【第六章 全ては箱の中まで完結!】弾丸より速く動ける高校生たちの切っ先~荒神と人のどちらが怖いのか?~   作:初雪空

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秘密の女子校で、1週間の滞在。
けれど、そこには世界を滅ぼす存在の召喚儀式があって……。

「異能者が普通にいる世界へ転生したら死亡フラグだらけの件」の3巻目は、誰もが疑わしい!?
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第26話 名探偵ムツミちゃん、お家に帰る

 湖畔を照らす、朝日。

 

 夜が明けた。

 しかし、まだまだ薄明かり。

 

 いるはずのない人物に、相良(さがら)音々(ねね)たちが警戒する。

 

 その一方で、西園寺(さいおんじ)睦実(むつみ)は足の向きを変え、乱入した三船(みふね)卓見(たくみ)と向き合った。

 

「何の用?」

 

「ムッフフフ……。ご挨拶ですな! ま、無理もありませんが」

 

 イラついた睦実が、本題に入る。

 

「誰を逮捕しに来たの?」

 

 上着の内側から何かを取り出そうとした卓見に、音々たちが身構える。

 

 しかし、煙草を探していると見抜いた睦実は、動じない。

 

 敵意を感じて、動きを止めた卓見が、ゆっくりと手を出す。

 

「いつもの癖です……。西園寺さんのセリフを借りれば、『死体がない殺人は立件できない』というやつで! あなた方を引っ張るつもりはないです。氷室さんには、『犠牲になった風鳴(かざなり)学院の女子3人をやった犯人を追っている』と言ったのですが」

 

「聞いていないよ?」

 

「でしょうな! 私が注目していたのは、柳ヶ淵(りゅうがぶち)村の連続殺人犯……。女子3人の死体ですよ、死体! 一部でも見つけなければ、話にならない。殺されているであろう水島(みずしま)空太(くうた)なら、まだ発見できるはず!」

 

 人魚がいるはずの沼を見た睦実は、ポツリと言う。

 

「お前が出てこなければ、逃がさなかったんだけど? 田村(たむら)東助(とうすけ)を……」

 

「すみませんね? 隠れて、尾行するつもりでしたが……」

 

 しかし、睦実は思わぬ発言をする。

 

「県警が、徹底的に捜査したんでしょ?」

 

「ええ、そりゃもう!」

 

 腕を組んだ睦実は、目を閉じた。

 

 ゆらゆらと動いた後で、卓見を見る。

 

「だったら、普通の場所じゃないね! でも、田村の鬼気迫る様子を見ていたら、1つ疑問に感じたんだ……。あいつが天女候補だった女子の死体をどっかに埋めるか、砕くと思う?」

 

「言われてみれば……。変ですな? ああいう犯人は、固執するはずだ。体の一部だけでもコレクションにするか、特別な場所に(まつ)るほうが自然……。それに、子供を産ませることが目的なら、しばらく監禁できる場所じゃないと」

 

 悩み出す、卓見。

 

 しかし、睦実は1つの場所を指さした。

 

「あそこ」

 

 それは……。

 

 人魚になった天女の住みか。

 

 今では沼となった湖だ。

 

 驚いた面々が、そちらを見る。

 

 完全に上った朝日による、眩しいほどの光だ。

 

「し、しかし……。うちのダイバーが散々に調べて――」

「あいつは、流水系の御刀(おかたな)だ! もし、この水を動かして、どこかにある施設……というか、広い洞窟に行けるとすれば?」

 

 口が半開きの卓見。

 

「そんな、馬鹿な……」

 

「理不尽な光景を見たばかりでは?」

 

 女子高生に言われれば、世話ない。

 

 とはいえ――

 

「ベテランの刑事ですら、その反応……。完璧だね!」

 

 候補としては、目の前にある沼か、渓谷にある水中洞窟。

 

「間違いなく、この沼だよ! 水中洞窟へ通えば、この村で目立ちすぎる」

 

 我に返った卓見は、同意する。

 

「そ、そうですな! 犯人は、現場にこだわる……。このロッジにいれば、すぐに往復できるだろう」

 

 けれど、明るくなった顔は、すぐに消える。

 

「参りましたな……。やはり、先ほどが千載一遇のチャンスでした」

 

 睦実は、笑いながら否定する。

 

「打つ手はあるよ! やつは、自分のルーツである天女伝説を再現することに執着しているんだ」

 

「ほう? で、その心は?」

 

「帰ろう、みんなで」

 

 

 ◇

 

 

 ロッジ竜宮(りゅうぐう)

 

 風鳴(かざなり)学院の部屋に入った久世(くぜ)果歩(かほ)は、残された書き置きを見て、息を吐く。

 

「そうですか……」

 

 残されたのは、自分だけ。

 

 そう思いつつ、デスクの上に置かれた鍵を手に取り、部屋を出た。

 

 廊下を歩けば、一緒に戻ってきた氷室(ひむろ)駿矢(しゅんや)の姿。

 

「そちらは?」

 

「俺だけ……。そっちも?」

 

「ええ! どうしましょう……」

 

 両腕を組んだ駿矢は、あっさりと答える。

 

「俺たちも帰るか!」

 

「……そうですね」

 

 たった2人。

 それも、警察署で犯人と決めつけられた直後だ。

 ここの管轄から、一刻も早く逃げたほうがいい。

 

 荷物をまとめるため、それぞれの部屋に戻った。

 

 服も適当にたたみ、スーツケースに詰め込む。

 

「まったく! 私を待たずに――」

 

 ベランダの窓を通して、人影。

 

 手を止めて、そちらに歩み寄る。

 

「誰? ああ、管理人さん!」

 

 果歩は状況を知るため、田村東助を追いかける。

 

 一瞬だけ、駿矢と合流するか? と思ったが、見失うことを恐れた。

 

 

 沼のほとりに立った東助は、そのまま消えた。

 

「え!?」

 

 急いで駆け寄れば、そこには沼の底へ続いているであろう、1人が通れるぐらいの穴。

 その部分だけ、水が避けている。

 

 校舎から滑り落ちるシューターか、ウォータースライダーを思い出す。

 

 沼の輪郭をたどるように、斜面を滑り落ちていく。

 

 

 手足で落下スピードを調整しながら、ようやく下へ。

 

 海とは違い、真っ暗になるほどの深度ではない。

 

 痕跡を探しつつ、周りを見れば――

 

「ここ……」

 

 年季の入った金属の扉が観音開きになっているのを見つけ、その奥へ。

 

 かろうじて、中が見える。

 人工的な灯りは、アウトドア用だろうか?

 

 後ろの扉をどうするかで悩むも、ジメジメとした閉鎖空間に、退路を残しておくことを選んだ。

 

 そもそも、本格的に調査する気はない。

 

 果歩は覚悟を決めて、いつでも抜刀できる姿勢のまま、足を踏み出した。




過去作は、こちらです!
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