【第六章 全ては箱の中まで完結!】弾丸より速く動ける高校生たちの切っ先~荒神と人のどちらが怖いのか?~   作:初雪空

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秘密の女子校で、1週間の滞在。
けれど、そこには世界を滅ぼす存在の召喚儀式があって……。

「異能者が普通にいる世界へ転生したら死亡フラグだらけの件」の3巻目は、誰もが疑わしい!?
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第14話 人魚に転職する天女伝説

 喧嘩腰の男子が抜けたおかげで、風鳴(かざなり)学院との話し合いはスムーズに終わった。

 

 戦える防人(さきもり)が固まっていても、ムダだ。

 それゆえ、明日の朝食をとったら、数人のグループに分かれて情報収集。

 ランチタイムにロッジ竜宮(りゅうぐう)へ戻り、共有する。

 

 こっちはともかく、風鳴は地元だ。

 意図的に情報を隠して、自分たちの手柄にしたがるかもしれんが……。

 

(それで犠牲者が出ても、知らん!)

 

 うちと揉めたら、その時はその時。

 

 今は、夕飯の時間が迫っていて、日が暮れてきた頃。

 山の麓だから、すぐに日が落ちる。

 

 一応、ここの目玉である沼――天女伝説の湖――の外周を歩いてきた。

 

 ロッジの管理人が手入れをしているようで、目立つゴミはない。

 雑草の処理は、村の共同作業か?

 貴重な観光資源だし。

 

 オレンジ色の光が消えていき、沼の水面も暗い。

 あの世に通じているような不気味さ。

 

 一周した俺は、大きな石碑の前にいる。

 

 天女伝説の……。

 

“かつて、村はこの湖に住み着いた水龍に苦しめられていました”

 

“ある日、村の祈りを聞き届けた天女が舞い降り、その水龍を退治したのです”

 

“羽衣を隠した村の若い男と恋仲になった天女は、そのまま住み着き、数人の子供を儲けたと言われています”

 

“ところが、その幸せは長く続きませんでした”

 

“村の水源がなくなり、雨も降らない……。飢饉に陥ったことで、村の一員にして母親だった天女は決断を下すことに”

 

“「私の身を捧げます。どうか、村に恵みを」”

 

“天女が入水すると、新たに水が湧き、雨が降るようになりました”

 

“子供たちは嘆き悲しみ、村中がその死を悼みました”

 

“ところが、天女は死んでおらず、美しい人魚となっていたのです”

 

“「私は、ずっと村を見守ります」”

 

“驚きつつも喜んだ村人は、彼女の子供たちを中心に人魚を祀り、現在に至ります”

 

 その後に、考察する文章も。

 

 昔の防人が荒神を退治して、そのまま移住したのでしょう。

 水龍とありますが、近隣の文献にも残っておらず、真相は不明です。

 

 柳ヶ淵(りゅうがぶち)村が水不足だったのは事実で、この沼も溜め池の1つ。

 

(天女とあるが、昔の防人だろう。そいつが、村の連中に何かされた?)

 

 石碑と向き合ったまま、腕を組む。

 

「ダメだ! 分からん!」

 

「そうですか……。あなたには、少し期待していたのですが」

 

 背後から、聞いた覚えのある女子の声。

 

 腕を下ろしつつ、振り返る。

 

 クラスで委員長をやっていそうな、文系の美少女だ。

 

「えっと……」

「風鳴学院の久世(くぜ)です。高等部3年ですが、敬語はいりません」

 

 会釈した久世果歩(かほ)は、ザッザッと歩き、俺の横で石碑を見る。

 

「……人魚、ね」

 

 どこか馬鹿にしたような声音で、沼のほうを見る果歩。

 

 物思いに耽っている彼女に話しかける。

 

「人魚といえば、不老不死……。まだ、沼の中にいるのか?」

 

「どうでしょう? 潜ってみないと、分かりません」

 

 視線の先には、村役場の名前で “この沼で泳ぐ、潜ることを禁ず!” という看板。

 

 ロッジ竜宮の窓からの光が、目立ってきた。

 

 俺たちの影も、暗闇に溶け込む。

 

 海のような青色が、眼鏡の奥から見ている。

 

「あなたは……どうして田村(たむら)さんが怪しいと?」

 

「この沼について、何も言わなかったからだ」

 

「え?」

 

 果歩が初めて、年相応の声を出した。

 

 暗やみに立つ俺は、話を続ける。

 

「この村でほぼ唯一の、外へアピールできる観光資源だ。ロッジの部屋から眺められる……。管理人が宣伝しないのは、不自然だ」

 

「……なるほど」

 

「そろそろ、戻ろう! あの男子は?」

 

 足音と気配で、横に果歩がいることが分かる。

 

水島(みずしま)なら、こっちの男子部屋にいます。……ところで、あなたは女子と同じ部屋にいたと思いますが」

 

 暗闇でも、ジト目だと感じる。

 

「連絡ミスか、1部屋だけ! 俺は管理人に頼んで、適当な空き部屋に泊まる気だったけどな?」

 

「そうですか……」

 

「風鳴の犠牲者は?」

 

 しばしの沈黙。

 

 足音だけが響き、やがて果歩の声。

 

「女子3人です……。一度ではなく、過去に行われた荒神退治で定期的に」

 

「よく来たな?」

 

「うちのメンツがかかっていますから……。それに、先輩や家族もいるのです」

 

「……悪い」

 

「いえ、こちらこそ……。なので、ウチとしても今回は本気です」

 

 ロッジの勝手口についた。

 

 立ち止まった果歩が、振り向く。

 

「私はこれで……。失礼します」

 

「ああ、また明日」

 

 勝手口から続く廊下を歩き去った、果歩。

 

 俺の背後から視線を感じて、警戒しつつ、一気に振り向けば――

 

「何してたの?」

 

 琥珀(こはく)色の瞳。

 

 ジト目の西園寺(さいおんじ)睦実(むつみ)がいた。

 

 人魚になった天女よりも怖い。

 

「ここの伝説を刻んだ石碑を見ていたんだよ」

 

「ふーん? もう夕飯だから! 駿矢(しゅんや)が来ないと食べられない!」

「悪い」

 

 睦実に腕を引っ張られつつ、打ち合わせをしたリビングダイニングを目指す。

 

 歩きながら、睦実に尋ねる。

 

「なあ? お前、いつから?」

 

「……石碑の前で、ボーッと立っていた時から」

 

 すると、久世果歩は、睦実もいたから俺を襲わなかった?

 

「どうにも、ヤバい場所だ」

「ボク、最初から言っているよ?」




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