まず最初はヒロイン候補唯一の年上、七海優姫からです
他のヒロイン候補は今日中、最悪明日までには投稿します
ついに、ついにこの日が来た!
そう言いながらあたし、七海優姫は丁寧にラッピングされた小さな箱を鞄の中に入れる。
今日は2月14日―即ちバレンタイン、愛しの真くんに本命チョコを渡す日が!
実は去年、大失敗をしてお母さんに台所使用禁止令を出されてたんだよね……。
でも今年は違う!愛する真くんの為にこの一年、様々な知識を集めてきたんだから!
「それじゃ行って、ゴホッ!ゴホッ!」
「姉さん大丈夫?昨日寝てないんでしょ?」
「大丈夫よ、我が妹…こんなもの、我が武士道が押し通る!」
「私の姉さんがこんなに厨二病なわけがない。まぁ、気をつけてよね」
「どうしよう、渡して告白されたら……いや、むしろこっちから告白して―」
「聞いてないね、どう見ても。豹堂さんに迷惑だけはかけちゃ駄目だよ」
妹が何か言ってるけど、今のあたしにはバレンタインチョコの事でいっぱい!
真くん喜んでくれるかな~♪
というわけでやってまいりました、真くんの通学路。
特に待ち合わせをしているわけでは無いけど、いつもここでニアミスするから待ち伏せするよ!
「くしゅん!あ~やっぱり風邪かな~」
「珍しいですね、なんかあったんです?」
「うん。昨日ちょっとね~……え?」
あたし、一体誰に話しかけられた?
妹は学校が違うからさっき分かれたばかりのはずなんだけど。
そう思いつつ、声をかけられた方に顔を向ける。
「優姫先輩、おはようございます」
「…………はにゃ!?」
いきなりの出来事に、あたしは思わず出したことの無いような変な声を出してしまう。
てか、真くんいつもより来るの早くない!?
「ど、どどどどどど」
「落ち着いてください。深呼吸、深呼吸」
「すーはー……うん、落ち着いたよ」
「そうですか、良かった。で、何であんなに取り乱したんです?」
誰のせいだ!誰の!
そう叫びそうになるのを堪えつつ、話を返そうとする。
しかしその瞬間、身体が急に重くなり足がふらつき始めた。
「あ、あれ……?」
体勢を立て直そうと足に力をいれようとするけど立て直せず、思いがけず真くんに抱きつく形になる。
「うわ!ちょ、先輩、どうしました!?」
今までに聞いたことの無い位に狼狽した声が真君の口から響く。
こんな可愛い声も出せるんだ……なんか新鮮。
ボーっとそんな事を考えていると真君の冷たい手があたしのおでこに当てられ、今度は少し怒気の孕んだ声が発せられる。
「……凄い熱じゃないですか。どうしてこんな状態で登校しようとしたんですか」
「いや、だって……ゴホッ」
理由は、目の前にいるんだけどなぁ。
そう口に出しそうになるけど、あまりに身体がだるすぎて言葉にならない。
……元から口に出す気はないけど。
「こんな状態で学校なんて行ってる場合じゃないですよ。ほら、家まで送りますから」
そう言いながら真君があたしの前で背中を見せて屈みこ……え?
「ほら、早く背中に乗ってください」
「いやいや、そんな悪いよおぶってもらうなんて。それに……」
そう言いながら周りを見渡す。自分達がそうであるように、今は丁度学生達が登校する時間帯。
そんな中おぶって貰うなんて、恥ずかしすぎる。絶対に明日からこの時間帯登校出来ない。
「じゃあ、前に貰った命令権今使います。だから早く」
「うぅ~……」
そう声にならない声を挙げつつ、拒否を表そうとするが今の真くんには通じそうにもないので諦める。
ちなみに命令権って言うのは、前に陸上のアドバイスをくれたお礼にあたしが何でもするっていう権利の事。
こんなことに使わなくてもいいのに……。
観念して恥ずかしさで顔を真っ赤にしつつ、真くんの背中に全体重を預ける。
そのままあたしを持ち上げると、真くんはゆっくりと歩き始める。
周りの学生から奇怪な目で見られるが、本人は気にしていないようだ。
「ほんとに先輩は馬鹿ですよ。そんな状態で来られても、こっちが気が気じゃないですよ」
「……」
いつも以上に厳しい言葉をかけられるけど、事実なので言い返す事が出来ない。
でも……そんな風に、誰だろうと思ったことを素直に言葉にする様な人だったからこそ、あたしは真くんの事を好きになったのかもしれない。
前の"私"は自分に厳しく、他人にも厳しく当たる冷たい人間だった。
大家族を支える両親を助けるために、兄ちゃんや姉ちゃんの様になるために……。
そんな風に生きている内に周りの人間は私から遠ざかっていき、私は徐々に孤立していった。
でもあの日、見慣れない金髪の少年が言葉をかけてきた。
「走る時の足はもっと上げた方が良いですよ」
「は?誰、あんた」
それが私……いや、"あたし"と真くんとの出会い。
あれからあたしの気持ちはずっと、一人にだけ向かっている。
「真くん、ちょっと止まってくれる?」
「何ですか?早く家に戻った方が良いと思いますが?」
そう悪態をつきつつもあたしの意見を聞き、ちゃんとその場に止まってくれる。
やっぱり真くんは優しいな……。
止まっている間に、自分の鞄を探る。
そして指先に固い感触を感じ、それを手で掴み鞄から取り出す。
「これ……バレンタインのチョコ」
「え、先輩……ありがとうございま、ッ!?」
受け取ってもらった瞬間に、真くんの頬に口づけをする。
ライバルは沢山居るけど、絶対に負けてなんかいられない。いずれは、絶対に真くんと一緒に……。
「真くん、ハッピーバレンタイン♪」