【第六章 全ては箱の中まで完結!】弾丸より速く動ける高校生たちの切っ先~荒神と人のどちらが怖いのか?~   作:初雪空

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秘密の女子校で、1週間の滞在。
けれど、そこには世界を滅ぼす存在の召喚儀式があって……。

「異能者が普通にいる世界へ転生したら死亡フラグだらけの件」の3巻目は、誰もが疑わしい!?
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第22話 見方を変えれば、正妻と公認の愛人では?

 相良(さがら)音々(ねね)は、スマホを耳に当てたまま、答える。

 

「2人で、こっちに戻るのね? じゃ、それまでは私たちで対応するから」

 

 スマホの画面を触って、ふうっと息を吐いた。

 

 ロッジ竜宮(りゅうぐう)の3人部屋で、西園寺(さいおんじ)睦実(むつみ)に話しかける。

 

「睦実ちゃん? 氷室(ひむろ)くん、風鳴(かざなり)学院の久世(くぜ)さんと一緒に、こっちへ戻るって! 明日の昼ぐらいだと思う」

 

「うん……。ボクにも聞こえた」

 

 気だるげに、自分のベッドから起き上がる睦実。

 

 東京国武(こくぶ)高等学校の部屋は、氷室駿矢(しゅんや)がいない分だけ広く感じる。

 

 彼の寝床だったソファーに座っている音々は、睦実のほうを向いたままで独白する。

 

「殺されたダイバーの第一発見者で、周りに人もいない。凶器も刀……。その状況なら、警察は大喜びで犯人にするでしょう。よく、久世さんを引き取れたわね?」

 

 他に怪しい人間がいないか、捕まえられなければ、ひとまず犯人にしておく役だ。

 次の犠牲者が出なければ、状況証拠としてもバッチリ!

 

 ダルそうな睦実が、長い付き合いとして推理。

 

「考えなしに警察署へ突っ込んだ駿矢が、『お前も留置所にぶち込まれたくなければ、早く帰れ!』と脅されている時に、あの女が突撃したんでしょ」

 

 実際、その通りだった。

 

 妙に具体的な説明に、音々が質問する。

 

「あの女?」

 

「駿矢の許嫁(いいなずけ)になった、天賀原(あまがはら)香奈葉(かなは)だよ」

「え? 氷室くん、許嫁がいるんだ!? っていうか、天賀原家! それで、まだ諦めないの!?」

 

 水を得た魚のように、音々はイキイキ。

 

 女子高生の大好物である、恋バナの時間だ!

 

「ボクも、御神刀を持っているからね……。香奈葉は天賀原家で忙しいと言うか、体面があるから。向こうにしてみれば、『駿矢が落ち着くまで任せる』の良いところ取りだと思う。他の女子が知らない間に寄ってくるより、一応は同格のボクに任せたほうがコスパもタイパもいいし」

 

「ふ、ふーん?」

 

 いきなり政治のような話で、肩透かしの音々。

 

 そこで、気づく。

 

「ん? 天賀原さんも、御神刀を持っているの!?」

 

「そうだよ? 香奈葉は滅ぼすことに特化しているから、駿矢が突撃した警察署が灰になっていないと――」

 ピロン♪

 

 スマホを持った睦実は、指を滑らせていく。

 

 視線も、スライドしていく表示を追う。

 

「警察署の正面玄関と取調室のドアぐらいで、済ませたんだ? 今回は、ずいぶんと大人しかったね? 署長の物分かりが良かったか」

 

 思わぬ形で、真相が分かった。

 

 音々は、面白い声を上げる。

 

「ひえっ!?」

 

 それに構わず、睦実が説明する。

 

「ボクと香奈葉は、SNSでグループを作っているんだよ……。2人だけのクローズのね? 実質、こういう連絡のため」

 

 ため息をついた睦実は、ベッドから降りた。

 

 固まったままの音々に、忠告する。

 

「言っておくけど! 駿矢の幼馴染で、香奈葉と腐れ縁のボクだから許されている部分が大きいから……。相良先輩が悪く言えば、命や社会的な立場の保証をしないよ? あいつら、どこで聞いているか分からないし」

 

「う、うん……。覚えておく……」

 

 言いながら準備した睦実は、ぼやく。

 

「香奈葉も香奈葉で、本音を言える友人がいないらしくてさ? ボクに愚痴を言うのは、やめて欲しいんだけど」

 

 それを聞いた音々は、心の中で思う。

 

(見方を変えれば、正妻と公認の愛人では?)

 

 しかし、茶化せば命にかかわると脅されていたことで、口にせず。

 

 睦実は、真剣な表情に。

 

「風鳴の生徒と話さない? あっちは混乱していると思う」

 

 ソファーから立ち上がった音々が、頷く。

 

「そうだね! 早く、知らせてあげよう!」

 

 

 ◇

 

 

 ロッジ竜宮の外で、風鳴学院の女子と会った。

 

 相良音々は、疑問に思う。

 

「あれ? もう1人の男子は?」

 

「……(かじ)くんは、帰りました」

 

 聞けば、久世果歩(かほ)が連行されたことで、耐えられなくなったそうだ。

 

 片腕を押さえた女子は、「高荒(たかあら)まどか」と名乗った。

 高校2年。

 

 人魚がいるはずの沼を眺めつつ、本音を吐き出す。

 

「気持ちは分かりますけどね!? 私も、久世先輩を待つ義務感がなければ、今すぐ逃げたいですよ!」

 

 気まずい顔で、音々が告げる。

 

「こっちに入った情報だけど――」

 

 その久世果歩が、うちの氷室駿矢と一緒に戻ってくる。

 

 聞いた「まどか」は、脱力した。

 

「そうですか……。良かった」

 

 勘違いしないよう、西園寺睦実が付け加える。

 

「このままでは、被疑者として検挙されるよ? そこは注意して」

「……はい」

 

 気を遣った音々が、提案する。

 

「女子1人は危険だよ? 私たちの部屋に来る? 氷室くんは、そっちの男子がいた部屋に移ってもらう形で」

 

 少し悩んだ「まどか」は、首を横に振った。

 

「お気持ちだけで……。明日の昼すぎには、久世先輩が戻ってきますから」

 

 最初よりは、元気そうだ。

 

 そう思った睦実は、沼の周りを見た。

 

(ずいぶん、サッパリしたね?)

 

 彼女の視線を追ったのか、「まどか」が教える。

 

「水中洞窟のダイバーについては、レスキューと警察が救助をやめました。表向きの理由は、『経過した時間から生存している可能性が低い』ですけど」

 

防人(さきもり)がぶっ殺しているとなれば、怖くていられないんでしょ? ゆっくりできると思えば、どうでもいいよ! こっちは、金払っているんだし」

 

 超常的なパワーと武器を持つ、防人。

 彼らに対抗できるのは、同じ防人だけ。

 

 機材を積み込んでいた警官、レスキューの一部が、非難がましい視線を送ってきた。

 

 けれど、睦実は気にせず。

 

 撤収命令が出ているようで、救助に来た連中は車で帰っていく。

 

「警察もか……。どっちみち、久世先輩を犯人にするシナリオってことだ!」

 

 睦実の独白に、「まどか」は息を吐いた。




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