのだろか。四季の言葉に対してか?
そんな事があったが、最終的に四季に巡達も含めた大所帯で昼飯にありついた。
途中、四季がいじりの対象を小毬ちゃんにしたために、小毬ちゃんの精神的ライフが0を通り越してマイナスになっていた。
…『狂戦士の魂(バーサーカーソウル)!』…気にするな、ただの妄言だ。
「いらっしゃいませー」
再び処変わって、とあるゲームショップ。何故俺はここにいるのか?ゲームを買いに来た…わけではない。
ここは俺のバイト先だ。本当ならば今日は休みだったのだが、大学生の先輩が風邪を引いて出れないために急遽店長にヘルプを頼まれたんだ。そういえば鍵も風邪引いてたっけ?風邪が流行ってんなぁ。
先輩にそのことを伝えたら、「なら、ゴホッゴホッ…今度お詫びに!ガハッゴホッ…買い物に付き合ってあげるよ!」と、息絶え絶えな口調でありながら、耳がキーンとなる程大きな声で言われた。丁重にお断りしたけど。
もちろん会長にも事情を説明して会議に欠席することを伝えた。最初こそ『駄目!』の一点張りだったが、俺が今度お勧めのチョコケーキを奢ると言ったら態度を一変させて見送ってくれた。恐るべし、お菓子への欲求。
「たく…なんでお前なんかとシフトかぶらねぇといけないんだよ…」
「うっせぇぞ愛華。無駄口叩かずに手を動かせ、手を」
「わぁーってるよ!お前にだけは言われたくねぇよ!」
「はいはいわかってますよー。愛華はおりこうさんですからねー」
「殺してぇ…お前に殺傷設定のス○ーライトブレイカーぶち込みてぇ…」
「やめろ。お前が言うと冗談なんだろうが冗談に聞こえない」
隣にいるサイドポニーの少女と私語をしながら接客をする。
この糞ア…少女は四月一日(わたぬき)愛華(まなか)。お互いに、いわゆる腐れ縁という間柄である。
容姿は某魔砲…じゃなかった、某魔法少女にそっくりで相違点は髪の色くらいだ。
しかし見た目に反して性格はひねくれていて、さっきのように口は悪く喧嘩っ早い(認めたくはないが)残念美少女である。
これで生徒会副会長とは思えない…。あ、生徒会と言っても要が会長を務めている近隣校、音吹(おとぶき)高校の生徒会だからな?まぁ、分かってるかとは思うが一応な。
「そんで?最近はどうだ?高校には慣れたか?」
「あぁ、ようやく慣れてきたところだよ…まぁ、いつでも腕試しが出来るから退屈はしないし」
「そうか、なら良かった。アレ以降要には勝てそうか?」
「要さんに勝つなんてそんな恐れ多い事言えるかよ!あの人はあたしの目標となる人だ!」
「…要が聞いたら大喜びしそうな台詞だな」
何故こんな会話をしているのか、それは音吹の生徒会のシステムにある。
碧陽の生徒会の選抜は知っての通り人気投票だが、音吹の選抜も一風変わっている。
それは純粋なる『強さ』によって決まる。つまりは『生徒のなかで最も強かったやつが生徒会長になる』と言うことだ。
今現在の音吹高校の生徒会会長は、俺の親友でもある伊勢崎(いせざき)要(かなめ)が勤めている。つまりは今現在あいつが一番強いと言うことだ。
しかし愛華は一年でありながら、要に負けこそはしたものの善戦し見事生徒会副会長の座に着いた(本人は要と戦えさえ出来ればよかったらしい)。
「まぁ楽しそうで何よりだよ。それこそ、紹介した甲斐があるってもんだ」
「お、珍しく素直じゃねーか。でも…あたしもそれに関しては感謝して「ア○ソリュート・パワーフォース!」…」
「ん?何か言おうとしたか?ちょうど声が被って聞こえなかったんだが」
「…いや、何でもない。それよりも今の声、お前の後輩じゃないのか?」
「知らんな、あんなテンションで大声を張り上げる後輩なんて俺にはいな「ス○ーダスト・ミラージュ!」…ちょっと逝ってくる」
「字が違うぞ、字が。まぁ頑張れ」
愛華が満面の笑みを浮かべながら俺を見てくる…あのアマ…。
そう呟きながら、俺はこの店舗の一角にある『デュエルスペース』に足を踏み入れる。
「だー!また負けた!やっぱし勝てねぇよ!」
「ふん!貴様などでは俺の足元にも及ばない。キングはただ一人!この俺だ!」
人差し指を点に掲げながら、ゴスロリを着た少女がそう叫ぶ。
周りにいる小学生や他の客もそれに対して羨望の視線と盛大な拍手を送る。
(やっぱしな…だろうと思ったよ。技名を叫ぶ馬鹿はこいつしかいないだろうからな)
女だからキングじゃないし、その台詞の元ネタの人もキングじゃなくなったし。
そう思いつつそのゴスロリ少女に近づきながら、一応客なので敬語で話しかける。
「お客様、他のお客様の迷惑になりますのでもう少し静かにして頂けますか?」
「あ、すいませ…って、シン先輩じゃないですか。どうしたんですか?敬語なんて使って、気持ちが悪いですよ」
「…そっちは一応客だろ?形だけでも敬語は使わにゃあかんだろ。そして気持ち悪いとはなんだ、気持ち悪いとは」
「あ、そういえばそうですね。だって、先輩が敬語を使うところなんてほとんどないもんですから」
俺はそんな印象なのか?今朝だって、優姫先輩や会長に対しては敬語だったんだが…。
今、俺の目の前にいる他の客からの注目の的になっているゴスロリ少女は彩城(さいじょう)阿璃朱(アリス)、俺の後輩で朝や昼の会話にも出てきた張本人だ。
やる気のなさそうな目、背中の真ん中程まである黒髪が特徴の少女だ。
俺や真冬ちゃんと一緒にゲームをするほどゲームが好きで、さらにはカードゲームにもはまっていて『黒い幻影』とか言う痛いあだ名までつくほどの腕前だ。
ちなみにあだ名の『幻影』の由来は、阿璃朱の特技に由来している。一体どんな特技なのかと言うと…。
「あと、遊○やらジ○ックの声を真似ながら劇中の台詞を叫ぶな。お前がやると本人かと思うじゃねーか」
「えー、そんなのあたしのキャラに反するじゃないですか。それこそ『万死に値する!』ですよ」
「…喉のチェックしなくても出来るようになったのな、それ」
そう、こいつは他人(アニメのキャラも)の声をまねることが出来るんだ、しかも完璧に。
それにキャラも変えれるから、別人としか思えないほどの演技をする。そのためか演劇部では期待の新人として重宝されている。
ちなみにさっきの台詞はガン○ムにティ○リアさんだな。わかってしまう俺もどうなのだろうか。
「おーい真~いつまでやって…あぁ…やっぱしお前か」
「お、な○はのそっくりさんじゃないですか。お願いですからO☆HA☆NA☆SHIはやめてくださいよ?」
「いや、しねぇから。あと毎回言ってるが誰だよ、それ」
愛華と阿璃朱がいつもと同じ会話を繰り広げる。あれ?俺空気じゃね?ここいる意味ないよな…なんか泣きそう。
その後、勤務中にもかかわらず阿璃須に唆されて対戦をさせられた。
最初はストレス発散に図書館エクゾ使ってやろうかとも思ったが流石にやめて、シンプルなシンクロンを使った。
勝率?負けるわけがないだろ?弟子如きに。
バイトが終わってから俺は、阿璃朱や弥生たちと鍵の家に向かっていた。もちろん、果物なんかのお見舞いも持ってな。
阿璃朱はすぐに了承してくれたし、小毬ちゃんに弥生と玲には連絡したらすぐ来てくれた。愛華は…また道場破りにいったらしい。
「にしても珍しいわよね、鍵が風邪を引くなんて。昨日なんかあったのかしら?」
「昨日…体調悪そうだったし、それに巡ちゃんに付き合わされて何かしていたような…それとは関係ないよね?多分」
「関係ない…と言い辛いな、それは」
「それが本当だとしたら相当災難でしたね、鍵先輩」
「ま~今から行くんだし~その時聞けば良いんじゃない~?」
だな、と言いつつ俺たちは鍵の自宅に向かう。
ある程度歩くとうちと同じ制服の生徒が数名見えた。あれは…会長達?
「会長達も鍵のとこにお見舞い行くところなのか?」
「え、会長さんには連絡してなかったの?」
「いや、連絡しようとしたら繋がらなかったし…いつもなら絶対に繋がる真冬ちゃんにも」
「相変わらずユッキーとは仲がいいですね、シン先輩は。いっそ付き合えばいいのに」
そう冗談交じりの会話を続けながらも、会長達に向かいながら歩き続ける。後ろで小毬ちゃんと弥生が何か言っているようだが、まぁ俺には関係ないだろう。
しかし、会長達の様子がおかしい。先ほどから同じ位置に留まったまま動かない…どうやら、他校の生徒に絡まれたようだ。
なんだかいやな予感がする…。そう感じ取った俺は鞄を阿璃朱に預け、会長達に向かって走り出した…。
真冬 side
去年の冬
真冬は、いつもゲームを買っているお店に行って、新作のゲームを買って帰る途中でした。
でも、その道中で運悪くガラの悪い二人組の男の人に絡まれたんです
「君可愛いね、高校生?それとも中学生?」
「え、あの、その…」
「まぁ俺達からしたらどうでも良いんだけどね。そんなこと」
「それよりもさ、暇なら俺たちとお茶しない?俺たちが奢るからさ」
「い、いえ、け、結構です」
「えー良いじゃん、どうせ暇なんでしょ?」
そういいながら、一人が真冬の手を掴んできました。
その頃の真冬は真先輩や杉崎先輩に出会う前で、男の人に対してはまだ苦手意識が残っている頃でした。
真冬はすぐに手を振りほどこうしました、でも男の人の力に敵うはずも、ただただ心の中で助けを祈っていました。
「お兄さんたち~、ゴホッ…何してんの~、ゲホッ…あー、だるい…やっぱこの状態で外出するんじゃなかった…」
「あぁ、なんだぁてめぇ?」
そんな事を思っていると、唐突に誰かが話しかけてきました。
真冬と男の人たちがその方向を見ると、金髪でマスクをつけた怪しい雰囲気をまとった人でした。年は…真冬と同じくらいだったと思います。
「いや、ガハッ、怪しい連中が可愛い子を連れ去ろうとしてるからさ」
「怪しいのはてめぇだ!なんだよその格好は!」
「え~、知らない奴に、ゴホッ言う必要ないだろ、クシュン…はぁ」
金髪さんは、咳き込みながら余裕の表情(顔色は非常に悪かったです)を浮かべていました。
「なぁ…こいつ、どっかで見た気が…」
「あ!思い出した!最近この辺一帯の不良共を仕切ってるやつじゃねぇか!?名前は確か…」
「そんなんどうでも、ゴホッ…あー、もうだるい…あんたら!警察に連絡されたくなかったら、さっさとその子の、ゲホッ手離して帰りナ!」
見るからに体調が悪そうなのに大声を挙げるから、"ゼエゼエ"と言った息遣いが聞こえてくる。
でも、金髪さんが言った"警察"の言葉に動揺したのか、真冬の手を離して男の人たちは逃げていきました。
真冬はその瞬間に緊張の糸が切れたかのようにその場にペタンと座り込んでしまいした。
その様子を見て、金髪さんが真冬に近づいてきて手を差し伸べてくれました。
(でも男の人に、自分から触れるのは…嫌です。恥ずかしいですし)
なので申し訳なかったんですが、手をとらず自分で立ち上がりました。
金髪さんは最初こそ戸惑ったものの、手を引っ込ませて笑いながら心配をしてくれました。
「それでだいじょ、クシュン!ごめんね、ちょっと風邪気味で。大丈夫だった?」
「あ、はい、ありがとうございました。…でもなんで助けてくれたんですか?真冬とは初対面ですし…」
「え?ケホッ、困っている人を助けるのは当然じゃない?それに、それを早くやりたくて仕方が無いんでしょ?」
金髪さんが指を指した方向…それは真冬が持っていたレジ袋でした。
なんで分かったんでしょうか?
「それ、あの店が用意してる予約ソフト用のレジ袋だし、制服のままってことは学校から直接来たんでしょ?」
「あ、当たってます…でもそれだけで?それだけの理由で助けてくれたんですか?」
「うん。…まぁちょっと別の理由もあるけどね…」
最後のほうはマスクのせいもあって声がくぐもっていて聞こえませんでした。
でも、そのときは別に気にはなりませんでした。
「ゲホッゴホッ…これは本格的にまずいな…それじゃ…」
「あ、せめてお名前を!」
そういった瞬間には、金髪さんは見えなくなってしまいました。しかも靴が焦げたのか、少しゴムのにおいがしました。
どんだけ足速いんですか…それに体調もわるいんじゃ…。
あの時は金髪さんにいつか恩返しをしたいとずっと考えていました。
そしたら、次の日に公園で倒れていた杉崎先輩を見つけたんです。
あの時の金髪さんのように、困っている人を理由も考えず助けれるような人間に…。
気づいたら真冬は、杉崎先輩を運んで、風邪を引かないようにしてから立ち去ってしまいました。…金髪さんのように出来たのでしょうか…。
え?ここまでなんで長々と回想しているのか、ですか?
あの…それがですね…。
「いたたたた!!」
「………」
そのときとほぼ同じ状況が、今ここに出来上がってしまっていたからです。
真冬 side out
俺は会長達に向かって様子を見ながら走っていた。
そして俺がある程度会長たちに近づいた瞬間、信じられない…というより、普段からは想像もできないことが起きた。
二人組みの男の片割れに対して真冬ちゃんが、鞄で殴ったんだ。
一瞬だけ驚いたが俺はさらに速度を上げる。
すると今度は向こうが真冬ちゃんを殴ろうとする…あの野郎…。
俺はそのまま体をちょうど真冬ちゃんと、真冬ちゃんを殴ろうとした野郎の間に滑り込ませ野郎の腕を掴む。
「いたたたた!!」
「………」
少し力の加減を間違えたようで、野郎が情けの無い声を上げる。
「ま、真先輩…」
真冬ちゃんが若干涙目でこちらを見てくる…。
怒りを抑えながら掴んだ腕の持ち主の顔を確認する。
「…あ、お前…」
「いててて…げ、ひょ、豹堂さん!?」
向こうも気づいたようだ。こいつは中学のころ、鍵をいじめていた連中の一人だ。
アレ以降鍵にはちょっかいをかけてはいなかったから、もう懲りたのだろうと思っていたのだが…。
「久しぶりだな…アレで懲りたかと思ったが、マダこんなことしてんのか?」
「いや、豹堂さんだって見てたでしょ!?先に手を出したのは向こう…」
「うっせぇよ」
そう言いながら、俺はそいつを地面に押し倒し胸倉に掴みかかる。
今日はどうやら心の抑えが中々利かないようだ。会長たちが何か言っているようだが、今の俺にはそれすら聞こえない。
「うちの可愛い後輩泣かしている時点で、てめぇに同情する気なんかねぇよ。今ここで俺にボコボコにされるか、二度と鍵や皆に関わらないと約束するか…どっちか選べ」
俺はそう言いながら胸倉を掴んでいた手の力を抜く。そうすると、そいつらはとぼとぼと帰っていった。
そいつらがいなくなるのを見計らって、会長達を見る。会長達はおびえた様子で俺のことを見てくる…当然だよな、俺があんなにキレるのを見たのは初めてだろうし。
「大丈夫でしたか?怪我ありません?」
「いや、大丈夫…それよりも豹堂…」
「…すいません、みっともないとこ見せちゃて。でも、これが俺なんですよ。…嫌いになりました?」
「いや!あたし達のために体を張ってくれたわけだし!」
「…そうですか」
知弦先輩は微笑んでこっちを見て、深夏は「私よりも速い…流石だな」とか言っている。
うちの生徒会のメンバーの良い所の一つなんだろうな、この懐の深さは…。
「真冬ちゃんも大丈夫?あいつに変なことされなかった?」
「だ、大丈夫です。真先輩が来てくれなかったどうなっていたかは分かりませんが…」
俯きながら真冬ちゃんが声を搾り出す。若干体も震えている…相当怖かったんだろう。まだ男性恐怖症が残っている真冬ちゃんがあんな行動に出るなんて…よっぽど酷いこと言われたのか?
「そ、それと真先輩ちょっと聞きた「豹堂、ちょっと質問があるんだけど、良い?」」
真冬ちゃんが何か言おうとしたが、会長の言葉にかき消される。
真冬ちゃんの質問も気になったが、会長がかなり真剣な顔つきだったので会長の話を聞く体制にはいる。
「さっきの連中から聞いたんだけど…」
俺は会長から、連中に聞かされた内容を聞いた。その内容には、鍵がいじめられていたことと俺と鍵が出合った時の状況の事が含まれていた。
そして、会長が説明をし終わったところで俺に質問を投げかける。
「これって…全部、本当のことなの?」
「…えぇ、事実です」
あいつは会長達を心配させまいとその部分を伏せたのだろが、ここは正直に言わせて貰う。
「どうして隠してたの?そんなに私達が信用できないってこと?!」
「そうじゃないですよ。信用していなかったらあいつは過去事態喋りませんよ」
「う…じゃ、じゃあどうして!?」
会長がいつものお子様オーラを消し飛ばすほどの勢いで話しかけてくる。本当だったら、本人に直接言わせたほうがいいのだろうがあえて俺の考えを言葉にする。
「あいつは…多分、皆を心配させたくないだけなんですよ。このことを話すと、会長は絶対に心配するでしょ?」
「あたりまえじゃない!同じ生徒会の役員なんだから!」
「だからですよ。あいつも言ってたでしょ?皆には、笑顔でいてほしいって。だからだと思います。それに、会長達がそんな顔をするんだったら鍵が覚悟を決めたのが悔やまれるじゃないですか」
「え?」
「あいつ、言ってたんですよ、前に。俺が『全部は話さないのか?』って聞いたとき」
『ああ、俺がそのことを言うと絶対に心配するだろ?前にも言ったけど、俺は全員を笑顔にしたいんだ。心配なんてかけてたまるかよ』
『……』
「ほんと馬鹿ですよね。他人のために自分の身を犠牲にするなんて…俺なんかには、出来ないですよ」
俺がそう言うと、会長も表情を変える。鍵が求める、笑顔と言う表情に。
「あ、俺がこれ言ったのは秘密ですからね?ばらさないくださいよ?」
「わかってるわよ…ニュー君の弱みを一つゲットしたんだから」
「知弦先輩!?なに黒い顔で怖いこと言ってんですか!?」
見ると深夏や真冬ちゃんも、いつの間にか合流した弥生たちも笑顔だった。
理解してはいたつもりだったけど、改めて理解することが出来た。
鍵の目指すハーレム…その象徴である笑顔の良さを…。