【第六章 全ては箱の中まで完結!】弾丸より速く動ける高校生たちの切っ先~荒神と人のどちらが怖いのか?~   作:初雪空

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秘密の女子校で、1週間の滞在。
けれど、そこには世界を滅ぼす存在の召喚儀式があって……。

「異能者が普通にいる世界へ転生したら死亡フラグだらけの件」の3巻目は、誰もが疑わしい!?
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第20話 真実を知った人間から殺されていく

 ロッジ竜宮(りゅうぐう)へ戻った。

 

「そうでしたか……。いえ、管理人の田村(たむら)さんを定期的に見かけました。渓谷の水中洞窟へ行くことは、まず不可能でしょう」

 

 風鳴(かざなり)学院のリーダーである久世(くぜ)果歩(かほ)は、田村東助(とうすけ)のアリバイを証明した。

 

 俺を見た果歩は、頭を下げた。

 

「申し訳ありません」

 

「それはいい……。水島(みずしま)は?」

 

 首を横に振った果歩は、ため息をついた。

 

「まったく……。念のため、風鳴にも連絡しましたが」

 

 成果なし、か。

 

 俺たちが話し合っている、リビング。

 

 そこは、警察やレスキューでごった返していた。

 

「メシを食ったら、すぐに機材のチェックと明日の打ち合わせだ!」

「遅いぞ! ここの風呂は狭いから、手が空いた順で」

「仮眠をとる班を先にしろよ!?」

 

 もはや呑み込んでいるスピードで、ダイニングテーブルについた連中が掻きこんでいる。

 

 座れない奴らは、リビングのソファーや、立ったままでの食事だ。

 

「ごっそさん!」

「ありーっす!」

 

 空の(どんぶり)が、どんどん置かれていく。

 

 厳選しても、集まった人数は10人を超える。

 お上品に盛り付ける余裕はなく、肉や野菜、魚を焼いて、既製品のタレで味付けしただけのオカズを上にドンと。

 

「はい! 次のグループ、どうぞ!!」

 

 管理人の田村東助は、忙しそうだ。

 

 村の主婦が手伝っていることが、厨房から聞こえてくる声や物音で分かる。

 

(大繁盛と言いたいが、こいつらは客じゃない)

 

 普通に泊まっているのなら、大儲けだ。

 けれど、救急や警察への善意による協力に過ぎない。

 

 足しにもならない金一封が出るかどうか……。

 

(不幸中の幸いは、俺たちに部屋を出ろとか、一緒に泊まらせろと言わないこと)

 

 俺たちは、ここの捜査にやってきた防人(さきもり)だ。

 むろん、お金を払っている客。

 

 これで、勢いによるゴリ押しをされた日には、すぐ帰るだけ。

 

(過去の事件から、同じ防人がいなければ、全員が殺されるだろう)

 

 それでも、俺に全員を守る気はない。

 

 急にせまい空間となったリビングダイニングを立ち去り、東京国武(こくぶ)高等学校の部屋に。

 

 女子2人は、うんざりした様子だ。

 

「お風呂、やっぱり無理かな?」

「今日は諦めたほうがいいよ、先輩」

 

「食事も、丼でやっつけ! ここ、安い牛丼屋!?」

「それより下だった……。お金を返して欲しい」

 

 ダブルベッドで横になるか、端に腰かけたまま、暗い雰囲気。

 

 俺は、ソファーに腰を下ろした。

 

 こういう時の女子には、触らないに限る。

 

 

 ◇

 

 

 水中洞窟の救助で、昼夜を問わない待機。

 だが、夜明け前の時間は、やはり静か。

 

 朝日に照らし出される、ロッジ竜宮の傍にある沼。

 

 キラキラと光る水面に、小さな泡が出てきた。

 

 盛り上がった後に、ザバーッと出てくる人影。

 

 咥えていたレギュレーターを外し、自然の空気を吸う。

 

「ハアッ! ハアッ! た、助かった……」

 

 背中にタンク1本を背負ったまま、最後の力を振り絞って、岸へ。

 

 やがて、両足が底につく。

 

 水中にある両手で、足についているフィンを乱暴に外す。

 

「ええいっ! くそっ!」

 

 人工的な足ヒレ2つが、カラフルな色で水面に浮かぶ。

 

 背中のタンクを外す気力はなく、ヨタヨタと歩き続けた。

 

 その時に、ロッジのほうから人影。

 

「た、助けてくれ! 俺の他に、まだ潜っていた――」

 

 次の瞬間に、ヒュオッと風切り音。

 

「ガ、アッ……。あ、あん゛だ――」

 

 自分の喉を押さえたダイバーは、驚いた顔のまま、二撃目を受ける。

 

 

 ――30分後

 

 ずっと眠れなかった久世果歩は、気分転換に外へ出た。

 

 一連の事件に関わっているであろう沼を散歩しようと……。

 

「え?」

 

 不自然な物体に気づき、そこへ近寄った果歩は、斬り捨てられたダイバーの死体に気づいた。

 

「キャアァアアアアッ!?」

 

 

 ◇

 

 

 女の悲鳴で、目が覚めた。

 

 俺は、同じ国武の女子2人が目覚めて、すぐに動ける状態になるまで待機。

 

 着替えを見ないようにした。

 

 今は部屋を出るとか、そんな状況にあらず。

 単独行動をすれば、狙われる。

 

「もういいよ、駿矢(しゅんや)!」

 

 西園寺(さいおんじ)睦実(むつみ)の大声で、ようやく違う視界へ。

 

 気恥ずかしそうな、相良(さがら)音々(ねね)の姿。

 

「すぐに、悲鳴が聞こえた場所へ行きますよ?」

 

「う、うん……」

「急ごう!」

 

 

 ロッジ竜宮の外へ出れば、人だかり。

 

 観光名所になっている沼の傍だ。

 

「ですから! 私が来た時には――」

「詳しい話は、署で伺います」

 

 殺人事件のドラマで、お馴染みの会話だ。

 

 人だかりの一部が割れて、女子1人と、その左右にスーツを着た男ども。

 

 呆然としたままの久世果歩に、刑事の三船(みふね)卓見(たくみ)たち。

 

「あいつが?」

「いや、まだ分からん」

 

「何で、水中洞窟にいたダイバーがここに……」

 

 ボソボソと話し合う、レスキューや警官たち。

 

 果歩をパトカーの後部に押し込めようとする刑事たちに視線を送れば、卓見が振り返った。

 

 指の動きで、呼ぶ。

 

 息を吐いた卓見が、小走りで近寄ってきた。

 

「水中洞窟にいた大学生の1人が、この沼の外周で殺されました。死因は刀傷! 第一発見者である彼女を連行するところです」

 

「今、防人を減らされたら、各個撃破にされるぞ!?」

 

 首を横に振った卓見は、すぐに説明する。

 

「お気持ちは分かりますが、身柄を確保するしかありません……。こうなった以上、行方不明である風鳴(かざなり)学院の水島(みずしま)空太(くうた)についても、彼女が被疑者です! 上は、強引にそうするでしょう」

 

 ジェスチャーで謝った卓見は、同じく小走り。

 

 待っていた覆面パトカーに乗り込む。

 

 2台の警察車両は、街へ続く道を走っていく。

 

 残された俺は、水中洞窟の救助に来た連中に見られる。

 

 構わず、ポツリと呟く。

 

「ああ、そうかい……。だったら、こちらも勝手にやらせてもらうさ」




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