でも後一つ残っている上に、バレンタインが終わって2週間近くたってる…
というわけで今回は音吹の生徒会副会長・四月一日愛華の出番です
…実はここまでの4人のメンバーの名前に季節に関する言葉が入っているのに気づいた方はいただろうか…
ではどうぞ~
「いらっしゃいませ~」
ここはゲームを中心にカードゲームやマンガなんかも取り扱っている店
あたし、四月一日(わたぬき)愛華(まなか)は四月からここでバイトさせてもらっている。
まぁあたしはゲームの事は全く知らなかったんだが……。
というのも、あたしが音吹高校の生徒というのが関係している。
あたしが通っている音吹高校はお世辞にも評判が良いとは言えない。
確かに数年前の音吹はかなり荒れていたけど、現在はスポーツなどに力を入れてまっとうな高校になろうとしている。
でも、一度下がりきってしまった評価が上がるにはかなりの時間がかかる上、最近では音吹の生徒というだけで毛嫌いする人もいたりする。
あたしは家庭の事情でお袋との二人暮らしで、中学卒業と同時にあたしは就職するつもりだった。
でもお袋はそんなあたしを止め、昔から得意だった空手の推薦で音吹に入学する事になった。
しかし推薦で入学したとはいえ、高校はそれなりに金がかかる。
そのためにバイトをしよう思っていたんだが、さっき言っていた評判のせいであたしをバイトで雇ってくれる店は居なかった。
でも忌々しいが、ある奴の紹介でここのアルバイトさせてもらうことになったんだ。
まぁ、おかげ様で今まで知らなかった無駄な知識が増えたがな。
そんな事を考えていると、20代程のフワフワした女性に声をかけられる。
「愛華ちゃんお疲れさま~」
「あ、店長お疲れ様です」
この人がこの店の店長さんで、あたしの恩人の一人だ。
見た目は20代なんだが知り合いの祖父とかと同級生だという噂の不思議な人だ。
「どう、仕事にはなれた~?」
「そうですね、もうここでバイトをさせてもらって一年近くですからね」
「そうかぁ、もう一年経つのか~……懐かしいなぁ」
そう言いながら店長は頬を弛ませる。
一年程前にあたしはここのバイトの面接を受けた。
その時はいつもの様にネームバリューで不採用になると思っていたが、この人は違った。
あたしが音吹の生徒と知っても、面接での”あたし”を見て採用してくれた。
「そういえば今日はバレンタインだけど、愛華ちゃんは真君には渡したのぉ?」
「な、なんであいつの名前が出てくるんですか!第一あたしはバレンタインなんか気にしてないです!」
店長が悪戯っぽく微笑んでくる。
そうだ、今日はバレンタインだ。
さっき言ったようにあたしはバレンタインに興味を持ったことは無い。
だが高校のとある先輩が『バレンタインに感謝を伝えたら♪』とか言ってきたんで、それに乗ってみようと今年は若干意識してた。
しかしながらあたしは料理が出来ないから市販のバレンタインチョコだし、第一今日はあいつシフトじゃないからこっちに来ないし……失敗したな。
そんな風に考えていると再び店長があたしに声をかけてくる。
「あ、因みにこれから真君が来るからね~」
「なんであたしの考えてる事が分かるんですか!第一、真は関係ないんですよ!」
「へぇ~、誰が関係ないって?」
「だから真だって……!?」
シュッ!
あたしが店長と喋っていると、後ろから声をかけられる。
それに驚いたあたしは思わず足を軸に回転しながら裏拳を決めようとする。
バシィッ!
しかしあたしの力+遠心力がのった裏拳は背後にいた謎の人物に片手一本で止められる。
「あっぶねぇなぁ、声をかけただけなのに裏拳かますんじゃねぇよ。今の俺とか要とかじゃないと止められねぇぞ」
「う、うっせぇな!お前が何でここにいんだよ!?」
裏拳を止めた人物―
その人物こそが、あたしがチョコを渡す……ある意味ではあたしの恩人、豹堂真だった。
その後店長は含み笑いをしながら帰宅したが、真はその後もバイト先に居た。
今日は新作ゲームの発売日だったからソフトの受け取りに来たらしい。
「予約商品取りに来るなら最初から言っておけよ……」
「そこは別に良いだろ、今は店員としてではなく客として来てるんだから」
「ならお前のシフトの時にやりゃ良いだろ」
「ばぁか。ゲームってのは発売日に購入して、その日の内にクリアするもんなんだよ」
「馬鹿はお前だ、ばぁか」
そうお互いに毒を吐きながら会計を進める。
何時もの事ながら、真とは喧嘩口調では話してしまう。
理由としては初対面でのお互いの印象が悪かったからかもしれない。
あたしは中学から様々な道場破りをしていた。
そんな風に強く生きていれば母親を守れるし、あたしと母親を捨てた父親を忘れられると思ったから。
ある日、あたしはいつもの様に道場破りに行っていた。
そこの道場の師範代は高齢ながらも若さを保ち、近所でも評判の武道家だった。
あたしはそいつに挑戦しようとしたが相手にされず、師範代の補佐である孫と闘うことになった。
結果は完敗……
金髪で武術なんかとは無縁そうな奴に、あたしは完璧に抑え込まれた。
その師範代の孫っていうのが、真だった。
それから何度も挑んだが負け続け、結局未だに一勝も獲れずにいた。
でもそうしていく内に認めたくはないが、お互いの仲は良くなっていた。
その中であたしの家庭の事情を話すくらいになっていき、真から高校やバイト先を紹介して貰ったりもした。
その事に対してだけは感謝しているが、口に出しての感謝は一度も無い。
言葉に出す…弱さを出すのが怖かったからだ。
けれども今日はバレンタインだ、これに便乗して素直にならせてもらうことにしよう。
普通はこの日に好意を伝えるらしいが、あたしは感謝を伝えさせてもらおう。
会計が済んだ後、レジを同じシフトに入っていた相方に任せ店の事務所に戻る。
そして自分の飾り気の無い鞄の中から、市販のチョコを取り出しレジ近くに戻る。
「真!」
そう叫びながら手に持っていたチョコを思いきり投げつける
流石に投げつけられたのにビックリしたのか、それとも発売したゲームに舞い上がっていたのかは分からないが、チョコを顔にぶつけてしまう
「いってぇな!愛華、一体何しやがる!」
「そんなんじゃ怪我しねぇだろ。と、とりあえずそれ開けてみろよ」
そう言うと真は頭の上に”?”を浮かべつつ箱を開けていく。
そして箱を開けた真は目を見開きながらこっちを見てくる。
「チョコだ、ありがたく受け取りな!べ、別にお前が好きとかじゃなくて、感謝の気持ちだかんな!」