生徒会の切札   作:ニヒト

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ようやく三人目です

今回はキャラの中で一番ギャップが激しい『柊弥生』です

…バレンタインとか言っておきながら、一週間が過ぎようとしていますがね

しかも急ごしらえの文章で何がなんだか…orz


バレンタイン特別編 柊弥生編

「弥生先輩!チョコ、受け取って下さい!」

「ん、ありがと」

 

 そう短い返事をすると、後輩の女生徒は廊下を走り去っていく。

 突然だが私、柊(ひいらぎ)弥生(やよい)はイライラしている。

 決して今の女生徒に怒っている訳じゃない。

 理由は単純

 

ガラガラ

「やっぱり、まだ来てないのね

 

 ここ、映画研究会の部室に私一人だけしか居ないからだ

 とは言っても映画研究会、通称”映研”の部員は総員三人しか居ないのでそう思い易いのかもしれない。

 

 映研の部員は私と、私の弟である玲、そして真の三人だ。

 でも玲はサッカー部の練習試合に助っ人へ行ったので、集まるのは私と真だけになる。

 その張本人である真がまだ来ていないのだ。

 そもそも、真が今年から生徒会のメンバーになってからというもの、放課後にこの部室に顔を出すことが激減したし、最近では生徒会の後輩と仲良くなってるって噂だし。

 ……なんだかそう考えてみると余計に腹がたつわね。

 今日はちゃんと部室来るって昨日言ってたのに、まだ来てないし。

 まさか、忘れているわけじゃないわよね?

 ……ちょっと気が引けるけど、生徒会室に行ってみようかしら

 そう考えつつ、椅子から立ち上がり部室のドアに向かい、引き戸を開ける。

 すると開けた戸の前に、見慣れた金髪が私の目に映る。

 

「あ、弥生ごめん、遅くなった」

「…………」

 

 そう言いながら笑顔を見せる真に、内心泣きそうな嬉しくなるが、それ以上に謎の怒りを覚える。

 

「ちょっとそこに座って」

 

 

 

「大体真は時間にルーズなのよ。この前だって、集合時間ぎりぎりだったじゃないの」

「いや、それは」

「それはじゃない。そんなだったら、彼女出来たら困るわよ」

「うっせ、彼氏いない奴に言われたかねーよ。お前はいつも一言多いんだよ」

「あ、それを言うかしら。どーせ私は男に好かれない様な薄情な女ですよーだ」

 

 真を椅子に座らせてのいつもの様な言い合い。

 でもこんな言い合いをするのは決まって、私の方からふっかける。

 今日だって久々部室に来てくれたのは嬉しいのに、それを圧し殺してまで冷たく当たる。

 理由は……よく分からない

 真とは別に仲は悪くはないし、この映研を創るのに貢献してくれたしで寧ろ異性としては一番の友人―

 

 ズキッ!

 

 突然に胸が苦しくなる。

 しかし物理的に苦しい訳では無く、精神的に胸が苦しくなる。

 

「(何で?特に自分が傷つく様な事は言ってないのに……)」

 

 私は心の中で考えを巡らせるが、何故かは全く理解できない。

 そう動揺していると、こっちの気持ちなんて気にせずに真がさらに動揺させるような事を口走る。

 

「はぁ……そんな相手に困ってるんなら、いっそ俺達が付き合うか?そしたら万事解決だろ」

 

 真の口から発せられた言葉を聞いた瞬間、二人の時間が止まる―

 そんな表現がピッタリな位、部室が静まり返る。

 そしてその言葉を理解した私の顔は、血が沸騰したかの様に熱くなってくる。

 

「な、何言ってるのよ!そそそそ、そんなの、断るに決まってるでしょ!?」

「いや、冗談に決まってるだろ。そんな露骨に断らなくても良いじゃん。はぁ、真冬ちゃんとかなら面白い返ししてくれるのになぁ」

 

 真が若干不機嫌そうな口調で反論し、また胸が痛くなる。

 いつもと同じはずなのに、いつもと同じ気持ちになれない。

 陰鬱な気持ちになっていると、見計らったかようなタイミングで私の携帯にメールが届く。

 差出人は……他の部活へ助っ人に行ったはずの弟・玲からだった。

 私は真に気取られないように来たメールを早速確認する。

 

『どう姉ちゃん?真と二人きりを満喫してる?』

 

 そう書いてあるメールに対し、「そんな状況じゃない!」と叫びそうになるけど、その気持ちを抑えつつさらにメールを読み進める。

 

『まぁ、姉ちゃんの事だろうから訳も分からず不機嫌で真にきつく当たって、空気が悪くなってるんだろうけどね』

 

 ……何で分かるのよ。

 時々だけど、私は玲って実は超能力者じゃないかと思う。

 よく私とか皆の考えている事を読んでくるし……。

 でもそんな玲だからこそ頼りになるし、おそらく今メールしたのもこの空気を打破するアドバイスを書いて送ったから。

 そう期待しつつ、読み進めたメールにはこう書いてあった。

 

『そんな姉ちゃんにアドバイス。どうして姉ちゃんが不機嫌なのかを、朝から今までの行動を省みて考えてみなよ』

 

「朝からの……行動?」

 

 玲のアドバイスに少し疑問を抱きつつ、真に勘づかれないように頭を巡らせる。

 確か朝は珍しく真と一緒に登校する約束をしてたけど、なんか七海先輩が体調不良とかで登校出来ないから家まで送るとかで一緒に登校出来なかった。

 休憩時間には話に行こうとしたら、真は同じクラスの女子とか後輩とかに囲まれてて話すことが出来なかった。

 特に昼休憩に関してはラジオに出演して、その後放送部の子と仲良く昼を食べたらしくここでも話すことが―

 

「あ」

 

 そこまで考えて、一日不機嫌だった理由に気づく。

 今日一日、殆ど気にしていなかったバレンタインで、真と喋ることが出来なかった。

 今まで学校で真と一度も喋らないことなんてなかった。

 その事に対して私は、焼きもちを妬いていたんだ。

 気持ちを出せないことに対する苛立ちと、悲しみ。

 それが、胸の痛みの原因。

 

 そして再び玲からのメールに目を戻すと、残りはたった数行しか書いていなかった。

 

『姉ちゃん、本当の気持ちに気づきなよ。真はそんな事で態度を変えるような薄情な人間じゃないよ』

 

「本当の気持ち……」

 

 玲のメールで、私の本当の気持ちと、素直になることが出来ない理由も気づくことが出来た。

 私は社交的な玲と違って内向的で、人と接する事や自分を知られる事が苦手だった。

 でも偶然真と話すようになって、内向的な自分と徐々に決別出来るようになっていった。

 なのに、真に対してだけはずっと自分の事を分からせない様にしていた。

 何故なら、知られるのが怖かったから。

 自分を変えてくれた真に、特別な感情を抱いている事を―

 それを知った真が、私から離れてしまう事を―

 でも……玲のメールに背中を押され、今度はそんな消極的な自分に腹がたってくる。

 もう、自分の想いを押し潰すのは卒業

 先ずは今の関係を少し進展させるためと、正直に謝るために―

 鞄の中に入っていた飾り気の無い箱を取り出す。

 

「真、あの、いつもきつく当たってごめんなさい」

「え、いや別にいつもの事だし」

 

 笑いながらそう言う真の言葉に、素直になれなかった自分にますます腹がたつ。

 でもこれからは、恐れずに本当の自分を知ってもらいたい。

 

「それで、その、これ謝罪代わりのチョコ。……本命かどうかは、自分で考えて」

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