【第六章 全ては箱の中まで完結!】弾丸より速く動ける高校生たちの切っ先~荒神と人のどちらが怖いのか?~   作:初雪空

11 / 72
秘密の女子校で、1週間の滞在。
けれど、そこには世界を滅ぼす存在の召喚儀式があって……。

「異能者が普通にいる世界へ転生したら死亡フラグだらけの件」の3巻目は、誰もが疑わしい!?
https://www.amazon.co.jp/dp/B0D9J8CQV9


第11話 ガチ勢とエンジョイ勢の温度差

 氷室(ひむろ)駿矢(しゅんや)佐木霜(さぎしも)村の食堂で情報収集をしていた頃。

 

 柳ヶ淵(りゅうがぶち)村を目指して連なるワンボックスの先頭車両に、彼と同じ東京国武(こくぶ)高等学校の制服を着た女子2人がいる。

 

 スマホを触った西園寺(さいおんじ)睦実(むつみ)は、ふうっと息を吐く。

 

 隣に座っている2年の風紀委員、相良(さがら)音々(ねね)を見る。

 

「先輩? 駿矢は、現地で合流するって」

 

 ジト目だ。

 

 笑顔のままで冷や汗を流した音々は、明るい声で応じる。

 

「そ、そう! 単独行動は危険だから、早く3人にならないと――」

「何々? 男の名前~? 同じ高校生の奴なんか、つまんねーって!」

 

 同乗している男の1人が、ねっとりと絡んだ。

 

「ハ、ハハハ……」

 

 乾いた笑いになる音々。

 

 睦実は、ますます不機嫌に。

 

 車内を見回せば、男女が交じっているものの、明らかに年上ばかり。

 どこかの大学のサークルらしい。

 

 女子高生2人が誘拐されているような構図は、音々の一言で始まった。

 

 最寄り駅に到着したものの、地元の防人(さきもり)である風鳴(かざなり)学院の男女もいたのだ。

 東京からの横槍ということで、険悪な雰囲気に。

 

 防人用に迎えの車はあったものの、音々の判断でそこにいた目的地が同じグループに同乗させてもらったら――

 

 ご覧の有様である!

 

 ナンパしてきた大学生のみならず、もう1人も参戦する。

 

「そーそー! 俺たちも柳ヶ淵に滞在するから。今のうちに、連絡先を交換しておかね?」

 

 スマホを手に迫る男子に、音々は睦実のほうを見る。

 

 けれど、彼女はそちらを見ない。

 

(ひーん! 頼りになる先輩とアピールする予定だったのに!)

 

 人当たりのいい音々は、声をかけやすいようだ。

 ナンパ野郎の声が止まない。

 

 慌てた彼女が、話題を変える。

 

「そ、そういえば! 柳ヶ淵には、天女伝説がありましたよね?」

 

「おー! あったな……。つか、天女より君のほうが可愛いぜ?」

「防人なら、刀あるよね? あとで見せてくれない?」

 

(ダメだぁあああっ!)

 

 涙目の音々。

 

 それを見たナンパ野郎は、ますます調子に乗る――

 

「いい加減にしてくれない? 防人の権限で、ここの県警を呼んでもいいんだけど?」

 

 睦実の声が、車内に響いた。

 

 束の間の静寂。

 

 白けた空気が流れるも、ナンパ野郎の1人がすぐにフォローする。

 

「き、厳しいねー! 無視されて寂しかったとか?」

 

 また、沈黙。

 

(もう嫌ぁあああああっ!)

 

 音々の心の中は、忙しい。

 

 恋のキュンキュンではなく、胃痛がしそうだ。

 女子高生なのに。

 

 仕方なく、もう1人のナンパ野郎が取り成す。

 

「て、天女伝説と言えば、雨を降らしたか、新しく水源を作ったらしいぜ?」

 

「ふーん?」

 

 睦実が興味を持ったので、無視されたナンパ野郎も負けじと言う。

 

「どうも、昔の防人らしくてよ? その女が湖に住み着いた悪い水龍を倒して、村に残ったんだと!」

 

「ネットだと、沼はあっても湖はないよ?」

 

 気をよくしたナンパ野郎は、笑顔で答える。

 

「湖が沼になったんじゃね? 知らんけど」

 

「そんなところだろうね……。ありがとう」

 

「別に、いいって!」

 

 会話が途切れたが、今度は焦らない空気に。

 

(ありがとぉおおおおっ!)

 

 音々は心の中で感謝するも、睦実はやはり見ない。

 

(こっちを見てぇええええっ!)

 

 

 ◇

 

 

(さっきから、相良先輩の視線が強い……)

 

 考え事をしている西園寺睦実は、そちらを気にする余裕がない。

 

(十中八九、昔の防人が祟っていると思うけど)

 

 柳ヶ淵村の意向が、どうにも見えない。

 それに、風鳴学院は過去に生徒を送り込み、数人が行方不明のはず。

 

 今回やってきたのは、何としてでも解明する姿勢だ。

 最後尾の車には、精鋭が乗っているに違いない。

 

 走っている車の窓には、一面の緑。

 

 不整地で、ガタガタと揺れるシート。

 

(ナンパしていた男子2人は、空気を読んだか)

 

 気難しい睦実を刺激しないよう、村に到着するまでは放置。

 

 それを利用して、彼女は考える。

 

(昔の防人を殺したか……。いや、手籠めにしたかも?)

 

 羽衣伝説は、天女の羽衣を隠し、帰れずに困った女を何度も孕ませる。

 百姓の男と指定しているため、おそらく身分差。

 

 よく考えれば、ひどい話である。

 

 村だけで完結していた昔は、夜這いが当たり前。

 娘に男が来ないと嘆いた父親を見て、男たちが夜這いしたぐらいだ。

 

(それをした理由は? 防人に手を出すのは、かなりのリスクだと思うけど)

 

 不意をついての奇襲。

 一撃で仕留めなければ、逆に全滅だ。

 

 車内で話す大学生たちを眺めた睦実は、ワンダーフォーゲル部と名乗ったこいつらも怪しいと思う。

 

(タイミングが良すぎるんだよねえ……。偶然かもしれないけどさ?)

 

 しかし、フッと笑う。

 

 怪異と超常的なパワーがある現代社会で名推理を披露しても、意味がない。

 

 いざとなれば――

 

(駿矢を襲った部隊の時と同じく、敵を倒すだけだよ)

 

 睦実1人で、それが可能だ。

 村ぐらい、半日もかからない。

 

 今考えても、堂々巡りだ。

 

 そう思った睦実は、相変わらずの視線に悩む。

 

(相良先輩、いつまでこっちを見ているんだろ?)




過去作は、こちらです!
https://hatuyuki-ku.com/?page_id=31
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。