大学生から就活生、就活生から社会人へとジョブチェンジしている間に一年と数か月が経っておりました。
久しぶりの投稿ということで、いつもの3割増しの駄文になっております(個人評価)
そして今後も不定期が続きますが、それでも読んでいただけると幸いです
それでは、どうぞ
夕焼けのオレンジ色に染まる橋にいた元親友に、私は戸惑いながらも声をかけていた。
中学時代にはかけていなかった黒いフレームの眼鏡をかけているけど、その顔と短く切り揃えられた黒髪はあの時から全く変わっていない。
声をかけられた宮代(みやしろ)奏(かなで)は、ゆっくりとこちらを向き私の顔を見ると優しく微笑みながら口を開いた。
「……久しぶり、知弦。正直、あたしなんかに会いに来てくれるとは思ってなかった」
「それは私だってそうよ。あの時の私のままだったら、多分、今ここにいるなんて絶対にありえなかったわ」
きっと、私がここに来られたのは皆のおかげ。そう考えると、皆には感謝すべきなのかしら?
でも正直にお礼をなんだか癪な感じがするわね。特にニュー君に対しては。
確かに今の私があるのは彼のおかげでもあるけど……あんな初対面されたら、ちょっとね。
「ふふっ」
「……なによ、人の顔を見て笑うなんて失礼じゃないかしら?」
「ごめんなさい。知弦、すっごい楽しそうな顔してたから」
「顔に出てた?」
「そうそう、久々にそんな顔見るとなんだかほっとするよ」
奏はクスクスと再び笑顔になる。
…何か違和感を感じるわね。あれから三年経ったとはいえ、ここまで変わるものかしら。
『話がしたい』
そう奏から連絡があったのが今日の朝。了承したのはその場の勢いってのもあるのだけど……
なんて言えば良いのかしら、……心で感じた、かしら?
言葉では言えないのだけども、奏の声を久しぶりに聞いた時に何かを感じた…なんだか変な言い回しね。
「それで?今日私を呼び出したのはどういった用件かしら」
「そう…だね、私から呼び出したんだから私が話さなきゃいけないよね。まずは謝りたいの、ごめんなさい」
そこで一旦言葉を切ると、奏は深々と頭を下げながら言葉を再び口にする。
「謝ったところで許してもらえるなんて思ってはいないし、許してもらおうとも思ってない。ただ直接会ってけじめをつけようと思ったの」
「馬鹿だよね。あたしが知弦を傷つけさえしなければ良かっただけなのに。ほんとに馬鹿だよ、あたし…」
「……本当にね。私がここに来た時点で、ある程度予想出来そうなものだけれど」
「え-」
私の言葉に驚いたのか、奏は思わず顔を上げ私の顔を凝視する。
その目には驚愕や恐れの感情が見てとれた。
一瞬その目に圧され目を逸らそうとしてしまうけど、一度目を閉じ気持ちを落ち着かせ再び口を開く。
「一度砕けてしまったガラスは元には戻らない。でも、再び作り直すことは出来る。私達の関係もそう、完全に修復するのは難しいかもしれない。なら、もう一度作り直さない?奏」
これが私の答え。生徒会のメンバーのおかげで見つけられた、今の私の気持ち。
「ずるいよ…私がさっきの言葉を伝えるのに、すごい決心をしてきたのに、あっさり許されて、もっと、早く、こうしてれば……」
奏の言葉の続きは、私には聞こえなかった。
ただ聞こえるのは、膝をつき、すすり泣く彼女の声だけだった。
それからすこし落ち着き、泣き止んだ奏と私は川を見つめながら、お互いの事を少しずつ話していた。
「で?」
「で……って、なに?」
そう、朝に連絡を受けた時に奏が言ってきたのは、話がしたい、ということ。
でも謝るということだけではなく、自分にどういう変化があったのかの事も話したい、と伝えられていた。
ここまでで変化の理由などはあまり触れられていない。
奏にはまだそちらに関しては話したくない、という雰囲気を感じた。
なので、あたしがそのことに触れ、あえて逃げ道を無くしてみる。
「話してくれるんじゃないの?あなたが変わった理由」
「うぅ、なんで覚えてるのさ……」
「その話題の時だけ声のトーンが違っていたら、誰だって気になるに決まっているでしょう?」
「うーん……改めて話すとなると恥ずかしいけど、短い話だから少しだけ我慢してくれるとうれしいかな」
高校に入学してからのあたしは、何もなかった。
表情も、心も、あたしという存在自体が完全に凍りついてた。
人間関係もいつか壊れてしまうものだから、また新しく作っていくのも馬鹿らしい。
そう思って高校では人との関わり合いを極力避けていけばいい。そうすれば傷つくこともない。そう思ってた。
でも、そんなあたしの考え方を壊す出来事があったの。
去年の武祭の後だったかな、新入生だったそいつがあたしに付きまとうようになったのは。
つきまとうといっても、ストーカーみたいな事をする訳じゃなくて、鬱陶しい程に話しかけてくるようになってただけなんだけど。
しかも、運の悪いことに一年生で生徒会のメンバーに選ばれてしまって、否応にも顔を合わせるようになったんだ。
毎日毎日、生徒会室で話しかけるあいつに鬱陶しく感じても、不思議と完全に拒絶するような事は全く無かった。
それで何か月か経った頃、当時の先輩や周りの人から言われて気づいたんだ。
あたし、そいつと話すようになってから笑うようになってたの。
愛想笑いでも、作った笑顔でもなく、心からの笑顔のなんていつ以来だったか分からないくらいだった。
それに気づいてからそいつと話すのが本当に楽しくなって、それが続くうちにまた気づくんだ。
私はそいつの事が好きなんだ。そして、これが本当の愛情って感情なんだって。
知弦の居場所を奪ったあたしに、そんな安らぎの場所を求めること自体許されないことだと思ってた。
なのに、あたしはそいつの横という居場所を求めた。
柄にもなくそいつの事呼び出して、柄にもなく緊張しながら告白して、了承を得たときには恥ずかしいくらいに喜んじゃって……。
そういう事があったからかな。知弦にもそんな場所が出来てるって聞いたとき、安心したんだ
あたしにそういう場所が出来たからこそ、居場所の大切さが、分かったから。
奪ったあたしが言うのもおかしいかもしれない。けど、いつかその人たちに言いたいんだ。
知弦の事、救ってくれてありがとう。すごく感謝してる……って。
「……」
「これがあたしに起きた事の簡単な顛末。……つまらなかったかな」
「つまらなかったわね」
「即答!?」
「話の大半が惚気話なのに、楽しめという方が無理な話じゃないかしら」
「そう……かもね」
「それに……いつまでそこにいる気なのかしら?早く出てきたらどう?」
半身になりながら、橋の反対側に声をかけた。
すると、誰もいないはずの橋の下から見慣れた金髪の少年と初めて見る茶髪の少年が青ざめた顔をしながら現れた。