今回は今までの話の中でちょっと出てきた『音吹高校』の話をちょこっとだけ
方向音痴な超能力者『伊勢崎要』、素直になれない武闘少女『四月一日愛華』だけでなく、個性的なメンバーのいる音吹高校生徒会!
そんなお話です!
※これは生徒会シリーズが完結(?)する前に書いた話のために一部設定が異なることをご了承ください
「今回はこれ!『何よりも誠実さを大切に』だ!」
少し長めの黒髪が目立つ少年がそう言いながら、ホワイトボードを叩く。
ここは音吹高校の生徒会室、ここでは毎日生徒会役員達が熱弁を奮っている。
「あ~…要さん?」
「ん?どうした愛華」
しかしそれを見ていた一人の女子生徒が異を唱える。
「要さんが文字書き始めた辺りかな?その間に二人程出ていったんだけど…」
「……え?」
見ると、目の前には女の子が一人座っているだけ。
この部屋には席が五つあるが、今現在この教室内には二人しか居なかった。
「…え~…」
音吹高校生徒会、最初からクライマックスの様である。
「よし、とりあえず会議を再開するぞ」
あの後俺は、抜け出した残りのメンバーを連れ戻して会議を再開させていた。
あ、自己紹介がまだだったな。俺の名前は伊勢崎(いせざき)要(かなめ)、ここ音吹高校の生徒会長を勤めさせてもらっている。
え?親友ポジなのに出番が少ない?ハハ、ナンノコトヤラ。
「うぅ~頭が痛い~」
「頭へこんで無い?よーくん力だけはすごいから」
「うるさいぞ真逆コンビ、そもそも会議を抜け出すのが悪いんだろうが」
頭を押さえながら二人が口々に文句を言ってくる。
先に喋っていたのが真崎(まざき)楓(かえで)、うちの生徒会の会計だ。
学年は一年…のはずなんだが、背が低くて童顔なために実年齢よりも結構年下に見られるらしい。(小6に間違われたとかないとか)
ちなみにれっきとした男である。
後から喋り、俺の事を"よーくん"と読んできたのは逆上(さかがみ)葉瑠(はる)、こっちは俺のいっこ上で三年生だ。
眼鏡をかけていて一見クールなイケメンなのだが、自由奔放優柔不断でいつも手を焼かせる。さらには女というオチもある。
ちなみに年上だけど敬語は本人が"むず痒い"との事なので使ってはいない。
この二人は容姿、中身とも正反対なため周りからは名字を一つずつ取って『真逆コンビ』と呼ばれている。
「ま、まぁ要さん。とりあえず落ち着きましょ。会議の時間も無くなるし」
「…そうだな。とりあえず会議を進めるか」
先程から見守っていたもう一人が俺に声をかける。
この子は四月一日(わたぬき)愛華(まなか)、一年ではあるがうちの副会長の一人である。
ルックスやスタイルも良いので人気があるはずなのだが、俺の友人曰く言動や性格が悪い…らしい。
「ほら、楓もハル先輩も会議始めますよ」
「え~」
「マナちゃんはよーくんに甘いよー」
「甘いって…あたし達は仮にも生徒会なんだから、会議くらいはやってくださいよ」
『え~』
「え~じゃない!早く始めますよ!」
『は~い』
…性格悪いか?普通に面倒見の良い子だと思うんだけど。
そんな事を考えながら、全員席に着いたのを確認し会議を再開する。
「さて、それじゃあ改めて。今月のスローガンは『何よりも誠実さを大切に』を掲げていきたいと思います」
俺が再びホワイトボードを指しながら言うと、先程まで涙目で頭をさすっていた楓が手を挙げる。
「は~い質問があります」
「ほう、なんだ楓」
「”誠実さ”って、具体的にはどうすれば良いですか」
ピシッ
楓がそう言った瞬間、俺と愛華の辺りからそんな音がした気がした。
「あ、あれだよ、誠実さって言うのは…なんだろうな愛華」
「あたし!?あ~その~…ごめん楓、わかんないわ」
「てかよーくん、意味を知らない言葉をスローガンにしようとしてたの?」
「う゛」
ヤバい、いつものパターンだ。
というのも他のメンバーと違い、俺と愛華はお世辞にも頭が良いとは言えない。テストだって毎回下から数えた方が早いし。
どうしてそんな俺や愛華が生徒会役員になったのか。
それは音吹の非常に特殊な役員の選出方法があるからだ。
俺の友人が通っている碧陽は人気投票によって決めているらしいが、うちは純然たる”闘い”によって決められる。
具体的に言えば、4月に行なわれる”武闘祭”で優秀な成績を収めた四名(今年は五名)が生徒会役員となる。
つまりは学力関係無しに生徒会の役員が選出されるということになる。
しかし今年の生徒会のメンバーはどういったわけか成績上位者三人と下位者二人の五人が選出され、生徒会の内部で学力の格差が生まれている(まぁ、あまり会議に問題はないがな)。
それによって毎回、俺や愛華がポカをやらかすと他のメンバーにツッコミを入れられフォローされるというのがお決まりになっている。
「良い?誠実さって言うのは「広辞苑によると他人や物事に対し、真面目に取り組むって書いてあるね」…へ?」
葉瑠が誠実さを説明しようとすると、入口からの言葉に遮られる。
「つまり、『誠実さを大切に』というのはそう言った心意気を最優先しろ。という事だね」
入口からの声の主がそう言いながら、俺の右斜め前の席につく。
「…いきなり入ってきて私の見せ場奪うの止めてくれません?雪海先生」
「ん?いきなりではないよ。僕は部屋に入る前にきちんとノックはしたからね」
「ノックほとんど聞こえなかったんですけど」
ほんとに?と言いながら首を傾げる先生。やっぱし教師というより友達のような感覚だな…。
この人は植野(うえの)雪海(ゆきみ)先生、音吹高校の教師でありこの生徒会の顧問を勤めている。
やる気の無さそうな目、伸ばしたらこうなったという様な髪が目を引く美人教師だ。
ちょこちょこ会議に参加しては俺達(特に葉瑠)の雰囲気を乱してくる。
でも時々的確なアドバイスをしてくるから憎めないんだよなぁ…。
「つか、なんでその席座ってんです?そこは―」
「別に良いじゃないか、どうせ今日この席は空席…なるほど」
ん?雪海先生が急ににやけながら…いや、俺を除いた全員がにやけながらこちらを見てくる。
「な~るほど~」
「今日要さんが若干テンション低かったのは」
「愛しの愛しの彼女さんがお休みだったからなんだね!」
「…ハァ!?」
それを言われた瞬間、俺の胸の鼓動が途端に速くなり体の体温が上昇してくる。
「ば、ちげーよ!そんな事ねーって!」
「とか何とか言っても、顔真っ赤ですよ」
「まぁ、二人のアツアツっぷりはうちの生徒全員知ってるから」
「今更どうってことはないですけどね」
「だからそんなんじゃねーって!」
楓、葉瑠、愛華の順に俺をいじってくる。
実は生徒会メンバーの最後の一人は…その、俺の彼女なんだ…。
今日はちょっと用事があるらしく、今回の会議には欠席している。
別に、カナさんが居ないからテンションが低いとか、いつものフォローが無いから寂しいとか、そんなこと全く思っていないし…。
「さて、伊勢崎を虐めるのはここまでにしておいて」
『(あ、虐めてるって自覚はあったんだ)』
「今回はどういった経緯でこのスローガンにしたんだい?」
「だから俺もカナさんに依存するのを減らそうと…へ?」
ブツブツ一人で唸っていたら雪海先生から唐突に質問を投げかけられる。
全く話聞いていなかったからどう答えれば良いか分からないんだけど…。
「…その様子だと聞いていなかった様だね。どうしてこのスローガンなのか?って話だよ」
雪海先生がホワイトボードを指差しながら声をかける。
これ?…あぁ俺が書いたやつか。
「ここ最近、うちの生徒のマナーが悪いとの苦情が増えてきまして」
『あぁ…』
理由を言った途端、全員が納得したのか脱力した声を出す。
この音吹高校は、前述の生徒会選出方法からなのか腕利き…というより、不良と呼ばれる輩が数多く在籍している。
そんな生徒がたくさん在籍している我が校は、”野蛮な学校””魔の巣窟”と呼ばれる程の悪評が広まっている。
もちろん生徒全員が全員不良というわけでも無いし、大半の生徒は卒業するまでに更正し世に出ていっている。
しかし一度広まってしまった評判を覆す事は難しく、今でも悪評高い音吹高校が定着してしまっている。
「最近も多いですよね、私たちを腫れ物の様に扱う人達。この前ナンパされたんですけどそいつら、あたしが音吹の生徒って気づいたら即座に逃げてましたし」
「あ~分かる。私もこの前ナンパされたんだけど、音吹って言った瞬間に怯えてたね」
「それは葉瑠があまりにも怖いから怯えてただけじゃ…」
葉瑠は実際キレると怖いし、たちの悪い事に満足するまで止まらないジャンキーだし…。
そんな刹那、俺の顔に激しい風が吹いたかと思うと顔の数センチ前に拳が存在していた。
「い~ま、何を考えていたのかなぁ?それに気のせいかもしれないけど、誰が恐いって…?」
「い、いや、何でもナイヨ?」
半分片言になりながら返事を返すと、半信半疑の表情で俺の顔を見ながら席に着く葉瑠。
やっぱこえぇよこいつ…。
「でもそうは考えていない人たちもいるとは思いますけどね」
これまでほとんど会議に参加していなかった楓が、突然意見を出す。
「確かになぁ、あたしのバイト先の店長はあたしが音吹の生徒と言っても採用してくれたし、偏見を持っていない人も少なからずはいるんだけどな」
「とはいえ、確かにこれ以上うちの評価を下げられないね…伊勢崎も、たまには良い事言うね」
「先生!"たまに"は余計です!"たまに"は!」
あるぇ?今日俺いじられてばかりじゃね?
若干心に傷を入れられつつ、俺は再びホワイトボードの前に立ち他の奴らに顔を向ける。
「とりあえず、イメージアップのための案を自分なりに考えてみたんだけど」
「えーっと…ボランティアに朝の挨拶運動?」
「うわぁ、堅っ苦しい物ばっかだね」
「想像してみ。今まで無愛想だったうちの生徒達が、急にボランティアをし始めるんだぜ?一体どういう印象受けるよ?」
「なんか企んでるとしか思えないよ」
「それ以前に参加自体しないと思います」
う~ん…やっぱそう言われるかあ…。
でもこういうのしか思いつかねぇんだよなぁ。昨日これ考えるのだって二時間くらいかかってたし。
「じゃなんか二人は案、ある?」
『……う~ん』
考え込むうちの作戦参謀二人。
やっぱり自主的に行動させるのは難しいよなぁ。
「…やっぱりさ、そんなことしても駄目だと思うんだ」
「ん~?マナちゃんどした?」
ずっと考え込むように俯いていた愛華がようやく口を開く。
それに葉瑠が反応し声をかけると、勢い良く椅子から立ち上がる。
「あたし達を避けているのは、本当のあたし達を知らない人たちなんだ。だったら、そんな綺麗事で塗り固められた上辺だけのあたし達を見せても、結局は変わらないんじゃない…んですか?」
普段使っている敬語を忘れるほど興奮しながら、俺に言葉をまくし立てる。
若干敬語を使わなかったことを気にしているのか、若干頬を染めながら再び話し始める。
「と、とにかく、うちのイメージアップを図るなら、本来のあたし達を見てもらえればいいと思います!」
そう言うと、愛華は再び席に着く。
あまりの興奮ぶりに、生徒会室が静まり返る。
しかし俺はまったく別のことを考えていた。
(本来の俺達…近隣の人たちとの、ふれあい…そうだ!)
今度は俺がかなりの勢いで立ち上がる。
そしてそのままホワイトボードの前に立ち、先ほどまで書いてあった字を消し新たな文字を書き始める。
そんな様子を、先生を含め全員が眺めてくる。
「決めたぞ皆!」
『え、なにが(です)?』
「これが、俺達の起死回生の企画だ!」
バン!といい音を立てながらホワイトボードを叩く。勢い良く叩きすぎた…手のひらいてぇ…。
「えーっと…『音吹高校学園祭の開催』…」
「学園祭の開催!?」
その単語を見た瞬間、葉瑠が真っ先に反応する。祭りが大好きだからなぁ…葉瑠。
音吹高校の学園祭、実は今現時点では存在していない。
しかもうちの学園祭は所謂バトルロワイヤルであり、本当の意味でのお祭りだった。
ただ10年ほど前、学園祭において重傷者を出したために学園祭は無くなってしまった。
「一つ質問良いですか?要先輩」
「おう、なんだ楓」
「音吹高校の学園祭が昔武祭だったことは知ってます。でもそれを開催させたって全く関係ないのでは…」
「ふん、甘いね。スイカに塩を大匙5杯かけたくらい甘い」
「それかけすぎで絶対辛いよね」
葉瑠にツッコミをいれるが、そんな事お構い無しに続ける。
「俺が言っているのは"武祭の開催"じゃなくて、音吹高校の"文化祭の開催"だよ」
そこまで聞いてやっと理解できたのか、葉瑠と楓の表情が硬いものから笑みに変わる。
対照的に愛華と雪海先生は出来ていないのか、首をかしげている。
その二人に対し、改めて俺の考えを述べる。
「今年の秋音吹高校文化祭を開催し、一般の人達を招き入れたいと思います!」
「お疲れ様」
「あ、ありがとうございます」
会議が終わった後、俺は一人残り(先生はいるけど)今日の議論を差し入れのスポーツドリンクを飲みながらまとめていた。
今日は中々に面白い案が出てきたので、いつも以上にペンが進む。
そんな俺の様子を見ていた雪海先生が、若干申し訳なさそうに声をかけてくる。
「一つ、質問しても良いかい?」
「はい?なんです?」
「すまないね、忙しい時に。…どうしてそんなに拘るんだい?」
「え、何に対してです?」
「この学校についてだよ。そんなに改善に尽力して…この学校が堕落した本当の理由、知っているんだろう?」
何だか真面目な雰囲気になってきて、ふざけたい気持ちが出てくるけどここは我慢だ。
俺は一旦ペンを机に置き、先生を正面にしながら話す。
「はい、知ってます。本当の理由…この生徒会自体なんでしょう?」
音吹が荒れてしまった本当の理由、それはこの生徒会によるものだった。
強い者が生徒会になる、その方法が取り入れられて以降腕に自信があるものばかりが生徒会役員になっていった。そうなると腕っぷしの強さに権力という大きな物まで付加されてしまう。
その結果、生徒会の生徒が増長してしまい手のつけられな手のつけられない状態になってしまった。
それが何年も続いてしまえば、自ずと風紀は悪くなるし近隣の人達からも煙たがられる様になる。
これがうちが荒れてしまった理由、力に溺れていった物達の末路…でもな
「やはり知っていたんだね。だったらなおさら「だからこそ、ですよ」…なんだって?」
「理由を知ったからこそ、俺がこの学校を変えないといけないんです」
雪海先生がこっちにポカンといった表情を見せてくる。
そんな表情の先生に俺は、俺の気持ちを話し始める。
「俺本当だったら、音吹に来るつもりは全く無かったんです」
「知ってるよ、確か…碧陽に行きたかったんだっけ?」
「はい。友人も殆ど碧陽志望だったんですけど…」
う~ん、これは言っても良いのだろうか?
自分で言うのは恥ずかしいんだが…。
「その、俺って所謂…方向音痴でして」
「まさか、道に迷って入試が受けられなかった、なんて言うんじゃ無いだろうね」
「……」
「図星かい?全く…高校生、いや、当時は中学生だね。その年になって迷子だなんてね」
うぅ…返す言葉がねぇ…。
雪海先生に精神的ライフをゴッソリ削られつつ、話を続ける。
「と、とにかく!俺は碧陽には入学出来ず、滑り止めで受けたこの学校に入学することになったんです」
「なるほど、で?どうしたらそんな考えになるんだい?」
「…正直、音吹に入ってから何もする気になれなくて、つまらない学生生活を送るのかなって思ってたんです」
その時の頃を少しだけ思い出し、少しだけ微笑む俺。
「でもそんな時に武闘祭見て、それで今年になって生徒会長っていう大層な役職についたとき運命だと思ったんです」
「運命?この学校に来た事がかい?」
「はい、そうです。もしかしたらこの学校を変えるために、俺はここにいるんじゃないのか、って。それに…」
「それに?」
「カナさんや葉瑠達に、笑って卒業して、音吹の生徒で良かったって言ってもらえるような、後悔しないような学校にしたいんです」
これが俺の胸に秘めた思い。
自分勝手で、誰かに頼まれたわけでもない行為。
それでも俺は後悔したくないし、カナさん達にも後悔してもらいたくない。
雪海先生も俺の気持ちを理解してくれているのか、こちらに微笑みかけてくる。
「そんなに君は愛しの彼女が大好きなんだね」
この期に及んで弄ってきやがった!俺の感動返せよ!
「…そうですよ、悪いですか?好きな人のためにエゴを振りかざさすのは」
「いや、他の人がどう思うかは分からないけど僕はきらいじゃないよ。そんな素敵な自分勝手」
「先生、楓にナ○シコ勧められましたね?」
「やっぱり分かった?あれはいい作品だね」
なんだろうか、このほのぼの感。さっきまでのシリアスっぽい空気何処行った。
でも、こういう雰囲気が今の音吹には必要なんだろうな…。
そう思いながら俺は、机の上にあった"もう一枚"の企画書に再び目を移した。
『碧陽・音吹の合同計画』と書かれた企画書に――