【第六章 全ては箱の中まで完結!】弾丸より速く動ける高校生たちの切っ先~荒神と人のどちらが怖いのか?~   作:初雪空

15 / 72
秘密の女子校で、1週間の滞在。
けれど、そこには世界を滅ぼす存在の召喚儀式があって……。

「異能者が普通にいる世界へ転生したら死亡フラグだらけの件」の3巻目は、誰もが疑わしい!?
https://www.amazon.co.jp/dp/B0D9J8CQV9


第15話 全身黒タイツ!? こんな夜更けに、妙だな……

 風鳴(かざなり)学院の水島(みずしま)空太(くうた)は、掻きこむように食べ、席を立った。

 

 ロッジ竜宮(りゅうぐう)は、リビングからダイニングまでが一部屋だ。

 個室を出れば、他の利用者と交流しやすいシェアハウス。

 食事をするスペースは、飲食店のように複数のテーブルがある。

 

 同じ高校の奴にもバカにされた形で、空太はロッジから外に出た。

 しばらく時間を潰してから、戻るつもり。

 

 沼の近くにあるロッジから、唯一の灯りが照らしている。

 

 観光客のために整備された土道を進み、ピタリと立ち止まった。

 

 こっそり持ってきた箱を取り出し、1本を取り出す。

 シュボッと火をつけ、煙をくゆらす。

 

「ったく! やってらんねえよ……」

 

 暗闇に目が慣れてきて、夜空からの月光を意識する。

 

 すると、ロッジから出てくる人影が……。

 

(こんな時間に?)

 

 気になった空太は、ちょうど終わりかけた1本を地面に落とし、靴底でジャリジャリと踏み潰した。

 

 怪しい人影をこっそりと尾行する。

 

 

 ◇

 

 

 女子2人と同室で、ソファーベッドに寝た。

 

 外は、鳥の鳴き声。

 ロッジ内は、人のざわつき。

 

 上体を起こして、女子2人が着替えられるよう、共用スペースで時間を潰す。

 

「おはようございます!」

 

 見れば、風鳴(かざなり)学院の久世(くぜ)果歩(かほ)だ。

 

「おはよう……」

 

「あの! うちの水島を見ませんでしたか?」

 

「いや、見ていないけど……」

 

「見かけたら、うちの誰かにお願いします!」

 

 焦っている果歩は、歩き去った。

 

 

 ――1時間後

 

 緊張した空気の中で、朝食。

 焼いたトーストなど、洋風の軽いメニューだ。

 ビジネスホテルのように、セルフサービスでとっていく。

 

 学校ごとに集まり、誰もが不安な表情のまま。

 

 身繕いをした後で、水島空太を除き、全員が集まる。

 

 真剣な表情の久世果歩は、早口で告げる。

 

「昨日の夜、私たちが夕飯をいただいた後から、水島くんが行方不明です! ロッジの管理人に伝えましたが、現状で警察や学校には教えません。理由は、彼がふてくされて逃げた可能性と、事件や事故に巻き込まれた可能性が半々だから」

 

 呼吸を整えた果歩は、こちらを見る。

 

「恐縮ですが、水島くんを見つけるまで、私の指示に従ってください」

 

「あ、うん……。それはいいんだけど……」

 

 相良(さがら)音々(ねね)は、困惑している。

 

 その間にも、果歩が話を続ける。

 

「2人1組で分散するつもりでしたが、予定を変えます! ひとまず、学校別で固まりましょう! 私たちは沼から始めて、周りの聞き込みをします」

 

 ジッと見つめられた音々は、自分の考えを述べる。

 

「じゃあ、私たちは……」

 

 困った音々が、俺のほうを見た。

 

「そっちが人魚を調べるのなら、俺たちは銀山があった渓谷のほうへ行ってみる」

 

 頷いた音々が、答える。

 

「ウチは、そういう方針で!」

 

「分かりました。ランチタイムか、遅くとも夕飯のときに情報交換を」

 

 言うや否や、果歩は残った男女を率いて、立ち去った。

 

 今の風鳴学院は、女子2人、男子1人だ。

 本来なら、水島空太を含めて、男女それぞれにコンビを組むつもりだったか?

 

 俺は、同じ東京国武(こくぶ)高等学校の生徒を見る。

 

「相良先輩?」

 

 考え込んでいた音々は、俺を見つめた。

 

「君が指揮をして! 風鳴のリーダーと、仲がいいし……」

 

「分かりました。先輩が、それでいいのなら」

 

 

 ロッジの正面玄関から出れば、大学生グループが出発するところ。

 細長いボンベなどを荷台に乗せて運び、ワンボックスの後部にどんどん積んでいる。

 

 まるで、今から工事現場へ向かうような光景。

 

「忘れ物をするなよ?」

「わーってる!」

 

 ワンダーフォーゲル部の連中だ。

 

 男女ともにテレビでよく見たダイバースーツで、その上からウィンドブレーカーを羽織っている。

 

 西園寺(さいおんじ)睦実(むつみ)が、人の良さそうな、メガネをかけた男子に話しかける。

 

「泳ぎに行くの?」

 

 手を止めた男子は、笑った。

 

「ハハハ! 泳ぐって言えば、そうなんだけど……。酸素ボンベを背負って潜る、スキューバダイビングだよ! 渓谷のほうに、水中洞窟があるらしくて――」

「おい! もう、行くぞ!?」

 

 片手を振った男子は、ワンボックスの後ろをバムッと閉じて、慌ただしく乗り込んだ。

 

 ブロロと、ワンボックス2台が走り出した。

 

 それを見送った俺たちも、住宅が集まっているほうへ歩き出す。

 

 睦実がスマホで検索すれば――

 

「廃坑や鍾乳洞が水没しての、水中洞窟……」

 

 気になった俺と音々が彼女のスマホを覗き込めば、水中ライトで照らされた幻想的な写真。

 

「狭そうだ」

「綺麗……」

 

 前を見て歩き出した、俺たち。

 

「あいつらは、そこに入る気か……」

 

「内部の構造とか大丈夫? 普通の洞窟みたいに整備しているとは思えないし」

 

 音々は、首をかしげる。

 

 同意した睦実も、疑問を口にする。

 

「風や水による浸食だよね? そもそも、人が入れる大きさ? 廃坑は補強もあるだろうけど……」

 

 洞窟内に灯りはないだろうし、方向すら見失う。

 

 水で満たされた暗闇。

 

「俺は、御免だね!」

 

 その発言に、女子2人は力強く頷いた。




過去作は、こちらです!
https://hatuyuki-ku.com/?page_id=31
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。