【第六章 全ては箱の中まで完結!】弾丸より速く動ける高校生たちの切っ先~荒神と人のどちらが怖いのか?~   作:初雪空

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原作の澪ルート。
それは、日本が滅びる道だった。
 
繰り返される悲劇に対して、それぞれが動くが……。
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第34話 据え膳食わぬは男子の恥

 飛び降りが発生した私立高校で捜査する、東京国武(こくぶ)高校の剣術部。

 

 リーダーになった男子が、檄を飛ばす。

 

「うし! 氷室(ひむろ)にでかい面をさせないよう、キッチリと片づけるぞ!」

 

 今の彼らは、私立高校の制服だ。

 カバーストーリーに基づき、短期の受入れという形。

 

 元凶と見られた水鏡(すいきょう)十太(じゅうた)は、罪の意識を感じてか、全面的に協力している。

 

 入院していた駿河沢(するがざわ)三花(みか)は、精密検査のあとで退院した。

 どうやら、彼氏の十太が気になって仕方ないようだ……。

 

 三花は自分が悪かっただけと頭を下げて回り、裏で袋叩き寸前だった十太はかろうじて命拾い。

 

 学校のアイドルである彼女を嫌いだった女子すら、さすがに同情した。

 いっぽう、男子は怒り心頭。

 

 女子は、内心で気に食わなくてもフラットに接するが。

 男子のほうは、イジメどころか、半殺しの勢いだ。

 

 これ以上、駿河沢さんに負担をかけないで。

 彼氏を追い詰めるようなら、こっちにも考えがあるから!

 

 女子の総意はそうなっていて、男子の過激派も動けない状態。

 

 中立寄りの男子も、巻き込まれるのが嫌で、十太から距離をとっている。

 

 無視されないしイジメもないが、集団の中で孤立。

 腫れ物に触る、という表現がぴったりだ。

 

 十太は、自分を囲んでいる剣術部に協力するしかない。

 その功績で学校に見逃してもらい、なおかつ、三花の実家の力でやったことを隠しつつの転校だけが助かる道。

 

 冷静に分析したら、クズという表現すら生温いが……。

 

 ともあれ、事件を解決しなければならない。

 

「えっと……。俺が駿河沢にかけたのは、魔術書にのっていた儀式で――」

 

 十太の説明によれば、洋書を扱っている古本屋で安く買った。

 

 遊び半分で、この私立高校のアイドルである駿河沢三花にやってみたら、据え膳で自宅にやってきたそうな……。

 

 そのまま、恋人同士に。

 

 剣術部の男子が、質問する。

 

「その魔術書は、同じ学校の生徒である(ほし)芽里維(めりい)に渡したと?」

 

「は、はい……。海外のイタリーに住んでいたらしく……。その、魔術に興味があったようで」

 

 歯切れが悪く、彼女に誘惑されたのだと思われる。

 

 けれど、これは生徒指導ではない。

 

「ハイハイ……。そいつを調べてみるよ! お前は、せいぜい誰かに刺されないように気をつけな」

 

 

 ――半月後

 

 潜入捜査をしている剣術部は、星芽里維を中心にした黒魔術のサークルを突き止めた。

 

 水鏡十太の幼馴染で同じ私立高校に通っている粟島(あわしま)有加(ゆか)も、その一員だとか。

 びっくりした十太は、パニックになりつつ、突入に立ち会うと言ってきた。

 

 彼が言うには、生贄を捧げることでの悪魔召喚もあったようだ。

 

 剣術部のリーダーが、指摘する。

 

「ってことは……。急いだほうがいいな?」

 

 

 今は使われていない、外にある倉庫の1つ。

 

 地下にある部屋で、横たわったまま手足を縛られた有加に、独特なナイフが突き立てられる寸前だった。

 

 黒ローブを羽織った女子グループが怪しい呪文を詠唱する中で、御刀(おかたな)を抜いた剣術部により、瞬く間に制圧される。

 

 主犯と(もく)された星芽里維も倒され、有加は解放された。

 

 しかし――

 

「あぐっ!?」

 

 有加が、独特なナイフで芽里維を刺していた。

 

 ノーマークにしていた剣術部は、慌てて有加を押さえ込む。

 

 倒れた芽里維は、信じられないという表情のまま、見る見るうちに出血していく。

 何かを訴えるように、立っている有加を抱きしめている十太を見た。

 

 彼が見つめ返したことで、涙を流しつつ、首を横に振る。

 

「ちが……」

 

 助けを求めるように片手を上げるも、途中で力尽きた。

 

 

 ◇

 

 

「ご苦労さま……。報告書をよろしくね?」

 

 東京国武高校の生徒会室で、そこの主である伊花(いばな)鈴音(すずね)が締めくくった。

 

 得意げに出ていく、剣術部の面々。

 

 しかし、扉が閉められた後にも、鈴音は悩んだままだ。

 

 近くに控えていた、1年の神宮寺(じんぐうじ)(のぞみ)に尋ねる。

 

「希ちゃん? あなたは、どう思う?」

 

 同じく難しい顔の希は、根拠はありませんが、と前置きしつつの返答。

 

「あっけなさすぎます……。特に、主犯の星芽里維が……」

 

「ええ! まさに、そこよ! 本当に効果がある魔術が記載された魔術書なら、いくらでも防御方法はあっただろうし。意識をそらすことも、簡単よ? 何しろ、全く面識のない男子をいきなり最愛の人にするのだから」

 

 希は、最悪のシナリオを考える。

 

「もしかして……。星芽里維は、わざと自分を殺させたのでは?」

 

「何のために?」

 

 生徒会長の問いかけに、希はためらった後で答える。

 

「粟島有加がいきなり刺し殺すのは、不自然です。即座にしなければいけない理由と言えば……」

 

「……まさか! 精神を交換した後で、口封じしたの!?」

 

「可能性に過ぎませんけど」

 

 その推理が当たっていたら、まったく疑われていない魔術師が野放しだ。

 

 希は、改めて確認する。

 

「どうしますか?」

 

 内線の受話器をとった鈴音は、最後の手段をとる。

 

「氷室くん達には、もう頼めないわ! だから、最後の1人に相談する」

 

 言いながら、相手が出たことで余所行きの声へ。

 

「お世話になっております。私、東京国武高校の生徒会長である――」




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